超次元ゲイムネプテューヌ ~殺し屋の異世界見聞録~ 作:鉄の字
「さてと…………どう侵入しようか?」
一通り、施設の周りを見て回ったが、扉は幾つかはあるものの全てにロックされている。
解除するにはカードキーらしきものが必要みたいだ。
それにしても何で扉付近に監視カメラとかないんかねぇ?
あのサンチェのオッサンのことだから人の監視なんか必要ないと思ってるんじゃないか?
ぶっ壊すのもいいが、警報ならされたら面倒だしな。
んーー、どうするかなぁ~
あれこれ考えていると車のエンジン音が聞こえて来る。
音のする方へ視線を向けると車から誰かが降りてきていた。
一瞬、サンチェかと思ったがよく見ると別人みたいだ。
サンチェよりも若いし、俺と同い年かそれよりも上ぐらいの若手の人だ。
ここにくるということは恐らくアヴニールの社員に間違いないだろう。
そう確信した俺は内心ほくそ笑みながらその社員の下へ歩いていく。
相手は俺に気づいたのかこっちに視線を向けてきた。
「あのぉ~~、すみません、道に迷ってしまって。道を教えてくれませんか?」
俺はメモを取る素振りをしながら会社員に近づいていく。
真夜中なので、相手には俺の顔がよく見えないだろう。
「あ、はい。いいですよ。目的地はどこですか?」
こんな夜にモンスターが出る所で黒ずくめの怪しそうな男に親切にするとはこの人の人柄が非常に良いことが伺える。
「はい、えーと………………」
……………だが、残念ながら相手した奴は黒ずくめの怪しい男であった。
社員との距離が3メートルに入った時に瞬時に背後に回り込んで口を塞ぎ、ポケットから出した物を社員の鼻にねじ込む。
「~~~~!!?!?」
「……………地獄への道を教えてくれや」
暴れようとする社員に俺は鼻にねじ込んだ凶器……………
練りわさびチューブを握り潰した。
鼻の中に劇薬(わさび)が注入され、顔を真っ赤にして更に暴れだす社員。
俺は冷静にチューブを握り続けて全ての劇薬(わさび)を社員の鼻の中に出す。
やがて、抵抗は弱くなり最終的には体をグッタリとさせ、時たまビクンビクンと動いているだけになった。
倒れた社員の懐を探ると財布の中に機械質なカードがあった。
多分、これだろう。
ほんの少しだけ財布の中の金を拝借した後、気絶した社員の両手をネクタイで縛り、車の中に入れて閉じ込める。
扉の横にある窪みに先程のカードキーを入れると、ピーっと無機質な音がなるとロックが解除され扉が開いた。
開いた扉をくぐり、中に入って進む。
薄暗い廊下が続いていたが、やがて壁の一面がガラス張りの所に出た。
「………………マジかよ」
機械のアームが絶え間なく動いている先には5mは超える巨大なロボットが作られていた。
至る所にミサイル、ミニガン、レーザー砲といった高火力の武装が施されており、戦闘力は計り知れない。
これだけでも戦車何十輌分あることやら。
まだテーマも発表されてねぇのにこの規模のロボットを作っているとはな。
恐らく国政院との繋がりはあるのだろう。
「……………壊すか?」
一瞬、その考えが脳裏を過ぎる。
だが、シアンちゃんがそれをして喜ぶかどうかだ。
狡をしての優勝なんてシアンちゃんが望むわけがねぇ。
そう考え、俺は何もせずにその場を離れることにした。
「……………後は、資料か」
こんなデカいのを作ってるから設計図くらいあるのだろう。
そう思い、また暫く探索をしてみる。
部屋が連なる廊下を歩き、手当たり次第に部屋に入っていくと目的の場所に着いた。
「流石に掃除は機械には無理だな」
乱雑に書類やファイルが床に積み重なったり散らかったりしている部屋。
その中にある一つの机に開いたままのファイルが置いてあった。
近づいてそのファイルを見るとあのロボットの絵が書かれていた。
手にとって読んでみる。
「おいおい、嘘だろ……………!」
俺はそこに書かれていた事に大きく目を開けてしまう。
おいおい、ここでそんな事がありえるのかよ………………
「……………………字、殆ど読めねぇ………………」
コンパちゃんとあいちゃんにちゃんと教わっておけばよかったァァァァァアアア!!!
そうだよ!
『読む=文字が分からないと意味ねぇ』って事だろ!?
