早乙女研究所 司令室
「断る!」
研究所へと来た武蔵たちの話を聞きながらもワイリーは、彼らへの協力は断固として首を縦に振ろうとしなかった。そんな彼に対し、武蔵は引くどころかむしろ説得を強めていく。
「アルバート、お前にもわかっているはずだ。この事態を放置すれば遠からず地球を含めてすべての並行宇宙が崩壊する。この事態を打破できるのはゲッターのことを知り、研究し続けたお前の頭脳が必要なのだ!」
「ほざけ!貴様らはただ単に人類が滅ぼされたら困るから言っているだけじゃろうが!!」
「なら、どうするつもりだ?お前の息子は今ドラゴンの体内にいるのだぞ?」
「すぐにでも救出チームを編成して助け出してやるわい!!」
意地でも協力したくないと言い張りたいのか、ワイリーは頑なに言い張る。だが、武蔵は分かっているように反論する。
「それは不可能だ。あの二人を受け入れたドラゴンはお前が止め続けていた進化の遅れを取り戻そうと完全な同化を始めている。例え中に乗り込んで見つけたとしても引きずり出せば、どちらも殺すことになる。」
「ぬうぅ・・・・」
「それにドラゴンを破壊したとしても結末が少しばかり変わるだけに過ぎん!お前が協力を拒めばゼロだけではない!人類、この宇宙のあらゆる生命が滅ぼされて行く!!」
武蔵の気迫のある言葉にワイリーは、顔を顰める。
強がりで言ったものの取り込まれてしまったゼロたちを救出するのはほぼ不可能なのは十分理解していた。病室で寝かせている弁慶を除いて戻ってきたものは一人もいない。体に穴を空けて侵入したとしても発見は極めて困難であろう。恐らく今二人はドラゴンの体内で同化しており、ボディを奇跡的に回収できたとしてもメモリー自体が空の状態になっている可能性がある。
「ドクター、お気持ちはわかりますが現時点でゼロたちを無事に救出できる可能性は限りなく低い状態です。ここは巴武蔵の意見も一理あるのでは?」
頑固なワイリーに対してシグマは、状況を把握した上で協力の受け入れを提案する。
「シグマ。貴様、その決断がどれほどのものか理解しておるのか!?」
「ドラゴンが動き出すのも時間の問題、それまでに救出の目途が立つと私は到底思えません。敵に利用されるか、彼の言うように進化して完全に一つの存在へと変わり果ててしまうことを考えるのなら・・・この申し出は悪くないかと。」
「ぬぬぬぅ・・・」
「往生際が悪いですよ、ワイリー博士。」
諦めが悪い彼を見て呆れたのかシェードマンが割って入る。
「シグマさんの意見は尤もなことだと思いますよ?」
「何じゃと?」
「考えてもみてください。ゼロさんとアイリスさんを取り込んだのは進化し続ける得体の知れないロボット。そんな化け物から助け出せるほどの実力はおありですか?あの車弁慶さんの回収すら奇跡的だと言うのにそれ以上のことを・・・はっきり言ってしまえば間に合いません。二人を切り離すのならゲッターのことに関してより間近で共にいる彼らに助力を乞うのが一番の近道だといつもの博士なら考えられると思うんですがね?」
「・・・・」
シェードマンに発破をかけられたことでワイリーの表情はより険しくなっていく。そんな彼に対してライト博士は落ち着くように声をかける。
「ワイリー、一旦冷静になってくれ。一刻も早くゼロ君たちを救出したい気持ちは分かる。お前がどれだけゲッター線に警戒しているのかも。しかし、エックスの行方も分からない現状、私たちも腹をくくらなければいけない。お前もこの大戦が始まった時、同じことを言ったはずだ。『動かなければそれこそ取り返しのつかないことになる』と。今がその時じゃないのか?」
「グ、グッ・・・・グヌヌヌ」
よりによって宿敵に言われたことで彼は、納得いかない顔をしながら何も言わなくなる。
「武蔵君、先の話が正しければ君たちがここにいた目的はその敵に対抗できる物が揃っているということで間違いないのかね?」
「貴方は話が分かるようですね、ライト博士。仰る通りです。」
