今回はかなり内容に悩みました。
早乙女研究所 整備所
『負傷者の搬送完了。ボディチェックを厳重に行い、寄生生命体の反応はなし。』
『こちら、調査チーム。地獄の釜地下1000メートル付近を通過。ゲッター線濃度は変化なし。また、周囲の岩盤が結晶化しているため、影響が計り知れません。引き続き降下を・・・』
ドラゴン撤退後、早乙女研究所ではワイリーが中心となって各方面で作業を進めていた。敷島博士には負傷者の修理と襲撃で破損した防衛システムの回復、ライト博士はエックスの反応を探すと同時にハンターベースへの連絡。
そして、ワイリーは、ドラゴンが消えた後の地獄の釜周囲の地質を確認すべく、シグマたちを率いて降下をしていた。釜の底は最深部へと近づくにつれて黄緑に発光する結晶体の数が増え、地底深くに来ているにもかかわらず昼間のように明るい。
「ここまで結晶化が進んでいるとは。」
「ゲッター線の出力は安定。ドラゴンさんのいなくなった影響が出始めているのかもしれませんね。」
彼らは、広がる異様な光景を目の前に仮設で取り付けたエレベーターで降下を続ける。シャドーマンは最深部のチームと連絡をとりながら中央で腰を掛けているワイリーに報告をしていく。
「最深部の調査チームによれば、地下の結晶化は予想以上に広範囲とされており、かなり微弱ではありますがゲッター線の減少が確認されています。濃度の低下は上部ほどではないので今すぐと言うわけではありませんが今後100年から2000年以上の間は問題ないと思われますが採掘を続けた場合、この研究上を中心とする半径数キロが陥没する危険性があると・・。」
「・・・・ドラゴンの奴め、どうやらゲッター線を収集できないと判断して周りの物質を吸収していたようだ。広範囲の結晶化はその副産物じゃろう。」
最深部へ到着するとそこでは既にゲッターロボたちが作業をしていた。本来ならこの辺一帯高温に晒されているはずなのだがどういうわけか地上とあまり変わらない。
「博士、お疲れ様です。」
「他に何かわかったことはあるか?」
「ドラゴンが動いた際に体から剥離したと思われるものも含めて結晶の撤去を進めています。一部では採掘作業を開始していますが今のところ他の鉱物などは確認されていません。」
地上でも確認したが周囲には巨大な結晶体がいくつも積み上げられていた。手に取ってみると力が送られてくるような感覚と同時に妙な高揚感を感じた。
「手に取っても砕ける様子もない。ゲッター線が凝縮したことで高エネルギーを持った結晶へと変化したと言ったところか。」
「数値から見ても手のひらに乗る小石サイズの大きさですら現在の主流であるエネルゲン水晶の10倍以上のエネルギーを生み出せる。もし、これを一般のレプリロイドに組み込めば数日、いや、普通に生活する分なら一週間以上は補給をせずに動き続けられるでしょうな。」
シグマは、小さい欠片を調べながら言う。その様子を見てワイリーは、素早く彼から回収して山の方へと投げ捨てた。
「確かにこれがゲッター線で生み出されたものでなければこれからの時代の新エネルギーのとして利用できたじゃろうな。巨大な塊ならメカニロイドに組み込むだけで数十年以上は燃料代が浮く。・・・だが、ゲッター線を利用すれば何が起こるのか分かったものではない。ここに眠っていたドラゴンがその例だ。元はゲッター線を動力源に動くだけの機械、無機物の塊でしかなかった。それがメルトダウンを起こしたのを機に有機体のように繭を作り出して進化をしようとした。乗っていた者は愚か研究所にいた人間全てを取り込んでな。コイツを利用するのは即ち、宇宙一つ分を食い潰すことになる。」
「そこまで仰られますか。」
