後日。
地上に戻って来たワイリーの連絡で地上の各世界政府の代表たちは再び胃を痛める事態となっていた。
メカトピア政府との話し合いがひと段落着き、ようやく早乙女研究所に交渉を行おうとした矢先に新たな勢力『恐竜帝国』が登場し、会談を申し込んできたのだ。
変に刺激を与えて敵を増やすわけにも行けないと考えた彼らは、会談の申し込みを受け入れたものの会場にしたレプリフォース本部前に出現した巨大なマシーンランドに絶句。更に中から大量のメカザウルスを率いて現れたゴーラ率いる恐竜帝国士官たちを目の前に戦争する気満々に見えて内心悲鳴を上げていた。
会談はメカトピア政府も立ち会うことになり、インベーダーに対抗するための軍事同盟を組むと同時に度重なるイレギュラー戦争で荒廃した土地を明け渡すよう要求してきたことで会議室は緊張感に包まれていた。
「軍事同盟を結ぶことに関して賛成です。しかし、ゴーラ女王陛下。いきなり、地上の一部を明け渡せと言うのは一方的ではないかね?我々人類は、貴方がた恐竜帝国の存在をつい最近まで知らなかったのです。この条件では大衆から非難の声が出かねませんぞ。」
「それにしては復興作業はレプリロイドというロボットたちに丸投げして貴殿たち人類は月への移住を計画していると聞いているが?それならほぼ手付かず地上の一部を我が帝国の所有地として譲渡してもらっても問題ないのではないか?」
びくびくしながら聞く世界政府高官に対し、ゴーラはやや挑発的に答える。
実際、恐竜帝国はマグマ層や深海で潜伏している間にワイリーや地上へ送った諜報員を通じて地上の状況を把握していた。戦争を引き起こしているのはイレギュラーなのは事実だが、その要因を生み出しているのは兎にも角にも人類側に問題がある。
更にダイナモとシグマによって起こされた『ユーラシアコロニー落下未遂事件』以降の地上の荒廃ぶりは目にも余る酷さだった。
この調子で戦争を繰り返すようならそれこそ生物が生存できなくなるほどの環境になりかねない。
「別に私は、所有地にするとは言ったが人類側の受け入れを拒否するとは一言も言っていない。テラフォーミングによる環境回復で居住可能になれば制限はするが移住も認める。飽くまでハチュウ人類に適した環境で地下都市ほど快適とは言い難いがな。」
「う、うむ・・・・」
「150年前の祖父の代と比べればまだ寛容な方だと思うぞ?祖父ゴールは、先住生物として地上人類を自分たちの故郷を奪ったムシケラとしか見ていなかった。それこそ、皆殺しにしようとする程な。」
「確かに君たちからしてみれば我々はそう見えるのかもしれない。だが、その当時の人間を無差別に捕らえた上、人体実験など数々の非道を行ったと聞いているぞ!」
「無論、そのことに関しては心を痛めている。先代の父も私もその実験の末に生を得たようなものだからな。しかし、自分たちの役割をパートナーに押し付けた今の貴殿ら人類には言われたくないな。」
彼女は、出入り口で警備している一般ハンターたちの顔を見ながら言う。
「帝国は、祖父が帝王だった頃差別がひどい有様だった。危険分子として見ていた地竜一族はまだしも、捕らえた人間は実験用のモルモットぐらいにしか見ていなかった。それが先々代の大叔母、先代の父の政策の方針で改善されてかなりマシな方になった。それがなければハーフやクォーター、私自身もこの場に居なかっただろう。それに比べて貴殿ら人類はどうだ?同族嫌悪による争いは無くなったのかもしれない。だが、その反面自分たちと同じ感情を与えたレプリロイドへの対応はあまりにも理不尽と言ってもいい。例えば・・・・そうだな、数年前のレプリフォース大戦を挙げさせてもらおう。首謀者のジェネラルは、確かに世界に向けて独立宣言をした上で各地の破壊工作を行い事態を大きくした。」
「そ、それがどうしたというのかね?」
