リンクス&ネクスト   作:零壱

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天敵、決意す

 戦いの後、大破したストレイドの中でリンクシィは目覚めた。

 今までずっと気絶ししていたらしい。奇跡的にも彼女は装甲に押し潰されなかったようだ。

 しかし、動けない。リンクシィは潰されていないとはいえ、その周囲は完全に潰れていた。よって、身動きが取れない。

 

 このまま忘れられる……なんてことはない。

 現に、ガシャリと金属のこすれ合う音が聞えていた。

 

「よっと! おぉ、ご無事で何よりです。さぁ、手を」

「奇跡的に、ね。……ありがと」

 

 ストレイドの装甲をひっぺがしたエルネスティはリンクシィに手を差し伸べた。彼女はその手を取ってストレイドから脱出する。

 リンクシィが出た瞬間、ストレイドは音を立てて崩壊した。機体を辛うじて維持していた魔力が完全になくなり、ストレイドは文字通り死んだのだ。

 だが、操縦者であるリンクシィが無事に救出されるまで耐えて見せたのは誇りだった。

 

「あぁ……この様子だと魔力転換炉もダメになってしまいましたね……残念です」

 

 幻晶騎士の特性として、魔力転換炉と魔導演算機さえ無事であればどれほど大破しようと修復することができる。最悪、別の筐体に搭載してもいい。

 しかし、魔力転換炉は破損すると復元が不可能だった。なぜなら、その製法は公にはされておらず、製造も国家機密に行われているほど。よって、破損した場合は捨てるしかなかった。

 

 リンクシィもそのことは知っている。だからといって、ストレイドを捨てる気はなかった。

 残骸の回収に来たヤントゥネンの騎士たちに全てのパーツを研究所に運ぶよう頼んだ。研究のためにたとえ破損していても必要だと言うと、彼らは頷いた。

 

 

「プロジェクト次世代機(ネクスト)、ですか」

 

 ヤントゥネンの砦へと帰還する馬車の中で、エルネスティと二人きりになった頃合いを見計らってリンクシィは自分の参加しているプロジェクトとストレイドについて彼にすべて話した。

 

「計画自体は数年前からあったのだけど、試験操縦者が見つからなかった。だから、プロジェクトは中止になって、ストレイドは今まで埃をかぶっていた」

「ですが、超人的な立体起動を行える貴女が現れ、計画は再始動した、と」

 

 リンクシィは首肯した。

 彼女は従来の幻晶騎士では考えられないほどの高機動を実現して見せた。それは前世の機体があまりにも狂った設計であり、嫌でも習得しなければならなかった技術の応用だった。

 その操縦技術は“次世代機”計画考案時、どうしても揃えられなかった要素だった。

 

 結果、高等部になったばかりにも関わらず、リンクシィは次世代機の試験操縦者に選ばれ、ストレイドを動かしていたのだった。

 

 それを聞いたエルネスティはひどく羨ましがった。

 

「僕も参加させてもらえませんかねぇ?」

「無理だと思う。操縦技術はともかく、身長が足りてないし。万年金欠の研究だから、専用の操縦席を用意する余裕なんてないと思う」

「でしたら研究員として!」

「というか、そもそもこの計画は極秘だから、エルネスティが知っているのがバレると私が困る」

「そんな!! ここまで焚きつけておいて我慢しろと仰るのですかっ⁉」

「おっしゃるのです」

「そんなぁ……」

 

 がっくりと項垂れるエルネスティ。

 いくら彼でも、リンクシィに迷惑をかけてまで研究への参加を望むわけにはいかない。

 と、半ば諦めかけていた所で、リンクシィが笑っていることに気づいた。

 

「なんです? 勝者の余裕の笑みってやつですか? 喧嘩ですか? あぁん?」

「……私からエルネスティに利用価値があると伝えれば、彼らも納得するかもしれない」

「……なんですって」

 

「どうする?」リンクシィが意地悪な笑みを浮かべて訊ねる。

 エルネスティはその場で見事な土下座をかまして「お願いしますっ!!」と頼み込んだ。

 

「もし……」

「?」

「もし、次世代機が完成したら、エルネスティは何をする?」

 

 リンクシィは笑みを引っ込め、真剣な顔でエルネスティに問う。

 蒼い瞳には恐怖の色が見えた。何かに怯えている。

 

 

 エルネスティは少し考える素振りを見せると、

 

「そうですねぇ……さらに研究します。新しいロボットを作ったり、新しいパーツを作ったり、またさらに次世代の機体を作ったりします。ずっと作り続けます。ずっとその道を走り続けます」

「きっと、誰かに利用される」

「でしょうね。でも、そうはさせません。僕の愛するロボットは僕だけのもの。操縦者など所詮はパーツの一つに過ぎませんからね。ロボットはロボットのために、そして、僕のためだけにあるのです!!」

 

 エルネスティの答えはあまりにも常軌を逸していた。いっそふざけているようにも思える。しかし、どこまでも強い意思を孕んでいた。揺るぎない信念を感じさせた。

 リンクシィは驚きに目を丸くしたが、次の瞬間には噴き出していた。エルネスティらしい答えだと、安心したのだった。

 

「そっか」

「そうです。考えて頂けますか?」

「……うん。考えとく」

「その言葉、撤回させませんからね!」

「はーい」

 

 リンクシィはストレイドの残骸が積んである荷台に目を向けた。

 

 もし、また戦争が起きて、幻晶騎士が多くの人々を傷つけることになったら、私は君と一緒に、今度は人々を守るために戦いたい。だから――

 

「……ストレイド、待ってるから」

 

 

 かつて、同じ名を持つ愛機は大量殺戮の道具として蔑ろにしてしまった。その手は多くの血と硝煙に汚してしまった。

 だが、今度は間違えない。今度こそ、誰かを守るためにその力を行使する。

 

 揺れる馬車の中、東の山際に上りつつある太陽を眺めながら、リンクシィ・カラーディアは胸に決意を抱いた。

 

 すべては平和のために――

 

 

to be continued...




これにて本作は一旦完結です。
何分勢いで書いていたのでかなり雑な仕上がりになってしまいました。
なので、後日、短編としてまとめ直します。

失敗したなと思っています。
ぶっちゃけAC要素があまりにも少なすぎる。
もはやオリジナルとタグを変えた方が良いレベルな気がします。
あと、天敵要素が微塵も感じられない。
大西域戦争スタートにした方が良かったのかもしれません。

反省点しか見つからない。
これはひどい。
しかし、久しぶりに書いて、きちんと投稿した気がします。
今まで投稿する以前に消してましたから。
それに、投稿しても途中で消してましたから。

まぁ、私情はどうでもいいとして。
これにて『リンクス&ネクスト』はお終いです。

ご閲覧ありがとうございました。
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