超次元ゲイムネプテューヌ ~殺し屋の異世界見聞録~ 作:鉄の字
「んが………………」
知らない天井だ…………………
目が覚め体を起こして辺りを見回したす。
どうやらソファーに寝ていたようだ。
道理で体が痛いわけだ。
あーーーーーー、夢で誰かに何か頼まれた気がする………………
ネプちゃんの事は覚えてるんだが…………………………ま、いっか。
見渡した限り、家具や至る所に縫いぐるみと可愛らしい小物を見るとここの部屋の人は女性らしいな。
さらに見渡すと俺のコートとスーツがハンガーに掛けられていた。
そして、その下には俺の刀と銃。
おいおい、警戒しなさ過ぎだろ。
「よかった。目が覚めたみたいですね」
なんて思っているとドアが開いた。
ドアからはフワフワとした雰囲気に薄いオレンジの色の髪にカチューシャを付けた女の子が入ってきた。
おぉ!?
中々デカい!!
どこが?とはあえて言わないが。
「お体の具合はどうですか?」
治療道具が入っているであろう箱をテーブルに置き、フワフワした雰囲気とよく似合う間延びした口調で問われ、俺は腕や首などを回したりしてみる。
「おー、大丈夫大丈夫。快調快調」
「そうですか。ならよかったです」
「お嬢ちゃんがここに運んでくれたの?ありがとうな」
「いえいえ、此方こそソファーで寝させて申し訳ないです。お連れの方がベッドを使っているのでやむを得ずです」
「連れ?」
お嬢ちゃんが言ったことに疑問を抱き、ソファーから立ち上がりベッドに近づき、お嬢ちゃんが言う『連れ』の顔を見る。
「うへへ~、もう食べられないよ~~……………」
幸せそうな笑顔を作って寝ているネプちゃんがいた。
今時食べ物の夢とは何てワンパターンなんだろう。
「あれ?仲間じゃないのですか?同じ所で突き刺さっていたのでそうじゃないかな~と思ったんですが…………」
「いや、まぁ、精神世界で会ったつうか、何つうか……………」
「???」
取りあえず突き刺さっていたという言葉はスルーしよう。
お嬢ちゃんの頭にハテナマークが浮かび上がった時にネプちゃんが目蓋を開けた。
「あれ?ここどこ?私の部屋?」
まだ眠気なまこって感じのネプちゃんは頭をユラユラと揺れている。
「あ、目を覚ましたですね?おはようですぅ。と言っても、もうお昼をまわってるですよ?」
「えーと。…………私の部屋じゃないよね。アナタの部屋?何で私はベッドに寝てたの?」
「そう、それは昨日の夜の事ですぅ…………ベランダで夜空を見上げていたら、二筋の流れ星。…………それがアナタ達だったです」
「私達だったですか…………なんか一気に展開はしょられた気がする。ん?アナタ達?」
「よっ、ネプちゃん」
俺が声をかけるとネプちゃんは俺の方を向く。
俺の姿を確認したネプちゃんはぱぁっと笑顔になった。
「あーー!!進だ!!さっきぶりだね!」
「おう、どうやら同じ所に落ちていたみたいだぜ?このお嬢ちゃんが運んでくれたのだとさ」
「え!?一人で運んでくれたの?すごーい!!見かけによらず力持ちぃ!ありがとー、でも大変だったでしょー?」
「わたし、看護学校に通ってるです! 研修でも患者さんに見立てた人形を運んだりするですから、慣れてるです!わたしは、コンパっていうです。えーと……………」
「俺は進。漆谷進だ。よろしくねコンパちゃん」
「私はネプテューヌ!コンパね、じゃあこんちゃんとかかな……………。いっかコンパで」
「よろしくです!ねぷりゅーにゅさん!………ねぷりゅー………ねぷてーにゅ…………ネ、ねぷ…………てゆー…………む、ねぷて、ゆーむさん」
噛みまくりのコンパちゃん。
うんうん、分かるぞ分かるぞ。
舌を噛まないだけマシだよ。
「あーちょっと言いにくいよね。自分でもそう思うし、進もそうだったもん。いいよ、ネプちゃんでもネプ公でもねぷねぷでもネプえもんでもー」
「じゃあ、ねぷねぷと呼ぶです。よろしくです!ねぷねぷ、進さん」
お互い挨拶したところでコンパちゃんは救急箱の蓋を開けた。
「そう言えばねぷねぷ。運んでる間に気付いたですけど、色々なところ怪我してたです。ちょっと診てあげるです」
確かにネプちゃんは高い所から落ちてきたせいか擦り傷など至る所にある。
俺?