「だが、真ゲッターも乗っていたエックスたちも神君と共に行方が分からなくなってしまった。あの一撃を考えると機体も・・・」
ライト博士は、あの一瞬の出来事を思い出して表情を曇らせる。あの凄まじいエネルギーのぶつかり合いでは機体が持ちそうにない。真ゲッターの方はただでさえ継ぎ接ぎ状態と言っても間違いないし、ゲッター線の影響で再生していたとはいえ爆発に耐えきれる保証はどこにもない。エックスの反応が未だに掴めないことを踏まえると機体諸共蒸発していてもおかしくはない。
「・・・いや、あの一撃はむしろ必然だったとでも言うべきものだ。」
「うん?」
「真ゲッターのあの状態ではまだ動けたとしてもこれからの戦いに耐えきれなかったでしょう。だから、無理やり進化して時間稼ぎに出た。」
武蔵の言葉にライト博士は、思わず口を開く。
「時間稼ぎ?あれは暴走じゃ・・・」
「ゲッターは大いなる意思を持った存在だ。ただの機械のような暴走などしない。」
「では、何のためにエックスたちを?」
「その答えは近いうちに出るでしょう。その時は少なくとも真ゲッターの炉心は戻ってくるはず。なら、新たな器が必要だ。」
彼は、ワイリーにちょっかいを出している敷島博士の方を見る。
「敷島博士。」
「ん?なんじゃ、武蔵?ワシは、お前さんに構ってやるほど暇ではないぞ。終わるならさっさと終わらせて研究室に返らせろ。」
「アレの完成はどのくらい進んでいますか?」
「アレ?何のことかのう~?ワシは兵器とゲッターに手入れぐらいしかしとらんぞ~?」
敷島博士は、惚けたように答える。その反応を見て武蔵は鼻で笑った。
「フッ、惚けても分かりますよ。貴方が隼人と真ゲッターの新たな器を準備していたことを。」
「・・・・」
「何っ!?ワシがここに来てからナンバーズを各重要エリアに配置して監視していたんじゃぞ!?そんなことができるわけ・・・・」
「それにゲッターを運用するための専用戦艦も独断でこっそり作っているとか。昔のように誤魔化そうとしても効きませんよ?」
彼の言葉に敷島博士は、しばしの間無反応を貫き通していたが突然にんまりと笑みを浮かべ、ゲラゲラ笑いながら態度を一変させた。
「うひゃひゃひゃひゃ~!いやぁ~参った参った。まだしばらく隠し通せると思ったのにのう~~~!!!隼人が戻ってきたときにあ~~~~~っと驚かせるビッグサプライズとしておきたかったんじゃがな。ウヒヒヒッ、いやはやゲッター線までは騙せんかったわい!ギャハッハッハッハッ!!」
彼の大爆笑が部屋中に響き渡る。そんな中、ワイリーは歯ぎしりをして掴みかかった。
「敷島!貴様、一体何を作りおった!?ワシらの目を掻い潜って!何を生み出したんじゃ!!」
今にもこの場で首をへし折るのではないかと思えるほどの勢いにライト博士は、慌てて彼を取り押さえた。
「ワイリー、落ち着け!!」
「えぇい!放せ、ライト!!コイツはやはり今すぐ消した方が世のためだ!!シグマ、今すぐ首を刎ねろ!!」
「ドクター・・・」
鬼気迫るワイリーの様子にシグマすらも困惑する中、敷島博士は懐からリモコンを取り出してモニターに映像を映した。
そこには真ゲッター1とゲッター1を合わせたようなデザインのゲッターの上半身が映されていた。
「これは・・・」
「隼人といずれは器を交換しなくてはと話しておったからな。真ゲッターの研究過程で出た試作機の多くから設計を見直し・改良を繰り返して開発していたんじゃ。ただ、面白い玩具が見つかったから一度バラして改造中!」
「玩具?・・・・!ま、まさかエックスたちを。」
「デュフフッ!アイツらやたらにゲッターと相性が良かったからのう!インスピレーションが湧いてきてしまいおったわい!!青いのと赤いのと紫のに合わせてチューンナップと武装の追加をしておるんじゃ。完成したら・・・・グフフフフ、今までにない最高傑作に仕上がるぞい!!」
「ハア、ハア・・・・どこでこんなもん組み立てておった?」
「隣の山の地下ドック。基本的にワシと隼人しか入れんようにしてあるから。知っている奴はほとんどおらん。」
