ゼロルート
一方のゼロもトラップを掻い潜ってガレスの元へと到着していた。
「・・・・・来たか。こんなにも早くここへたどり着くとはやはり私が見込んだだけのことはある。」
「御託はいい。お前との話もうんざりしていたからな。ここで決着を着けさせてもらう。」
ゼロはセイバーを展開して、ガレスとの間合いを取る。
「フン、よかろう。私もベルカナの遊びに付き合わされて飽き飽きしていたところだ。」
「あの女はお前の主ではなかったのか?」
「生みの親ではあるが尊敬という言葉を持ったことはないな。」
「・・・・そうか。」
ゼロとガレスは、一瞬にして接近して斬りつけ合う。
「ハアアアアアア!!」
ゼロはセイバーで連撃を繰り出す。対するガレスは槍で連撃を防いですぐに後退し、高速で移動し姿を消した。
「どこだ!?」
「貴様の後ろだ!」
「!?」
瞬時に背後に回ったガレスの槍がゼロに向かって来る。ゼロはジャンプで槍を避けるとセイバーをドリル状にしてガレスに向かって突き刺そうとする。
「ドリルクラッシュ!!」
「くっ!」
ガレスはビームシールドを自分の前に形成し、攻撃を凌ぐが衝撃に押されて顔をしかめた。
「やるな!」
ガレスは、槍の先端をビームジャベリンに変更し、ゼロに向かって突き刺そうとする。
「早い!?」
「私の槍はあらゆるものを貫く。例えどんなに強固なアーマーを身に着けようとな!」
ガレスは、攻撃をすべて回避されると後方に下がって槍を容赦なく投擲する。
「トライアードサンダー!!」
ゼロは槍を避け終えると地面を殴りつけ、大型の電気弾を複数放つ。ガレスはそれをビームシールドで受け切った。
「そして、私の盾はあらゆる攻撃も遮断する!この強固な盾の前では貴様の攻撃も私に届くことはない!」
ガレスは、一時的に無防備になったゼロに向かってジャベリンを投げる。回避には成功したものの軽く脇を掠った。
「くっ・・・・・・奴には俺の攻撃が通じないのか?」
ゼロはガレスの追撃を回避しながらも対抗策を練ろうとする。
「逃げても無駄だ。確かにベルカナは変な女だったが技術は本物だ。この槍と楯を相手に貴様に勝ち目はない!」
(強固な盾・・・・・・・・強力な槍・・・・・・・・!)
ゼロは何かをひらめいたのか足を止めた。
「どうした?大人しく私に倒される気になったのか?」
「・・・・・・盾と槍か。そうか、そう言う事だったのか。」
ゼロの言葉にガレスは違和感を覚えた。
「どういう事だ?」
「お前は『矛盾』という言葉を知っているか?」
「矛盾?」
「俺も大昔の話はそれほど詳しくないが中国とか言う国にこんな逸話がある。ある武器商人が商売のために民衆の前で自分の盾と矛を自慢していた。」
「くだらん。それと私がどういう関係があるというんだ?」
戦闘を中断してまで話をし始めたゼロにガレスは少し苛立った。
「まあ、聞け。武器商人は自分の矛はどんなものでも貫けると言い、盾に対してはあらゆるものを防ぐと言っていた。だが、おかしくはないか?」
「何?」
「どんなものでも貫ける矛とあらゆるものを防ぐ盾。この二つが存在するとすればこの双方をぶつけたらどうなる?」
「ヌッ・・・・・言われてみれば・・・・・・」
「その問いを掛けられた武器商人は答えることができず民衆の前から退散した。そして、お前は同じことを言った。あらゆる攻撃を防ぐ盾とあらゆるものを貫く槍をな!」
「はっ!?」
ゼロの言葉にガレスは動揺する。その隙を見て、ゼロはガレスが飛ばして放置された槍の一本を回収して彼に向かって飛ばした。
「なっ!?」
ガレスは急いでビームシールドを目の前に形成する。だが、槍はシールドを突き破りガレスの胸に突き刺さる。
「ガアアアァアッ!?」
「やっぱりな。お前の装備は確かに強力だ。だが、その武装が相手に利用されるという危険性を考慮していなかったのが最大の欠点であり弱点だったんだ!!」
ゼロは、セイバーを再展開し、怯んだガレスの懐へと一気に潜り込む。
「しまっ!?」
「ファイナル!!」
ゼロは無数の斬撃を加え、更にジャンプで斬り上げ、ガレスの体に無数の亀裂を作り出した。
「ゴフッ!?」