何でそんな初歩的なこと忘れているかねぇ、俺!?
だがしかし、前みたいに全く分からないってことはない!!
俺は机に頭をガンガン打ちつけるのを止めて、今ある知識をフル活動させて文章を睨みつける。
「……………あ……………ち……………く……………すたる…………………」
…………HAHAHA………………泣いていいかな?
そうだよねっ!?
俺って日本語でいう『あ行』から『ま行』しか覚えてないもんねっ!?
アハハハハッッ!!
涙が止まらねぇええ!!!
頑張ってロボットの絵の隣に張ってある写真、その下にある文を読んでみようと思ったが全く読めない。
写真には赤い十字架の結晶体が写っていたが、これって何だ?
それが、ロボットの心臓部に設置されるみたいたが………………
ま、頭の隅に置いておくか。
他の書類を読もうとしたが、やっぱり読めないので置いておく。
はっきり言って、もうする事がないので、施設から出ることにした。
去り際に車の中を見ると社員が起きそうだった。
「う、うぅ~~~ん………………」
「第二の凶器、芥子チューブ!!」
「ぬごごごごごご!!?!!!?!」
顔を見られると厄介なので、次はカラシチューブを鼻に突っ込んどいた。
またも気絶した社員にカードキーを返し、空を見上げて月を見る。
そして、ふと思った。
Q:潜入して何が分かった?
A:ロボットが作られて、博覧会がある事だけ。
Q:他に何をした?
A:社員の鼻にわさびチューブと芥子チューブを突っ込んだだけ。
あ、後、変な結晶体が使われていること。
……………………あれ?
俺、潜入した意味なくね?
「ネプちゃん達、寝たかな?」
只今、パッセ前のシアンちゃんが営んでいる食堂の前にいる。
明かりが消えて暗くなっているが油断はできない。
というかどっち道、朝には会うから気張っても無駄なんだけどな。
俺は扉に手をかけて中に入る。
「あ、悪いけど、もう閉店………………何だオッサンかよ。今までどこ行ってたんだ?」
「ちょこっとそこら辺をブラブラとな」
厨房しか明かりが灯ってない薄暗い部屋でシアンちゃんは一人、テーブルを拭いていた。
俺はカウンター席に座る。
「何か酒とかない?ビールとか」
「だからもう閉店………あー、分かった分かった」
シアンちゃんは渋々と言った感じでジョッキを持ってビールを注ぐ。
「ほらよ」
「ん、どうも………………シアンちゃん、ビールの注ぎ方上手いな」
「そ、そうか?母さんに教わったからな」
泡が潰れたりせずにぴったりとビールの上を覆っている。
この泡のきめ細かさがその秘密である。
この泡はビールの香りが抜けるのを防ぎ、これ以上ガスが発散するのを抑える。
そして、ビールをどんどん飲んでいっても最後までなくならずに、上面を覆い続ける。
綺麗な泡が立つというのは、ビールの冷え加減も丁度よいということの証拠であるのだ。
ジョッキを傾けて一口飲む。
うん、美味い。
「気は晴れたか?」
表情や口調を見る限り、博覧会の件については吹っ切れたように見える。
「正直、まだ、納得はできない。でもいつまでもウジウジしてらんないしな。明日、朝に話した部品屋の所に行ってもらうぜ」
「ああ、任せときな」
ま、直ぐに納得のいくイベントが来ると思うけどねぇ~~。
「なぁ、オッサンが殺し屋っていうのは本当なのか?」
その言葉に思わず飲んでいたビールを吹き出しそうになったが表には出さずに黙々と飲み続ける。
おかしい、どこでバレた?
怪しい格好してるのは認めるが、怪しい事をした覚えはない。
「ネプテューヌ達の会話を盗み聞きしてな」
うぉい…………………あの小娘共……………
一応、俺が殺し屋ってことは秘密なんですけど?