沸点が過ぎたのかワイリーは、ぐったりしてライト博士の拘束を解く。
「・・・シグマ。」
「は、はっ。」
「お前にワシの代理を任せる。今後のナンバーズの指揮はお前が取れ。」
「えっ?」
突然の権限譲渡にシグマは、困惑する。シェードマンは、『まだ意地張ってる』と呆れた顔をしていた。
「サポートにシェードマンを付ける。相談係ぐらいにはなるはずじゃ。シャドーマンは、ワシと来い。」
「御意。」
「ど、ドクターは如何なさるのです?」
トボトボ部屋から出ていこうとする彼にシグマは、なんとか引き留めようと声をかける。ワイリーは、覇気がなくなった顔で口を開いた。
「今のワシが正常な判断を下せると思うか?他のことまで聞いたら研究所どころかこの島国一つ消しかねん。納得できるまでワイリー軍団はお前に預けておく。そこの変態とゲッターに侵されない程度に手を貸してやれ。」
「・・・・了解しました。」
「はあ、よりによって私が参謀役ですか。シャドーさんの方が向いていると思いますがね?」
「お前だと何するかわからんからな。ライト、今後の判断はお前たちに託す。」
「お前はどうするんだ?」
「ドラゴンが動き出すまでまだ時間が残っているはずだ。その間にゼロたちを救出できるかどうかを模索する。取り込まれたと言っても人間と機械とでは違いが出てもおかしくはない。そこを突けば動き出す前に回収できる望みはある。」
ワイリーは、再度武蔵の方を睨みつけた。
「ワシはまだ認めんぞ。だが、とりあえずナンバーズの意見もまとめた上でお前たちに貸してやる。せいぜい本性を見せないことじゃな。」
「本性も何もこれが紛れもない真実だ。お前も過去に縛られずに受け入れたらどうだ?」
「フン!」
まともな返事を返すことなく彼は、部屋を後にした。ライト博士は、その後姿にかつて袂を分かった若き日の彼と重ねて複雑な心境になる。
「・・・ワイリー。」
「彼を心配する必要はありませんよ。いずれこちらに合流することになる。その前に進めなくてはならないことが山ほどある。さあ、まずはそこから始めるとしよう!」
「全く、どいつもコイツもゲッターの思うように動きおってからに。クソ!」
部屋から出ていったワイリーは、文句を言いながら自分の研究室へと戻ろうとしていた。限られた時間の中で一刻も早くドラゴンが動き出す前にゼロとアイリスを救出しなければならない。
(幸い、再起動の目途が立ったエイトナンバーズが残っている。あの8人を救出隊として編成してドラゴンの内部に乗り込んで二人を無理やり引きずり出すのが現実的か?だが、意識がドラゴン側に吸われているとすれば意味がない。ゲッター艦隊の技術を盗めば意識を回収することができるか?しかし・・・・ん?)
考えながら歩いているとふと通路の先に居る者が目に移った。
「よう、オリジナルの救出に没頭中のようだな。」
ブラックゼロは、通路の壁に寄りかかりながらワイリーを見る。少し遡るが黒い真ゲッターを操縦していたのは彼だった。操縦席から現れたときは全員が驚愕したが武蔵の話によると少しでもこの世界の戦力が必要なためアチモフ一味も取り入れたとのことだ。イレギュラー集団である彼らが協力するとは考えにくいと残されたハンターたちは警戒したものの何かを見せられたのか意外に大人しかった。
かつて自分を許さないとばかり襲ってきた彼に対し、ワイリーは目を細めながら口を開く。
「何の用じゃ?今がチャンスとばかりにワシをコテンパンにしに来たか?残念だがこっちにはシャドーマンがガードとして付いておる。」
「そうしたいのは山々だが生憎この世界ごと崩壊しかねない事態だそうだからな。今回は見逃す。」
「なら、何をしに来た?」
「アンタにしては随分と未練があると思ってな。」
「ん?どういうことだ。」
彼は、ブラックゼロを睨みつけながら言う。
「話を聞けばオリジナルはドラゴンにあの女ごと喰われた。ゲッターに取り込まれるというのはある意味意識ごと吸収されるようなものだ。救出作戦を立てるぐらいなら俺みたいな代替え品を作ればいいことだろう?」
