DATE・MADAO・LIVE   作:人鳥悪夢

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今回から新章に入るDATE・MADAO・LIVE。
登場する精霊は一体誰なのか(章タイトルでバレてるけど)
そしてあのキャラもこの小説で登場します。
それではど~ぞ。




四糸乃ウェザーウォーズ篇
第三訓『鉄棒ニモ負ケズ』


琴里が銀時達の世界に来て数日が過ぎた頃。

 

 

「お登勢さーん、こっちのお掃除終わりましたー」

「終わったのかい? そんじゃあ、次はかそこを頼むよ」

「分かりましたー」

 

 

最初は銀時達の世界に慣れるまで苦戦していた琴里だが、それも次第に慣れてきていた。

万事屋に居候の身でお世話になる事になった琴里だが終始お世話になるのも癪なので、

当初は万事屋の手伝いをしていた。

しかし、万事屋にはあまり依頼が来る事はなく、依頼が入るまでは住処を提供してくれたお登勢のお手伝いをしている。

 

 

「ウチの銀時(穀潰し)と違って、わざわざウチの店を手伝ってくれて有難いもんだよ」

「お登勢さんにはお世話になってますから。これはほんのお礼みたいなもんですよ」

「まったく、嬉しいこと言ってくれるもんだよ。あの銀時(バカ)に琴里の爪の垢でも飲ましてやりたいもんだよ」

「マッタクデスヨ。ソレハソウト小娘、ソコガ終ワッタラ今度ハ皿洗イヲヤルンダナ」

「テメェは琴里にばっか手伝わせてないで働けこのアホンダラ!」

「オグスッ!」

 

 

琴里に仕事を押し付けるキャサリンに後頭部を叩くお登勢。

その様子を見て琴里は苦笑をする。

キャサリンは渋々店の掃除する中で、お登勢は琴里にここ最近の事について話しかける

 

 

「そういえば琴里。ここいらの暮らしには慣れてきたかい?」

「まあ...最初は手間取りましたけど、今は慣れてきた感じですね」

「そうかい、そいつはよかったよ。...銀時とはどういった感じだい?」

「銀さんですか?」

 

 

銀時に関する質問をされた琴里は頭を少し掻いて答える。

 

 

「銀さんは...まあ、手の掛かる兄貴みたいな感じ...ですね」

「ほう、手の掛かる兄貴ね...」

「普段から仕事を探さずダラダラするわ、パチンコ行ってくるわ、セクハラ発言してくるわ、酒にあまり強くないクセに吐くまで飲んでくるわでお世話になるどころか逆にお世話するカンジになっちゃって...」

「なるほど。最近、銀時がここで琴里に関して愚痴ってくるのはそういう事だったんだね」

「銀さんが?...ちなみにどういった愚痴で?」

 

 

銀時がお登勢の店で愚痴ってることを聞いて琴里はその内容を聞くことにした。

 

 

「そうさね。やれガキんちょがうるさいだの、色気が無いだの、胸が無いだのって愚痴ってたね」

「ほ~う...あの腐れ天パ、帰ってきたらタワーブリッジの刑ね」

「琴里、アンタの背じゃあ厳しいから、逆エビ固めにしておきな」

 

 

愚痴の内容を聞いて琴里は銀時が帰ってきた際のお仕置きを執行することを決め、

お登勢も止めるどころか一緒にお仕置き内容を考える始末であった。

 

 

「まあでも、アイツも琴里を預かってからは珍しく働いているみたいだし、これも琴里のお陰さね」

「私の...?」

「帰る手段見つかるまではちっとばっかし手の掛かる銀時(アイツ)の事をよろしく頼むよ」

「......ええ、私の目が黒いうちはあのバカ兄貴をキッチリ見張っておきます」

「ふふ、そいつあ頼もしいねえ」

 

 

琴里の言葉にお登勢は笑みを浮かべる。

琴里自身も銀時のだらしなさには世話を掛けているが、なんやかんやで銀時もきちんと琴里を世話している。

この世界で数日過ごしている琴里のとっては銀時はこの世界の兄の様なカンジである。

 

