超次元ゲイムネプテューヌ ~殺し屋の異世界見聞録~ 作:鉄の字
「ねぇねぇ、何で早く他の大陸に行かないの?」
「だからさっきコンパちゃんが説明しただろ?今プラネテューヌに接近している大陸がないんだよ」
はてさて、これで何回目やら。
町の依頼でサンドワームとやらを退治するため今、洞窟の中を進んでいる途中だ。
さっき言った通り接近している大陸がないから暇なので街救い兼路銀稼をしている。
一昔前のRPGのように一列で前からネプちゃん、コンパちゃん、俺の順で並んでいるが一向にモンスターがでない。
ここはそんなにいないのか?
周りを見渡すと自ら発光する鉱石が至る所にある。
安全な観光名所なら幻想的な風景だがモンスターがいると思うとどこか不気味だ。
「進~、武器取り替えっこしようよー」
「何故この状況でそんな提案ができるんだ?」
「それは私だからだよっ!」
成る程、つまりAHOだと。
ネプちゃんの手には先程、ショップでコンパちゃん出費で買った刀がある。
最初は『これ以上コンパちゃんに出費してもらうのはやめよう』とネプちゃんに言ったがコンパちゃんは『私達はパーティーですから遠慮は無用です!』と言ってきた。
なんと良い子なんだろう……………
お兄さん不覚にも涙がホロリと来ちゃったよ。
ネプちゃんにも見習わせたい程だ。
「進、変なこと考えてない?……………はっ!?私の体はダメだよ!」
「そういう台詞はボンッ!キュッ!ボンッ!になってから言え。ほら、貸してやるからよ」
自分の体を抱きしめるかのようにして叫ぶネプちゃんに冷静にツッコむ。
変身後は結構俺好みなんだけどなぁ~
鞘ごと渡すとネプちゃんの腕の長さで三尺以上はあるこの刀が抜けるかどうか分からないので、刀を抜刀した状態で渡す。
「ねぷっ!?」
手を離した途端、ネプちゃんの姿勢が前屈みになり、刀が地面に叩きつけられる。
おーおー、脚がプルプル震えて生まれたてのバンビみたいだな。
「おもっ!?何これ!?重すぎるよー!進って何時も亀の甲羅並みに重いもの背負って生活してるの!?」
「そんなに重いか?」
「進さん基準で考えてはいけないと思うですぅ……………」
あ、そう言えば師匠が『この刀は超合金Z入りだから』とか言ってたな。
あのエロ爺、最後まで超合金Zが何か説明しなかったが。
とてつもなく硬い物質ってのは分かるんだがな。
因みに俺のベルトにも超合金Zが入ってます。
「ぬおー!!くおー!!刀ごときが私を……………私を舐めるな!!ぼてくりこかすぞきさぁぁぁぁぁぁぁあんんんん!!!!」
何で北九州弁知ってんだよ。
それと俺の刀にそんな暴言吐かないでください。
ネプちゃんの熱意に負けたか(負けて欲しくないけど)刀は先はピンッと天井に向かって立った。
「うぉっとっと!」
だがそれも束の間、ネプちゃんが重さで
あっちへよっとっと。
こっちへよっとっと。
といった具合にあちらこちらにうろちょろし始めた。
「ねぷねぷ、そこら中岩だらけですから転けると痛いですよぉ~」
コンパちゃんは心配そうにやんわり注意するがネプちゃんはおぼつかない足で左の道に逸れる。
俺も少し心配しながら先程ショップで買った煙草に火を点けた。
銘柄はプラボロ。
味は………………向こうとあんまり変わらないな。
「ねぷっ!?」
予想通りか、ドテンッ!とネプちゃんの転ける音と
「キャァァァァァアア!!!?」
予想外の声が聞こえた。
………………………ん?
刀を持ったフラフラのネプちゃん+知らない人の悲鳴=
……………………………殺人!?
「ネプちゃぁぁぁぁぁぁぁぁああん!!!!!」
「ねぷねぷぅぅうううう!!!」
その歳で殺しはいかんぞぉぉおお!!!
人のこと言えないけど!!
俺とコンパちゃんはすぐにネプちゃんが消えた曲がり道に急ぐ。
そこには刀を手に倒れたネプちゃんがいた。
「ネプちゃん!!人を殺してないか!?」
「え!?私の無事よりそっち!?」
ガーンとなっているネプちゃんの近くには尻餅を着いてとてもびっくりしている女の子がいた。
「ちょっと!こんな洞窟に急に刀が現れたから何かのトラップかと思ったじゃない!!それよりあんた!何でそんな危なそうな刀持ってるのよ!?そもそもここはあんた達みたいな子供がうろついていい場所じゃないの!」
袖が長いコートを着て、明るい栗色の髪を背中まで伸ばした少女は勝ち気な目をさらに鋭く尖らしてこちらを睨みつける。
俺、大人なんだがなぁ…………………
「子供って、人のこと言えないでしょ!だいたい誰!ここの人!?」
「あんたには私がホームレスか何かに見えるの?私はアイエフ。モンスターを倒してほしいって協会に頼まれてきたの、あんた達は何!」
アイエフと名乗った少女はビシッと俺達に指を突きつける。
こらこら、人を指で指しちゃいかんよ。
「私達は街の人が困ってたから来たの!………………そっか、じゃあ目的は同じなんだ。私、ネプテューヌ!で、後ろにいるのがコンパと進!」
「 コンパです。は、はじめましてです。趣味は手芸、特技は暗算です。意外でしょうです?でも、ちょーっと自信あるですよ」
少し戸惑いながらも完璧な挨拶をするコンパちゃん。
じゃあ俺も……………
「俺は漆谷進。趣味は殺………………じゃなくてコロコロの毛を取る事。特技はパルクールです」
「あんたが一番怪しいわよ!何よコロコロの毛を取る事って!?それとパルクールって何!?」
あ、怪しいだと!?
