19XX年。
地底魔王ゴール率いる恐竜帝国はハチュウ人類の生存圏を地上に拡大するべく、唯一の障害であるゲッターロボと日々死闘を繰り広げていた。
度重なる計画が失敗で業を煮やしていた恐竜帝国だったが地上に建設していた前線基地の自爆によってゲッターロボはこれまでにない痛手を負う。
更にこの自爆でパイロットの一人である流竜馬が行方不明になったことが諜報員の調査で判明。
パイロットが欠けた上にゲッター自身も修理に追われていると知ったゴールは、ここぞとばかりに『早乙女研究所総攻撃作戦』を行うことを画策した。
深海 マシーンランド内部
帝国内で『早乙女研究所総攻撃作戦』が進められている中、ゴールは自身の片腕とも言えるバット将軍と共にメカザウルス研究所へと向かっていた。
「ゴール様、総出で作戦準備中にも関わらず何故今になって研究所に向かわれているのです?ゲッターロボが万全ではいことは諜報員たちの調査で把握済みな上にパイロットの中でも厄介だった流竜馬も前回の地上基地の爆発で死んだも同然。恐れることはありますまい。」
「分かっておる。だが、早乙女のことだ。一人欠けたところで我々に対しての対策を全く講じないわけがあるまい。念には念。今あるメカザウルス軍団でも十分だろうがそこへ更に強力な戦力を投入してみろ。早乙女研究所の連中の顔が青くなるのが目に浮かぶ・・クックク。」
二人が研究所に到着すると中は研究員たちの慌ただしい様子が広がっている。
「こ、これはゴール様!バット将軍も!」
一人が気付くと彼らは、一斉に振り向いて頭を下げる。
「全員作業を続けて構わん。ガレリィは?」
21XX年 マシーンランド メカザウルス製造プラント
イレギュラーハンターと鉄人兵団側で出発の準備が進められている一方、恐竜帝国では宇宙へ飛び立つ予定のメカザウルスが一体、また一体とロールアウトが進められていた。
「ロールアウトした個体はコックピットも含めて順次耐ゲッター線防御措置を済ませております。インベーダー用の装備も万全にしているので問題はございませぬ。」
ガレリィ長官は、施設を視察しているゴーラの前に立ちながら説明する。
「よくここまで進めてくれたガレリィ。流石祖父の代から仕えていた我が帝国きっての科学者だな。」
「ありがたきお言葉。・・・・して、ゴーラ様。やはり考え直してはいただけませんでしょうか?」
彼が心配していること。
それは帝国の長であるゴーラが自ら敵地へ赴くことだ。戦闘に関しては復帰したバット元帥を中心に各キャプテンが部隊を展開していくことになっているが彼らの命を受け取る以上、自身だけ安全な場所にいるわけにはいかないと考えてのことだった。
「何度も言うがメカトピアでの戦いに敗北すれば遅かれ早かれハチュウ人類の滅亡を意味する。そうなれば私が生きていようと仕方あるまい。ならば、戦場に出て味方を鼓舞するのも帝王のすべき事ではないか?」
「うむ、しかしながら貴方様は飽くまで我らの帝国を収める長。護衛となるべき強力なメカザウルスが必要となります。敵対勢力『インベーダー』の能力はまだ計り知れませぬ。それ相応の奴でなければ・・・・」
「其方の傑作の中にはいないのか?」
「残念ながら、ゴーラ様を確実にお守りできる個体はおりませぬ。ただ・・・・」
「ただ?」
「まだ、素体なのですが唯一候補となりえる奴がいます。非常に危険ですが。」
「どういうことだ?」
ガレリィは製造プラントの最深部へと案内し、認証コードを入力した上でセキュリティーを解除する。
「随分と厳重だな。」
「何しろ、今でも危険な代物ですからな。」
「危険?」
僅かな照明で照らされた空間を二人が歩いていくとそこに実験場と思われる設備があり、目の前には巨大な氷の塊が保管されていた。よく見るとその中に100メートルは優に超えているであろう恐竜らしきものが入っているのが分かる。
「この個体は?」
「ゴーラ様は、我が帝国の歴史をお勉強になられましたか?」
「あぁ、子供の頃に家庭教師から強制的に叩き込まれた。それがどうかしたのか?」
「我らハチュウ人類がまだ地上を支配していた頃、大陸では多くの恐竜が繁栄しておりました。しかし、その多くはゲッター線の大量放射によって滅び、生き残った者たちが技術を結集し地底深くへと逃れた。」
「ガレリィ、私を揶揄っているのか?」
「滅相もございません。しかし、ゲッター線の中でもし耐えきったものがいたとしたら・・・どう思われます?」