 

ザアアアアアアアア

 

 

「この音...」

「ありゃ、今日もまた雨かい...」

 

 

琴里とお登勢の会話の途中で外から雨が降る音が聞こえてきた

 

 

「お登勢様、只今買い物から戻ってまいりました」

「おう、おかえりたま」

「たまさん、おかえりなさい」

 

 

ちょうどその時、たまが買い物袋を持って帰ってきた。

雨が降ったせいか、たまの頭や服装の肩口が濡れていた。

 

 

「今日もお天気外れて災難だったねたま」

「帰るまでは晴れていたのですが、突然降ってきまして...。ですが、ご安心を。頼まれてた物はちゃんと買ってまいりました」

 

 

たまは買い物袋からある物を取り出し、お登勢に見せた。

それは球体で上半分は赤、下半分は白で彩られており、その赤と白の境目部分に丸いボタンが付いている...

 

 

「この“モンスターボール”で合ってますよね?」

「いやちょっと待てェェェ!!」

 

 

たまが見せたモンスターボールにお登勢は叫んだ。

無論、お登勢はモンスターボールなど頼んでいない。

 

 

「アタシぁモンスターボールなんて頼んでないよォ!! つうかなんでモンスターボールが存在してんだァ!!」

「それはポケモンがこの世界にいるからではないでしょうか? ほら、街中にポケモンが歩いてますし」

「いや、それ天人ですたまさん!!」

 

 

お登勢と琴里のツッコミにたまはモンスターボールを買い物袋に戻した。

 

 

「どうやらまちがって違うものを買ってきてしまいました。申し訳ありませんお登勢様」

「おいおい、大丈夫かい? 頼んどいた傷薬とかはちゃんと買ってきたのかい?」

「傷薬については大丈夫です。ちゃんとこの通り...」

 

 

そう言ってたまは買い物袋からお登勢から頼まれた傷薬を取り出す。

それは紫色でスプレーを形状した...

 

 

「“キズぐすり”は買っておきました」

「いやそれもポケモン用の道具ゥゥゥ!! 何処のフレンドショップに行ってきたんだァァ!!」

「それと琴里様から頼まれたアメも買ってまいりました」

「おいごまかすんじゃねェェェ!!」

「え~と...たまさん、アメはアメでも私が頼んだのチュッパチャップスなんだけど」

「勿論です。ちゃんとチュッパチャップスも買ってまいりました」

 

 

たまは買い物袋から琴里が頼んだチュッパチャップスを取り出す。

それは琴里の好物であるチュッパチャップスであることに琴里も一瞬安堵したが

 

 

「チュッパチャップス“ふしぎなアメ味”です」

「いやそこもォォォォォォ!!? というかふしぎなアメ味って何ィ!?」

「レロレロするとレベルが上がる味です。琴里様が15回レロレロすればオニコドリルに進化出来ます」

「いやオニコドリルって何ィ?! 進化出来る以前にポケモンじゃないから私!! 後、何故にレロレロ?」

 

 

たまのポケモンボケに琴里がツッコミを入れる中、店の奥からキャサリンが顔を出す。

 

 

「お登勢サン、奥ノ掃除ヲ終ワラセテ『メリ』ニャーズ!!」

「...琴里様、たった今ニャースをゲットしました。」

「ニャースはニャースでもドっ汚いニャースだけど...ニックネームとかはどうする?」

「そうですね...では、『ドっ汚いまいどくん』というのはどうでしょうか?」

「『ドっ汚いまいどくん』...まあなんやかんやでスナックの売り上げに貢献している意味ではピッタリだし良いんじゃない?」

「ではこのドっ汚いニャースは『ドっ汚いまいどくん』と言うことで...」

「オイコラ!! ダレガドッ汚イニャースデ『ドっ汚イマイドクン』ダ!! イキナリナニスンダコムスメドモ!!」

「あら、ドっ汚いニャースではなくキャサリン様でしたか」

 

 