「彼らのイレギュラー認定は、貴殿ら政府とその傘下であるイレギュラーハンターと言うではないか。情報のみで直接会ったことはないがジェネラルは軍人としてはかなり温厚な人物だったと聞いている。原因の発端とされる『スカイラグーン落下事件』から独立宣言まで一日経たず、イレギュラー認定はそれよりも早かったとか。人間の死刑囚すら戦時を除いてこんなに超短期間で執行された例はない。組織全体がイレギュラー認定されれば、誤解を解くのはほぼ不可能。しかも組織の大半がタカ派だったせいもあって彼は引くにも引けなくなってしまった。認定する以前に本人に取り調べを行って調査すればそこまで追い詰めることもなかったはずだ。違うか?」
「「「・・・・・」」」
各政府の代表たちは、ペラペラと喋るゴーラを目の前に冷や汗を流した。
過去を蒸し返されたというより、何故彼女がここまで詳しいのか不思議に思った。大戦時のイレギュラーハンター総監は終結後に退任という形で極地へと左遷。レプリフォース側も生き残ったフクロウルを除いたタカ派は、不祥事などを理由に留置所送りになったため、情報が漏洩することはないはずだった。
その反応を見てゴーラは、ギザ歯を見せながら笑った。
「恐竜帝国は、地上侵攻はやめていたが諜報活動自体は続けていたのでな。トーマス・ライトやDr.ワイリーの時代の情報も詳しい。いいように抹消・紛失した貴殿らと違って。その気になればこの場にいる全員を今の役職から引きずり降ろすことも造作でないぞ?」
「きょ、きょ、脅迫するつもりか!?」
本性を現したとばかりに彼らは、彼女に強い恐怖を覚える。
「脅迫?違うな、これは交渉だ。このまま母なる大地である地上が荒れ果ててしまっても困る。データによるとこの200年の間、地上の環境は過去の例に見ない程に破壊が進行している。環境保護とか謳っていた時期もあったが改善の兆しはなし。口先だけのその場凌ぎもいいところだ。そんな地上人類にこの星を任せておけば100年後には草の根一本も生えない砂漠の惑星に変えかねない。」
「ぐ、ぐうむ・・・」
「貴殿ら人類が地上に君臨してもう長いこと好き勝手にやって来た。使えなくなって土地を放棄するぐらいなら改善できる存在に任せるべきではないのか?それともこの星が再起不能になるまで使い潰す気か?」
「・・・それは・・・その・・・今後の研究による改善を・・・」
「できれば、既にやっているだろう。それもこれも全てレプリロイドに任せっきりにしてふんぞり返っていたのが原因だ。そこに関しては動き始めているようだがこれを機に更に力を入れるようにすることだな。譲渡の件はこの事態を切り抜けた後に改めてさせてもらう。」
終始ゴーラにこれと言った反論を挙げることなく、会談は終了。一応、軍事同盟こそ結んだものの、地上の一部譲渡に関しては今回の一件解決後に本格的な話をすると言う方針でまとまることになった。
これに関して立ち会っていたメカトピア政府の総統は、肝が据わっていると感心すると同時に母星の環境を再生できる可能性があるテラフォーミング技術について興味を持ったことから後々改めて話をしたいと考えるのであった。
旧日本エリア 早乙女研究所
同じ頃、研究所では戻って来たワイリーがライト博士と共に通路を歩いていた。
「まさか、あれだけの国が急に動き出すとは。これがお前の狙いだったのか、ワイリー?」
「勘違いするな。ワシは飽くまでゼロの救出のために行ったんじゃ。まさか、バットがあんなことまでしてゴーラを動かさせるとは思わんかったわい。」
「敵対していた勢力同士が手を取り合って目の前の脅威に立ち向かおうとしている。昔のルーラーズ災害でもお前の行動が大きかったな。」
「今回はいいようにゲッター線に振り回されているだけじゃ!・・・・んで、アイツが起きたっていうのは本当なのか?」
あまりいい気がしない彼は、話題を切り替える。ライトは、頷きながら答えた。
「あぁ、2日前に目を覚ましてな。環境の変化に戸惑ってはいるが意識ははっきりとしている。今は、ハンターベースからロールに来てもらってロックと交替で面倒を見てもらっている。」