「なんだと?」
「オリジナルがアンタの目的を果たせるような存在だと未だに思っているのか?カウンターハンター事件の時にはまだ余地があった。だが、あの女とくっついてからそれすらなくなっている。最高傑作と言いながらコピー品である俺を作ったんだ。新しいのを作ってぶつけた方が効率が良いはずだろう?俺やオリジナルよりも優秀な新しい『ゼロ』を。」
ブラックゼロは、皮肉を言いながらワイリーの前に立つ。
自分は、元々オリジナルであるゼロの予備として作られた。それをパーツの奪還の失敗のしわ寄せで簡易AIプログラムを組み込んだ上で実戦投入することになり、ゼロによって破壊される羽目になった。もし、アチモフが回収してくれなければカウンターハンター基地の瓦礫の中で朽ち果てていただろう。
予備を作れるほどのワイリーならそれ以上のロボットを造ることは容易なはずだ。その言葉に対してワイリーはサングラスを外して彼に向き合った。
「フン、分かっておらんなお前は。確かに今のワシの技術ならお前やゼロ以上のロボットを生み出すことは可能だ。」
「ほう、潔く言うな。」
「だが、それはワシの想定している範囲での性能だ。作ったとしてもお前とゼロには到底及ばん。」
「ん?」
意外な発言にブラックゼロは、少し目を丸くする。
「分かっているだろうがお前とゼロにはラーニングシステムが組み込まれておる。あのシステムは相手の動きを読み取り様々な技を習得していく。だが、それだけではない。度重なる戦闘経験からより高度な戦術を導き出せるようになり、戦えば戦うほど進化していく。お前たち以上のものを作ろうと言うのならそのラーニングシステムに蓄積されたデータが必要だ。」
「アンタのことだから順次に自分の元へと転送するようにしていたと思ってたが・・・やらなかったのか?」
「そもそもワシは表に出るつもりがなかったからな。本来はゼロ一人に任せるつもりでいた。ボディが吹き飛ぶなんて事態が起こらなければ・・・・」
「オリジナルのお人好しが災いしたな。」
「そんなところじゃ。っというわけだからお前にボコボコに殴られる暇はない!部屋に帰らせてもらうぞ。」
そう言うと彼はさっさとその場から去って行った。ブラックゼロは、引き留めはしなかったもののその真剣な表情に呆れと憐みを感じた。
「・・・・本当におかしな奴だ。取り込まれたら助け出すことなんてできないことは研究していたアンタが一番よく知っているはずだ。受け入れられないのを諦めが悪いと言うべきか何も見えていないと言うべきか。」
話に一区切りついたのかライト博士と武蔵たちは敷島博士の地下ドックへと来ていた。目の前では研究・開発用にカスタマイズされたゲッターロボたちが黙々と作業しており、ドックの奥では分解されているゲットマシンとゲッター1形態に変形させているイーグル号が吊るし上げていた。
「まさか、本当に進められていたとは。」
数日間、隼人と共に彼と真ゲッターの修繕を行っていたライト博士は、目の前で沈黙している機体を見て唖然とする。そして、変形機構をテストしているジャガー号の骨組みを見て思わず、近づく。
「この腕の変形機構は・・・・バスターの変形機構だ!それもエックスに採用しているタイプと同一。」
ゲッター1の両腕に当たる部位の行動を見て彼は敷島博士の方へと戻る。
「敷島博士、まさか貴方はエックスをこの機体に乗せるつもりだったのですか?」
「うん?そだけど。」
「データはどこからとってきたんですか?少なくとも私たちに会って数日しか経っていない。そんな短期間で・・・」
「あぁ、何度かハンターベースのコンピュータをハッキングしていろいろと取っておったからのう。ゲッターの武装に組み込もうか検討して設計まではしてたんじゃがあの小僧共と会って『これはイケる』と思って休憩時間を利用して作っておいた。」
「えぇ・・・」
彼の底知れぬ探求心?を目の当たりにしてライト博士は、何も言えなくなる。恐らく残りの二機のうちのどちらかにはゼロを乗せる予定だったのだろう。ワイリーがこの事を知れば間違いなく破壊しに来ていた。