ポケモンと間違われてモンスターボールを顔面にぶつけられ、片目に青アザ残るキャサリンにたまは謝罪する。

 

 

「ニャースよりもドっ汚いニャースだったのでゲットしようとしたらまさかドっ汚いキャサリン様だったとは...申し訳ありませんドっ汚いキャサリン様

「オイ、謝ッテルヨウデ謝ッテネーダロコラ!」

「では早速、この買ったばかりのキズぐすりで治療しましょう」

「イヤソレ、ポケモン用ノダカラ効果ネ『プシュ』ギャアアアア!!! 目ガァ!! 目ガァァァァァ!!」

「たった一吹きでこんなに全快するとは、さすがはフレンドショップのキズぐすりは効き目が違いますね」

「いや全快どころか瀕死一歩手前に追い込まれてるし、今フレンドショップのキズぐすりって認めたわよね?」

 

 

琴里達が騒いでいる傍らお登勢は店のテレビに電源を入れていた。

テレビではちょうど昼の天気予報が放送されていた。

 

 

『お昼担当のアナウンサーが体調を崩してしまったので、代わりにお昼の天気予報をお伝えしたいと思いまーす』

「あ、結野アナだ」

 

 

お昼の天気予報の担当が結野アナに気づく琴里。

銀時がファンであり、結野アナが担当する朝の天気予報や占いを必ず視聴するほどである。

琴里も銀時と一緒に天気予報や占いを視聴しているため結野アナの事は知っている。

ちなみに結野アナが担当する『ブラック星座占い』の的中率に琴里は驚いていたが

結野アナのもう一つの顔(・・・・・・)を知るのはそう遅くはない。

 

 

「最近、予報はずれることが多いけど結野アナ調子悪いのかしら」

「はずれると言えば、前にも予報が外れていた頃があったわよね」

「ですが今回は結野アナだけでなく各放送局の予報がはずれ続いていますし、ここ最近の天気も雨続きで異常です」

「つまりアレかい? こいつは俗に言う温暖化の影響ってやつかい?」

「ナラ温暖化対策トシテ、お登勢サンノ出番ヲ減ラシテ代ワリニ私ノ出番ヲ増ヤスナンテドウデスカ?」

「オイ、そりゃあアタシの存在が温暖化って言いたいんかい。つうか何ちゃっかり出番増やそうとしてんだい」

 

 

琴里達が雑談を交わす中、結野アナの天気予報は続く。

 

 

『午後からの天気は晴れ。お出かけに最適な時間になりまーす』

「晴れっつうか今外じゃんじゃん雨降ってんだけど、今回は本当に晴れるんかね?」

「モシマタハズレタラ今度放送局行ッテ慰謝料トシテ一億請求シマショウ」

「いや、キャサリンが行ったら逆に顔面整形失敗罪に猫耳不法所持罪で逮捕されるわよ」

「オイ、ソレワタシノ存在ガ逮捕案件ダト言イテエノカ貧乳小娘」

「琴里様、それは違います。キャサリン様はむしろ伽等(キャラ)失敗罪が適用だと思います」

「ワタシノ存在自体、失敗ダッテカッ!!」

 

 

琴里達がボケやツッコミを交わす中、結野アナの天気予報は終わりが近づいていた。

 

 

『午後の天気は晴れになりますが』

「ハズレロォオオオ!! ハズレテワタシニ一億請求サセロォオオオ!!」

「オイコラ! 何不吉なことを願ってんだい! 本当になったらどうすんだこのバカタレ!」 

『ここで一つ注意がありまーす。それは...』

 

 

 

 

 

「鉄棒でござんす」

 

 

突如、テレビ画面から鉄棒が突き出てきた。

鉄棒はテレビ画面の真ん前に居たキャサリンの顔面に直撃。

 

 

「フォウウウウウウ!!!」

「「キャ、キャサリンンンンンン!?」」

「なんと! キャサリン様の顔面目掛けて鉄棒が...これが噂の3Dテレビっというものなのでしょうか?」

「いや、絶対違う! 鉄棒が突き出てくる3Dテレビなんてありえないから!」

「ありゃ? どうやら違う場所に出てしまったでござんすか?」

『!』

 

 

鉄棒によって画面が壊れたテレビから声が聞こえ一同(キャサリン除く)はテレビに目を向けるとテレビの画面から一人の少女が出てきた。

それは黒の和服を着た可憐な少女であったが一つ普通の人とは違うところがあった。

それは...

