今回は短めです。
???
『聞こえていますか?』
また、この夢だ。
どこかで見たような天井。
首を動かすとその先には、医者と思われる人間の男性がベッドで寝かされているであろう俺に声をかけている。目を開けているのを確認すると彼は言葉を続けた。
『聞こえてますね?声がうまく出せませんか?首は動かせますか?・・・聞こえていたら頷いてみてください。』
体が思うように動けない中、俺は何とか意思疎通しようと試みる。
医師には伝わったようで俺の顔を改めて診ると真剣な表情で口を開く。
『貴方の名前は?生年月日は覚えていますか?』
何も思い出せない。
記憶を呼び起こそうと考えると掻き消すかのように頭に痛みが走る。
『あぁ、落ち着いてください。焦ることはありません。貴方に大事なお話があります。いいですね?どうか、落ち着いて聞いてください。貴方は、奴らの襲撃で瀕死の重傷を負ってここに搬送されました。複雑骨折、臓器の大多数が内部出血に重度の火傷、特に脳の半分以上が致命的なダメージを受けて手の施しようのない有様でした。』
医師は、目の前に俺のものと思われるレントゲン写真を見せる。体のあちこちが欠損しているのが確認でき、頭部の損傷もひどいのが分かった。
この写真が俺の体のものだとしたら今の俺はどうなっているんだ?
『しかし、一つだけ助かる可能性がありました。全身のサイボーグ手術です。部分的なものしか実例がありませんでしたが今回は、貴方の祖父である×博士の素体の提供もあってなんとか成功にこじつけることができました。そして、貴方の体は・・・・申し上げにくいのですが脳を含めてほぼ全てが機械で構成され、ロボットへと変わったと言っても変わりません。』
その言葉に不安を感じる。
『残念ながら時間があまりありません。遅かれ早かれ、いつかは受け入れないと。実際に自分の腕を・・・貴方自身の体を見てみてください。勇気を持って。』
俺は、恐る恐る体を動かして右手を見てみる。その腕は良く知っている自分の腕ではなく機械で構成された義手だった。それだけならまだしも被されているシーツを捲ると体の至る部位が金属装甲で覆われ、僅かに浮かんだ自分の体とはかけ離れたものへと変えられていた。
これが俺?俺なのか?
違う、俺じゃない。
俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない俺じゃない
『落ち着いて、落ち着いて!落ち着いてください!』
動揺して暴れる俺を医師は、看護婦と共に取り押さえながら必死になだめようとする。
何故動揺しているのかわからない。
機械である自分の体には見慣れているはずなのに。
『落ち着いて、落ち着きましょう。大丈夫、大丈夫です!大丈夫・・・・・落ち着いて』
何か打たれたのか意識が遠のいていく。
同時に何か思い出さなければならないことがあるような気がした。
でも、何を?
分からない。
俺は・・・・俺は誰だったんだ?
21XX年 ハンターベース メディカルルーム
「ハッ!?」
ネロは、目を見開くと体を起こす。どうやらベッドで寝かされているようで鉄人兵団の設備ではないことは明白だった。
「・・・・・確か俺は、『Z』に乗ってビアンコと・・・・!奴はどこへ!?」
状況を把握するためにベッドから動こうとするが数日意識不明であったことも影響してぐったりとよろけてしまった。
「グッ・・・・体が言うことを聞かない。あれからどのくらい時間が経っているんだ。」
何とか立ち上がろうとするものの力が入らず、そのままベッドに腰を下ろす形で倒れ込んだ。
そこへゲイトが部屋に戻って来た。
「うん?目が覚めたのかい。随分意識が戻らなかったからどうしようかと考えていたけど。」
「き、貴様・・・・」
ネロが飛び掛かろうとするものの彼は、特に気にすることなく受け止めてベッドへと戻した。
「悪いけど、僕は敵じゃない。」
「お、俺の体に何をした?」
「別に何もしちゃいないさ。ただ、暴れられても困るからね。念のため、行動制御プログラムに制限をかけさせてもらっただけだよ。」
「お前・・・メカトピア所属の者じゃないな?」
「あぁ、僕は君たちの言う地球側のロボットだよ。けど、状況が状況でね。先日、君たちのリーダーである総統がこちらと同盟を結んだ。」