俺は体めっちゃ頑丈だから。
「あーホントだ所々擦りむいてる。ありがと!そう言えば看護学校生…………だっけ。じゃ慣れてるよね」
「そうですけど、でもまだ入学したてで。…………それにわたし、結構不器用なんです。包帯巻くのも苦手で、よく絡ませちゃうです。進さん、すみませんが…………」
「あー、オッケーオッケー。終わったら呼んでね~」
「そうそう。じゃないと進は私の美少女ボディに鼻血ブーだもんね」
「安心しろペッタンコには興味ないから」
うんうんと頷いているネプちゃんに俺はボソッと呟くと、ネプちゃんの頭からカチンッ!と音が聞こえた気がした。
「ペッタンコじゃないもん!!まだ将来に希望があるもん!!」
「希望?へぇ~~…………………………ぷっ」
「ムキャーーー!!!」
襲いかかってくるネプちゃんの頭を抑える。
まぁ、手のリーチ故かネプちゃんは俺を殴ろうと必至に腕をブンブン振るが俺には届かない。
「はいはい、ねぷねぷ落ち着くですよ。擦り傷でも放っておくと大変ですからね?」
「離してコンパ!!進には私の素晴らしさを10時間みっちり丁寧に教えてやるんだから!!!」
それは嫌だな。
コンパちゃんに抱きかかえられながらもこっちを睨むネプちゃんを尻目に俺は部屋を出た。
ドアを閉め廊下の壁にもたれてボーッと天井を見る。
これからどうするか………………
彼女達は俺にとっては縁もない子達だ。
このまま去るのも一つの手だが、ここがどこか分からないまま動くのもマズい。
せめて、場所を聞いてから考えるか。
…………………ここが別世界って気がするんだけどなぁ…………………
「ん?ん?んー??!そ、そんな一生懸命巻かなくったっていいよっ!? もっと丁寧に……ゆっくりでいいから」
「でも、動いている内にほどけちゃったら危ないです。踏んで転ぶかもしれないですぅ!んしょ、んしょ………んしょんしょ、いーしょっ!」
「ねぷっ!!??あー!おーっ!うえーっ!!キツいー!!折れるーっ!締ーまーるーっ!!……ガク」
「ね、ねぷねぷ?……キツすぎたです!!気をしっかり持つです、すぐにほどいて巻き直すですから…………えいっ!!」
「だから締まるって!余計に絡まってるー!解こうとしなくていいから!ハサミ……はーさーみぃっ!手に持たせてっ!自分でやる…………!」
…………………………………あーーーーーーーーーーー、この先が不安だわ。
「そう言えばさー……縛られてる間ずっと考えてたんだけどココって一体何処なの?」
「そうそう、俺もずっと聞きたかったんだ」
自分でやったのかネプちゃんの巻き方は余りに不自然だったので頭とか手とかは俺が巻いてやった。
「し、縛ったんじゃないです、巻いたんですぅ! 此処はプラネテューヌの丁度真ん中。中央市街の端っこです」
………………………………どこだ?
「プラ…………プラネ?プラネテューヌ?むー、分っかんないなぁ。そう言えば下界とかなんとか言われたよーな」
「はい。下界ですよ?ここは守護女神様のいる神界から隔てられた下界の大陸の一つ、プラネテューヌですぅ!」
この時点で『地球のどこか』と言う希望は某赤い配管工のおじさんのジャイアントスイングの如くぶっ飛んで行った。
「コンパちゃん、それって他に大陸があるの?」
「はいです。4つの大陸が、空に浮かんでて互いに近づいたり、近づかなかったりしてるです。あの……もしかして、覚えてないですか?」
「うん、全然心当たりなーいっ!プラネテューヌ?大陸?もう、さっぱり!」
「 さては……記憶喪失ですね?初めて見たです。……打ち所が悪かったのかもしれないです。えーと、進さんもですか?」
「あー、俺、別世界から来たから」
「「…………………………………」」
やめて!!
そんな窓の隙間で死んでひっくり返ったハエを見る目で俺を見ないでっ!!
本当だもん!
本当なんだもん!!