何も怪しい所はなかった筈!
後、パルクールについてはググれば出てくるから!
「あー、その、俺、何でも屋をやっててな。この子の護衛やってんだよ」
近くにいたネプちゃんの頭をポフポフと叩く。
むむ、ツンツンした頭ながら何だこの犬や猫のようなモフモフ感は。
温い上に押せば元に戻る柔らかさ。
やべ、癖になるな。
「へぇー、そうなの。ま、今は置いとくわ」
「まぁ、好きにしといてくれや」
まだ警戒はしているもののこれ以上の追求はしてこなかった。
ネプちゃんから刀を返してもらい鞘に収め、ネプちゃんの刀を返した。
つーか、コンパちゃん以外年上に敬語を使う子がいないんだが。
「俺を警戒する前にここの案内してくれないか?どうやら街と協会の二重依頼になっていたんだから目的は一緒だろ?」
「何で私が…………でも大勢の方が効率はいいかもね。いいわ、仲間になってあげる。ただし!エスコートはあんた達がしなさい!!」
「本当に仲間になってくれるの!?こんぱ、あいちゃんもパーティ入るって!」
「入るのは構わないけど、ちゃん付けはやめて。柄じゃないから」
「んじゃ、よろしくな、あいちゃん」
「私の話、聞いてた?」
アイエフもといあいちゃんはジト目で俺を睨む。
むぅ、駄目か。
まぁ、駄目だとしても呼び続けるけど。
「四人そろってやっとパーティーっぽくなったです!これからはずっと一緒ですね!末永くよろしくです、アイエフ……さん」
「はいはい、よろしくよろしく。……………でも、ずっとってなに?しばらくの間だけよ。このダンジョンの中だけの付き合いなんだから」
そりゃそうだろうな。
元々赤の他人だったしな。
いわば臨時パーティー、またはゲストみたいなものーーーー
「ぶぶー!私達四人はもうパーティー!逃げたくっても逃げられないよ!?パーティは勝手に逃げたり、はけたり、ノシしたりは世界ルール違反で天罰ものなんだから!わかる?」
出たよ、ネプちゃんのパーティー節。
「な、なんか良く分かんないけど……………わかったわ」
哀れ、目をパチクリさせてるあいちゃんはどうやらネプちゃんによってほとんど強制的にパーティーに入れられましたとさ。
「あれ?行き止まりかな?」
「みたいです」
目の前には壁。
歩いて来た道には残念ながらサンドワームどころかモンスターにすら出会わなかった。
「どうやら道を間違ったみたいね。戻りましょう」
来た道を戻るあいちゃんに続きネプちゃんとコンパちゃんもあいちゃんと同じように戻りだした。
「………………………」
「進、どうしーーー」
「構えろ」
「「「え?」」」
確かに行き止まりだが……………
何だろうなぁ、このーーー
ーーー上から感じる粘りつく気配はよぉ?
上には天井に無数に張り付く虫が丸い口を開けて俺達を見ていた。
「む、虫ですぅ!!」
「一昔前の落ちてくるパズルゲームのようにビッシリと張り付いてるよ!!」
「い、いつの間に……………!?」
依頼した人が言っていた姿と一致している。
あれがサンドワームか。
ふと、俺の視界に今にもあいちゃんに落ちてきそうなサンドワームが入る。
「あいちゃん、上だ!!」
俺は走り出し、サンドワームが落ちてくるタイミングに合わせてジャンプ。
両足を合わせて芋虫のような体に矢の如く脚を喰らわした。
「某お笑い芸人の伝家の宝刀、ドロップキックゥゥウウウ!!!」
とどのつまりただのドロップキックです。
気持ちの悪い甲高い声を上げたサンドワームは壁に叩きつけられ、俺はあいちゃんの近くに着地した。
「大丈夫か?」
「え?あ、ありがとう……………」
「進!どんどん落ちてくるよ!」
「あん?」
サンドワーム達は俺達を囲むように落ちてくる。
おーおー、23年間生きてきて人に囲まれることはあるが、モンスターに囲まれることはなかったな。
数は約30匹。
こっちは4人。
数は劣り、地形も不利。
だが、質はこっちが遥かに高い。
「個々は強くねぇ。さっさとぶっ飛ばすぞ!」
「これでラストォ!!」
ネプちゃんが刀を振り下ろし、最後のサンドワームが狩られた。
…………………本当にあっけなかったな。
俺は本日………何度目かは分からないが定番の喫煙をすることにした。
「ねぇ」
「んぁ?」
口の端から煙草の煙を出しながら声のする方へ向くとあいちゃんが背の高い俺を見上げていた。
「えーと、その、さっきは助けてくれてありがとう。それとあんたの事、警戒していてごめんなさい…………」
ペコリと頭を下げるあいちゃん。
気は強いけど、ちゃんと礼儀があってとてもいい子なんだよな。
「いいのいいの。ピンチな女性を助けるのが男の役目だからよ」
「あんた、それ自分で言って恥ずかしくないの?」
「ははは、歳になるとどうも羞恥心なんてなくなっちまうんだよな」
殺し屋ってことを隠している事に若干罪悪感を感じるけど、いつかは言わないとな。
「あのぉ、進さん、さっきから気になっていたのですが……………」
「ん?どうしたコンパちゃん?」
「進さんはどうしてアイエフ………さんに殺し屋のこと隠しているんです?」
「…………………殺し屋?」
……………………………ちょっとコンパちゅゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあんんんんん!!!!?!??!!?
カミングアウトは予想以上に早かった。
皆さん、お忘れかもしれませんが進は殺し屋です。
何故、この話をしたのかは次話でわかります。