喫茶ーmid nightー 作:江月
リアルごたごたしておりまして、とりあえず短いモノが出来上がったので投稿いたします
では、どうぞ
夏休み。
一般の高校生ならば部活や友達付き合いに精を出しているようなそんな期間。課題?最終日に焦って終わらせるか、夏休み前に終わらせるのが普通でしょう。
「……………………」
結局店へと帰ってきた昼也は珍しく少し落ち着かない様子となっていた。原因はカウンター席に座る一人の男。
「──────」
所謂、FXで有り金全部溶かした顔、もしくはぬとねの区別が付かない表情の彼はその空虚な瞳をカウンターの向う側である棚へと向けていた。
流石にいい歳こいた大人の男がそんな面をしているのは昼也といえども気になってしまう。
チラッと昼也が見れば、彼はズズッと小さく出されたコーヒーを啜る。
「……………………あー…………おっさん?」
ついに耐えきれなくなったのか昼也は件の彼、薙切薊へと声をかけた。
そう、このおっさん改め薊は何故だか今日は来店した直後からこの有り様だったのだ。
いや、店の外。扉を潜るその直前まではキリッとしていた。が、入った直後にこれだ。キャラ崩壊も甚だしいというもの。
いつも通りだろ?と言われればそれまでだがそれにしたって今日は酷すぎる。昼也が話し掛けることを躊躇うなど相当である。
「ちゅ、昼也君……………………」
「…………何だよ」
「娘に嫌われているんだが…………どうすれば…………」
「…………今さらだな、おっさん。アンタ結構昔から嫌われ者じゃねぇか」
「───────ぐふっ…………」
慰めどころか殺しに来ている一撃を受け薊(アラフォー)はイイ笑顔で滂沱の涙と口の端しから血を流してカウンターへと突っ伏してしまった。割りといつも通りのことである。
昼也も、なんだ、と拍子抜けしたような顔となり、いつも通り揺り椅子に揺られて、膝には膝掛け、ハードカバーの本を片手にコーヒーを啜る。
喫茶mid nightは今日も平常営業であった。客沈めて平常とは何ともおかしな話だが、この二人は割りとそんな風なのが当たり前であり、日常なのだ。
「…………もう少し君は自分の口撃力を知るべきじゃないかな?」
「今回に関しちゃオッサンが悪いだろ。娘に嫌われてるって、あんなことしてりゃ、そら嫌われるさ」
「しかしだね。あの子は才覚があった。それも私の信奉する美食に特化した才覚だ。研ぎ澄ませたいと思うのは親心じゃないかい?」
「程度の問題があるだろ。そんなだから、お父様臭いとか言われんだよ」
「い、いいいい言われてませんしぃ!うちのえりなはそんな言葉吐きませんしぃ!」
「『お父様、半径五メートルに近寄らないでください。その、少し、加齢臭が鼻につきます』」
「ゲヒッ!…………ちょ、ゲホッ!コ、コーヒーが鼻に、エンッ!」
再び突っ伏した薊を養豚場の豚を見るような目で睥睨した昼也は本へと視線を落とした。
だいたい、これで二人のやり取りは終わることが多い。しかし、どうやら今回のオッサンはひと味違うようだ。
「…………秋の選抜に選ばれたらしいね」
「まあな。正直、面倒だが」
「あの学園でそんなことを言うのは君ぐらいだろうな。何を作るかは決めているのかい?」
「カレー料理ってのはとりあえずスパイスの組み合わせだろ。まあ、何とかなるさ」
「僕の問いに答えてないよね?」
「…………─────さ」
「……………………たまに思うが君は手抜きが酷いんじゃないか?」
「時短って言ってほしいところだな。一概には言えねぇけど、時間をかければ旨いものができる訳じゃないだろ」
「少なくとも、今回のカレーは時間をかけるべきだろうけどね」
「分かってねぇな。短時間だからこそ、光るものもあるってことさ」
キシリ、椅子を軋ませて昼也が口の端を僅かに歪めカップの中味を啜る。
薊もそれ以上の追及をすること無く、出されたコーヒーを旨そうに飲み干すのだった。
短すぎますかね?
とりあえず、次の話から選抜に入ろうと思います
気長にお待ちくださいませ