取りあえず、何とか説明して誤解は解いた。
文化レベルが地球と殆ど同じらしいから証明する物なくって時間かかったなぁ。
どうやらネプちゃんは自分の名前くらいしか覚えてないらしい。
後は体に染み付いている剣の使い方くらいだとか。
んで、その後の展開を簡単に説明すると
ここ最近、モンスターが急増。
↓
軍隊も手が出せず守りに徹している。
↓
どこかにモンスターを生み出すボスがいる!(ネプちゃん談)
↓
そのボスを倒すのが私に託された使命なんだ!!(ネプちゃん談)
と、言った具合になり。
何故かコンパちゃんもノリノリで参加を名乗り上げ、なし崩れに俺も手伝わされる事になった。
そりゃ、金にならねぇから最初は断ろうとしたぞ!
だけど断ろうとしたら『進はもうパーティーに参加したんだよ!パーティーは運命共同体!抜けるのはナシ!!』の一点張りだったからな!!
コンパちゃんはコンパちゃんで『進さん、どこか行くのですか………………?』って泣きそうな顔するし!!
もう、手伝うしかねぇじゃん!!!
そんな事があり、コンパちゃんがネットでモンスターがたくさん出てくるダンジョンを調べ、明日そのダンジョンへ行くこととなった。
ファンタジーの世界で技術が進むとパソコンでダンジョンが調べられるんだな……………
「はぁ~~………」
そんな異世界事情のせいか、または脳天気な二人の少女達のせいか俺はベランダで満天の星空を眺めながら煙草を吸って、煙混じりのため息を吐いた。
「進~、そんな所で何してるの?」
窓が開きそこから脳天気二人組の一人ことネプちゃんがやってきた。
「いんや、ちょっと気分転換だ」
「気分転換って煙草!?駄目だよ煙草なんて!体に毒だよ!動く度にHPが1減るんだよ!!」
「いや、そんな古臭い毒ないから。大丈夫だってこの一本でやめるから」
あんまり副流煙はネプちゃんに吸わせたくないからどこか行って欲しいんだけどなぁ。
「ねぇ、進が殺し屋って本当?」
突然にネプちゃんがそんな質問をしてきた。
あー、俺が違う世界から来たって説明するとき一緒に言ったんだっけな?
「ああ、そうだな。または暗殺者だとか呼ばれてたっけな?」
「おっかしいなぁ~。だってフード被ってないし、全身タイツに髑髏の仮面付けてないよ?」
「それは違う暗殺者だからな!?」
フードの方はカッコいいけど全身タイツは弱すぎる!!
「じゃあやっぱり…………………」
「おう。何人も人を殺した」
ま、そうじゃなければ殺し屋じゃないからな。
殺し屋っつうのは金を積まれれば何でもやり、闇に紛れ人を殺す臆病者でもあり、常に嫌われる存在である。
今更隠す必要はないのだがネプちゃん達の関係がギクシャクするのは嫌だな。
「そっか」
だが、覚悟していたがネプちゃんの返事は案外普通だった。
「ん?意外とあっさりしてるな?もっと怒るものかと思ったけど?」
「んーー、だって進は良い人だって私の勘がそう告げている気がするの!」
なんじゃそりゃ…………………
全く根拠になっとらん。
「わからないぞ?もしかしたらもの凄い極悪人かもしれないぜ?」
「だって信じてるから!」
「はあ?」
「進はパーティーの一員だし、仲間は信じないとね!!コンパもそうだよねっ!!」
「はいそうです!」
いつの間にそこにいたのだろうか?
コンパちゃんはギュッと拳を作ってベランダに立っていた。
「確かに進さんは悪い事を沢山したかも知れません!でも、進さんは悪い人じゃないとパーティーの私達が信じないといけないのです!!」
悪い事をしているが、悪い人じゃない……………
何か矛盾してるんだが、コンパちゃんが言うと妙に説得力あるな。
「おー!!コンパ、仲間思ぃー!!その意気だよ!よぉし、この固い絆で世界を救うぞぉーーー!!」
「はいですぅ!!」
『エイエイ!オーー!!』とやっている二人にまたもやため息を吐きながら煙草を吸う。
だが、何でだろうな?
無意識の内に俺の口角は自然と上がっていた。
信じる………………か。
すっかりご無沙汰になっていたその言葉。
だけど、不思議と悪い気分ではなかった。