「しかし、残念じゃのう。肝心の小僧共がいなくなってしまった上に隼人もいないんじゃコイツも宝の持ち腐れじゃ~。」
ハキハキと話しているのに反して敷島博士は、残念そうな顔をして言う。乗せる予定のパイロットがいなくなった上に機体に組み込む予定だった炉心も失ったのだ。無理もない。
「いや、腐りはしませんよ敷島博士。このゲッターは必ず必要になる。」
武蔵は、笑みを浮かべながらゲッターを見る。
「炉心もパイロットも時が来れば戻ってくる。後は我々がそれまでにコイツを始めとする準備を進めなければならん。ライト博士、敷島博士にエックスの今までのデータを提供できますかな?」
「構わないが・・・果たしてエックスが乗ると言うかは分からない。真ゲッターでさえ暴走しかけていたんだ。寧ろ乗るのを躊躇うかと。」
ライト博士は、データの提供に難色を示す。あれだけの出来事を体験して果たしてエックスが乗ると言うのだろうか。取り込まれたことで恐怖を感じ危険視するかもしれない。
「彼はゲッターに乗る。いや、乗らなければならん!ゼロのデータも必要だがそれはアルバートが来た時に手に入る。敷島博士、こちらからも手を貸すので急いでお願いしますよ?」
「手を貸すじゃと?武蔵、お前さん如きに手を借りんでも完成させてやるわい~!」
敷島博士は、背負うタイプのロボットアームを装着して作業に取り掛かる。彼が本腰を入れたことによりゲッターたちの動きも早くなり、それまで静かだった地下ドックから騒音が響くようになった。
「ここは心配なさそうだな。ライト博士、貴方にもう一つお願いがあるのですがエックスの反応を確認できる信号を教えてもらえませんか?」
「うん?探知機を?だが、今も発見できずじまいだ。役に立つかどうか」
ライト博士は、心配そうな顔をしながら発信信号の暗号を教える。
???
「・・・・・・。」
『エ・・・・ス・・・エッ・・・クス・・・・エックス。目覚めよ、エックス。』
「誰だ?」
朦朧としている意識の中でエックスは、重い瞼を開けて声の主に問う。
「暗くて・・・何も見えない・・・」
最後の記憶が正しければ自分は真ゲッターと同化し、ドラゴンに対してストナーサンシャインを撃っていたはずだ。と言うことはここは真ゲッターのコックピットの中で同じく同化していたマーティと起こしに来たVAVAがいるはず。
「VAVA・・・・マーティ・・・どこにいるんだ?」
『ここにいるのはお前だけだ。そして、お前は知らなければならない。』
「知らなければならない?それは一体・・・ウッ!?」
その瞬間、眩い光が全身を包みこみ、エックスはこれまでに感じたことのない衝撃に襲われる。目が慣れてくるとそこには走馬灯の如く様々な攻撃が近づいては過ぎ去っていく。理解しきれないほどの情報と言う波が押し寄せていた。
「俺の記憶だけじゃない・・・・兄さんにドラえもん、人類、地球の歴史を見ているというのか!?」
『これは進化の歴史の一部に過ぎない・・・これ以上の歴史が全ての宇宙で紡がれている。』
「お前は誰なんだ!?一体どこにいるんだ!?」
目を大きく見開くとそこには宇宙と言うべき広大な空間が広がっていた。エックスが周囲を見回すと自分を見下ろす巨大な影があった。
「真ゲッター?違う。まさかお前がゲッターの意思だと言うのか!?」
ボロボロの姿である真ゲッター基ゲッターは、エックスを見て答える。
『全ての物には意思がある。生物、大地、風。水や火にも時間と空間にも意思があり、記憶が存在するのだ。そして、進化にも・・・それらを全て司る者にも!!』
「全てを司る者?もしかして『種撒く者』も?」
かつて「生命のねじ」で命を与えたパカポコを始めとする玩具たちと共に開拓した『ねじ巻き都市』のある星で出会った存在を思い出す。彼もまた遥か昔に『生物の種』を宇宙に撒き、生物を誕生させた。
『そうだ。だが、今はその事を話している場合ではない。』
「どういうことだ?」
