ああ、それしか言えない。
私、遠坂凛はイライラしていた。
車両らしきライトの光が見える。
白井と名乗った男が追加の連絡を電話でした後、真夜中の寒空の下、数十分待ってやっと謎の男、相川始が仲間だとする男はやってきた。
赤い、派手というか奇妙なバイクに乗ったその男は屋敷の前で停まると、かぶっていたヘルメットは外し、
「無事か始⁉」
と相川に駆け寄った。
近くに街灯一つがあるだけなので暗くて顔はよく見えないが、アラサーといった年齢の男性に見えた。
「ああ、傷自体に問題はない。まずそれよりも…」
冷静に男の問いに答えた相川は、その先に何かを要求しているようだった。そしてそれを男はすぐに理解できたようで、懐から掌サイズのケースのようなものを取り出し、相川に手渡そうとした。
「待って。それが、『武器』なの?」
だとしたら、よく観察しておかなければいけない。
だが、
「ああ、そうだ。これが『武器』だ。だが話すと長い、後でいいか?」
あっさりと相手は明かしてくれた。まぁ、さっき私を助けた時点で相手は相当情報を欲しているのは確か見たいだし、話してもらえるかは分からないが襲われることはないだろう。さっきだって拷問でもするならいくらでも出いそうな状況だったのだから。私はそう結論を出し、うなずいた。
「始、彼女が?」
そう後から来た男が言った。相川はそうだと短く答えた。
それを聞き男は私の方に向き直った。
「橘朔也だ」
そう言って握手を求めてきた。知的な感じのする声だった。
「遠坂凛よ」
名乗り返し握手した。
それから彼らを屋敷まで案内した。道中警戒心を向けられてこそいたが特に何もなかった。
「ヘ―、大きい屋敷だね」
屋敷の前に来ると白井という男がのんきそうに言った。
この男を警戒する必要は無さそうね。
私もつられてそんなことを思ってしまった。
4人を応接室に迎え、その部屋のソファーに座らせる。
(アーチャー、動ける?)
私は外で待機しているであろう彼に念話した。
(外装は修復した。戦闘は無理だがそれ以外に支障はない)
との返答だったので
(紅茶を5杯入れて持ってきてくれない?)
と指示を出した。
(問題はないがいいのか?そんなのんきなことをして)
彼からは渋るようなことを言われた。
(いつも冷静に優雅たれ、それが遠坂家の家訓なの。なのに客をもてなさないわけにはいかないじゃない)
それが危険な相手であればこそ毅然と対応するべきなのだ。
(はぁ、君は相変わらず…)
(ん、何よ…)
アーチャーは何か言いよどんだ。
(いや、なんでもない。まぁ任せておいてくれ)
(そ、お願いね)
その後に意識を目の前に戻した。座っている4人にはまだ緊張の色が見える。さっき頼んだ紅茶はこのためだ。
「待ってて、今アーチャーに温かい飲み物入れさせてるから」
「アーチャー…さっきの赤いやつか…?」
相川は抜け目なく聞いてきた。
「そうよ。彼の入れる紅茶結構おいしいのよ」
場を和ませるようにそう言ってみる。
「大丈夫なのか?」
「ん?アーチャーの事?それなら戦闘は当分無理だけど回復可能だし、そのくらいの動作に支障はないわ」
そう言いつつセイバーを見やる。彼女は少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。
私の方も余裕ぶってはいるけど、サーヴァント相手では無防備も同然、なんとか敵対せずに協力を引き出したいけど、厄介そうね。
そして数分がたちアーチャーのお茶で少し和んだところで本題に入る。
「それで、そちらから説明してもらえるかしら?」
そう言って相川に視線を送った。
「いいだろう。虎太郎あれは持ってるか?」
「うん。身分証明に便利だからね」
白井は持っていたバックから1冊の本を取り出すと、目の前のテーブルに置いた。
本の題名は『仮面ライダーの仮面』白井虎太郎著…え?
