黒は白には染まらない   作:RGT

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活動報告で報告させていただいたように入院してました。
今日の朝方に退院しまして自宅に帰って執筆の手を動かし、早く早く投稿しなければの一心で中途半端に終わっていた話を予定のところまで書き上げました。
ほぼ殴り書き状態ですので、読みにくい点や話のつながりがおかしい点があるかと思います。ご了承ください。


vs ヴェールヌイ

 

 同時刻。海岸線に沿ってどこまでも続く堤防の一角に腰を下ろしたヴェールヌイは海面に届かない足をパタつかせて、退屈そうに佐世保の空を見上げていた。視界の端から秋風に乗ってやってくる掠れ雲を左から右へと見送っては次の雲へと目をやる。そんなヴェールヌイの仕草に近くに控えていた長門は口元に手を当てて微笑した。普段の残忍さを知る者からすればどこか他の暁型と同じような愛らしさにギャップを感じて可笑しく思えたからだ。ヴェールヌイは長門の微笑に気づくと前後屈の用量で体を逸らして長門に向くと「何?」と口にした。

 

 答えようとした長門だったがそれはあまりにも無粋だと口をつぐむと「なんでもない。ただの思い出し笑いだ」と返す。ヴェールヌイは不思議そうな顔を浮かべたが、それまででそれ以上の詮索はなく再び雲へと目をやる。長門も長門で目をつむると自然の音に耳を傾ける。二人は連絡が来るのを待っていた。

 

 

 

 しばらくして長門のインカムに無線が入った。相手は言わずもがな早乙女太一海軍中将。長門のもと直属の上官であり尊敬に値する最高の指揮官。長門はヴェールヌイに手で合図を送る。ヴェールヌイはパタつかせていた両足で反動をつけて水面へと降り立った。大きく一度伸びをすると各種艤装の状態を確認する。主砲、魚雷、対空砲と問題はない。

 

「提督が撃沈しない程度に徹底的に叩き潰してくれだそうだ。六対一で制空権も向こうにある分、圧倒的不利な状況だがいけるか?」

「心外だね、長門。私を誰だと思っているんだい?」

「ふふ、その通りだな。済まないが今のは忘れてくれ」

 

 ヴェールヌイはしょうがないと言って微笑むと意識を切り替えて、これから起こりうることに集中した。遠くの島陰から龍驤の手元から飛び立った撮影用の艦載機が真っ直ぐ飛行機雲を作って昇っていく。艤装のセーフティが外れる音。続いて演習開始のサイレンが演習場に響く。

 

 「出るよ」の一言と共にヴェールヌイは動き出す。ヴェールヌイは島々が点在する海域へと足を踏み入れた。いつ何時出てこようと大丈夫なように周囲を警戒しながら進んでいく。ヴェールヌイには赤城の位置が分かっていないように赤城達もヴェールヌイを捕捉出来てはいない。そのため両者とも相手の動きを予測しながら手探りで進む。しかし少ししてヴェールヌイは赤城の位置に目星をつけた。その表情には驚き半分呆れ半分といった何とも言い難い心情がにじみ出ていた。

 

(あの偵察機………さすがに迂回して飛んできたよね?そうしないと位置を教えているようなものだし。罠?でも確信は持てない。………しょうがない。誘いに乗ってみようか)

 

 疑心暗鬼しつつも偵察機が飛んできた方向へと舵を取った。島々を縫って進んでいくと、どこからともなくいくつものプロペラ音が重なり合って耳に届く。見上げると四機二編隊の艦上攻撃機がこちらに接近してくるのが目視できた。あの数を相手にするのは歴戦の覇者であろうと少々分が悪い。幸いにも艦攻が彼女のもとにまで来るのには多少なりとも猶予がある。それまでにできる限りの数を減らさなければ。

 

 ヴェールヌイはその場に足を止めると優雅に編隊飛行で飛んでくる艦攻めがけて主砲の銃口を構えた。敵は動く的。ヴェールヌイにとってそれは造作もないことだった。主砲が火を噴く。放たれた砲弾は編隊の先頭を飛ぶ艦上攻撃機の翼部を捉えた。砲弾は無残にも翼を喰い千切ると艦攻はバランスを失い回転しながら海面へと落下していく。海面からの予期せぬ攻撃に艦攻は編隊飛行を解くと各機回避行動を開始する。だが今更動き始めたところでもう遅い。主砲は二機目を喰らい、三機目は喰らい損ねた。