「それなら心配なさそうだな、意識が取り込まれたままじゃ話にならんし。」
個室に到着し、中に入ると丁度ロールが呆れた様子で目の前にいる男の面倒を見ていた。
男は、大きめの丼に入ったかつ丼をガツガツと勢いよく平らげていた。
「うんまい!おかわり!!」
「もう、6杯目よ!大盛りにしているのに一体どれだけ食べれば気が済むのよ!」
ロールは、思いっきり男の頭めがけて持っていたしゃもじを投げつけた。
「アイタッ!?いやぁ~何しろかつ丼食うのすんごい久しぶりなもんだから。」
「久しぶりでもこんなに食べる人間見たの初めてよ。こんなに食べたんじゃ、作る人大変だったんじゃないの?」
「いや、ミチルさんは料理するのが好きだったから喜んで作ってくれてたぜ。『弁慶君もよくたべるのね。武蔵君の思い出すわ。』って。先輩には会ったことないんだけど。」
弁慶は、頭を摩りながら言う。
どこかで見た覚えのある風景だと感じながらもワイリーは、彼の前にやってくる。
「目が覚めたか、弁慶。150年ぶりだな。」
「あっ。お前・・・・もしかして本当にワイリー?頭が後退している以外あんまり変わってないな。眼鏡やめたぐらいか?」
「誰がハゲじゃ!無茶してドラゴンに取り込まれたお前に言われたくないわ!!」
「アイタッ!?やっぱり本物だ~!」
どこからともなく取り出したハリセンで叩かれて弁慶は、ひいひいと悲鳴を上げる。
少しして落ち着くロールとライトは退室し、彼らは二人だけになった。
「・・・さて、ライトからも少し聞いただろうがどこまで聞いた?」
「あぁ、俺たちが生きていた時代から100年以上経っているって話だろ?」
「ドラゴンに乗ってからの記憶は覚えているか?」
「いや・・・正直言っちまうとかなり曖昧だよ。博士とお前が必死に何か叫んでいたのは聞こえていたけどその先はあんまり・・・」
弁慶は、戸惑いながらも自らの体験を振り返る。
あの運命の日、ドラゴンに搭乗した彼は不完全なゲッタービームを連射したことによりメルトダウンに巻き込まれた。乗っていた彼自身も尋常でないレベルの高温に曝されて皮膚は溶け、体の自由が利かない状態だったと言う。しかし、それに反して痛みというものは全くなく、むしろ意識が何かに吸い寄せられ、一つに溶け込むかのような感触で心地良かったらしい。
その発言に対してワイリーは、断末魔に『新しい世界が見えた』と言ったことについて問うがこれに関してはゲッター線の影響を受けて発言していたのか覚えていなかった。
「そんで眠っている間の記憶は説明できないと・・・・まあ、お前は体育系でこういうのに関しては口下手だからな。」
「わりぃ。」
「だが、心配するな。お前が眠っている間、科学はかなり発展しているから記憶を覗き込むなんぞ朝飯前じゃ。」
そう言うと彼は、ポケットに手を突っ込んで今では非常に珍しいレーザーディスクことLDらしきものを取り出す。
「ちょ、ちょっ!?まさか、それで俺の頭を切り開いて脳みそから記憶を取り出すって言うのかよ!?」
「そんな野蛮なことせんわ!こいつは『メモリーディスク』という記憶を取り出して映写機で見る道具じゃ。お前が言葉で言い表せないならコイツで記憶の曖昧な部分を抽出して見れば良いと言うことよ。」
ワイリーは、早速とばかりにディスクを弁慶の頭の上に向かって投げる。ディスクは弁慶の上でしばらく浮遊すると吸い出し終わったのか彼の元へと戻って行く。
「どうじゃ、別に痛くもなかったろう?」
「あ、あぁ。でも、なんか抜き取られたような気がする・・・」
「曖昧な記憶を抜き取ったからな。後はコイツを映写機で見れば答えがわかる。」
戻って来たディスクを映写機に入れて映像を再生させようとするとどこからともなく敷島博士が部屋に入って来た。
「さあ、弁慶。お前の頭の記憶を見るために素晴らしい新兵器を・・・・ん?なんじゃ、もうアルバートの奴が始めてしまいおったか。つまらん、ふん!」