「アースゲイザー!!」
とどめに地面に拳を殴りつけ、発生した爆風がさらにガレスに致命的なダメージを与える。
「ガッ・・・・・・・・そ、そんな馬鹿な・・・・・・・・・」
ガレスは地面に叩きつけられ、身動きが取れなくなった。
「ハア・・・・・・ハア・・・・・・ホーネックがさり気なく読んでいた本の話がこんなことに役に立つとはな・・・・・・・・」
ゼロは立ち上がるとガレスの方へと歩み寄ってくる。
「・・・・・み、見事だ・・・・・・・・私すら知らない弱点を見抜くとはな・・・・・・・流石紅きイレギュラーハンター ゼロ・・・・・・」
「フン、勘違いするな。これは俺一人の力じゃない。俺の仲間たちとの繋がりがヒントを与えてくれたんだ。」
息が途切れ途切れにガレスに向かってゼロは腕を組みながら答えた。
「・・・・・・ハッハハハ・・・・・・・なるほど・・・・・それが私にはなかったものか。道理で負けたわけだ・・・・・・」
「お前は、ベルカナに作られたのが運の尽きだったな。他の者に生み出されていれば別の可能性もあったというのに・・・・・・」
「フッ・・・・・・・最後に皮肉か。まあ、敗れてしまった以上致し方ないな・・・・・・・ゴフッ。」
ガレスは口からエネルギーを吐き出す。そして、自分の鎧に自ら槍を突き刺し、中に入っていたDNAソウルを抜き出す。
「私の持っているDNAソウルだ・・・・・・・・・後は好きにするがいい・・・・・・ウゥッ・・・」
「・・・・・・」
ゼロは黙ってガレスからDNAソウルを受け取る。
「フッ・・・・・・私もベルカナではなく別の者に作られればこんな出会いにはならなかったのかもしれんな・・・・・・・だが、ゼロ。お前と志雄を決して戦えたことには満足しているぞ・・・・・・」
「・・・・・お前もこの事態を招いたとはいえ、戦士としての誇りはあったようだな。」
「・・・・・・・」
ゼロの言葉に対してガレスの言葉はなかった。
「・・・・・・逝ったか。もし、俺たちレプリロイドにも来世っていうものがあったら今度はまともな奴に生まれてこい。そしたら、今度は敵としてでなく仲間として会えるかもしれないからな。」
槍を彼の手に持たせ、ゼロは静かに黙祷した。
「お~い~!ゼロさ~ん!!」
そこへジャイアンたちがドラえもんを担ぎながら駆けつけて来た。
「お前たちか、ベルカナの方は片づいたようだな。」
「まあね、ゼロさんの方も終わっているみたい。」
スネ夫たちはガレスの遺体を見ながら悟る。
「・・・・う~ん・・・・・あれ?僕は一体・・・・・」
「あっ!やっと目を覚ましやがった!このポンコツえもん!」
目を覚ましたドラえもんに対してジャイアンは思わず言った。
「やいやいやい!よくも俺たちごと吹き飛ばそうとしてくれたな!」
「えっ!?いや、僕はネズミを・・・・・」
「ネズミごと僕たちも吹き飛ばされるところだったんだぞ!」
「へっ!?」
「もう、やめましょうよ二人とも。ドラちゃんだって悪気があってやったわけじゃないのよ?」
そんな事を話してホッとしていた一同だったがその直後、背後から凄まじい寒気が襲った。
「!!この気配は・・・・・・まさか!」
ゼロは、セイバーで塞がれていた扉を破壊する。するとそこには
「クックククク・・・・・・・・私の気配を一瞬で見つけるとは流石だなゼロ。」
「「「「あっ!?」」」」
そこには、ドップラーの反乱終盤でドラえもんに対シグマウィルス用抗体ウィルスで死滅したはずのシグマだった。
「シグマ!?やはり、お前か!!」
「そ、そんな!?だって、あの時完全に消滅したはずじゃ・・・・・・」
「私を甘く見るなよ、小僧共。ドップラーの抗体ウィルスが不完全だったこともあるがあの程度では消えはせぬわ。」
目の前にいるシグマを見てゼロたちはその現実を認めざるを得なかった。
「だが、今回ばかりは礼を言うぞ。ゼロ、タヌキ、小僧共。実際ベルカナには手を焼いていたからな・・・・・・。強力なレプリロイドの製作だけをしていればいいものを勝手な実験ばかりしおって。まあ、いい退屈しのぎにはなったがな。」
「だから、僕はタヌキじゃない!!」