「同盟?閣下自身の意思でか?」
衝撃の事実に思わず、ネロは動揺しながらも聞く。
「ある第三勢力の後押しもあってね。僕たちは共通の脅威に向き合わなくてはならなくなったんだ。現にこのハンターベースには君以外の兵団の兵士たちの治療もあって現場が悲鳴を上げている。」
「・・・・」
「はい、制限解除したよ。僕もまだ仕事があるんでね、悪いけど君たちのグループの方へ戻ってくれないかい?この端末に施設内のMAPを入れてあるから。」
ゲイトから端末を受け取ると彼は、追い出される形でメディカルルームから出て行った。
「・・・先に閣下から現状を確認するか。」
ハンターベースの会議室では、総統が地球から秘かに撤収したDr.ビアンコ一味の動きをシミュレーションしてシグナスたちと計画を打ち合わせていた。
「これは、この星系に配備した衛星からの映像だ。ワープ移動を繰り返しているが我々の動きを警戒しているのか、各地に配置した小基地には目もくれていない。このポイントからいくつかの推定航路を割り出したがやはり、メカトピアに引き返すコースに当たる。」
彼は、自分たちが提供した宇宙地図を見せながら説明する。
そこへワイリーが割って入り、別の情報を見せる。
「そして、こっちが姿を消したドラゴンの推定移動航路じゃ。まだ、確信とまではいかんが恐らく奴らの後を追っているとも読めなくはない。進行速度は連中と比べてかなり遅いがゲッター線を吸収しながら進化を進めようとしているのなら納得の速度じゃ。メカトピアの衛星カメラで姿を捉えたが地球圏を離脱したときと比べて体に外殻のようなものを形成し始めている。多分、到着までに進化しようとしてるんじゃろうな。そうだろ、武蔵?」
目を細めながら席に座っている武蔵を睨みつけると当の本人は特に躊躇する様子なく答えた。
「その通りだ。現にこの世界のゲッタードラゴンは本来の時期と比べて著しいほど進化が遅れてしまっていた。宇宙へ移動したのも不足分のゲッター線を補うためで我々の計算でもドラゴンがメカトピア星に向かう確率は99.998%。間違いなく、あの星にゲッターに仇を成す存在が生まれようとしている。」
「フン、あんなもの見せられちゃ進化させないに決まっておるじゃろうがい。よりのよってゼロを取り込みおってからに。ほんでメカトピア星に到着したらゲッター線で汚染して一気にエンペラーまで成長とか悪い冗談を言うつもりじゃあるまいな?」
「そこまでの結論は、まだ分からない。だが、進化しなければ太刀打ちできない相手が向こうで待ち構えているのは間違いないだろう。奴らもドラゴンが後を追っていることは、予定の範囲内のはず。何らかの手を打ってきてもおかしくはない。我々も一刻も早く行動しなければならない。」
武蔵は、席を立つと立体宇宙図へと映像を切り替え、一同の前に来る。
「まず、早乙女研究所の地下で建造が進められている宇宙戦艦が完成し次第、これに我が艦隊のワープ装置を搭載する。マニュアルに関しては既に向こうに回しておいたから動かすのに問題はないだろう。そして、そのままメカトピア星まで急行・・・っと言いたいところだが奴らもそれなりの準備をして待ち伏せしている上に状況次第では戦力を無駄に消耗しかねない。」
「惑星一つ簡単に壊滅させられる貴様ららしからぬ発言じゃな。」
「それだけインベーダーが我々ゲッターへ抵抗する力を持っていると言うことだ。実際、エンペラーの記憶の中では今だに奴らと戦い続けている記憶すら存在する。この場にいる君たちを早々失う事態は避けたい。」
そこで彼が導き出した答えは、メカトピアの植民惑星を経由しての移動だった。
メカトピアは、母星を中心に他の星系にいくつかの植民惑星を持っている。ビアンコの裏切りに関しては既に連絡しているため、地球から発進した後は、物資の補給と同時に合流して奪還作戦に向かうと言うことだ。
ゲッター艦隊のみならこんな回りくどいことをする必要ないが今回の敵であるインベーダーの性質、更に自分たちの過剰な介入によってこの世界のバランスを崩壊させてしまう危険性も考慮してこの形にまとまった。