「ここの調査がある程度終わったら地上に戻ってドラゴンの位置を確認する。ゼロの反応を辿ればどこにいるのか分かるはずじゃ。結晶体は地上に出した後、コンテナに収納して厳重に封印。ここも解決の目途が立つまでは外部に触れない様に処置を施す!」
ワイリーが釜の取り扱いに対して結論を出していると結晶を撤去していたゲッターロボたちは、退かしている結晶から別の反応が現れたことで作業を中断する。
「ん?どうした?」
「結晶を退かしていたら何か反応が出た。」
「なんだって?」
レーダーの精度を上げてみると微弱な熱反応が検出された。
「これは・・・・生命反応だ。」
「馬鹿な、ここは地上から2000メートル以上離れているんだぞ。空気も薄いし。」
「もう少し退かしてみよう。機材に紛れ込んでいたネズミかもしれない。」
彼らは警戒しながら、結晶を退かしていく。しばらくするとなんと人間の手が現れた。
「に、人間の腕!?」
「おいおい、いくら何でも作りものだろう・・・・ウゲッ!!ほ、本物だ!本物の人間が結晶の下敷きになっているぞ!!」
「何!?」
叫び声を聞き、ワイリーたちは作業場の方へと駆け付ける。道を開けてもらうと確かに結晶の間に全裸と思われる男性が挟まっていた。
「し、死体か?」
「いや、死体なら生命反応は検出されん。」
彼は、恐る恐る男性の近くへと寄り、脈を測ってみる。かなりゆっくりだが呼吸もしているようだ。顔を見るために仰向けにしてみると思わず声を上げそうになった。
「こ、コイツは!?」
「ドクターの知り合いですかな?」
「いや、まだ断定できん。シェードマン、ここはお前に任せる。シグマ、この男を連れて地上に戻るぞ。シャドーマンは、敷島のところへ行って動けるようになったナンバーズを確認次第、外の警戒をしろ。」
ワイリーとシグマは、男を担いで現場から離れる。エレベーターに乗ると彼は再び男の顔を見る。
「・・・・まさか、こんな形でまた顔を見ることになるとはな。」
「では、この男は」
「・・・こいつは『車弁慶』。150年前、あのドラゴンに乗り込んだ末にメルトダウンに巻き込まれて消えたはずの男じゃ。」
その頃、司令室ではライト博士がハンターベースと連絡を取り合っていた。通信に出たのは、待機しているはずのエイリアではなくロールでシグナスたちは、各世界政府の代表の代表たちと共に鉄人兵団と会談をしているそうだ。
政府は、何か恐ろしい要求をしてくるのではないかと怯えていたが親衛隊と共に訪れた総統は予想外に物腰柔らかだったのでとりあえず安堵。彼からこれまでの戦闘による謝罪と破壊した都市部などの復興の支援と今後200年から300年の間太陽系宙域へ侵攻しないことを約束した上で現在抱えている問題について話し合うことになった。
祖国を裏切ったDr.ビアンコ。
Dr.ワイリーの研究により判明したゲッター線を糧に生きる異形の生命体。
そして、彼の暗躍で通信が断たれたメカトピア本星。
政府側は、メカトピア本星の話を聞いた時に一瞬自分たちに勝機があるのではと悪魔のささやきが聞こえたが彼らが他にいくつもの植民惑星があると話したことと前回のシグナスのことを思い出したため、早々考えを打ち消すことにした。
「以上が我々メカトピア側で把握していることだ。ビアンコが何を企んでいるのかは不明だが奴があの生物を使ってメカトピアは愚かこの星を含めた宇宙をも巻き込んで何かやろうとしていることは確かだ。」
「あ、貴方方の事情は把握しました。しかし・・・・御覧の通り私たち地球側の戦力は到底協力できる程のものでは・・・。」
「そうでもない。君たちの主戦力である『イレギュラーハンター』並びに『レプリフォース』の兵士たちには我々の部隊も大いに苦戦した。大型兵器をあれだけ投入したにもかかわらずだ。それに『ゲッターロボ』は、あの寄生生物の有効打になることも分かった。それらをうまく組み合わせていけば対抗は可能だ。」