仮面ライダー、一時期世間で話題になっていたあの?協会でも3年前の不明生物大量発生事件と合わせて大騒ぎになっていたけど…
私は驚いて白井を見る。
「そう、僕はこの本の著者で、この2人は仮面ライダーさ」
あまりに突飛な話に説明するはずのこっちがついていけない。
「あの、ハジメ。仮面ライダーとは何ですか?」
口を開いたのはマスターのことを誰より知っておきたいはずのセイバーだった。
「アンデッドという怪物と戦う戦士の事だ」
相川は簡潔に答えた。
「アンデッド?」
死徒がつくるあの?
「う~ん、話すと長くなるんだ。この本に全部書いてあるんだけど…」
白井は戸惑うように言う。
書いてあるのか…だが本人たちの口から聞くに越したことはないだろう
「いいわ。約束通り逐一話して」
この際とことん知っておかなければ。
「うん。じゃあ遠坂さんはさ、人類がどうして地球を支配するに至ったか考えたことある?」
それから、白井によってアンデッドとライダー、そしてバトルファイトについてのことが語られた。驚くことに、それは聖杯戦争と共通する点がいくつもあった。
「そして、カリスとブレイドの連携でジョーカーアンデッドをなんとか倒して、バトルファイトは終結した。それでダークローチ達も消えたってわけなんだ」
「それが、仮面ライダー…」
一通り話を聞き、私は呟くように言った。
途中見せられた『ラウズカード』の帯びる神秘から考えて話にはある程度の信憑性があるとみていいだろう。3年前までの怪人騒ぎは事実であるし。
まるで一つの英雄譚を聞いているようだった。特に剣崎一真、彼は英雄の座に迎えられていてもおかしくないと思うほどだった。もっともすべてが真実とは限らないし、美化されている可能性も大いにあるが…
「バトルファイトとライダーについては分かったわ。次はその体について教えてもらえないかしら?」
一同の表情が一気に強張るのが分かった。
「始、どうする?」
白井は、深刻な顔をして相川に聞く。
よほど深刻な話なのだろう。さて相手はどう出るか…
「血を見られた以上話すしかないだろう。変に詮索されても困るしな…」
相川は平然と答えた。
「なら俺が説明しよう。そこは俺の専門だしな…」
口を開いたのは橘だった。
白井の話では、ダイヤスートのライダー、仮面ライダーギャレンに変身する男。
「そう、ならお願い」
コクッと橘はうなずいた。しかし…
「ちょっ、橘さん⁉こういうのは…」
何故か白井が慌てだした。
「確かに虎太郎の言う通りかもしれん…橘、ここは…」
相川も何か察したようだ。
「…うっ、お前たちの言うことも分かるがここは俺に任せてくれ…」
橘はさっきこの話が専門だ、などと言っていた。なら確かにこの男が適任ではないだろうか。それなのに2人は乗り気ではないようだ。何故かしら…?
結局二人が黙ったので橘が話すこととなった。
「最初に言っておく、これから話すことは本にも載っていない。絶対に口外しないでくれ、絶対にだ。もし誰かに漏らそうものならそれ相応の報いを受けてもらうことになる」
いきなり高圧的な前置きをされたので一瞬驚く。
「話の内容にもよるけど、分かったわ…」
橘は静かにうなずく。セイバーもさらに瞳を鋭くしてマスターの話に耳を傾けているようだ。
「こいつの体は結論から言ってしまえば、アンデッドに近いものになっているんだ。アンデッドと同じあの緑の血がその証拠だ」
「アンデッドに近い…?」
いきなりインパクトのある結論だ。一体どういうことだ?
