黒は白には染まらない   作:RGT

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二話目にして更新が遅れました。すいません。


ロシアンルーレット

 

 早乙女の館内放送から程なくして第三鎮守府に在籍する計17名の艦種様々な艦娘が執務室に顔を揃えた。その中の一人、提督不在の特例処置として指揮権を一任されていた赤城型一番艦正規空母赤城は全艦揃ったことを早乙女に告げる。報告を受けた早乙女は俯いていた顔を上げると全員の顔を見渡す。そしてゆっくりとその口を開く。

 

「急な招集だったが全員揃ったようだな。さて、こうして招集をかけたわけだが理由は主に二つ。一つは今日をもって赤城にあった指揮権を俺が引き継ぐことになったこと。もう一つは見てわかるようにこの惨状についてだ。こっちが本題といっても強ち間違いないではない。しかしそれはまた後で話そう。まずは自己紹介といこう。俺は早乙女太一。階級は中将。横須賀海軍基地から本日付でこちらに着任した。これからは俺の指揮下で作戦を遂行していく。今までとは全く違った方針になるかもしれないが、これからは俺の方針が絶対だ。肝に銘じておけ。詳しい話は日をまたいで後日再び招集をかけるのでそのつもりでいろ。以上だ。ここまでで何か質問は?」

 

 そうして一呼吸。早乙女は全員に目をやるが手を上げようとする者は誰一人としていない。質問がないと結論付けると早乙女は先ほどまでの淡々した話し声から一変、聞く者を委縮させるまでのドスのきいた声で本題を切り出す。

 

「次にこの惨状についてだが単刀直入に聞こう。誰がやった?」

 

 早乙女は十中八九この中に犯人がいると踏んでいた。推測は正しく犯人は17人の中に紛れ込んでいた。しかし名乗り出てくる者はいない。皆黙ったまま、ただただ無言で立ちすくむ。しばらく待ってから早乙女は一向に名乗り出てこない犯人に痺れを切らすと次の行動をとった。執務机の上に下ろした腰を上げて立ち上がると、手近にいた一等駆逐艦陽炎型8番艦雪風の前に立つ。雪風はひどく怯えていた。

 

「雪風答えろ。執務室を荒らしたのは誰だ?」

「し、知りません」

 

 早乙女は雪風の頬を何の躊躇もなく自らの手の甲で叩く。雪風はその場に倒れ込んだ。長門を除くその場の者はあまりのことに言葉を失う。雪風も何が起きたかわからず呆然とする。しかし早乙女はすぐさま雪風を「立て」の一言で立ち上がらせた。

 

「誰かと聞いている。知りませんじゃない。答えろ、誰だ?」

「司令官本当に知らないんです。私は自室で待機していました」

 

 早乙女に必死の訴えを見せる雪風。同室の島風型1番艦島風も雪風が今の今まで部屋にいたことを証言する。これで本当に知らないのだと信じてもらえた筈。しかし再び早乙女の手が飛んだ。

 

「もう一度聞く。執務室を荒らしたのは誰だ?」

 

 雪風はこれまでの行動を思い出しながら考えた。しかし雪風が一日中部屋にいたことは事実。そんな彼女に犯人が誰なのかなど分かるはずがない。

 そんな雪風に早乙女はさらに追い込みをかけた。

 

 早乙女は長年使い古したビジネスバックを執務机の上に置くと中に手を突っ込む。手にしたのはS&WM36回転式拳銃。早乙女は蓮根状のシリンダーから込めていた銃弾を床にばらまく。その中から一発手に取ってみせると再びシリンダーに弾を込めた。

 

「雪風。人は悩めば悩むほど深みにはまっていく。質問を変えよう。好きな数字はなんだ?」

「7です。7が好きです」

 

 現状を少しでもいいから改善しようと雪風は答えられる質問にすぐさま答えた。しかし実際のところ、この答えがどこ数字であろうと現状が改善されるはずはなかった。それどころかより雪風の願いとは反して現状はより悪いほうへと進んでいくのだった。