「だが、ゲッターロボの製作技術を持っているのは神隼人とDr.ワイリーのみだ。彼らがこちらに協力しなければ製造は困難、特にDr.ワイリーはゲッターロボの製造に対して反対の姿勢を見せている。どんな要求をしてくるか。」
「ふむ、ならばこちらからも協力をするように求めてみよう。必要な対価があると言うのなら可能な限り応えよう。」
「いや、うん・・・・あの男は・・・・あまりにも大きい要求をしてくるかも。」
「神隼人も底知れぬ男だ。正直、何を考えているのか。」
答えが見えない会談を前に同席していた副官は、難色を示し始める。
「閣下、やはりこの者たちと手を組むのは間違いでは?どう見ても自分たちのことしか考えていなそうな連中ばかりですぞ。」
「人間の一生は短い。我々にとって100年はあっという間だが彼らからしては世代交代を終えていてもおかしくない長さだ。無事かどうかは次の世代に左右される。それに例外も存在する。あそこの二人を見ろ。」
彼が目で指す先には会談の動向を窺っているシグナスとDr.ケインの姿があった。彼らだけは他と違って真剣な眼差しで話を聞いていた。
「あのケインと言う老人は、現在この星で活動しているロボットたちの創造主、我々からしてみてみれば『神』のような存在だ。先ほどから様子を見ているが他の者たちとは格が違うように見える。それにイレギュラーハンターの総監であるシグナスも同じだ。少なくともあの二人は今回の件に関して重大と見ている。」
「では、この閣僚たちは?」
「・・・正直言ってしまえば表向きの代表と言ったところだな。状況を見る限り、この星は、メカトピアと違って大規模な戦争がたびたび起こっていると感じられる。そのおかげで入れ替わりが激しく、対応しきれていないのだろう。」
「寧ろ占拠してこの星を臨時拠点にし、母星奪還を視野に入れた方がいいのでは?」
「いや、軍事を管理しているの飽くまでイレギュラーハンターとレプリフォースだ。あの二人が健在な内は厳しいだろう。実際、我が軍はビアンコの反乱と重ねてかなり疲弊している。攻めて全員やられればそれこそ笑いものだ。」
「はあ・・・」
ひとまず二人が痺れを切らして会話に割り込むのを待つことにしようと考えた彼らだったが通信が入ったのかシグナスは席を外して距離を取る。
「私だ。会談中は通信を入れるなと言ったはずだぞ・・・何?それは本当か!?」
「シグナス総監、会談中に通信するとはどういうつもりかね!?」
彼の驚く声に一同は、会話を中断する。シグナスは、頭を下げて軽く謝罪すると落ち着いて話す。
「総統殿、貴方はこの会談を始めるとき『自分の軍はDr.ビアンコの裏切りと襲撃により、この場にいる部下たち以外連れてきていない』と話されていましたよね?」
「・・・その通りだ。私と副官の彼だけでは心許ないのでな。親衛隊の者たちを同席させてもらっている。」
「ですが、たった今外の警備をしているハンターたちからの報告でこのハンターベース上空に無数の飛行物体が飛来していると来たのですが。」
「「「な、なんだとっ!?」」」
シグナスの言葉を聞いた代表たちは、驚愕の声を上げて総統たちを見る。
「総統閣下、これはどういうことなのかね!?」
「まさか、先ほど言っていた植民惑星から援軍を!」
「この会談自体が我々を一掃するための作戦・・・・」
「待て、私は増援要請をしていない。そもそもここに向かってくるのなら臨時基地で救助活動をしているジュドとリルルたちがそこの男を通じて知らせるはずだ。」
「なら、ここに来ているという飛行物体の集団は何者だと言うのだ!?場合によっては今まで言ったことが全て嘘だということになるぞ!!」