「こいつの体は、アンデットに近い不死性を持っている。さすがに中枢器官をつぶされれば死ぬが、ある程度の外傷はすぐに治る」
それでさっきの傷がすぐにふさがったわけだ。サーヴァント並みの生命力を持つということか…いや、重要なのはそこじゃないわね。
そのことを橘に聞こうとした時、
「『どうしてそうなったのか』か?」
とまるで用意していたように先に言った。私は無言でうなずく。
「それはな、始のカリスバックルに原因がある。カリスバックルは俺たちが使っているものと違って、試作品でシステム自体を体に埋め込むものなんだ。システムのもとになったジョーカーの能力を再現するためにな」
体に埋め込むなんて⁉そんな危なげなシステムだったの?ライダーシステムって…
そんな私の驚きをよそに橘の話は進んでいく。
「それもあって始は例外的に『カテゴリ―A』以外のアンデッドとも融合できる。しかし、そのせいでアンデッドとより深く一体化してしまってな、始はアンデッドに近い体になってしまったんだ」
そんな複雑な人物にあの子は懐いていたの…?っていうかあの子は知っているのかしら?
私は気になって聞き返した。
「どのくらいの人がそのこと知ってるの?」
「BOARDの人間と白井のみだ。白井の近親者含め、だれも知らない。だから口外するな。生きた実験材料として始を狙ってくる奴らが出てくるかも知れないからな。そうでなくても始の私生活に支障が出る恐れもある」
なるほどね。あの子は知らないか…
ならなぜ私に話したのだろう。
疑問が解決してまた一つ生まれた。
「じゃあなんで私に…」
「さっき始が言った通り、詮索されては面倒だからな。言ってはいけない理由を話した方が早い。それに一人の個人が流す情報ぐらいならBOARDでもみ消すこともでき無くはない。変に勘繰られる方が迷惑というわけだ」
何故だろう何か引っかかる。だが一通り知りたいことは知れたので今はいいだろう
「これで納得したか?」
橘は少し疲れたように聞いてきた。
「ええ、今聞いたことは誰にも話さないわ」
私は少し微笑んで答える。
相手がどんなことを隠しているにしろ、それで自分まで注目されてはそれどころではない。
「そうだ、この本上げるから、何かわからなければここから探すといいよ。半分は暴露本みたいなものだからね」
差し出された本を受け取る。
後でよく読み込む必要があるわね。
「…それで、話すべきことは話した。次は君の番だ。今何が起こっているか話してくれ」
相川が強い眼光を向けてきた。
一般人と聞いてどう説明しようかと思ったが意外に簡単に済みそうだ。
私は意を決して口を開いた。
「分かったわ。でも私の方の話も下手に話さないで、あまり噂を広めると私達魔術組織が動いてあなた達はただでは済まなくなるわ」
「なるほど、お互いさまになるな。それでいい」
相川は表情を変えずに言った。
私もうなずき、話し始める。
「まず、いま私たちこの街にいる魔術師は『聖杯戦争』という儀式をしているわ」
「聖杯…戦争…聖杯…」
そう言いつつ相川は何か思い当たることがあるような顔をする。
相川の反応は少し気になるがそれは後でいいと思い、私は話を続けた。
「そう、聖杯戦争。簡単に言えばあなたたちが言ってたバトルファイトのようなものよ」
「バトルファイトと同じだと?」
相川たちは眉を顰める。
「ええ、私もあなたたちの話を聞いて驚いたわ。そっくりだってね。聖杯戦争とは7人の魔術師が万能の願望機、聖杯をかけて戦う儀式よ」
「そ、それって万能の願望機ってどんなでも願いを叶えられるものってこと?」
白井が目を輝かせて聞き返してくる。
「そう、それを手に入れるために聖杯に選ばれた7人の魔術師がマスターとなり7つのクラスそれぞれのサーヴァントと契約し、それらを使役して殺しあうもの」
「サーヴァント…」
相川は、真剣な雰囲気を際立たせる。
「詳しい話は割愛させてもらうけど、サーヴァントっていうのは、あらゆる人の世の時代の英霊を聖杯が呼び出し、受肉させたもの。人の域を超え精霊に近い存在となった英雄を兵器として行使するもの。まぁ、あなたたちの言うところのアンデッドってところね」
相川はセイバーに視線を向ける。
