携帯ショップ ジョウ★サイ   作:イジン

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携帯壊れたので書いたお話でした(笑)
購入して間もないのにフリーズが多く不思議に思っていたら、ある日突然画面が真っ暗になりました……

皆様も大事なデータはくれぐれも自分や家族様を頼りバックアップを取っておきましょう!!!


(え?LINEのデータ?消えたかと思いきや、LINEアプリの中にアドレスとパスワードを設定していたらしく友人やグループは全員戻りました!メモってて良かったと心から思いました〜!)


第四話この機種は防水ですか?

 

 

「防水って言ったわよね!?放置してたら壊れたんですけどっ!!」

「…どんな携帯でも水に濡らして放置したら壊れますよ」

「はぁ!?防水って、水を防御するのよね!?」

 

 

他のお客様の対応中。お店に乗り込んできたのはジョウ★サイのお得意様であるジン様のご紹介で先月ご契約されたピヨン様。ぴょンぴょンうさ耳をはねさせながら怒る仕草はとても可愛らしいが、身のうちからあふれるオーラのせいで店内の空気が非常に悪い。

 

これは最終手段を使うか。

 

 

「ピヨン様。お話は分かりましたが、今は私がふさがっておりましてVIPルームにてお待ちいただけますか?」

「はぁ!?私は今すぐ使いたいんだし!」

「お気持ち、よく分かります。しかし、VIPルームにはこの世界で誰も知らない情報があふれているそうですよ」

「……誰も知らない?」

「えぇ!オーナーが全力で作った”ぶぅいあーる”という技術が使われているようで、嵌りすぎ危険、と私の立ち入りも許さない徹底っぷりです」

「一時間だけ待ってあげる!!」

 

ではご案内。

 

 

VIPルームの扉を開くと一目散に駆け込んで行くピヨン様。

 

ふふっ、とお客様……エレナ様が思わずといったように微笑む。

私も苦笑を返して、失礼しました。と頭を下げる。

 

「ねぇ、教えて」

「はい、何でしょう」

「私がこれから買う機種に永遠の防水をつけたらいくらかかるの?」

「エレナ様の機種は遠くにいる相手にもクリアな音で通話ができるように、と作られた機種です。

無理矢理その機能を付け足せば…オーナーは無理とは言わないでしょうが、月にかかる金額は国家予算レベルになってしまいます」

「じゃぁあの子には?」

「あの方はお試しで気に入った機種にされたいとのことでしたから」

 

言外に安い機種なのだ、と告げるとエレン様は『勿体無いわね』とまたも素敵な笑顔で微笑まれた。

 

 

安い機種でいい。

何でもいい。

見た目がいいからこれにする。

電話しかしない。

 

実はそれはかなり勿体無いということに、気づいてない人が多い。

 

そりゃ、世の中には破滅的な機械音痴さんがいらっしゃる。

そういう方はもう絶対に壊れない子供ケータイを持つしかない。(今だけ基本料500ゼニー期間中!!!)

 

 

 

けれどケータイというのは誰かと電話するためだけの機械ではない。

それが欲しいならばジョウ★サイケータイにする意味がない。

 

 

例えばうちのスマートフォンの中に、Uシリーズという機種がある。

この機種最大の特徴は、自分の趣味をメインに中身を決めれるという点。

 

例えば読書が趣味ならば、世界中の図書館のフリーパスのページが元々内蔵されていたり、

知らない土地でもマップを開けば近くの本屋にチェックがつく。

 

例えば動物を飼っているならば、ジョウ★サイ動物語の翻訳アプリ。

勿論全ての動物というわけではなく、色々制約はある。でもペットと会話ができるのは飼い主の夢だろう。

 

このように、持ち主の夢を叶えるのが携帯電話。すなわちジョウ★サイケータイなのだ!!