「しかし、エックスがいないとはな・・・・・・・まあいい。奴は最後の楽しみに取っておいて今度は貴様らのDNAソウルを消し去ってやるとするか。」
「ふざけるな!お前の今回の企みもこれで終わりだ!」
「フッフフフフ・・・・・・相変わらず威勢がいいなゼロ。そうでなければ張り合いがない。死にたければこの先へと来るがいい、待っているぞ。ファーッハッハッハッハッハッハッ!!」
シグマは笑いながらそう言うと瞬間移動してその場から消えた。
「まさか・・・・・あのウィルスを受けてもなお生き続けていたなんて・・・・・」
ドラえもんは思わず絶句していた。
「・・・・・恐ろしい奴だ、抗体ウィルスを受けながらも生き残るとはな。だが、それなら完全に地獄に落ちるまで倒し続けるまでだ!」
ゼロは、キャンプに連絡を入れる。
「こちら、ゼロ。」
『ゼロ?』
通信先からアイリスの声が聞こえる。
『通信を入れてきたという事はガレスを倒したのね?』
「あぁ。だが、もう一つ厄介な奴が出て来た。」
『厄介な奴?・・・・・・・もしかしてシグマ!?』
「その通りだ。幸いDNAソウルの大半の回収には成功した。シグマが持っている残りの分は俺とドラえもんで回収する。そちらに剛田たちを転送できるよう手配してくれ。」
『大丈夫なの?』
「いつもエックスにこういうことを任せっぱなしだったからな。今度は俺が奴に引導を渡してやる。」
『・・・・・・わかったわ。でも、気をつけてね。』
「分かっている。」
そう言うとアイリスは簡易転送装置の座標をチェックして三人を転送する。
「それじゃあ、俺たちはシグマにとどめを刺しに行くぞ。」
「はい!もう、僕のことをタヌキって呼べないようにけちょんけちょんのぎったんぎったんに・・・・・・」
二人は、急いでシグマの元へと走って行く。
〈おまけコーナー〉
コントパロディ「ネオ・アルカディアの母ちゃん2」
ネオ・アルカディア 神殿前
「さあ、今日もお母さんのお手伝いでお掃除してちょうだい。」
「「「え~!!」」」
「・・・・・・」
この日、帰ってきて遊ぼうとする四人にマーティは、言う。ファントムは黙って聞いていたものの他の3人は嫌そうな顔をしていた。
「でも、お母さん。掃除なら昨日もやったよ?」
「毎日やるから綺麗なのよ?」
「でも、飽きちゃった~!!」
レヴィアタンは駄々をこねながら言う。
「あのね・・・・家はお父さんがいないんだから。お父さんの代わりにお母さんを助けるのも大事なことなのよ?」
「そうだ、そうだ。父ちゃん、母ちゃんが喰っちまっていないんだからなぁ!」
「「「!?」」」
ファーブニルの発言に思わず三人が目を丸くする。マーティはファーブニルの頭を軽く叩いた。
「誰が父さんを食べるの!?アタシは、お父さんを食べたりなんかしませんよ!」
「えっ?そうなの?」
「何処でそんなこと覚えたの!?」
「学校のホタルニクス先生がカマキリはメスがオスを・・・・・・・」
「アタシはカマキリじゃないわぁ!人魚よ、人魚!!」
「あらまっ。」
「さあ、いい子なんだから。ねっ?」
「「「は~い。」」」
「・・・・・・御意。」
四人は掃除道具を受け取ると掃除を始める。
「お母さんは、中で別な仕事があるから。ちゃんといい子にするのよ?」
「「「「は~い。」」」」
四人が掃除するのを確認するとマーティは神殿の中へと入って行った。それを確認するとハルピュイアとレヴィアタンは箒を置いて集まる。
「ねえ、遊ぼ、遊ぼう!」
「何する何する?」
「イレギュラーハンターごっご!」
「やろう!やろう!」
「俺もやる!」
「・・・・・・・」
黙々と掃除するファントムを除いて三人は掃除をそっちのけで神殿の中から遊び用に出力を最小限に抑えられたバスターショットを持ってくる。ハンター役がハルピュイア、イレギュラー役がレヴィアタンとファーブニル。
「覚悟しろ!イレギュラーめ~!」
「撃て撃て!バン、バーン!」
三人は物陰に隠れながら射撃を始める。
「撃て~!」
「バ~ン~!」
「痛っ!?」
ファーブニルの攻撃がレヴィアタンの後頭部に命中する。
「私じゃないの!撃つのはハルピュイア!」
「?」