「そう、あなたはさっき彼女、剣士のクラス、セイバーのサーヴァントを呼び出し契約した。本来魔術師じゃない人間がそんなことになるなんてありえないのだけれど、普通の体じゃないのなら説明もつくかもしれない…」
「確かにハジメからの魔力供給は通常の魔術師の水準です。生物が本来帯びている魔力の絶対量そのものが多いようです」
セイバーが静かに言う。
どんな生物でも少なからず魔力を帯びている、それが魔術師の水準ということはそれだけ生物として強力ってことなのか…思ったより規格外なのね…
私はまだいまいち得体のしれない相川を分析しながら話を進めた。
「とにかく一番重要なのはあなたももう、この聖杯戦争におけるマスターになって戦うしかなくなったってことね」
「戦うしかない?」
相川は少し厳しい顔をして睨んできた。
「そう、聖杯から選ばれたマスターは戦いから降りることは許されず、たとえあなたに戦う意志がなかったとしても他のマスターはあなたを殺しに来るわ」
「バトルファイトのような戦いに参加者として巻き込まれたというとか?まだ話の全体像が見えん。儀式だとか願望機だとか、もう少しかみ砕いて話してくれ」
相川の表情に苛立ちが見える
それが当然の反応だろう。
「まぁ、確かに分かりにくいわよね。だから、ふさわしい人に話してもらいましょう。隣町の教会にこの戦いの監督役がいるわ。そいつからなら詳しい話が聞けるけど行く?」
正直というかホントにあの男には会いたくないがこの際はしょうがない。
「今からか?」
相川はあまり乗り気ではないようだ。
「ええ、聖杯戦争の舞台は夜。急ぐに越したことはないわ」
またさっきのランサーなんかが襲ってくるかもしれない。この男には一刻も早く、状況を分からせることが必要だ。
「私もそれを推奨します。私の目的は聖杯です。ハジメにはどうしても戦いに参加してもらいたい」
セイバーも賛同する。それを聞き相川は煮え切らないような目線をセイバーに向けた。
セイバーは聖杯が目的?サーヴァントってだいたい聖杯に興味ないって話だったけど、彼女は違うのだろうか。
相川は、少し考えた後
「分かった行こう」
と言って立ち上がった。
「始?」
白井が急な行動に驚いたのか声を上げる。
「俺がおかれている状況がただごとでないことは確かなようだ。それに願いを叶える願望機…少し、興味がある…詳しく聞きたい」
なるほど聖杯に興味はあるのね。
「それなら、俺も行こう。君もそこの彼女も話が分かる人間のようだが、詳細が分からない以上、始を一人で行動させるのは危険すぎる。それでいいな」
そういったのは橘だった。
「いいけど、協会内は関係者以外立ち入り禁止だから外で待つことになるわよ」
さすがに特殊な人物とはいえマスターでもない人間を入れて説明を受けるなんて無理だろう。
「それぐらいならいい。しかし、白井も一人にしたくない。ついてきてもらうぞ」
「わ、分かった」
そうね、さっきの様子を見てランサーに顔を覚えられている彼を一人にさせるのは危険か。
そうして私たちは本日二度目となる移動を決めた。
※
俺たちは屋敷を出て、協会に向かい歩き始めた。
もう、傷もだいぶ癒えていて、傷はふさがっていた。
「………」
気づくと、セイバーが含みを持った視線を向けていることに気づいた。
彼女は今、武装解除を嫌い、遠坂から借りたコートでかろうじて鎧を隠している。
「何だ?」
俺は感情を込めずに聞く。
「いえ、その、私としてはこれからのことを考えるとせめてマスターには警戒心を解いてほしいと思いまして」
彼女は少し気まずそうに答えた。
前を歩く遠坂が、こちらの反応をうかがうように視線を向けてくるのが分かった。
「それはこれから聞く話しだいだ」
俺は短く答える。
俺も丸くなったとはいえ、この状況で彼女を無条件信用できるほどにはなっていない。
ふと、あいつならすぐに打ち解けるだろうか?なんてことも考えてしまった。
そして、一時間もしないうちに教会の前についた。
「橘、虎太郎を頼む」
入れるのはマスターのみということで、外で待機することになる二人に声をかけた。
「ああ、白井は任せろ」
「始、気を付けてよ」
2人は心配しつつ答えた。
「ああ、分かってる」
そして、俺は遠坂と門をくぐった。
「聞きそびれていたが、その監督役とやらはどんな人間なんだ?」
そう俺が聞くと、彼女は明らかにうんざりした顔をした。何故だ?
