黒は白には染まらない   作:RGT

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 皆さんの言いたいことは前々から非常によくわかっていました。ようは早乙女の言動が軍人らしくない。見ていて不愉快。書き直せということですよね。
 この事態の招いたそもそもの原因が下調べを一切しないで執筆作業を始めたのが100%悪いのは理解していますし、このせいで中途半端ななものとなり不愉快な気分にさせたのなら本当に申し訳なく思っています。

 しかし現実問題ここまで話を進めてしまった手前、それをすると大幅な修繕を加えなければならなくなりそれは作者的にも面倒くさいことをわかってほしいのです。だからこそ今こうして軌道修正をしている最中です。私は言いたいのは一つ。

 軌道修正している最中だから少し待ってくれ。

 これだけです。


一週目基礎トレーニング

 新任着任早々の艦娘による脱柵は後にも先にも起こり得ない前代未聞の大事件として次の日には海軍最高指導者元帥直々の呼び出しがかかるという一つ二つ上を行く予想外の事態を招いた。

 

 二日と経たないうちに尾を引き始めた事件はとどまることを知らず、長門・ヴェールヌイ・龍驤の三教官から艦娘は一切教えを乞うことなく三人は所属鎮守府へと帰投させられることになったり、東京から長崎佐世保の地へととんぼ返りしてみせた早乙女の階級が中将から少将へ降級していたりと、様々なところで騒動の爪痕を目にする。

 

 人から人へ、艦娘から艦娘へ、妖精から妖精へと佐世保海軍基地全体がこの話で持ち切りになると、故意か必然か大きくなったありもしない噂が飛び交い、鎮守府全体が浮足立っているのが見て取れた。

 こうしたことから早乙女は事態の収拾並びに認識の一致を図るべく、すぐさま情報共有を執り行うとこれが功を奏し、人伝の出任せは力を弱めると鎮守府内は徐々に本来の落ち着きを取り戻していく。

 しかし、未だ尾を引くそれは再び新たな爆弾を鎮守府に投下した。

 

 日も沈みだした夕暮れ時の執務室の扉を二度ノックする音が響く。

 早乙女は先の騒動で滞っていたここ三日分の執務作業を片付けていくペン先を休ませ、文面から扉へと視線を向けると中に入るよう促す。「失礼します」の声が四度耳に届き、早乙女の前に四人の男女が横一列に並んで見せた。

 早乙女は彼そして彼女らのことは知らない。ただ何者なのかは既に検討がついていた。早乙女から見て一番右手に立つ女性軍人が一歩前に出ると口を開く。

 

「お初にお目にかかります早乙女海軍少将。元帥の命により本日付で大本営よりここ佐世保第三鎮守府に赴任してきました千斗千夏です。よろしくお願いします」

 

 一人目の女性教官千斗千夏に倣う形で二人目の男性教官滝口連、そして艦娘の大鳳型1番艦装甲空母大鳳と川内型2番艦軽巡洋艦神通はそれぞれ自らの名を述べると早乙女に対して敬礼して見せた。

 

「話は元帥から聞いている。訓練における指揮は君たちに一任する。よろしく頼む。君たちも知っての通り私も考え方を改める必要がある。何かあれば言ってくれ。以上だ」

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

 

 そして迎える次の日。千斗達四人の教官は朝早くから艦娘を演習場に呼び寄せた。

 

「大本営より君達の教官に抜擢された千斗千夏だ。私たちは一か月という短い時間で君たちに戦争を叩きこむ。ここで質問だ。今君たちに足りないものはなんだ?青葉答えろ」

 

 千斗はいきなり青葉に対して質問を投げかけた。青葉は視線を動かし考える素振りを見せると演習時の反省を踏まえて射撃精度だと答えた。

 その場に立ち会っていない千斗は確かにそれもあるかもなと曖昧な返答をすると次から次へと艦娘達を指名しそして答えるよう指示を出す。艦娘達は持久力や筋肉力などの肉体面ややる気や心構え、チームワークと言った精神面的なことなど一人ひとり違った答えを口にする。

 

「確かにどれもこれも大事なことだ。現時点でもっとも足りないことは先ほどから上がっているように君たちの肉体づくりだ。これが基本となりこれができなければ他のことをやったところで中途半端なままだ。まずは一週間肉体づくりに全力を注ぐ。強くなりたいのなら、生きて戦場から帰ってきたいのなら言われたことを正確に聞き、完ぺきにこなせ。分かったな!」

「「「はい!!!」」」

「よし、まずはここから6キロの持久走だ。設定タイムは30分。これを超えたものはペナルティだ」

「滝口、彼女達を走らせろ」

「了解」

 

 そういい終えると近くで千斗の教官姿を後方で眺めていた早乙女のもとに彼女は近づく。

 

