黒は白には染まらない   作:RGT

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今回は若干短めなのと話が全然進みません。
ご了承くださいませ。


裏オークション

 大本営より派遣された千斗達四教官によって一か月という長いようで短い期間の間に心身ともに鍛え上げられた艦娘たちは、六条艦隊との合同演習において勝利することの喜びと快感に酔い痴れることで、教官達が佐世保の地を去って間もなくして率先的に一人また一人と訓練を再開した。

 これが功を奏したのか実践や演習において成果が如実に現れ始めると、佐世保第三鎮守府艦隊は日に日にその実力を周りに認めさせるように、数々の海域における深海棲艦を海の藻屑へと変えていった。

 

 着任早々雲息の怪しかった早乙女太一海軍少将率いる第三鎮守府もやっと本来の落ち着きを取り戻し、晴れて順風満帆な再スタートを切れたと鎮守府関係者の誰もがそう思っていた。しかしそんな中で早乙女は新たな火種になりかねない一枚の封書片手に執務室でその処遇をどうするべきかと決めかねていた。

 

「悩ましいな。いっそのこと神に運命をゆだねるのもまた一興か?」

「提督。冗談でもそれだけはやめてください。絶対良い方には転びませんよ」

 

 傍に控えていた秘書官の赤城はそう言ってあらかた書類業務に区切りをつけた卓上に、早乙女を労って茶と和菓子を置く。早乙女は一言礼を口にすると湯気を立てた湯呑を口に運び横目でカレンダーに目を移した。11月06日。武器商人アリス・ヘーゼルダインから半ば強引に手渡された封書に記載されている裏オークション開催日までは五日にまで迫っていた。

 

 早乙女は背もたれに全体重を預けると頭の後ろで腕を組んで考えを巡らせる。オークションを摘発することは早乙女の内では決定事項として、今考えるべきはどれだけ作戦に人数を動員するかだった。彼の第三鎮守府と憲兵だけで事を成すことが出来れば、ここ数週間で培ってきた成果と合わせて中将に返り咲くことも夢ではない。

 しかしここで無理に昇進に執着しすぎて少ない人数のせいもあって作戦が失敗しては元も子もない。それこそ昇進の芽はついえるだろう。ならいっそのこと六条や他の鎮守府にも応援を頼むべきか。しかしそうすると練度の差や一度も合同訓練をやったことがないことから作戦行動において支障をきたしかねないのもまた事実。

 

 最善の答えを模索すればするほど深みにはまる自分自身にイラつきを見せる。そんな早乙女の様子を伺っていた赤城は恐る恐る自分の意見を口にした。

 

「提督、私は可能ならば少ない組織数でやった方がいいかと思います。その方が連携もとれますし、何かと意思疎通が容易にできるかと思うのですがいかがでしょうか?」

「………うん、やはりそうなるか。それが最善の手かもしれない」

 

 正直悩んでいる暇のなかった早乙女は赤城の提案に賛同すると館内放送マイクのスイッチを入れ、叢雲を呼び寄せた。

 

 

 

 出撃予定のなかった叢雲は日課の自己鍛錬を終え、へばりついた服を籠へと放り込むとシャワールームへと誰よりも早く入った。叢雲曰く訓練後の甘い物も良いが彼女にとってはシャワーが何よりも至福とのことで、全身にまとわりつく不快な汗をを撫でるように触れながら洗い流す動作の一つ一つの心地よさに艶っぽい声が漏れ出ていていた。無意識のうちに声にしていた叢雲だったが、しばらくしてその様子を仕切り越しに顔を覗かせていた青葉の視線に気づくと叢雲はその手を止めて「何?」と愛想なく問いかけた。

 

「村雲さんなんかエロいです」

「へぇ!?」

 

 思わずすっとんきょうな声を上げる叢雲。青葉は自分の発言を訂正することなく言葉を続けた。

 

「薄い日焼け跡にうっすらと見えるシックスパックや上腕筋の筋肥大といった引き締まった体は正直言ってエロいです」

「引き締まった体って。そんなこと言ったら青葉だってそうじゃない」

「私はまだそこまで割れてませんよ。それに自分だとエロいとは思えないんですよね」

 

 そう言って青葉は至極当然のように備え付けの籠に着替えと一緒に入れていたカメラを取り出すとシャッターを切った。カメラ越しに見る胸元を押さえながら立ちすくむ叢雲の裸体に青葉は再びエロいと口にする。叢雲は鳩が豆鉄砲を喰ったような顔を浮かべたものの、すぐに何をされたかを理解すると顔を真っ赤にさせ青葉の手にしたカメラを取り上げようと手を伸ばす。しかしそれを青葉は軽いフットワークで躱すと再びシャッターを切った。

 

「あ・お・ば!今すぐ消しなさい!!!」

「嫌です。死んでも嫌です!これは私のコレクションに加えるんです」

「そのカメラを壊されたくなかったら早く消せ」

 

 

 

「第三鎮守府所属の駆逐艦叢雲。至急執務室に来るように。繰り返す。第三鎮守府所属の駆逐艦叢雲は至急執務室まで来るように」

 

 お互い一歩も引かない攻防戦を繰り広げている最中に間の悪いことに早乙女の呼び出しが叢雲に届いた。

 提督の呼び出しは絶対。叢雲は一刻も早く執務室へ向かう必要があった。

 

「っく、このタイミングで」

「ふ、ふ、ふ、この勝負どうやらこちらに軍配が上がると見ました」

 

 叢雲は青葉にかまっている暇がなく、すぐさま体をふき着替えると出ていくざまに一言。

 

「もしばらまいてみなさい。殺す」

「冗談です。すいません、いまちゃんと全て消しました消しましたから。叢雲さーーーん」

 

 青葉はドスのきいた一言にこれは不味いと察すると、すぐに裸体写真を消すも叢雲はそれを聞くことなく執務室へと向かった。叢雲は執務室の前で呼吸を整えると二度扉をノックし中へと入る。いつものように早乙女は難しい顔をしながら書類にペンを走らせていた。早乙女はソファに座るように叢雲を促す。叢雲もそれに応じると失礼しますと一言口にすると腰を下ろした。

 

「あとあと皆にも言うがな、近々大規模な裏オークションが開催されるらしい。それを憲兵と共に叩く。その際に作戦を円滑に進行させるためにも先に現場に何人かを潜入させておく必要がある。その役目をお前に任せる」

「えぇ!?私に一人に?」

「そんなわけないだろう。当然俺と一緒にだ」

 

 早乙女は執務机の棚から一つの包装されたドレスを叢雲に投げ渡した。

 

「詳しい話はおって知らせる」

「はぁ。しかしまたなぜ私が。赤城さんやそれこそ朝潮だっているのに」

「赤城は身なりはいいが、弓しか使えないからなもしもの時に戦力外だ。朝潮は幼過ぎて逆にマークされる恐れがあるし、羽黒に限ってはいざっていうときに硬直する癖があるから心配なんだ。以上のことからお前が一番の適任だ。それに」

「それに?」

「お前は俺に何でもしますって言ったのを覚えているか?言ったからにはやってもらわないとな。作戦は五日後だ。ミーティングはその前日と作戦決行の数時間前にする。話は以上だ」

 

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