研究員たちが動いている傍らガレリィは、目の前で氷漬けになっている恐竜を見ながら言う。その様子を見てゴーラは表情を変える。
「まさか・・・この個体はあの惨劇を生き延びたというのか?」
「正確には種族ですが。憶測にはなるのですがほとんどの個体は他の恐竜共々死滅したでしょう。しかし、一部の個体はゲッター線に対する強い耐性を持ち、数を減らしながらも子孫を残し続けた。そして、100年以上前地上の調査隊が地上の地層で仮死状態になっていた卵を発見。貴方様の祖父であるゴール様の命令で蘇生措置を行い、メカザウルスへの改造後に早乙女研究所総攻撃に投入するはずでした。」
「はずだった?さっきも言っていたが改造すらされていないし、そもそも一般メカザウルス用の素体と比べても大きすぎないか?」
彼女は、氷漬けにされている恐竜に指を差しながら疑問をぶつける。
恐竜帝国で製造されるメカザウルスは、ベースとなる素体を遺伝子操作で誕生した品種・原種関係なく卵から誕生させ、成長を促進させる特殊光線で成体クラスの大きさにした後にサイボーグ手術を行うことで完成となる。
だが、目の前の恐竜は成体クラスを優に超えているにもかかわらず生身のままである。
これにはガレリィも頭を抱えて事情を話す。
「実は・・・・・この素体『王』は100年前の時点で成長促進光線で成体クラスに成長させたのです。」
「えっ」
「そして、すぐにサイボーグ手術を行おうとしたのですが改造前にもかかわらず恐ろしい怪力で拘束を引きちぎり・・・・」
19XX年 恐竜帝国 メカザウルス研究所
「おぉ!?誕生したぞ!!」
「「おぉ・・・・」」
「これが絶滅したとされている『王』の生き残り・・・」
実験室で2、3メートルはあるであろう卵から羽化した恐竜を目の前にゴールたちは歓喜の声を上げる。誕生した個体は幼体にもかかわらず既に並の恐竜サイズを誇っており、広大な密室で生まれたこともあってキョロキョロ見回して戸惑っていた。
「ゴール様、この素体は?」
「数年前、地上の調査へ送った先遣隊が発見した我ら爬虫類にとって『王』と呼ばれていた恐竜の卵を地層の中から発見した。当初は亡骸からDNAを摘出して品種改良をするつもりだったが内部をスキャンすると中の胎児が無事だったことが判明した。」
「地層から発見されたものが!?」
バット将軍は、信じられないとばかりに声を荒げる。ハチュウ人類が地底に逃れて以降恐竜はすべて死滅し、残されたものは化石や石化した卵がほとんどだ。それが中の胎児が生きた状態で眠っていたというのだ。奇跡としか言いようがない。
「我々はゲッターロボのおかげでいくつも基地を潰され、メカザウルスと共に多くの同胞を失った。だが、この『王』は、今までの素体とは訳が違う。あのゲッター線の惨劇を生き延び、卵の状態で現代まで生き延びた。コイツを改造し、他のメカザウルス軍団と共に早乙女研究所へ送り込めばゲッターロボは愚か、研究所は地上から消えるわ。フッハハハハッ!!」
戸惑っている『王』の幼体を他所にゴールは、すぐに成長促進光線を浴びせて改造を行うよう指示を出す。
「しかし、ゴール様。せっかくの絶滅種の生き残りです。サイボーグ手術を行う前にDNAを採取し、今後の素体に利用できるようにしなくては。」
「分かっておる。光線を浴びせた後は麻酔で眠らせろ。」
「はっ。」
実験室に光線が照射されると『王』の体はたちまち大きくなり始め、背中に連なる背びれはより鋭利に変化し、がっしりした体型は肉食竜と言うよりは怪獣に近かった。
「妙ですな。通常なら成体になるまで数分かかるのですが1分もしないうちに50メートルサイズに成長している。」
ガレリィは、光線を遮断すると拘束マシンを部屋の中に送り、『王』の動きを封じようとする。並の恐竜なら抵抗してもすぐに改造房へと運ばれていくのだが『王』は、誕生間もなく訳の分からないことをされているのに怒りを感じているのか拘束を引きちぎり、マシンを破壊してしまった。
「「なっ!?」」
想定以上の力にバット将軍とガレリィは、思わず言葉を失う。『王』は特殊ガラスから眺めている彼らを目に捉えると表情を歪めて咆哮を上げながら走ってくる。
「クッ、防壁を降ろせ!!」
その怒りに満ちた顔にゴールは、悪寒を感じながらもすぐにシャッターを下ろすように研究員たちを怒鳴りつける。
防壁シャッターは、ぶつかる直前に降りたものの命中すると大きく凹んだ。