「貴様ら、閣下になんと無礼なことを!!」
「お前も落ち着け。シグナスだったな、すまないが君の部下にこちらに映像を回してもらえるよう手配してもらえまいか?」
「いいでしょう。すぐに繋げます。」
会議室中央のモニターに映像が映し出される。ハンターベース上空にはロボットの顔が付いた戦艦が無数に飛来していた。
「お、おぉ・・・・」
「なんという数だ・・・・」
「終わった。これだけの数を相手に勝てるわけがない・・・」
代表たち全員の顔が真っ青になり、ある者は白目を剥き、ある者は口から泡を吐いて失神した。ケインは、なんとか気を保ったがその顔色はあまり良くなかった。
「我々の艦隊ではないな。あのタイプの戦艦は見たことがない。」
「もしや、ビアンコの奴目が我々諸共排除するために・・・・」
鉄人兵団側も総統以外はかなり動揺している中、会議室の通信機が勝手に起動し、声が聞こえ始めた。
『あーあー。地球の代表方並びに鉄人兵団の諸君、突然の到来で驚かせて申し訳ないが我々は君たちへの敵意はない。どうか安心してほしい。』
男性の声で相手は、敵意はないと告げるがやり方もあって当然一同の緊張が緩むことはない。
「敵意はないだと?ならば、何故大軍でこのハンターベースへ訪れたというんだ!?」
「あれだけの数で来れば攻めに来たと自白しているようなものだぞ!!何が要件だ!」
『別に君たちを攻撃しようという意思はない。だが、早く結論を出してもらわねば手遅れになる。こうしている間にもこの世界を中心とする多くの並行宇宙が奴らの手によって崩壊しかねんのだ。』
通信相手の言葉にケインは、表情を顰めるとデスクの通信機を切り替える。
「私は、ケインと言う者だ。君たちが敵対する意思がないと言うのならまず姿を見せてはもらえまいか?顔も出さず一方的に言われてもわしらも結論を出すことは難しい。」
『いいでしょう、では貴方方の前に参上するとしましょう。』
通信が切れるや否や会議室入口の前に緑の光が発し、一瞬で工事現場のヘルメットにマントを羽織った男が数名の部下を連れて現れた。
「き、君は先ほどの通信相手をした者かね!?」
「俺は巴武蔵。今この場に来ているゲッター艦隊の司令官を務めている。諸君らにはこれから大事なものを見ていただこう。」
鏡面世界 鉄人兵団基地
鏡面世界の鉄人兵団基地では、ビアンコたちが戻ってきたゲッタードラゴンの整備と今後のプランについて話し合いをしていた。
「ドラゴンの状態はどうなっておる?」
「現在60%完了。増幅装置の最大稼働を行った影響で各部に負担がかかってパーツの一部が摩耗していたため、交換を行っています。」
「コーウェン博士は、同胞たちとの同化治療で回復にもうしばし時間がかかります。」
部下たちからの報告を聞き、ビアンコは目の前のモニターから整備中のドラゴンを見る。
「・・・真ゲッターを葬ったとはいえ、ドラゴンの行方と目的が分からん以上動くのは危険だな。」
ゼロとアイリスを取り込んで飛び去ったゲッタードラゴンは、月軌道上で動きを止めているのがスパイ衛星の情報で把握している。恐らくゲッター線を収集しているのだろう。地上では照射される量が微量であるゲッター線だが宇宙では無尽蔵にある。自分たちを相手にしなかったのも進化の影響でゲッター線が不足していたためなのだろう。
だが、本来ドラゴン単体にゲッター線を収集する機能は備わっていない。それにゼロたちを取り込むまで誰も操縦していないと考えるとただ単に宇宙に上がったとは考えにくかった。
「もし、ドラゴンがゲッター線の意志で動いていたというならば他に目的があるはず。」
「じゃあ、コーウェン君が回復次第僕たちの手で回収するべきじゃないかな?僕たちのドラゴンより強くなったら
それこそ『Z』よりも厄介だよ。」