「戦闘に関してはゲッター艦隊が可能な限りサポートする。だが、Dr.ビアンコの討伐、ドラゴンのことに対しては諸君らでやってもらう必要がある。竜馬たち三人が揃った上、器であるゲッターの調整も間もなく完了だ。そちらの方はどうかな?恐竜帝国の方々。」
武蔵は、珍しくいつもの『トカゲ共』と侮辱するような呼び方ではなく礼儀を弁えてゴーラたちに話を振る。
「話ではイレギュラーハンターをメインにメカトピアへ向かい、我が帝国は地球の防衛がメインだったからな。ゲッターザウルスを始めとする数千の決戦用メカザウルスの開発・調整を各マシーンランドで行っている。そちらの準備が整う頃にはすべてロールアウトする予定だ。また、搭乗予定のキャプテン並びに整備スタッフの招集も済ませてある。」
「別に整備士なら我々の方で十分だと思うがな。」
「其方ら、ゲッターの遣いを完全に信用しているわけではない。わざと整備不良で捨て駒にされたら溜まったものではないのでな。総責任者としてガレリィが志願してくれた。頼むぞ。」
「御意。」
彼女の横でガレリィは、武蔵を警戒しながら返事をする。
「フッ、まあそれならそれで構わん。では、続いてメカトピア側の合流予定の兵団の戦力についてだが・・・・ん?」
話を兵団側へと切り替えようとしたとき、ネロが入口から入って来た。
大事な話の最中の彼の訪問に総統の隣に座っていた副官は思わず声を荒げる。
「ネ、ネロ!?貴様、重要な会議の中ノックもなしに入って来るとは何事だ!!」
「俺は、別に気にしてないぞ?」
「私も構わぬぞ。シグナス総監、其方は?」
「私も同じです。」
他の面子が意外に落ち着いているのにずっこける彼を他所に総統は、席を立って彼の方を見る。
「ネロ、具合はもういいのか?」
「は、はい、閣下。突然の入室失礼しました。しかし、同盟を結んだというのは誠なのですか?」
ネロは、彼に問いかけながらも部屋にいるシグナスたちに警戒する。
「本当の事だ。ビアンコがコーウェン、スティンガーと共に我々に反旗を翻し、チキュウへ来た多くの同志がやられてしまった。我々は共通の敵である『インベーダー』へ立ち向かうために手を取り合うことを決めたのだ。」
総統の答えに彼は、しばらく黙り込む。
「・・・問題はないのでしょうか?閣下が受け入れたとしても兵士や母星の民が・・・・」
「植民地の星には、既に今の事態を伝え共闘する準備を整えている。また、ここにいる兵士たちも母星を奪われたという事実から不満を持つ者もいるが共闘することを決めた。」
「そうですか・・・」
「目を覚まして万全とは言えないのは分かるがお前も準備を進めておいてほしい。『Z』の方も運用の仕方を考えなければいかんのでな。」
「『Z』の運用が?」
「詳しくは格納庫で待機しているナンバーマンたちに聞いてくれ。自身の目で見た方がいいからな。」
ハンターベース 格納庫
ライト博士と別れたエックスは、転送装置を利用して早乙女研究所からハンターベースへと戻って来ていた。研究所の方では落ち着かないので久しぶりにハンターベースで休もうと思ったのだ。ここに来るまでの間、一般ハンターが鉄人兵団の兵士たちと話している姿を見て軍事同盟を組んだのは事実だと知った一方で自分の世界では成しえなかった共存の可能性が僅かながら芽生えたことにほんの少しだけ安堵した。
目の前ではネオゲッターロボが変わり果てた姿でクレーンでぶら下げられている。
ギルギルガンとドラゴンとの戦闘の際に見てはいたものの、回収されて実際に近くで見るとよく原形を保てたものだと感じるほど痛々しい状態となっていた。
ゲッタードラゴンに抉られたコックピットを見てエックスは、ゼロとアイリスが取り込まれたという現実を突きつけられ、夢で見た未来のビジョンが現実になりつつあると受け入れざるを得なかった。
「おっ、エックス。戻ってきていたのか。」
ゲッター號の整備を終えたダグラスは、久しくあった彼に声をかける。
「ダグラス・・・」
「久しぶりだな、向こうの研究所にいたんじゃなかったのか?」
「向こうは落ち着かなくて・・・・」
エックスはそう言うとネオゲッターの方を改めて見る。ダグラスは、自分の乗っていた機体の状態にショックを受けていたと感じ、言いづらそうな顔をしながらも話す。
「ネオゲッターなんだけどな・・・・・機体自体の損傷がひどくて修理するより新造した方が早いそうだ。」