 

 生き残った艦攻の搭乗妖精達はヴェールヌイとの間にある圧倒的練度の差を感じ取ると魚雷は当たらないと察した。当たらないと分かっているのなら、ここで逃げ帰るのも一つの手だ。

 しかし艦上攻撃機達は引き下がらない。彼らは仮にも正規空母赤城の艦載機。プライドがある。回避行動から反転全機一斉に攻勢へと移った。魚雷を抱えた機体の高度を下げ、海面スレスレへと近づき距離を詰めていく。ヴェールヌイもそれを黙って見ている程のお人好しではない。艦攻に対して的確な弾幕の雨が襲う。一機二機と近づいていくに連れて何機もの艦攻が落ちていく中、三機の艦攻が魚雷を投下した。そしてすぐさま艦攻は距離をとった。

 

 三機から放たれた計6本の魚雷は真っ直ぐヴェールヌイに向かって水中を掻き分けて進んでいく。しかし妖精達も気づいているように、ギリギリまで詰めたわけでもなく、奇襲でもない魚雷攻撃加えて経験が天と地ほどの差がある相手に対しては全く意効果はない。

 

 ヴェールヌイは魚雷をいとも容易く避ける。そして追撃の可能性に主砲を構えた。しかし艦攻達はすでに遠くの空まで逃げていた。代わりに青葉、朝潮、羽黒、島風が近づいてくるのが視認できた。先頭を進む青葉の主砲がヴェールヌイに狙いを定めているのが分かると、ヴェールヌイは島陰に退避して煙幕を散布した。秋風に吹かれて瞬く間に白煙はヴェールヌイの姿を隠す。

 煙幕の中で息を潜めヴェールヌイは考えを巡らせる。長門の言ったように相手は赤城、羽黒、島風、朝潮、青葉、そして未確認との六対一。制空権は向こうにありこちらは圧倒的不利な状況。普通なら諦めが入るところだろう。しかしそれだからこそ燃える。逆境だからこそ面白い。この状況で一番厄介なのはやはり赤城の攻撃。ならばその手を封じるのが得策。

 

 ヴェールヌイは煙の中で周囲の音に耳を澄ませる。自然の音に交じって少女達の声が聞こえる。それはだんだんと近づいてくる。ヴェールヌイは白煙の中から飛び出した。予想と反して声の主達は離れた場所にいたものの、先ほどよりは距離は縮まりヴェールヌイの射程圏内に捉えていた。

 

「敵艦確認!全艦射撃開始」

 

 しかしそれは相手も同じこと。ヴェールヌイめがけて四隻の艦から放たれた砲弾の雨が襲う。だがヴェールヌイという的はヒト型で小さく加えて練度もそこまで高くない上での移動しながらの砲撃といった様々な要因からダメージを与えることができない。対してヴェールヌイの攻撃は動いているというのに的確にダメージを与えていくが、こちらも駆逐艦の主砲では島風や朝潮に損害を与えられても重巡の青葉や羽黒にはこれといった傷は見られなかった。

 

「もう!当たらないなら近づくまで。朝潮援護お願い」

「え、ちょ、島風!?待って!」

 

 一向に当たらない攻撃と的確に被害を積み重ねていく現状にしびれを切らした島風は朝潮の制止に耳を貸さず単独突出してヴェールヌイとの距離を詰めていく。このまま島風だけを行かせるわけにはいかない。朝潮、青葉、羽黒もそれぞれの速度で距離を詰める。伸びた陣形。島風は絶対外さない距離まで詰めると主砲を構えた。

 

「馬鹿が」

 

 ヴェールヌイは島風の主砲を持つ手をはじき射線をずらすと、そのまま島風の手を引き態勢を崩させた。そして首元に手を伸ばして首を絞めて拘束する。追いついた時にはもう遅い。三人は武器を構えるが島風が盾となって撃つに撃てない。赤城の艦攻で攻撃しようにも魚雷装備で外れた場合青葉たちにも危険が及ぶため不可能。青葉達は手の出し用がなかった。

 

 そんな状況を見かねた早乙女は動いた。

 

「朝潮。島風ごとヴェールヌイを撃て」

 

 インカムから聞こえてきた早乙女の声は冷たいものだった。

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