 

「7。ラッキーセブン。幸運の数字。幸運艦と呼ばれるお前にぴったりのいい数字だ。たしか起源は野球だとか聞いたことがあるな。そして偶然にもちょうど今もひとふたまるなな12時07分。ラッキーセブンだ。さて、ならその運を試してみよう」

 

 早乙女は軽口を叩くとシリンダーを7回転させて雪風のおでこに銃口を押し付けた。雪風の額から冷えきった銃口が体温を奪っていく。

 

「シリンダーは5つ。うち、込められた弾数は一発。10秒ごとに引き金を引く。60秒でケリがつく。先に言っておくがもし誰かを庇っているのなら、今のうちにやめておけ。友情ごっこは結構だが死んだら元も子もないぞ。………では始めよう」

 

「10、9、8、7、6、 「ま、まってください。知らない。知らない。本当に知らないんです。私はずっと自室にいました」

「5、4、3、2、 「提督。話を聞いてください。私はずっとずっと」

「1、 「助けて」

 

「ゼロだ。五分の一」

 

 早乙女はためらいなく引き金を引いた。撃鉄の叩きつける音そしてシリンダーの回転音。銃弾は出てこない。そして無情にも再び始まるカウントダウン。雪風は考えた。頭の中をフル回転させて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えた。されど答えはでない。頭をよぎる死の一文字。雪風はその場に座り込むと目元からは大量の涙粒が零れおちていく。

 

「ゼロ。四分の一」

 

 早乙女は引き金を引く。銃弾は出ない。カウントダウン。

 

「10、9、8、7、6、5、4

 

 

 

 

 

「私がやったわ」

 

 三回転目のカウントは残り3秒で一時的に止まった。吹雪型5番艦叢雲が名乗り出たからだ。雪風のおでこから銃口が離れていく。雪風は内心胸を撫でおろした。助かったのだとやっとこの地獄が終わるのだと。しかし早乙女は雪風の気持ちをまるであざ笑うようにカウントを再開した。

 

「3」

「ちょ、ちょっと待ってよ。私が執務室を荒らしたって言ってるじゃない。自分のしたことの処罰や解体は甘んじて受け入れるけど、それに雪風は関係ない」

「なぁ、叢雲。そこまで分かっているなら何故早くに名乗り出ない?何故お前はこの状態になる今の今まで名乗り出なかった?」

「それは………」

「さしずめ前任の実情を知っている筈の後任は鎮守府の立て直しを図るために下手に出て、うやむやになるだろうと踏んでいたんだろう。違うか?」

「勝手は想像はやめて。そんなことどうだっていいでしょ。私は名乗り出た。それで終わりでしょ。雪風から拳銃を退けて!」

「まだ分かっていないようだな。これは俺のことを甘く見た誰でもないお前が招いた結果だ。お前がもっと早くに名乗り出ていれば変わったかもな。その間違いを目に焼き付けろ。ゼロだ」

 

 早乙女は銃口を額に向けて構えた。

 

「司令官!………お願いします。私にできることなら何でもします。戦闘でも遠征でも奉仕しろというなら喜んでします。何でもしますから。雪風は関係ないんです」

「なんでもする………か。面白い。長門、叢雲を懲罰房にぶち込め。島風、雪風を自室まで連れていけ。他の者は片付けだ。終わるまで食事も風呂も寝ることも許さん」

 

 それから長門は叢雲に手錠をすると房へと、島風は雪風を部屋へと連れていくため執務室を後にした。計14名の艦娘が黙々と部屋の修繕作業が行っている横で、椅子に腰かけた早乙女はおもむろに窓外にむかって引き金を引く。

 

 撃鉄の叩きつける音、シリンダーの回転音、と共に鼻孔を硝煙の匂いがくすぐった。

 

「面白い」

 




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