残念そうに言いながらも彼は、映写機の再生映像を見ようと居座る。ワイリーは、途中で何かしでかさないか不安に感じながらも共に弁慶の記憶の正体を観始めた。
19XX年
真ゲッターの介入によって恐竜帝国の襲撃を退けることに成功したエックスたちは、お互いの安否を確認している傍ら離れた場所で対峙している竜馬と隼人を見守っていた。
竜馬にとって10数年ぶり、隼人にとっては約150年ぶりの再会だったが両者の表情は、険しかった。
「隼人、何故ゲッターを動かした?コイツがどれだけ俺たちの人生を狂わせたのか覚えているだろう?」
竜馬は、真ゲッターに指を差しながら言う。
自分たちを巡り合わせ、共に戦ってきたのは紛れもない事実だが同時に後戻りできない立場にまで追いやった存在でもある。
実際、研究所壊滅の際も自分たちが時間を稼がなければ地球は消滅していた。だが、博士を始めとするミチルや元気と言った家族同然の人たちを全て取り込んで消してしまった。
夢と未来で見た宇宙を侵略するゲッターエンペラー。
ゲッターの恐るべき行き先を見た彼は事件を機に実家に戻り、今日まで空手の師範として生活していた。
知り合いもできるだけ作らないようにし、家族にも話さず墓場まで持っていくつもりでいた。
そんな竜馬に対し、隼人は少し申し訳なさそうな顔をしながらも答えた。
「・・・正直、すまないと思っている。取り残された俺はともかく、家族を儲けていたお前をできれば巻き込みたくなかった。だが・・・時期が来てしまった。」
「時期?何の時期だ?向こうで伸びている娘からお前が未来から来たって話は聞いた。ゲッターと繋がりが強い俺がいなくなったはずの未来ではこの世の最期が近いって言いてえのか?」
「この世の最期・・・確かにそうかもしれんな。」
両者の間にしばしの沈黙が訪れる。
すると竜馬は、いきなり隼人の顔を殴った。
「すまねえだと?もう、十分巻き込まれたぜ!それに隼人、お前に人類をどうこうする権利はねえ!!」
彼は更に殴りつける。
エックスは、まずいと止めにかかろうとするがVAVAに制される。
「VAVA!」
「死にたくねえなら嫁の傍にでもいろ。今、あの二人の間に入ったら・・・・潰されるぞ。」
彼の言う通りで殴られた隼人は、後ろに少し下がったものの別に怒る様子はなく寧ろ笑っていた。
「・・・竜馬、随分優しくなったな。家庭を持つようになってから少し丸くなったか?」
そう言うと彼は、手刀で反撃する。
竜馬は過去の体験で反射的に避けるが一瞬隙が生まれ、うまいこと腹部に蹴りを入れられてしまい、思わず『うっ』と声を漏らす。
「ふざけんじゃねえ、張り合える相手がいないせいで感が少し鈍っただけだ!」
彼は、お返しとばかりに蹴りを入れる。
エスカレートしていく二人の喧嘩にエックスたちは、どうすればいいのかと困り果てる。
「・・・・これ、どうやって止めればいいんだ?このままだとどっちかが」
「親父、なんかすんごい楽しんでる。」
「えっ?」
「だって、親父が人を本気で殴るときあんな顔しないもん。」
「勘がいいな、ガキ。アイツら・・・この状況で楽しんでいやがる。」
拓馬の言葉にVAVAは、面白くなさそうに言う。
実際、竜馬も隼人も口ではああ言ったものの本気で殺し合いをしているわけではない。
ゲッターパイロット同士にしか分からない一種のコミュニケーションとでもいうべきか、長い間会うことのなかった戦友に対しての挨拶と言うべきなのか二人にしか分からないことなのだ。
実際、エックス以外のメンバーはまた始まったとばかりに特に心配している様子は見せず、壊された道場をどうするか山を一旦下りるべきかどうかを話し合っていた。
しばらく終わる様子がないことから彼も止めるのを諦め、寝ているマーティの傍に居ることに決めた。
彼女の傍に行くと額から汗を掻いて苦しそうな顔をしていた。
「・・・早く終わればいいけど・・・・あっ」
手を握ろうとすると手にスペアポケットが握られていることに気づく。おそらく道場から脱出する際に使おうとしたが直前で気を失ってしまったのだろう。