スティンガーは、月軌道のドラゴンのゲッター線数値を調べながら話す。実際、まだ微々たるものだがドラゴンの体内のゲッター線出力が上昇傾向にある。つまり、地上に出てきたときはまだ不完全な進化だったことを裏付ける。自分たちの欲しいのは飽くまで炉心であるため、進化されては手の付けようがない事態が起こりかねない。
「ふむ、メカトピア本隊があのダメージである以上しばらく満足には動けんだろう。チキュウ側も早乙女研究所がアレでは我々に対抗できまい。ここはドラゴンの調整とリルルとジュドの回収を済ませた上で動くとしよう。」
「う~ん~、仕方ないね。今無理をさせればコーウェン君がまた引き込まれかねないし。」
二人は、しばらく態勢を整えて計画を万全に進めるべきだと結論を出そうとする。
「いや、僕はメカトピア星へ戻ることを提案するよ。」
そこへ医務室で寝ているはずのコーウェンが中に入ってきた。顔色こそ落ち着いているものの一回り大きな巨体が若干頼りなくふらついている。
「コーウェン君、まだ寝てなくちゃダメだよ。」
「待つんだスティンガー。それはどういうことだコーウェン?」
「あぁ、意識がゲッター線に引き込まれかけていた時に僅かだが未来のビジョンとも言うべき記憶の断片を見ることができたんだ。あのドラゴンはしばらくした後にメカトピア星を目指して旅立っていく。そして・・・・」
そこで聞いた時二人は、ハッと目を大きく見開く。
「ま、まさかっ!?」
「『プロト』!奴め、まさか成長中のプロトを吸収しようとでもいうのか!?」
ビアンコたちの問いにコーウェンは頷く。
「プロトには成長を促すために複数のゲッター炉心と収集装置を吸収させている。ドラゴンはただゲッター線を吸収しているんじゃなくて集められているポイントを探ろうとしているんだ。」
「それでメカトピアに。」
「むう、成長を促進するために取り込ませた炉心が誘き寄せる撒き餌となってしまうとは。仕方ない、ドラゴンの修理が終わり次第、至急メカトピアへ帰還する。」
「しかし、大丈夫かな?奴がメカトピアに到着したときに僕たち以上の力を身に付けたりなんかしたら・・・」
「幸いドラゴンのゲッター線収集量は今のところそこまで多くない。常に安定して供給できるとはいえ、連続ワープでも多用しない限りメカトピアに来るまで相当なエネルギーを消耗するはずだ。それに奴は正確な位置までは完全に把握していない。迷いもなく行ける我々とは大違いよ。」
モニターに映されるドラゴン。
それは親に叱られていじけた子供のように体を丸めてただ静寂に身を任せていた。
ハンターベース 会議室
会談を中断した政府並びに鉄人兵団の面子は、ゲッター艦隊の司令官を名乗る男『巴武蔵』が見せた映像に思わず息を呑んだ。
広大な宇宙で激戦を繰り広げるインベーダーとゲッター艦隊。
だが、どちらも押して押されの状況の中インベーダー陣営から放たれたビームによって艦隊は次々と消されて行く。そこには黒い禍々しい巨大なゲッターが漆黒の闇から這い出てきていた。
後方で沈黙していたエンペラーが周囲の惑星を巻き込みながら合体、エンペラー1となって銀河をも揺るがす戦闘へと突入する。
・・・・・そして、その先にあったのはエンペラーの敗北。黒いゲッターが吸収し新たなエンペラーとなって宇宙を取り込んでいく悍ましい結末だった。
そこで終わればよかったのだが黒いエンペラーの行進は留まることを知らず、別のエンペラーが存在する別の並行宇宙、更にゲッターの存在しない世界にすら干渉し、全てが崩壊していくという壮絶すぎる惨状が待ち構えていた。
あらゆることが現実離れしていることもあって代表の多くが頭を押さえ、兵団側もいつもは否定してくるであろう副官が無言になっていた。