 

 

「すいません、銀時様を尋ねに来た“外道丸”ですが」

「お...鬼...?」

 

 

鬼のような角を生やしていることである。

 

 

 

 

「今日も昨日もその一昨日も雨、雨、雨...パンツにこびり付いたウ◯コですかコノヤロー」

 

 

一方、銀時は大江戸公園の休憩場で雨宿りしていた。

居候の身である琴里から買い物を頼まれ後でうるさく言われるのも面倒なので了承し、その帰り道に雨に見舞われた銀時は近くの雨宿りを探し大江戸公園に来ていた。

 

 

「琴里の奴、居候の身なのにすっかり万事屋(うち)を仕切りやがって。店長は俺なのによ...アイツに頼まれて買ったチュッパチャップス、ワサビ塗りたくって食わしてやろうか」

 

 

休憩場のベンチに座り込みながら銀時は未だ降り続く雨空を見上げる。

 

 

「あんなに晴れてやがったのに...結野アナ最近また天気予報調子ワリーけど...まさかまた喧嘩を始めやがったんじゃねーよなあのバカ陰陽師共(・・・・・・)

 

 

最近の雨降り続く天気に銀時は過去に関わったある事件の事を思い出す。

降り続く雨の中、空を見上げていた銀時であったが...

 

 

パシャ パシャ

 

 

「ん...?」

 

 

ふと銀時の背後から何やら水をはじく音が聞こえ振り向く。

 

そこには少女が一人、可愛らしい意匠が施されたレインコートを着て公園内を飛び跳ねていた。

ウサギの耳の様な飾りが付いたフードによって確認できないが、左手にはコミカルなウサギのパペットをはめている。

 

 

「...今時、こんな雨の中を飛び跳ねているなんざ珍しいな」

 

 

そう言う銀時は雨の中を踊る少女に奇妙な感覚を感じた。

奇妙な感覚を感じている銀時には降り続く雨の音もこの時だけは気にならなくなった。

そうして冷たい雨の中を踊る少女に注目していると...

 

 

ずるぺたァァァァァァァあ!

 

 

少女は壮大にコケた。

 

 

少女は最初は頭に、次は腹にと水しぶきを散らして倒れ、その態勢のまま動かなくなってしまった。

ついでに左手にはめていたパペットもコケた拍子に勢いよく飛んで行った。

 

 

「……アレ、頭からいってねぇかおい?」

 

 

怪我人?が目の前にいて、さすがのグータラ侍である銀時も見過ごせず、濡れるのを覚悟して少女の元へ向かう。

少女に近づいた銀時はフードで蔽われていた少女の全貌を見た。

 

年頃は別世界にいると思われる神楽と居候中の琴里と同じか少し下ぐらいで、髪はふわふわで今は拝めない青空の様な色。

精巧な人形と思わせるような美しい少女に銀時はとりあえず休憩場に連れていき、ベンチに仰向けにして様子を見る事にした。

ついでに遠く飛ばされたパペットも回収して。

 

 

「...まるで人形みてぇな子供だな。かぶき町に住んでるようなナリでもねえし、それどころか江戸の奴かどうかも怪しいし...」

「...ん...」

 

 

ベンチに仰向けになって気絶している少女を見て一言呟く銀時だが、そこで少女の瞼がピクリと動く。

気絶していた少女はぱちりと目を覚まし、蒼玉(サファイア)のような瞳を露わにした。

 

 

「お、大丈夫そうだな。怪我はねぇか?」

 

 

目を覚ました少女に声をかける銀時だが、少女は銀時を見るや顔が蒼白となり、小刻みに震えてベンチの後ろ側に隠れてしまった。

 