「バカな、大型メカザウルス五体分の力でもびくともしない代物だぞ!?それを一発で・・・」
防壁の外からガリガリと嫌な音が聞こえてくる。外から両手の爪で引き剥がそうと動いているのだ。
「ぬうう・・・・ガレリィ!中にメカザウルスを送り込め!!」
「し、しかし、そんなことをすればせっかくの素体を殺すことに・・・」
「死んでも肉片の一つでも残っておればいくらでも作れる!!こんなところで暴れられたらマシーンランドに穴が空くぞ!!」
「ぎょ、御意!!直ちに!!」
実験室の扉が開き、中に三体のメカザウルスが入ってくる。『王』は、防壁を壊すのを一旦やめると矛先を変えて向かってくる敵に向けて咆哮を上げる。
メカザウルス・メサは、タコのような触手で巻き付けながら胸部ミサイルで攻撃を行う。実験室は、爆発で煙に包まれていくが『王』自体は特にダメージを受けている様子はなく、触手をワニを思わせる顎で喰らい付いて引きちぎり、自由になると頭部に噛みついてコックピットに乗っているキャプテン事食い潰して無力化させる。
続いてアンモナイトを彷彿とさせるメカザウルス・バジが殻を伸ばしてドリル状に回転して体に突き刺さるが『王』の両腕が強引に止め、殻をベリベリと剥がして中の人工臓器を食べられてしまい、死亡する。
最後に残ったメカザウルス・ウルはオオカミのような風貌ごとく、『王』の首を食いちぎろうと噛みつくが掴まれると無理やり口をこじ開けられる。
「な、なにをするつもりだ?」
モニターで見ていたゴールが研究員たちに聞こうとした瞬間、『王』の背びれが青白く光り、口から熱戦のようなものを放ってウルを内部から燃やし尽くしてしまった。
「ぜ、全機やられました・・・」
「次を出せ!次をうおっ!?」
次の瞬間、防壁が破られる。裂け目からはゴールを見下すような目で睨みつける『王』が顔を近づけてくる。
「あ・・あぁあ・・・・・あぁ」
怯えるゴールを前にガレリィは、落ちてきた瓦礫に挟まれながらも何とか緊急警報を鳴らす。すると増援とばかりに実験室に次々とメカザウルスが乗り込んできた。
『・・・・ギャアァァァァァァアオォォォォォォン!!』
『王』は、最早殺す価値がないとばかりに咆哮を上げると攻めてきたメカザウルスたちの方へと向かって行った。
「その後、体力を使い果たしたコイツを何とか凍結させることで事態は何とか収まったのですが作戦に投入予定だったメカザウルスの大半が破壊されてしまい、計画は延期せざるを得なくなりました。しかし、百鬼帝国の台頭で焦ってしまったゴール様は、計画の前倒しを強行。未完成の個体を大量に投入する事態になってあの惨事に・・・・」
彼が話を終えるとゴーラは、再度この恐竜の恐ろしさに顔を顰める。
「爺様もとんでもない置き土産を残してくれたものだな。確かにメカザウルスに改造すれば相当な戦力になる。しかし、目を覚ましたらまた敵味方関係なく襲ってくるんじゃないか?」
「御尤もなお言葉です。『王』は今も成長し続けています。しかも厄介なことに生命力が他の恐竜とは比較にならないほど強力な上に傷口の再生も一瞬のため、従来のサイボーグ手術では手が付けられぬのです。更に」
「更に?この個体、もっとやばいものがあるというのか?」
「先ほど奴が口から熱線を放ったとお話ししたでしょう。コイツ、体内に天然の原子炉が入っているようなものなのですよ。しかも長年の進化の影響かゲッター線も取り込める。」
「以前、ワイリーがメカザウルスを怪獣扱いしていたがこれが本当の怪獣と言うべきものなのかもしれないな。」
彼女は、頭を押さえながら氷漬けになっている『王』を見る。
「しかし、生まれて親じゃなくて見知らぬ連中に見られていた上に改造されそうなったと考えるとなんか可哀そうだな。」
恐ろしくはあるものの同情を感じなくもなかった。
今でこそ落ち着いてはいるが人間と全く同じ容姿で生まれてきたこともあって帝国内ではどうしても存在が浮いてしまい、王族でありながら孤独感を感じていた。母は純粋なハチュウ人類で父もハーフであったことから共感してくれる者がおらず、コンプレックスを感じいた。
目の前にいる『王』も本当は怖がって親に会いたかっただけかもしれない。氷の中に百年以上も閉じ込められている以上悲惨に感じられる。
「ゴーラ様、いかがなさいますか?今の時代なら新たに開発された『生体装甲』などで改造は可能ですが。」
「・・・いや、なんか話を聞いたらそうも言えんな。別の方法を探そう。」