そんな重苦しい空気に圧迫される中、ケインはゆっくりと口を開いた。
「・・・・のう、武蔵司令官殿。今の映像が・・・この宇宙、この世界の慣れの果てで・・・・お主たちはそれを阻止するために来訪してきた・・・っという解釈でよいのかのう?」
「その通り、とは言うものの我々は飽くまで別の宇宙から来た存在だ。そのため、こちらの宇宙に深く干渉することはできない。」
「ほう、それはどうしてかね?」
「本来存在しない者同士が干渉し合うとこの宇宙を始めとする並行宇宙を崩壊させかねないからだ。全ての並行宇宙は絶妙なバランスでお互いの存在を保っている。だが、その中に異物が侵入し、そのバランスを崩すとどうなるか?例えるなら絵の具一色が一つの宇宙とする。その中に別の色を混ぜ合わせればバランスが保てなくなり、別色へと変色し、やがて黒になる。つまり、元々無いものがやってくるだけでもこの宇宙のバランスが狂っていき、最悪他の宇宙をも巻き添えになる。」
武蔵の話に代表たちはついて行けず、混乱しているのを一目見ると続いてシグナスが話に入った。
「では、貴方方がこの世界の出来事に深く介入すれば他の世界も崩壊すると?」
「うむ。だが、このままインベーダー共を野放しにすれば結果は先ほどの通りだ。そこで我々が君たちをサポートするために派遣されてきたのだ。そして、君たち自身の手でその歪みを正してもらう。」
「分からない話ではないが・・・正直言うと貴方方の力を借りたとしても私たちにそのエンペラーに対抗できるほどの力は持ち合わせていない。」
話は理解しているもののシグナスとケインは、武蔵の考えが楽観過ぎるのではと感じていた。
ゲッターロボの戦闘能力の高さは、今までのこともあって十分理解している。しかし、映像で見た黒いエンペラーと比べれば次元が違いすぎてとても太刀打ちできそうにない。ゲッター艦隊の協力があったとしても焼け石に水同然だ。
「シグナス総監、ケイン博士。貴方方は今、『自分たちではとても勝ち目がない』とでも思っておりますな?」
「「!」」
二人の考えを武蔵は、手に取るように読み取ってみせた。
「心配無用!必要なものは既にこの星に揃っている!!問題は奴らがドラゴンの動きを読んで体勢を立て直すまでのタイムリミットだ!!それまでに準備をしなくてはならない!!」
武蔵は、自信に満ちた表情で両陣営の顔を見ながら大声で言う。
「重要なのは互いのメリット・デメリットではない!!この宇宙の存続に対してどれだけのことをやれるかだ!!確かにここに来るまでは敵同士だった。だが、ここで手を組むのを拱いていればそう遠くない内にインベーダーにいいように踊らされる!!今こそ、未来のために動く時だ!!」
彼の声に押され、代表の何名かが我に返り、先程と打って変わって落ち着いた様子で話し合いを始め、数分後意を決した顔で総統に向き合った。
「全員納得したわけではありませんが・・・武蔵司令官の言う通り、今は双方のためにも貴方の提案を受け入れると同時に停戦協定を結ぶことをこの場を以て決定いたします。」
「・・・元は我々の方で招いたことだ。今は目の前に迫りつつある脅威へ対抗することが先決、事が終われば約束を守ろう。」
互いに態度を改めて握手を交える。
「では、鉄人兵団・・・いや、メカトピア政府との今後の課題としてまずは早乙女研究所に協力を求めるようコンタクトを・・・」
「方々、そのことに関しては心配いらない。既にこちらの部隊を分けて研究所に向かわせた。説得には少々骨が折れるだろうが時間が限られている以上動かざるを得ないだろう。それよりも双方出せる戦力を確認し、状況を確認することが先決だ。」
同時刻
早乙女研究所 メディカルルーム
「・・・・・」
同じ頃、ワイリーはカルテを確認しながら集中治療室でとりあえず寝かせている弁慶を見ていた。