見ず知らずの大人が声を掛けてしまったのがいけなかったのか、ベンチの後ろに隠れる怯えた少女をどうしたものか考える銀時。

もしこの場面を知り合いや真選組(チンピラ警察)に見られたら通報、あるいは逮捕されるの間違いない。

 

 

「違うからね、銀さんは決してロリコンでもフェミニストでもなからね。これっぽちも...」

「こ、来ないで、くだ、さい...」

「は?」

 

 

何とか誤解を解こうとする銀時だが少女はベンチの後ろに隠れてより一層怯えた様子で言う。

 

 

「いたく、しないで、ください...」

 

 

痛くも何も少女に危害を加えるつもりも毛ほども無く銀時は対応に困っていたが、そこで何かに気づき懐からある物を取り出す。

それは少女が左手に嵌めていたウサギのパペットである。

 

 

「コレ、お前のだろ?」

 

 

パペットを見た少女は目を大きく見開き、取り返そうとするが銀時が怖いのかじりじりと距離を詰めるも中々縮まらない。

そんな少女の様子に銀時は頬を掻きながら、けだるそうにパペットを突き出す。

少女は驚いたように肩を震わせるが銀時の意図を知ったのか、パペットを取り返し同時に左手に装着し直した。

 

そして、少女が付けているパペットが口をパクパクと動き始めた。

 

 

『やっはー、悪いねおにーさん。おかげで助かったよ』

 

 

腹話術なのか、ウサギのパペットは甲高い声で銀時に話しかける。

目の前にいるのになぜ腹話術で話しかけるのか疑問に思った銀時だが、パペットは構わず喋りだす。

 

 

『けどさー、四糸乃をベンチに運ぶ時に、いろんなトコを触ったよね? ぶっちゃけどうだったー?』

「あ? どうだって何が?」

『またまた~とぼけちゃって~。よしのん、知ってんだよ~。おにいさんみたいな人をロリコンって言うんでしょ~? 何かロリコン臭が匂うんだよね~』

「ロリコン臭って何? 加齢臭みたいなもん? つうか銀さんロリコンでもフェミニストでもないからね。 確かに最近ハーメルン(ここ)じゃあ何処ぞの恋人の妹と一緒に居たり、何処ぞのチャイナとできちゃった婚やらかしてるけど、ここの銀さんはノーマルだから。古今万事屋(うち)に居候中の琴里(ガキんちょ)に店長の座を奪われつつあるお兄さんだから......あれ? これじゃあロリコンじゃなくてマダオか?」

 

 

パペットからのロリコン発言に否定する銀時だが、逆に自身がマダオ(既にマダオの様なものだが)と認めている事に疑問を思う。

そんな銀時を見てパペットはケラケラと笑う。

 

 

『あはははは! 面白いおにーさんだね! まあ、一応助けてくれたわけだし、特別にサービスしといてア・ゲ・ル』

「あぁ、そう...」

 

 

ロリコンの毛もない銀時にとってはどうでもいいが、とりあえず逮捕案件になる事はなさそうなので黙っておくことにした。

 

 

「...今度は転ばねえように気を付けておけよ」

『何々? 心配してくれてるの? こう見えて四糸乃()は丈夫だから大丈夫だけど...でも心配してくれてありがとうおにーさん。じゃね~』

 

 

終始ハイテンションなパペットは言いたい事を言うと、少女は踵を返して去って行った。

 

 

「妙なガキだったな...」

 

 

去って行った少女の方向を見て銀時が呟くと、降り続いていた雨が徐々に勢いをなくしやがて雨も止んだ。

 

 

 

 

「はぁ~...」

 

 

買い物袋を持ち万事屋に帰る道中でため息を漏らす銀時。

ため息の原因は居候の琴里に先程の少女のことである。

 

 

「なんか古今ところガキんちょに会う事があるんだけど何? 銀さんはロリホイホイなの? 全然うれしくもねぇよバカヤロー」

 

 

居候の琴里や公園で会った少女など変わった子供に出会うことに愚痴る銀時は万事屋にたどり着く。

 

 

「帰ったぞ~。シャンプーに頼まれたチュッパチャップス十種類、コイツで満足か琴里~」

 

 

玄関を開けて琴里を呼びかける銀時。

そんな銀時を出迎えてきたのは...