そう思い、部屋を後にしようと振り返ったその時ゴーラは、ギョッとした。
氷の中で眠っているはずの『王』の目がこちらを見ているのだ。
その直後に取り付けられた装置が異常警報を鳴らし始め、氷に亀裂が入る。
「『王』の体内温度、急速上昇!!」
「バカな!?この長期間、安定していたんだぞ!?」
「凍結材を打ち込め!」
「駄目です、下がりません!!」
「氷の溶解確認。」
研究員たちは、すぐさま逃げる準備をし始める。
「ガレリィ長官、ゴーラ様!すぐご避難を」
言い終える前に氷が砕け、破片が強化ガラスを吹き飛ばす。飛んできた破片は、研究員たちの体に喰いこんだり、下敷きにされ、ゴーラとガレリィ以外はその場で動けなくなってしまった。
「な、なんと言うことじゃ・・・こんな大事な時に・・・」
ガレリィは、歯をガクガク震わせながらその場に伏せる。
目の前では成長した『王』があの時のようにゴーラに顔を近づけていた。
『グルルル・・・・』
「・・・・」
鼻息を吹き出しながら睨んでくる『王』に対してゴーラは、怯えながらもゆっくり立ち上がると手を伸ばす。
「ご、ゴーラ様!?」
「だ、大丈夫じゃ・・・私は、敵じゃない・・・・・・敵じゃない。」
宥める様に声を駆けながら彼女は顔にそっと手を触れ、優しく撫で始めた。正直、効果があるとは思えなかった。相手は並のメカザウルスをほぼノーダメージで仕留めてしまう存在だ。こんなところであの熱線を放たれれば、この部屋は愚かマシーンランドが吹き飛ぶかもしれない。
『王』は、警戒しながら彼女の匂いを嗅ぎ始める。動けない研究員たちは今にも女王が喰われてしまうのではないか怯える。
『・・・・グルルゥ』
「よしよし、良い子良い子。」
危険でないと判断したのかそれとも匂いが気に入ったのか表情を緩めて尾を振りながら落ち着き始めた様子にゴーラは、冷や汗を掻きながらも内心ほっとする。
「ガレリィ、これどうしよう?」
警戒を解いたのか頬ずりと言うか顔を押し付けてくる『王』に対し、彼女は助けを求める。
「・・・・ほとんどの生物には刷り込みで最初に見た相手を親だと勘違いするといった現象がある。コイツは最初に見た相手を敵として攻撃してその過程をすっ飛ばしたからないと思っていたが・・・・おそらく使っていた香水の匂いとかで落ち着いたことでゴーラ様を親だと認識したのかもしれん。確信はないが・・・」
「そういう事はいいから早く救援を呼べ!あぁ、分かった。分かったからちょっと離れてくれ!」
子供のように甘え始めた『王』に対して困惑するゴーラではあったが先ほどまで怒りに満ちたものと違い、呆れた様子で対応する。
同じ頃、早乙女研究所ではマーティが自室で大人しく本を読んでいた。
「えぇ・・・・子供が成長するとこんなにお腹が大きくなるの?一人でもこのくらいってことはそれ以上だともっと大きく?」
少し前に自分とエックスの間に子供ができたと知って産むと言い張った彼女だが、レプリロイドと無縁のことでもあったため知識がほぼ皆無だった。仕方なく、義姉であるロールに頼んでライト博士たちが対策に追われている中いくつか関連書籍を取り寄せてもらい、知識を深めようとするが体の変化については想像以上だったこともあって愕然とする。
「いくらブカブカのスーツにしても大きくなったら誤魔化しきれないわね。あっ、スポーツ選手の女の人とかは引き締まっているからギリギリ大丈夫かも!後は・・・」
ページを捲るとマーティは、手でお腹をそっと摩りながらふと笑う。工場で作るしかないとされた子供が自分の中で育っている。今のエックスには教えられないがこの戦いが終わる頃には喜んでくれるかもしれない。
大変になるだろうが可能な限り彼を支えてあげたいという気持ちが強かった。
「フフフッ、アンタたちが生まれた頃にはパパもびっくりするでしょうね。いつの間にか子供ができてたって。・・・だから、ママも頑張んないとね。」
生まれてくる子供に思いを馳せながら彼女は、また読書に耽るのであった。
『王』の正体はモンスターバースのアレ。
この回はどうするべきか?
-
このまま続けてほしい
-
まあ続けてほしい
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どっちでもいい
-
没にした方がいい
-
没にするべき
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もっとかかってこいや