「ドクター、車弁慶の容態は?」
「敷島の変態が保管してくれていた事件前のカルテと比較して検査を行ってみたが怪我が治っているところを除いて100%本人と一致している。つまり、コイツは150年前の状態で放り出されたということだ。信じられんが。」
「ほう、それで意識の方は?」
「そう長くかかることなく目覚めるじゃろう。じゃが、ゲッターに取り込まれて戻ってきたケースは今まで存在しない。目が覚めて早々記憶で錯乱を引き起こす可能性がある。最悪、そのまま精神崩壊も・・・」
シグマの質問に対してワイリーは、複雑な表情をして答えた。かつて同じ時代を生きた仲間の一人が当時と変わらぬ姿のまま眠っている。自分ですらあの断片的なビジョンを見たのだから弁慶はそれ以上の情報を脳に直接受けているはずだ。いくら体が規格外に丈夫だったとはいえ、精神の強靭さはたかが知れている。何も覚えていない可能性も否定できない。
(弁慶・・・お前も大概不幸な奴だな。ゲッター線の気まぐれで放り出され、こっち側に戻って来させられるとは。隼人が真ゲッター諸共消えた以上迂闊にここから離れられんし、果てさてどうしたものか・・・)
彼は、ため息をつきながらコーヒーを飲んで一服しようとする。そこへライト博士が慌ただしく部屋に入ってきた。
「ワイリー!」
「なんじゃ、ライト?ワシはようやくひと段落着こうとしていたところなんじゃ。」
「先ほどハンターベースでロールと連絡を取り合っていたんだが・・・」
「兵団が攻撃でもしてきたか?それともジュドの奴がまたボディぶっ壊して・・・・」
「『ゲッター艦隊』を名乗る艦隊が飛来してメカトピアと政府との会談に介入してきたというんだ!」
彼の言葉を聞くやワイリーは、口に含んでいたコーヒーを吹き出してしまう。
「なっ、なんじゃと!?」
「幸い会談はまとまったようだが、責任者の男がこちらに部隊を派遣してくると・・・」
「・・・・」
「ドクター、また顔色が悪くなっておりますぞ?」
「・・・・それはいつの話だ?」
顔を真っ青にして全身から冷や汗を出しながらもワイリーは、恐る恐るライト博士に聞く。
「つい今の話だ。」
その直後、研究所中に警報が鳴り始める。
『緊急警報!緊急警報!早乙女研究所上空に無数の未確認飛行物体を確認。動けるものは全員第一戦闘配備へ移れ!繰り返す、総員第一戦闘配備へ移行せよ!!』
『D2を出せ!動けるのだけでもいい!敵を研究所へ入れるな!!』
格納庫の方では既に応急処置を終えたゲッターD2二機が射出口から出て警戒を始める。
「悪いけどアンタらも旧ゲッターで出てくれ!」
「またっ!?もう、勘弁してよぉ~!!」
「つべこべ言うなスネ夫!」
「ゲッター1、発進します!!」
ドラえもんたちの乗ったゲッター1も出撃し、早乙女研究所上空で待機していると空間を突き抜け巨大な戦艦が複数姿を現した。D2たちは装備しているマシンガンを構えて迎撃態勢を取るが一つの戦艦から飛び出した陰に一瞬で破壊されてしまう。
『抵抗するな、俺たちはただ話をしに来ただけだ。』
真ゲッターと瓜二つの黒いゲッターは、トマホークをD2の首元に向けながら言う。更に後方から無数のゲッター軍団が駆け付けたこともあってドラえもんたちは勝ち目がないと悟り、武装解除した。
「・・・・・」
呆気なく降伏したことにワイリーは、表情を顰めるが同時にやばい奴が来たとばかりに急いで発着場へと足を進める。発着場では既に黒い真ゲッターの手から使者と思われる人物数名が降ろされており、その中に見覚えのある男がいた。
「・・・・ついに出るところまで出てきおったか。このゲッター線の化身共め!!」
そこにはハンターベースにいるはずの巴武蔵の姿があった。
今年もよろしくお願いします。