(そうか、気を失う直前までやれることをやろうとしていたのか。自分のことより俺たちのことを心配して。・・・・ごめんね、マーティ。何もしてあげられなくて。)
エックスは、マーティを抱きかかえると少しでも涼しそうな所へと移動して介抱する。
一方、上空ではバジリスク将軍率いる恐竜帝国要塞が様子を窺っていた。
「・・・・さ、最悪の事態だ。よりによって真ゲッターだけではなく、流竜馬と神隼人が合流してしまうとは。」
彼は、歯軋りしながら目の前の結果に怯える。部下たちはもう自分たちに勝ち目はないと撤退を薦めたかったが先ほどの粛清の件もあって言えずにいた。
「しょ、将軍・・・・いかがいたしましょう?」
このままここに滞在するわけにはいかないと思い、一人が思い切って口を開く。
「あっ、あぁ・・・え、えぇっと・・・・・」
「作戦を練り直しますか?」
「・・・今頃、バット前将軍が異変を感づいて調べまわっているはずだ。帝国には戻れん。」
「では、どうしろと?」
「・・・・アレを出す。」
バジリスクの決断に全員がその場で身震いする。
「あ、アレを・・・・ですか?」
「そうだ。」
「し、しかし、あれは性能が未知数で最悪我々にも被害が!」
「あの化け物を相手にするなら化け物をぶつけるしか方法がなかろう!!それともここでおめおめ帝国に返って牢にぶち込まれた方がいいか!?」
「うっ・・・・」
「操縦は俺がする。お前たちはこのまま待機していればいい。なあに、いくらゲッターといえどアレには勝てん。アレにはな。残りのメカザウルスもオートで出撃させろ!」
彼は席から立ち、ブリッジを後にした。上官に撃ち殺されるという恐怖から解放されたものの、あんな危険なものだして大丈夫なのかと兵士たちは顔を合わせる。
「大丈夫なのか?」
「さあ、将軍が出るんだから知ったこっちゃねえよ。」
「いっそのこと独房にぶち込まれた方が幸せかも。」
彼らが心配しているのを他所にバジリスクは、格納庫へと向かい一体のメカザウルスと思われる機体の右目のコックピットに搭乗する。
「ゲッターロボ・・・・やはり、貴様は消えるべき存在だ。神隼人が生きていることが分かった以上、奴らの拠点であった早乙女研究所もおそらく復興することになる。そうなる前に・・・・このメカザウルス・ジャギオーで始末させてもらう!!俺の栄光のためにもな。」
殴り合いが続く中、流石にこれ以上時間をかけるのはまずいと考えたエックスは、とりあえず一旦早乙女研究所に行かないかと提案しようと立ち上がる。
(これ以上待てば、また奴らが仕掛けてくるかもしれない。その前にせめて籠城で防戦できる場所に移った方がいいって言わないと・・・・!)
その直後、上空の雲から複数の影が見えていることに気づく。
センサーを切り替えるとメカザウルスたちがこちらに向かっていた。
「奴ら、もう次の攻撃をっ!?」
竜馬たちも敵の再来を察知し、喧嘩を中断する。
「ちっ、奴ら懲りもしねえでまた攻めてきやがった。」
真ゲッターのコックピットが開き、隼人は全員乗るように言おうとする。
「待て、隼人。お前、拓馬とりょうまで乗せる気か?」
「なら、このままここに残して踏み殺されるのを見ているか?」
「・・・・」
竜馬が黙っている間にも敵は接近しつつある。マーティを抱えたエックスは、ハッとスペアポケットのことを思い出し、イチかバチかどこでもドアを出す。
「世界は違えど、ある程度の誤差なら許容範囲のはず。えっと・・・浅間山の早乙女研究所前!」
行き先を言い、ドアノブを回して開けるとその先には荒廃した早乙女研究所の前だった。
かつてどこでもドアは、内蔵されている地図や時代以外の場所へはいけないとドラえもんが発言していたのだがエックスの世界との交流以降アップデートが行われてマップが追加されていたようだ。
エックスは、早速拓馬たちに呼びかける。
「皆さん、ここから早く避難してください!」
一行は、どこでもドアの先を見て驚いたが狭いであろう真ゲッターの中にいるよりはマシと考えて通り抜けて行った。