 

 

 

 

 

眼前に振り下ろされる鉄棒であった。

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」

 

 

ギリギリのところで後退し、鉄棒の直撃を躱す銀時。

振り下ろされた鉄棒はそのまま玄関床を破壊。

破壊された玄関床に青ざめる銀時はそのまま鉄棒を振り下ろした持ち主を見る。

 

 

「チッ! 躱されたでござんすか」

 

 

鉄棒の持ち主はあからさまに舌打ちをする。

そんな持ち主に銀時は叫ぶ。

 

 

「オイイイイイイイ!! いきなり何しやがるんだ外道丸!?」

「これはこれは、惚けたことを抜かしますか銀時様」

 

 

金棒の持ち主、ある人物の式神でもあり銀時を主と認めている『外道丸』は鉄棒を肩に担ぐ。

 

 

「神楽殿の事からもしやロリコンではっと疑っていましたがまさか本当になってしまうとは...これはクリステル様の為、そして銀時様の式神として主の性癖を修正しなくてはいけやせん」

「いや、修正も何も銀さんロリコンでもねえしつうか修正どころか殺る気(しゅうせい)だったよね!?」

「やれやれ、ご自身がどれだけ罪深いお人なのか自覚してないと...とりあえず四分の三殺しでいかがでしょうか?」

「いかがでしょうか?じゃねぇ!! それほとんど殺されてるし、そんなに銀さん罪深い存在だったの!?」

「何やってるの外道丸さん!?」

 

 

銀時を修正(物理)する気満々の外道丸に後ろから呼び止める琴里。

琴里の呼び止めに外道丸は銀時に鉄棒を構えながら言う。

 

 

「ご安心くだせい。今からこのロリコンに走った主を修正(物理)する所なので」

「イヤだから、私はただ色々あって居候する事になって、別にいやらしい事なんてされてないから!」

「そうそう、銀さん何もいやらしい事なんてしてないから!! こんなチンチクリンでツルペタな魅力もクソもねえチュッパチャップス小娘に手なんか出さないから!!」

「.........外道丸さん、さっきの発言撤回するわ。そこの腐れロリコン天パを殺っちゃって」

「えッ...ちょ、琴里!?」

「はいどーん」

「ギャアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

「なるほど、そんな事情だったんでござんすか」

 

 

万事屋の居間にてソファーに座り客用に出されたせんべいを齧る外道丸は琴里の事情を聞いていた。

 

 

「そうそう。...ところで外道丸さんはどういった事情で万事屋(うち)に? というか外道丸さんって天人?」

「そこらへんは追々説明しやすが...銀時様?」

 

 

外道丸は琴里の隣に座っている銀時の方を向き、チュッパチャップスを口に加えている琴里も銀時の方に向く。

 

 

「.........」

 

 

琴里の隣に座っている銀時はボロボロの姿で白目をむいて気絶している。

 

 

「あら、まだ気絶してるの?」

「たかが鉄棒十発で気絶とはだらしない主でござんす。どうします五河?」

「そうね。目覚め代わりに一発いっとく?」

「あっし的には一発だけじゃなく百発の方がいいと思うでござんす」

「いいわねそれ、採用」

「了解でござんす五河。そんじゃあ...」

「いや鬼かてめぇらァァァァァァァ!!?」

「鬼でござんすが?」

 

 

危うく鉄棒百発の刑が執行されるところで銀時が意識を取り戻した。

意識を取り戻した銀時に琴里が話しかける。

 

 

「目が覚めたようね。いい夢でも見れたかしら銀さん?」

「夢も何も三途の川で溺れかけてたわ!! 小舟漕いでる死神が助けてくれなかったらホント危なかったわ!!」

「残念、そのまま溺れ死ねばよかったのに。というか死神が小舟漕ぐって何処の世界よそれ」

「真顔で言うんじゃねぇよ、本気にしちまうだろうが」

「......」

「...え、何その無言でこっちジッと見つめるの、止めてくんない? ねぇちょっと! 本気じゃないよね!?」

 