 

最近の変わったリクエストだと『空を飛びたい』ですね。

オーナー大爆笑で作っていました。

 

エレナ様の機種の改造が終わったとの連絡と共に私の手元に現れる携帯。

きっかり1時間で仕上げられたAAA(トリプルエー)特別モデル。

 

サイズは片手で操作できるサイズ。色は透き通るピンクゴールド。

中身の性能もさることながら、外装は全て砕いた宝石を念で溶接し研磨した見た目も珍しくあのオーナーがこだわった一品。

 

エレナ様はこの機種の大ファンで、もう4年以上この機種を使っていらっしゃいます。

事あるごとにオーナーにAAAの新機種の催促をしていますが、オーナーは『まだ無理』の一点張り。

何が無理なのかは、本人にしかわからない。

 

 

「ありがとう。また来る。新機種早く、と伝えて」

「はい。お時間ありがとうございました!またのご来店お待ちしております」

「ん。今度ご飯も行こ」

 

 

ぺこりと頭を下げると撫でられる。

今は接客モードだと言うのに嬉しくて、営業スマイルが崩れてしまう。

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

さて。

実はピヨン様が来店されてから5時間経過しています。

もう閉店の時刻ですのでお帰りいただかなくてはなりません。

 

 

私はカウンターの裏にあるVIPルームの、ぶぅいあーるの電源を落としました。

 

10秒後、泣きながらピヨン様が部屋から出てきました。なんてこった想定外。

 

 

「ピ、ピヨン様?いかがされましたか?」

「きゅ、急に電源落ちちゃったのっ!ピヨン何もしてないのに…っ。い、一時間のつもりが、いっぱいやったから?だから壊れちゃったの?」

 

 

耳をたれ下げ子どものように泣くピヨン様。

 

あっ、あっ、どうしましょう。

 

 

(オーナーオーナー!緊急事態ですっ!)

(……ん?珍しいね。お前が緊急回線を使うなんて。何?宇宙人でも来た?)

(故障でクレームのお客様をVIPに案内して、いつも通り遊んでもらって電源切ったら……大泣きです!)

(うん。俺には無理)

 

 

切られました。

許すまじ。

 

 

「ご、ご安心下さいピヨン様!見たところ、長時間利用による一時的なフリーズだと思われます!暫くさめるのを待って強制再起動をすれば大丈夫ですよ!!」

「……本当?本当にピヨン壊してないの?」

 

潤んだ瞳に罪悪感がズキズキと痛みます。

 

 

ジョウ★サイオリジナルキャラクター、

ジョウ君のクリアファイルやヌイグルミを渡すと、なんとかかんとか泣き止んでくれました。

 

「今日は代用機お貸出し致しますので、明日には修理してご連絡いたしますね」

「うん!ここって本当に凄いお店だね!……あっでもでも、データはどうなるの?消えたら困るんだけど」

 

出た。 自分で壊しておいてデータが戻るのが当たり前と思っていらっしゃるタイプ。

 

もちろん顔には出さず、私は悲しそうに目を伏せる。

 

「残念ながら……こちらの機種の操作ができないとバックアップは取れないんです」

「そんなぁ!!…ジョ、ジョウ★サイでもどうにもならないの!?」

「オーナーの方針でして『そんなに大事なら定期的にバックアップしとけ』だそうです」

 

壊したらデータは消える。

便利な物にはリスクが付きまとうのはどんなものでも変わりありません。 念は決して万能ではない。

 

「そ、そうだけどさぁぁぁ!やり方分かんないんだもんっ!」

「説明書にも、ジョウ★サイサイトにも、契約の際にもご案内は」

「口で言われただけじゃ……うぅん。 でも、私が悪いんだもんね…分かったよぅ」

「……ふふっ。ピヨン様は素敵な方ですね。修理の際にバックアップ方法もご案内させていただきます。是非これからも、よろしくお願い致します!」

「うん」

 

私はピヨン様の目を見て、意識してゆっくり微笑む。

 

「もし分からないことがあればすぐにご連絡下さい。対応できる私がいれば、すぐに派遣させていただきます」

「……分かったよぅ。これからもよろしくね?」

「すぐに代用機お持ちします……あっ!それと、近々新機種発売に伴い、事前予約で”ぶぅいあーる”が10台限定無料でプレゼントさせていただきます、と、これはピヨン様にだけ特別にお伝えしているので。内緒にしてくださいね?」

「今すぐ予約する!!!」

 

まぁあと数時間後にはジョウ★サイ携帯をお使いのお客様全員に通知が行くわけですが。ひいき、だなんて店員としては落第点かもしれませんが、落胆して帰っていただくよりは喜んで帰っていただくのが携帯ショップ店員の役割。

 

スキップしながら店外へ繋がる扉を開く背中に一礼。

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

 

 

 





評価と感想とても嬉しく思います。
自分の実績とは思っておりませんが、これからものんびりと書いていこうと思います。

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