「VAVA、悪いけどマーティを連れて研究所へ行ってくれ。」
「ハア?なんで俺がてめえの嫁のお守をしなくちゃなんねえんだ?」
また、真ゲッターに乗り込もうと思っていたのかVAVAは、不機嫌そうに答える。
「研究所の中はお前の方が詳しい。万が一敵が襲ってきてもうまく誘導してくれるはずだ。スペアポケットを預けておく。・・・・頼む。」
「ケッ、この間みたいに取り込まれるんじゃねえぞ。」
そう言うと彼はスペアポケットとマーティを受け取り、ドアの先を通り抜けた。ドアが閉じて消滅するとエックスは、遅れる形で真ゲッターに乗り込む。
「エックス、お前は3号機に乗り込め!操縦方法は1号機とほぼ同じだ。」
コックピットに乗り込むと急いで最適化を開始する。一号機に乗り込んだ竜馬は、複雑な心境で操縦桿を握った。
「少し錆びついているが中は昔と同じだな。何もかもあの時のままだ。」
「竜馬、昔の真ゲッターと一緒だと思うな。こいつはあの時とは比べ物にならないぐらい暴れ馬になっているぞ。」
メカザウルス軍団の姿が明確になるほどの距離に詰められる。
真ゲッターは、目を光らせると同時に浮遊し始めるがどういう訳か下半身が上になって飛び始めてしまった。
「りょ、竜馬さん!?一体どうしたんですか!?」
「うるせえ、こちとら10年以上操縦してねえんだ。昔のカンが戻るまでちょっと時間をくれ。」
「急げ!敵は待ってくれないぞ!!」
竜馬たちがまだ態勢を整えていないことをいいことにメカザウルス軍団のうちの一体シグが口から溶岩光線で攻撃を開始する。
「うおっ!?」
態勢を変えて回避すると真ゲッターは、向かってくるシグに向かってゲッタービームを放とうとする。
「待て、竜馬!昔の感覚でゲッタービームを撃つな!」
隼人が止める前に腹部の発射口からビームが発射される。
シグは、腕の翼を広げて回避するが後方にいたゴラが巻き込まれる形で吹き飛ばされ、その先にあった山ごと消滅させた。
予想以上のビームの威力に竜馬は、驚愕する。
「最大でもないのにこの威力かよ・・・」
「下手にビームを使うな!そんなことをすればここら一帯が更地になる。」
「なら、接近戦で殺れってか。」
肩からトマホークを展開し、真ゲッターは飛び掛かって来た蝙蝠型のメカザウルス・バグを一刀両断。背後から斬りかかろうとしたメカザウルス・ガイを返り討ちにして撃破した。
「ふう、お前の言う通りだな隼人。コイツ・・・10年以上おねんねしていたにもかかわらず相当強くなっていやがる。」
上空から襲い掛かってくるメカザウルス・ドドの攻撃を受け止めながら竜馬は、苦笑する。
あの時もフルパワーで戦ったことは一度しかなかったがこれほどではなかったし、ノーメンテナンスでこれだけの強さだ。
真ゲッターがそれだけ異質な存在だと再認識した一方、三号機に乗っているエックスにも声をかけた。
「エックス、死んじゃねえだろうな?」
「死んではいないけど、吐きそう・・・・」
「奴さんに心配は無用だ。未来ではお前の代わりに一号機を操縦していたからな。これくらいでへばったりはしない。」
ドドも腕のゲッターカッターで切断し、シグをトマホークブーメランで倒すと敵が全滅したのか周囲が静まり返った。
「・・・全員、殺ったか?」
「いや、さっき地上に降りた時奴らは6体いた。そのうちの5体は仕留めたが残りの一体の姿が見当たらない。それによく見ろ、その前に倒した奴らの残骸の数が減っている。何かやばそうなものが・・・」
隼人が言い切る前に地中からメカザウルスが飛び出して噛みつこうとする。今までのタイプとは違い、地球外生命体を彷彿とさせる機械的で鋭利な恐竜とは全く似つかないグロデスクな姿だった。
『グルルシャアア!!』
「ちっ、噂をすれば出てきやがったか!」
竜馬は、喰いつかれる前にトマホークを振り下ろしてメカザウルスを真っ二つにした。メカザウルスは、力なくその場に倒れるがその後、切断面から触手が伸び引き寄せる形で再合体した。