 

銀時と琴里が会話を交わす中、その様子を見ながらせんべいを齧る外道丸は呟く。

 

 

「……つかぬ事を申しやすが、お二人はアレですか? 一見仲悪そうに反発し合ってるけど、ちょっとしたシチュエーションに流されてイチャ付き合うお約束的な主人公とヒロインを狙ってるんでござんすか?」

「「狙ってるかぁ!」」

「そこでハモって反発するのもお約束でござんす」

 

 

ハモる銀時と琴里に外道丸が指摘すると、埒があかないので仕方なく銀時は頭を掻いてドカッとソファーに座りなおす。

琴里も仕切り直しとしてソファーに座る。

 

 

「んで、一体何しに来やがったんだ外道丸?」

「その前に...初対面の方もいるので自己紹介させてもらいましょう」

 

 

外道丸は出されたせんべいを食べ終え茶を飲み、一区切りつけて言う。

 

 

「あらためて、幕府に仕える陰陽師一族『結野衆』、その一人である結野クリステル様に仕える式神、外道丸でござんす」

「結野アナが陰陽師っ!?...それに式神って...」

「まあ、信じられねぇが内容だが全部ホントだ」

 

 

外道丸の自己紹介に驚く琴里に銀時が軽く解説する。

 

 

「幕府から江戸守護の任を任されてる陰陽師一族のひとり『結野衆』。そして結野アナはその陰陽師の一人でしかもエリートってわけだ。どうだ結野アナはすごいんだろ? 敬えよ?」

「いや、何で銀さんが威張ってるのよ」

「ちなみにクリステル様が担当している天気予報と占いは全てクリステル様自身が陰陽術を行なっているからござんす」

「......ホント、この世界が何でもアリって事を思い知ったわ...」

 

 

琴里は頭に手を当てて仰ぐ。

仰いでいても何も始まらないのですぐさま琴里は舐め切ったチュッパチャップスの棒を近くのごみ箱に捨て、新たなチュッパチャップスを口に加えて意識を切り替える。

 

 

「...それで外道丸さんが万事屋に来た理由は何?」

万事屋(ウチ)に来たって事は依頼と考えていいのか? また結野アナに送るプレゼント選び? それとも...」

 

 

銀時は懐からある紙きれを差し出す。

それは自身の名前が書かれている結婚届。

 

 

「結野アナから銀さんに送る愛のプレゼント選び? ならこの俺の名前がサインしてる結婚届にしとけ。コレに結野アナがサインすれば俺と言う最高のプレゼントが手に入って、結野アナも俺も名実ともにウィンウィンな関係になってみんなハッピーエンド間違いなぶべぇ!」

「ンな不幸な手紙渡せるわけないでしょ。渡しても誰もハッピーにならないし、ハッピーになってるの貴方の頭の中だけよ」

「そんな物渡すぐらいならゴ〇ブ〇が入ったホイホイを渡した方がまだ良いでござんす」

 

 

アホなことを抜かす銀時を琴里と外道丸がそれぞれの片足で銀時の頭を踏み黙らせる。

踏まれた銀時はそのまま居間のテーブルにメリ込む形で沈黙。

 

 

銀時(バカ)は黙らせたし、改めて本題に入りましょう。」

「では...」

 

 

琴里に催促され外道丸が依頼を告げる。

 

 

「クリステル様を救ってくれた万事屋に晴明様直々の依頼でござんす。もしかしたら江戸滅亡に関わる事になると」

 




明けましておめでとうございます。
デアラ三期も放送を開始し、銀魂もGIGAで連載開始し
執筆がノリノリで進みました。
七罪がアニメで早速登場していますが
こちらの七罪は何時頃に登場するのやら。
出来る限り更新を続け、完結を目指していきますので
どうか応援よろしくお願いします。

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