「そうか・・・・」
「あっ、お前たちが悪いわけじゃないぞ?敵が予想以上に強すぎたんだ。あの武蔵って言うゲッターの司令官がコイツに代わる機体がもうすぐできるっていうから・・・気落とすなよ。」
彼は、肩を叩きながら慰めるように話す。
「・・・・ダグラス、俺たちは本当にこれでいいんだろうか?」
「えっ?」
「俺たちは、人間とレプリロイドの共存するこの世界を守るために戦い続けてきた。けれど、力を付けていく一方で多くの仲間が死に、世界を何度も窮地に立たすことになった。今までは何とかやってきたけどこのまま強くなり続けたらどうなるんだろう?この関係が崩壊して恐ろしい結末へと繋がるんじゃ・・・・」
「おいおい、流石にそれは考え過ぎだぜ!?確かにお前もゼロも昔と比べて明らかに強くなった。シグマのせいで多くの人間やレプリロイドが巻き込まれたのも事実だがお前らのおかげで助かった奴もいるんだ。そこまで悲観にならなくてもいいんじゃねえか?強い敵が現れちまったら強くなろうとするのは仕方のねえことだろ。」
「それはそうだけど・・・。」
「ゼロとアイリスも行方不明になって、相当疲れてんだよ。呼び出し来るまで休んでおけ。休めなくなる日が続きそうだしな。」
「そうさせてもらうよ。ありがとう、ダグラス。」
浮かない顔ながらもエックスは、彼に礼の一言を述べて格納庫から去って行く。
「・・・・恐ろしい結末か。まあ、確かに今回の戦いを見ればそう感じずにはいられねえかもしれねえな。ネオゲッターがトンデモマシンかと思えばこんなに派手にぶっ壊れちまうしな。それに・・・・」
ダグラスが振り向いた先。
そこには『Z』が鎮座していた。
頭部ユニットを外していることもあってその目は光っておらず、先日の戦闘と打って変わって沈黙している。
「お前さんはどうなんだろうな?何を調べようが謎だらけ、向こうのお偉いさんたちも正体がわからないとあちゃ俺ですらそう考えちまいそうだぜ。」
彼は、怪訝そうに見上げる。
所属先であるメカトピアですら把握できていない得体のしれない巨大ロボット。これが敵に回ったとしたらそれこそ恐怖としか言いようがない。
「とりあえず、新しいプランを考えなけりゃ」
「おい。」
「うん?」
頭を切り替えて作業をしようとしたのも束の間、ネロがキョロキョロ見回しながら中へ入って来た。
「アンタ、確かリルルの兄ちゃんか?」
「ネロだ。ナンバーマンはいないか?」
「奴さんなら、今席を外してるぜ。もうすぐ戻ってくるはずだ。」
「そうか。ところで『Z』はどこだ?ここに収容されているはずだが。」
「『Z』?あぁ、あの謎だらけの奴な。ここにいるぜ。」
ダグラスは、指を指して教える。
ネロは、搭乗機体の変貌ぶりに驚きを隠せなかった。
「こ、これが・・・『Z』だと?」
「兵団側の連中が言ってたから間違いないぜ。アンタは気を失っていたから無理もねえけどここに運ばれたときには既にこの姿だったぜ。」
「・・・・飛行ユニットに変形するマントすら無くなっている。これでどうっ!?」
「どうした?」
急に頭を押さえて膝をつく彼にダグラスは、近寄る。
『お前はコイツを手に入れたたった今から人間を超えるだ!お前は超人じゃ!いや、それ以上の存在だ!!』
『・・・児、お前は神にも悪魔にもなれる!!神にも悪魔にも!神となり、人類を救うことも!悪魔となり、世界を滅ぼすこともお前の自由じゃ!』
『マジンガーZがお前の望み通りの力を貸してくれるのじゃ~!!わっはっははははは、世界はお前のものじゃぞ~!!』
「・・・・・ゼット」
「何?」
「マジンガー・・・・・・Z・・・」
「魔人がゼット?大丈夫かよ。」
我に返ったネロは、ダグラスに肩を貸してもらいながら立ち上がると改めて自分の愛機を見る。
「『マジンガーZ』・・・・確かにお前はそう呼ばれていた。だが、それを知っている俺は一体何者なんだ?失われている記憶に関係あるのか?なあ、お前は・・・・俺のことを知っているのか?」
彼は、表情を険しくしながら問いかける。
しかし、『マジンガーZ』はその問いに答えることはなかった。
マジンガーZが『グレンダイザーU』に登場するそうです。
一話で退場とかにならなければいいけど。