「こいつ、まさか・・・・」
エックスは、もしやこのメカザウルスはインベーダーと同化しているのではないかと考えるが隼人に即否定される。
「いや、同化しているなら本体が見え隠れしているはずだ。それにここは過去だ。奴らはまだ地球に来ていない。」
メカザウルスは、触手を伸ばすと周囲に散らばる他のメカザウルスたちの残骸を搔き集め、吸収し始める。
「どうやらさっきまでの戦闘はコイツの食事の時間稼ぐだったようだな。」
隼人の言う通りでメカザウルスの体は、真ゲッターより一回り大きい巨体へと成長した。
『ゲヘッヘッヘッ、その通り。貴様らが倒したメカザウルスはすべてこのジャギオーを成長させるための時間稼ぎに過ぎんのだ。』
「てめえが親玉か!」
『俺は恐竜帝国の将軍、バジリスク!流竜馬、神隼人、貴様ら二人をゲッター諸共消し去ってくれるわ!!』
「生意気言ってんじゃねえ、トカゲ野郎!仲間を殺した上に家の道場ぶっ壊しやがって!!弁償しやがれ!!」
真ゲッターは、トマホークを大鎌に変形させてジャギオーに斬りかかる。ジャギオーは両腕から大剣を生やして攻撃を受け止めた。
「何ッ!?」
『グハハハッ!ジャギオーは、吸収したものを自分のものとして再現することができる。それだけじゃない、コイツはゲッター線をも吸収するよう開発が進められた特殊個体なのだ!!』
ジャギオーの体が開き、無数の触手が真ゲッターを捕らえる。竜馬は、再びトマホークの形状を戻して対応するが触手は、手足を拘束してエネルギーの放流が発生する。
「ウッ、真ゲッターのエネルギーを吸収する気か!?馬鹿な、そんなことをすれば先に限界を迎えて自爆するぞ!」
隼人の言う通りでエネルギーを吸収し始めたジャキオーは、体が膨張すると同時に赤く発光、一部が溶解していく。
無論、乗り込んでいるバジリスクもかなり苦しそうだった。
『グウゥ・・・確かにこれだけのエネルギーを取り込もうとすれば俺どころかジャギオーも耐え切れまい・・・・だが、いくらゲッターと言えどこの近距離の爆発を受けて耐えきれるかな?』
数々の失敗で彼は、もう助かろうとは思っていなかった。帝国に生きて戻ったとしても計画がバレ、ジャテーゴから最悪死刑を言い渡されることだろう。ならば、せめてゲッターを道連れにして汚名返上しようと決めた。
「クソ!隼人、悪いけどゲッタービーム解禁だ。」
竜馬は、溜まったものではないとビームの発射ボタンを押す。
「ゲッタービームッ!!」
腹部の発射口から放たれたゲッタービームは、ジャギオーに命中するが体を貫通させることはなく、更に巨大化し
て、体内に取り込まれてしまった。
「野郎、本気で俺たちを道連れにするつもりだ!」
「そうだ!ストナーサンシャインは!?ストナーサンシャインなら・・・」
エックスは、この時代に来る要因となったストナーサンシャインの存在を思い出す。あの威力なら脱出することは可能なはずだ。
しかし、竜馬は腕を動かそうにも触手が離れなかった。
「ダメだ!この状態じゃ撃てない!」
「敵さんの執念の方が俺たちの想像を上回ったってわけか。どうやら、向こうに戻れそうにないな・・・・」
隼人は、ここまでとばかりに苦笑する。竜馬は、メカザウルスの体内の温度が徐々に上がっていることを感じながら研究所を去った後の十数年を振り返る。
実家の道場に戻ってから彼は、こともあろうことか酒に溺れていた。
できた借金を理由に訪問して来たヤクザを返り討ちにし、どこからともなく訪れた道場破りを追い返したりと少しでもあの恐るべき未来を忘れようと努めていた。
それがいつの間にか弟子入りを頼み込む輩や噂を聞いて空手を教えてほしいと言う門下生たちがやってくるようになり、終いには押しかけ女房まで現れて家族を儲けるまでになってしまった。
妻のりょうに関しては何度も追い出そうとしたが知らぬ間に子供ができ、拓馬が生まれた頃には流石に観念して正式に籍を入れることを許した。拓馬自身は、指導している自分の姿を見て空手の稽古をつけてほしいと志願するようになり、不器用ながらも手ほどきをするようになった。