「行くぞ!イレギュラー!」
「撃っておしまい!」
「バン!」
「あぁ!?」
今度は尻に撃った。
「私に撃ったって仕方ないの!」
「そうなの?」
「よし~!レーザー砲発射~!バシャ~!」
ハルピュイアはバスターショットを水鉄砲に変更して撃ってきた。
「!?」
「あっ。」
しかし、水鉄砲はファントムに命中する。
「・・・・・・・」
怒ったのかファントムは掃除をやめて、ハルピュイアに向かってクナイを投げてくる。
「うわぁあ~!?しまった~!」
「今よ!ファントムが加わったから絶対優位になったわ!」
レヴィアタンは、水鉄砲でハルピュイアを攻撃する。
「行くわよ!ビュ~!」
「行くぞ~!ビュ~!」
「あぁぁぁぁああああ!!!」
しかし、またもやファーブニルの攻撃がレヴィアタンの尻に当たる。それでもレヴィアタンは我慢してハルピュイアに接近することに。
「もう・・・・・・何やってんの!?アンタ達!」
「「あっ!!」」
「母上・・・・・・」
「行くぞ~!ミュ~~~」
「あぁぁぁぁあああああ!?」
騒がしいと思い神殿から出てきたマーティに向かってファーブニルは水鉄砲を掛けてしまう。
「・・・・・・何やってんのアンタは?」
「母ちゃんもやってんの?イレギュラーハンターごっご?」
「お掃除はどうしたの!?お掃除は!?」
「母ちゃん、敵味方どっち?」
「もう!!」
流石に怒ったのかマーティは、全員を自分の周りに座らせる。
「アンタ達はどうして母さんの言う事が聞けないの?ん?」
「「「「・・・・・・・・」」」」
母親に怒られて四人はしょんぼりとした顔をする。
「・・・・・・あのね・・・・・母さんはね。アンタ達が嫌いで怒っているんじゃないのよ?」
バシュッ!
「本当はね・・・・・アンタ達が可愛いと思っているの。」
バチュッ!
「いい子になってほしいから口を酸っぱくして言っているの。」
ベチャッ!
「ねっ?今の時代のレプリロイドは・・・・・・・」
バチュン!
「うっ!」
「小さいときからしっかりしていないと大きくなった時にイレギュラーになっちゃうかもしれないの。」
バシュン!
「・・・・・」
「母さんはアンタ達にイレギュラーになってほしくないから・・・・・」
バチャン!
「あぁ!!」
「こんなに言ってるの。いなくなったお父さんの分も頑張って行こうと・・・・・」
ベチョン!!
「あぁああああ!?いて~!!」
説教をしているあまりに手に持っているバスターショットを子供たちに向かって誤射しているマーティにハルピュイアたちは、我慢できず四人集まって応戦し始める。
「撃て撃て!」
「バ~ン!バンバン、バ~ン!」
「こら、親に向かって何やってんの!?」
「バンバン、バババ~ン!」
「バン、バ、バ~ン!」
いつの間にかマーティまで参加してイレギュラーハンターごっこ状態になっていた。
「手りゅう弾だぁ~!!」
「「「「あっ!」」」」
「カチッ、ポイ!」
「みんな、伏せろ!」
「ヒュルルルルルル・・・・・・・・・ドッカ~ンッ!!!」
「「「「うわぁぁああ~!!」」」」
マーティの叫びで四人はやられたように倒れる。少しして我に返ったマーティは顔を赤くして唖然としている我が子たちを見る。
「ハア・・・・・・・母さんを乗せるんじゃないの。母さん、昔イレギュラーハンターやってたんだから。」
そう言いながら彼女は時計を見る。
「あら?もうこんな時間。アンタ達がまじめにやらないから3時のおやつの時間になっちゃったじゃない。」
「おやつ!?」
「今日は何?今日は何!?」
「もう・・・・・・しょうがないわね。お掃除はもういいから。おやつにするわよ。」
「「「わ~い!!」」」
「・・・・・」
「本当に調子がいいんだから・・・・・・・・」
「母ちゃん、今日のおやつは?」
「アップルパイ、母さんの手作りよ。」
マーティは、子供たちと手を繋ぎながら神殿に戻って行く。
此処はネオ・アルカディア。
人間とレプリロイドの共存を目指して作られた国。
今日も青き英雄の妻は、子供たちと一緒に未来を作り続けている。
そろそろXシリーズのテレビアニメ化もしてほしいけど・・・・・・・