「ネプちゃん達は何か言ってたか?」
「オッサンのことばっかり話してたな。でも、酷いことは全く言っていなかったぞ」
「そりゃ、良かった」
そうじゃなければ、もっと会うのが気まずくなる。
と言ってもネプちゃん達がそんな事言うわけないと思うけどな。
「オッサンが殺し屋ってことは、やっぱり……………」
「先に言っとくけど、俺は気狂いで人を殺したりはしない。依頼がない限り人は殺さない主義だ」
「でも、それでネプテューヌ達と喧嘩したんだろ?」
「良かれと思ってやった。別に仕事に私情を入れるわけじゃないんだが、あの子達は俺を殺し屋と知っていながら俺を軽蔑しない。俺達、殺し屋は人を殺すしかしない道具でしかないからな」
そう、俺達は道具だ。
所詮、それだけの存在としかみられていないからな。
シアンちゃんは俺の言葉が不満だったのか憤りの表情を露わにする。
「そんな事ないだろ……………!オッサンだって生きた人間じゃないかよ!」
「実際、依頼が終わったら情報の口封じの為に殺そうとされた事があってな、知り合いの同業者が何人も殺された」
「…………………」
複雑そうな顔をするシアンちゃん。
まあ、無理もないか。
誰も聖人君子というわけではない。
俺の住んでいた社会は信じることが死に繋がるからなぁ。
「だが、そんな俺をあの子達は仲間と呼んでくれる。俺を信じると言ってくれる。だからこそ、護ってあげないといけないって思ったが……………どうやら俺の方法はネプちゃんが嫌だったみたいだな」
「どうしてそれをネプテューヌ達に話さないんだ?あいつらのことだから話せば分かってくれるだろ?」
「ククク、いんや、もうその必要はねぇよ」
俺の言葉に首を傾げるシアンちゃんを尻目に、俺はカウンター席から立ち上がり、リビングへと繋がるドアへ音を立てずゆっくりと歩み寄る。
そして、ドアノブに手をかけて思いっきり開けた。
「ねぷっ!?」
「わっ!?」
「きゃっ!?」
下から寝間着姿のコンパちゃん、あいちゃん、ネプちゃんがドアから現れ、見事な鏡餅のように重なりなりながら倒れた。
ついさっき、俺がシアンちゃんと話し始めた時からずっとドアから気配がしていたが、やっぱりこの三人娘だったか。
「俺を相手に盗み聞きなんかができると思ったか?」
まだまだ修行が足りぬぞ、お主ら?
絶対零度の笑みを浮かべる俺に三人は汗をダラダラ流しながら視線を俺から逸らす。
視線に耐えられなかったのか一番上にいるネプちゃんは目を泳がせながら話しかけてくる。
「きょ、今日はいい天気だね!」
「今は真っ暗な夜ですけどねー」
「うっ……………………」
どうやら掴みの会話は失敗したみたいだ。
つーか、今の掴みの会話?
まぁ、俺もこんなしみったれた空気なんか嫌だからさっさと本題に入るか。
「ネプちゃん、さっきの話が俺の殺す理由だ。俺はネプちゃん達の為に殺しを止めることはできない」
そうじゃなければ殺し屋なんか名乗ってない。
俺は殺す事しか脳がないからな。
ネプちゃんは悲しいのか顔を伏せる。
「ねぇ、進、言ったよね?『何でも防げるのか』って。あの後、色々考えたんだ。確かに全部護ることはできないよ。でも……………」
ネプちゃんは顔を上げ、今度は真っ直ぐに目を逸らさずに俺の双眸を見つめる。
「でも、困っている人を見捨てるなんてもっとできないよ!!だから、私はこの決意を変えるなんてしないっ!!」
「………………………」
俺はやはりネプちゃんの理想は甘い。
だがそれを忘れる程、決意を固めたその姿は息を飲むほぞ綺麗だった。
「その決意に揺らぎはないか?」
「ないっ!」
俺の質問にネプちゃんは即行で答える。
俺は屈んだ状態から立ち上がる。
「……………………分かった。ネプちゃん、君がそれを望むなら、俺も少し自重しないといけないな。だけど、俺は殺し屋だ。もしもの場合は分かってるな?」
「うん。でも、そうだとしても私がまた止めるもんね!」
「ククク、やれるものならやってみな」
お互い軽口を叩き合いながら笑い合う。
こんな感じになったが、これで仲直りできた。
まぁ、俺はバッドエンドよりもハッピーエンドが好きだからな。
これでいいんだよな、ノワちゃん?
「仲直りしたのはいいけど早くどきなさいよ…………………」
「うぅ~~~~……………重いですぅ……………」
「あははは…………………」
すみません、今回はgdgdな感じになってしまいました。
リバース、買いましたっ!!
感想は………………あいちゃん、妙に優しくね?そして、敵強くねっ!?
まだまだ序盤なのに、すでに何回もゲームオーバーの危機に陥ってしまいました。
まあ、それでもネプちゃん、ノワールは可愛いんですけどねっ!!(キリッ!