「名前は言峰綺礼、私の後見人で私の父の弟子で、兄弟子、腐れ縁ってやつよ」
彼女は協会の戸を開け、中の照明を付けつつ言った。
できれば出会いたくなかったけど、とつけたして。
そして、声がかかった。
「同感だ。師を敬わない弟子など欲しくなかった」
前を向くと比較的長身の男が立っていた。これまでであったこのないような雰囲気をしていた。
「再三の呼び出しにも応じぬと思えば、変わった客を連れてきたな。彼が7人目か?」
男はどこまでも無機質な声を出した。
「そ、でも魔術師ですらないみたいだけど、一般人ってわけでもないみたいだわ。あなたには聖杯戦争について彼に説明してほしいの」
遠坂もそれに単調に答える。
「ほう、では君は何者なんだ?君の名前は何だ?」
言峰は自分に視線を向ける。
その目は心底得体のしれないもので、その声は警戒感を俺に生ませた。
「俺は、相川始。仮面ライダーだ」
言峰は、心底驚いた顔をして、
「仮面ライダー、3年前の事件に関わったと言われる、あの?」
と言った。
何だ、知っているのか、遠坂が端に興味を持たなかっただけか…
俺は頷き、事前に言われた通り『カテゴリーA』を相手に見せた。
「なるほど、私もあの本は読ませてもらった。して、それがラウズカード。確かに並々ならぬ神秘を感じる。本物のようだ、了解した」
「何?あなた、仮面ライダーを知ってたの?」
言峰が微笑みながら、うなずいていると今度は遠坂が口を出してきた。
「何を言う凛、怪人騒ぎは現実に起きていた。魔術師として、それくらいの情報には目を通しておくものだぞ」
「………」
そのあと、言峰は俺の方に向き直り、
「分かった、バトルファイトのことを考えると、君がこのことに関わるのは偶然ではないかもしれないな。よかろう、君に教えよう、聖杯戦争とは何なのかを」
それから俺は聖杯戦争について詳しく聞いた。サーヴァントの事、マスターの事、聖杯の事、令呪の事、そして戦いを降りることもできるということ。
願いをかけて戦う、か…小規模なバトルファイトというたとえが的確だな。
俺は聞いた情報を頭の中で整理した後、一つ出てきた疑問を問う。
「お前の言ったことがすべて真実だったとしよう。だがなにかリスクはないのか?奇跡には代償がつきものというものだろう」
そう、例えば俺のような…
「ほう、戦いの中で死ぬことがそのリスクでは不足か?」
言峰はさっきの不気味な笑みを浮かべ聞き返す。
「そんなに都合のいいものがあるとは思えないだけだ。無償で奇跡をおこなえるのは胡散臭い」
参加するのなら、確認しておいて損はない。
「…まぁ、君の言ったリスクにあてはまるかは分からんが、あるとすれば個人の願いを叶える、ということだろう。聖杯は願いの善悪に関係なく願いを叶える。その願いが邪悪だった場合は災厄がもたらされることもあるだろう…その例が14年前、この冬木で起こったの大火災だ」
言峰は淡々と言った。
「な、に…?あれが?」
俺も動揺を隠せなかった。
「ああ、あれは前回の聖杯戦争の勝利者が何を願ったかは分からんが、聖杯の奇跡によってもたらされた災害なのだ」
だとしたら、あいつは一部の人間の欲望によって家族を失ったのか。そう理解した瞬間、胸の中に焼けるような怒りが生まれた。
あいつはこんな事のために…全てを…
「目つきが変わったな。決心がついたのか?」