「早乙女少将この時点でお伝えすることは二つです。一つに暴力はいかなる時にもご法度です。暴力に訴えかけることで一時的に従わせることは可能ですが暴力では彼女達を鍛え上げることはできません。しかしだからと言って怒らないのは逆効果で我々に対して舐めた態度をとるような輩が出てくる可能性もあります。よって体罰の代わりに罰として筋力トレーニングのペナルティと指導を行います。詳しいことはまた後程。二つ目に訓練の意味を考えさせるのではなく、初めから教えるのです。本人たちも疑問を持ってやるよりかは一層の効果が期待できます」

「………」

「早乙女少将?」

「あぁ、済まない。体罰は何も生まない。君の言うことはもっともだ。私も考えを改めなければならないことは十二分に理解している。ただ一日で今までの考えを否定するのはいささか厳しいものがな。………すまない、もう少し時間をくれ」

「構いませんよ」

 

 島風と雪風を除いた計14名の艦娘は一つの塊を作って折り返し地点に向けて堤防を走り始めた。その後ろをSUVに乗った滝口と大鳳がゆっくりと最後尾に追従していく。

 

「早乙女提督の葛藤私にはよくわかります」

「え?」

「お恥ずかしいながら私もここに落ち着くまでは艦娘に限らず若い者達に手を挙げていましたから。五年前を知る人は皆そうです。私も二度とあんな大惨事を起こさないようにと必死でした」

「そうか。君もあの時前線にいたのか」

 

 しばらくすると続々と荒い呼吸で汗水たらしながらゴール地点を艦娘達がくぐっていく。神通はゴールを過ぎた一人一人のタイムを読み上げると、バインダーにペンを走らせる。そんな中、曙のタイムを読み上げた神通の眉間にしわが寄る。休もうとする彼女を呼び止め自分の前に立たせた。

 

「曙さん。あなたのタイムは34分です。千斗教官は30分までに帰って来いと言ったはずです。両手をついてください。腕立てです」

 

 走り終わり休憩もなしに曙は腕立ての体制をとると、声に出して数を数えていく。曙を境に後続に続く全員が腕立てをする。その間ノルマを達成した者達は暫しの休憩を得ることができていた。神通は腕立てをする全員に向かって声を張り上げた。

 

「貴方たちはノルマを達成できなかったからペナルティを受けていることを忘れないように。私たちは何も理不尽にやらせているわけではありません。腕立てをやりたくなければ、ノルマを満たすことです」

 

 それからというもの文字通り地獄の訓練が始まった。持久走から始まった訓練は休憩なしで腕立て、懸垂、腹筋と三つのローテーションに一人の教官が付きっきりで見張られ、体がつぶれたり、ちゃんと上まで上がらなければもう一度最初からやり直させられる始末。

 お互いに声を掛け合い励ましあっていた彼女たちもいつしか皆他人の心配をしている余裕はなくなり、 一秒が一分に一分が一時間に感じられるほど、長く厳しい訓練にただひたすら無我夢中でしがみつく。あまりにもきつい訓練に仮病を口にする者もいるが、教官はこの道のプロ。誰が手を抜き、誰が仮病を言っているのかは彼らにとっては一目瞭然だった。故に仮病を口にした艦娘は相手にもされず、すぐに訓練に戻させられた。逃げることは実質不可能と誰もがそう悟った。

 

「ほら、最後までちゃんと上がれ!何へばってるんだ!まだ始まったばかりだぞ」

「食らいついて!泣こうが叫ぼうが体を起き上がらせて!」

「上げろ!上げるんだ!」

 

 至るところで怒声と艦娘のカウントが飛び交う。ローテーションは水分補給以外はただただひたすら繰り返された。

 それから約二時間後。千斗が時計をのぞき込むと一度訓練を中断した。朝食の時間だ。皆ふらつく足で食堂へと向かう。疲れ切っているせいか誰もしゃべろうとする者はいない。

 疲弊しきった体に油物は応え、皆ヨーグルトやバナナといった軽い食事を好んで口にする。この状況で一番やってはならないことは食事をとらないことだ。午後も当然訓練はある。もし何も摂取しなければエネルギー源を確保できない体はすぐに駄目になるだろう。そうしたことから教官たちは無理にでも食事をとらせた。

 早朝の訓練で今までにないほど酷使したことで手元が震え箸が使えない者はフォークを使い、それでも食べれない者は自らガムテープでフォークと腕を固定して無理にでも食事をとる。

 

 それからというもの朝食を食べ終えるとすぐさま訓練。昼休憩をはさみ、訓練そしてまた訓練。彼女たちは早朝から訓練を始め、結局寝床に着いたのは午前二時だった。

 

 まだ地獄は始まったばかりだ。




完結はさせますのであしからず。

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