酒はやめられなかったものの、竜馬は今の生活がかつて早乙女研究所で仲間たちと生活していた頃の光景と重ねるようになった。
分け隔てなく接し、一日一日が生きていると実感できる充実した日々。
それ故にそんな日常が壊れてしまうのではないかと内心秘かに恐れていた。
自分は、血を流し過ぎた。そのツケがいずれ返ってくるのではないかと。
そして、今目の前でかつて滅ぼした恐竜帝国の手によって殺されようとしている。
(何考えてんだろうな、俺は。今にも道連れにされちまうって言うのに家族のことを考えちまうなんてよぉ・・・我ながら呆気ない最期だな。)
潔く最期の時を待とうと操縦桿を手放そうとした瞬間、彼の脳裏に声が響く。
『竜馬君、諦めちゃだめよ。』
「!?」
聞き覚えのある声に竜馬は、かっと目を見開く。もう長いこと聞いていなかったがかつて聞いた女性の声だ。
「・・・・ミチルさん?」
『落ち着いて、三つの心を一つにして力を引き出すの。』
「三つの心を・・・・」
『竜馬、ゲッターを信じるんだ!そうすりゃ、敵わねえ敵なんていねえ!!』
『感情を込めてパワーを上げろ!お前ならできる!』
(武蔵、弁慶!)
仲間たちの声に激励を受けて彼は、無意識に操縦桿を握り直した。そして、深呼吸をすると目を閉じて感覚を研ぎ澄まし始める。
「どうした、竜馬。急に静かになって。」
「・・・隼人、目を瞑って一旦力を抜け。コイツは・・・真ゲッターの限界はこんなものじゃない。」
「竜馬?」
「エックス、お前もこんなところでくたばるのは本望じゃないだろう。精神を研ぎ澄ませて感情を高めろ。」
「は、はい!」
一旦心を無にし、三人同時に精神を統一させる。その後、感情を上げていくにつれて真ゲッターの全身が発光し始め、やがて膨大なエネルギー体へと変化していく。
操縦席も光に満たされ、何も見えなくなる。
視界が完全に奪われたことにエックスは不安を漏らす。
「何も見えない。操縦席どころか計器も。」
「・・・・計器は必要ない。もう、見えるものは見えている!」
竜馬が目を開くのに合わせて真ゲッターの目が光り、ジャギオーが吸収していたエネルギーを逆流させ、更にオーラを発生させて衝撃波として開放する。
取り込んだジャギオーは苦しむ間もなく一瞬にして爆散。搭乗者であるバジリスク自身も状況を理解せぬまま蒸発していった。
しかし、真ゲッターの放った衝撃波は想像以上に強く、山一つどころか数キロ離れた集落をも呑み込んで地表を大きく抉り取ってしまった。
エネルギーを開放した瞬間、エックスはその光景を目にしてしまう。同時に竜馬もまた脳裏に膨大なビジョンを見た。
全てが終わった頃には、そこには数十キロにも渡るクレーター。その上を滞空している真ゲッターのみが残されていた。
「・・・・進化の始めで・・・・これだけの力を・・・・何が『元の空間に戻るだけ』だ。これじゃあ・・・・ただの殺戮者じゃないか。」
エックスが小声でブツブツ独り言を言っているのを他所に竜馬は、操縦桿を握りしめながら何か悟ってしまったかのような表情を浮かべていた。
「・・・・これがお前の答えか、ゲッター。俺がいくら拒もうとお前は決して諦めようとしない。代わりの誰かを探して結局その先へと向かわせる・・・・チッ!」
真ゲッターは、VAVAたちが避難した早乙女研究所の方へと飛び去って行く。
数時間後。
山の方で大きな爆発のようなものを見たという通報を受けた国際航空宇宙技術公団『NISAR』は、まだ修理が完了していないゲッターロボを無理に出動させて調査を開始するがクレーター以外何の痕跡も残っていないことから難航。結局、メタルビースト残党が山中で誤って起爆したという風に片付けられた。
ただ、本部でその様子を見ていた橘博士は、不安そうな表情を浮かべていたと言う。
ロックマンXDiVEオフライン・・・・switch版も出してほしい。