出す答えは一つ、その奇跡とやらであいつが救えるかは分からないが、そうでなくともこの戦いが災厄を起こすというのなら、それを防ぐ義務がある。
それはあいつが最初に願ったことなのだから、
あいつの代わりに俺が人間の世界にいるのだから…
だから俺は…
「ああ、俺はマスターとして戦う」
戦わなければいけない、仮面ライダーとして。
「よろしい、君をセイバーのマスターとして認めよう。これでこの聖杯戦争は受理された。諸君、己の誇りに従い、存分に競い合え」
そのあと、俺と遠坂は外に出て、少し移動してから他のみんなに聞いたことと、戦うと決めたことを伝えた。
「話は分かった、なら俺はどうすればいい?あいつのためだ、俺は協力を惜しまないぞ」
橘は俺の願いを察し、聞いてくる。
「そのことだが、お前たちは東京に帰っていてくれ。この戦いはサーヴァントとマスターとのツーマンセルが基本らしい。下手に危険な目に合わせるより、お前たちが後ろに控えていてくれた方がこっちも気が楽だ」
「そうか、分かった。だがいつでも動けるよう睦月にも連絡を入れておく」
まだ少し、心配そうにしているが俺の案を受け入れてくれた。
「じゃ、じゃあ、僕は君がホテルにいるより動きやくなるように拠点を手配するよ。姉さんたちにも話を付けておく」
と言ってきたのは虎太郎だった。
「ああ、そうしてくると助かる」
何日も帰らないのは、二人とも心配してしまうだろう。俺の中でそれはとても重要なことだった。
天音ちゃんは電話してくるだろうな…
「マスター、よろしいですか」
「⁉」
唐突にセイバーが近づいてきて、声をかけてきたが、完全に意識外だった。
い、いかん…二人のことを考えているといろいろ緩んでしまう。
「そ、そのなんだ?」
俺の変な土曜にセイバーは首をかしげる。
「いえ、私とともに戦いに参加していただけるということでいいのかと確認したいと思いまして」
「ああ、そういうことだ。それなりに宛てにさせてもらうぞ」
そう、俺が言うと途端にセイバーの表情は明るくなった。
「はい、よろしくお願いします」
意外に、人懐っこいのか…
「話、まとまったかしら?」
話がひと段落したところで遠坂も話しかけてきた。
「これから、私たちは敵同士になるわ。今日はともかく明日からは容赦しない、ってことでいいわね」
その言葉がどういう意味を持つのか、すぐに分かった。
「そうだな、だが君には本当に世話になった、ありがとう。できれば君とは戦いたくないな」
「そう、ね。でもお互い貸し借り無しってことにしといて、明日からはしっかり敵同士にならないと」
この少女はなんだかんだ言って優しい人間であると理解できた。
「……!」
不意に叩きつけられる強烈な圧力―
「お兄さんたち、お話は終わった?」
向き直ると白髪の少女と、これまで感じたことのないレベルの殺気を放つ大男がいた。
数時間前
私は買い出しを終え、家路についていた。あたりはすでに暗くなっている。
私はそこで見たことのない男性とすれ違った。
その時、耳もとで、
―うまく、引き寄せてくださいね―
私はその言葉の意味が理解できなかった。
次話ついにカリス登場!(OMO)もね!
次回は戦闘で気が乗るからこんなにかからないはず…
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