『エックス・・・もうあまり時間が残されていない。人類、否地球は今破滅の淵にいる。それは植物が実を熟し、種子を蒔こうとしているのに似ている。しかし、奴らをこのまま野放しにすればその種を散らす前にすべてが滅ぶことになるだろう。それは・・意思を持つ者たちは許さない。エックス、君たちも人類も新たなる進化を迎えようとしているのだ。』
「待ってくれ。話について行けない。許さないと言うけどお前だって150年前早乙女研究所の人たちを全員消した!それだけじゃない、俺はお前たちが宇宙のあらゆる命を奪う瞬間を見た!!それも許されないことじゃないか!!」
エックスは、夢で見たあの地獄絵図を思い出す。
ゼロドラゴンとゲッター天によって荒廃し、ゲッター同士の潰し合いとなった未来。
エンペラーの砲撃によって消滅する幾多の星々。
あれだけのことをした上で意思を持つ者たちは許さないだとあまりにも都合よすぎる。
拒絶するエックスに対し、ゲッターは自分の掌を見せる。そこにはいくつもの光が集まり、新たな銀河が生まれようとしていた。
『エックス、何も心配はいらない。全ては元の空間に戻っただけなのだよ。この銀河のように輪廻転生を繰り返し、生命の輪は広がっていく。』
「元の空間に戻る?」
言葉を理解できない中、体が急に重力にかかったように重く感じ始める。
『エックス、進化の時は近い。人類、レプリロイドが次のステージに上がる時が。』
その瞬間、エックスは形成された銀河の中へと落下していく。彼は、まだ話が終わっていないと手を伸ばすが届くことはなく、ゲッターは見下ろしたまま言葉をつづけた。
『忘れるな!進化の時を!!』
「わっ!?」
エックスは、声を上げて体を起こした。額に手を当てると冷や汗がかなり出ており、夢のせいなのか手が若干震えていた。
「目が覚めたか。」
目の前では焚火をしながら手頃な石に腰を掛けている隼人とVAVAの姿が見えた。上を見ると夜空が広がっており、夜だと言うことに気づいた。エックスは一呼吸して落ち着くと焚火の方へと行き、日の前に座る。
「ここは?」
「早乙女研究所の近くだ。っと言っても140年前のだがな。」
隼人が燃やそうとしていた新聞を手渡す。年代を見ると『19XX年〇月△日』と記載されていた。
「どうして、こんなことに・・・」
「シャインスパークとストナーサンシャインをぶつけ合っただろ。飽くまで仮説に過ぎんが二つのエネルギーがぶつかり合った衝撃で空間に歪みが生じて真ゲッターだけが呑み込まれたんだろう。そして、俺たちは過去に飛ばされた。」
「まあ、こうやって元の体に戻れたんだ。全員繋がれて一つになるなんざ悪趣味でしかねえ。」
二人と会話しているうちにエックスは、マーティがこの場にいないことに気づいた。
「マーティは?」
「お前よりも少し早く目が覚めた。今近くで嘔吐している。」
「嘔吐?まさか、ゲッターと同化した悪影響じゃ・・・」
「精神力が弱いとゲッターに取り込まれる危険性もあるがそうじゃなくても精神に影響が出ることもあり得る。まあ、意識ははっきりしていたからある程度すればよくなるだろう。よくならなかったら迎えが来た時に考える。」
「真ゲッターは?」
「後ろだ。」
背後を見るとそこには大木をいくつも押し倒して不時着した真ゲッターの悲惨な姿があった。手足は捥げ、翼も折れてとても動けそうになかった。
「これじゃあ、帰ることもできないな。」
「いや、アルバートとトーマス・ライト博士のことだ。今頃、俺たちの捜索に躍起になっているはずだ。時間が経てばここを嗅ぎつけるだろう。」
「そうか・・・」
「だが、真ゲッターがこの様じゃ敵に対抗できん。だから、今後のプランを考える。」
「お待たせ・・・・」
そこへ吐くものを吐き終わったマーティがトボトボ戻ってきた。彼女はエックスの傍に座るとぐったりとした様子でもたれかかった。
「大丈夫か?」
「えぇ・・・ちょっと気持ち悪いだけ。」
「よし、4人揃ったからここでの役割分担をする。」
隼人を中心に話し合いが始まる。
ゲッターは何を考えているのやら・・・。