鋼の不死鳥 黎明の唄   作:生野の猫梅酒

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#11 宣戦布告

 ──端的に言って、ガラン・モッサとは極めて優秀な男である。

 

 かつてはギャラルホルンでも腕利きのMS乗りとして活躍していた彼は、現在は親友の為に経歴を全て変えた上で傭兵として戦っている。およそ戦いに関するあらゆる事柄を修めていると言っても過言ではなく、鍛え抜かれた体躯と射貫くように鋭い眼光は幾多もの戦場で培われた正真正銘の叩き上げ。まさしく歴戦の古強者とは彼の為にあるような言葉だ。

 

 そんな彼の次なる仕事は、なんとも大胆な事に四大経済圏の二つであるアーブラウとSAUの戦争を演出することだ。手順は簡潔、アーブラウ防衛軍発足式典に合わせて代表の蒔苗東護ノ介を襲い、SAU側を犯人と匂わせることで緊迫した状況を作り出すだけ。後はほんの些細なきっかけさえ生み出してしまえば、間違いなくアーブラウとSAUは開戦する。

 ガランからすればここまではそう難しい事ではない。しかも彼はただの傭兵ではなく、後ろ盾にギャラルホルンの一艦隊を率いる司令官すら持っているのだ。こうなればもう、裏工作など赤子の手を捻るに等しい作業でしかない。

 

 故に肝心なのはこの後、開かれたアーブラウとSAUの戦端を可能な限り泥沼として、終わりのない膠着状態にまで陥らせる事だ。それによってガランとその友にはいくつかの()()()()()()を生み出すことが出来るのだから、なんとしてもやらなければならない任務である。例えそれによって世界が混乱に陥ろうとも、だ。

 しかし、いくら手練れのガランと言えども率いる傭兵団自体はそう大きくないのが実情である。内訳はMSが八機に、構成員も二十に満たないほど。傭兵団として見るなら悪くない規模だが、戦争を膠着化させるにはまるで足りない。

 

 そのため、彼は前々からアーブラウに軍事顧問として雇われていた鉄華団に目を付けていたのだ。急速な拡大を続けているこの組織は少年兵ばかりで、ガランからすればなんとも青く操りやすい。そのくせ軍事力は中々のモノを備えているのだから、戦力としてうってつけと言えるだろう。

 後は少し組織を調べ、餌をぶら下げて根回しを行えばあっという間に内通者の用意も整ってしまう。簡単そうにも思えるが、言うは易し行うは難し。なのにこうも容易くパイプを作ってしまえるのは、やはりガランが極めて優秀だからに他ならないのだ。

 

「さて……時間か」

 

 乗機で待機していたガランは、時計を確認してゲイレールのコクピットから降りた。狭く密閉された空間に居ただけに、外の解放感は身体に心地よい。軽く伸びをしてから、彼は鉄華団地球支部へと向かい悠々と歩みだす。

 アーブラウがテロに見舞われてから今日で四日が経過していた。次第にテロの混乱は退き始めた一方で、SAUとの戦端が開かれるかも知れない可能性にアーブラウの誰もが戦々恐々として日々を過ごしている。もちろん、ガランが今訪れている鉄華団ですら例外ではないだろう。

 

「それにしてもラディーチェめ、急にどうしたというのだ……」

 

 一人ごちながら施設内を歩んでいく。途中で何人かの年若い少年兵たちとすれ違い物珍しそうに見られるも、彼は気にしていない。それよりも気にかかるのは、もっぱら内通者(ラディーチェ)の事である。

 元々、ラディーチェが上手く鉄華団地球支部の情報封鎖を行い、そこに付け込んでガランがアーブラウ側の軍事参謀として招かれる予定だった。そうすればなし崩し的に鉄華団も防衛軍も指揮下に収めることが出来、戦局の膠着もずっとやり易くなるからだ。

 

 しかし、奇妙なことがあった。前日に事前確認として連絡を入れた際、通信に出たのはラディーチェではなくまだ少女としか思えない人物だったのだ。曰く、ラディーチェは仕事が忙しいせいで手が離せず、代役として自分(ジゼル)が出ましたというらしいが……どうにもそれが脳裏に引っかかってしょうがない。

 だから彼は鉄華団の基地へとやって来た後も所定の時間までMS内で待機し、今も念のために警戒を怠らずに進んでいる。もしかすれば、何か自分に不利益な事が水面下で起こっているのかもしれないから。考えすぎと笑われるやもしれないが、こんな勘働きで何度も命拾いしてきたのだから侮れない。

 

「失礼する。アーブラウ防衛軍作戦参謀として招かれているガラン・モッサだ」

「どうぞ、入ってください」

 

 果たして、何事もなくガランは目的地まで辿り着いた。重厚な扉をノックしながら声を張り上げれば、やはり少女の声が返ってきた。電話口で聞いたそれと同じだが、肉声はいやに感情が平坦な印象を与えるもの。

 ともかくガランは警戒心を捨てることなく扉を開け、まずはさりげなく中の様子を一瞥した。特に部屋に異常はない。黒いソファに茶のテーブルが置かれた応接間というシンプルなもの。そこに、二人の少年少女が居た。

 まずは少年の方が立ち上がり、一礼。続いて少女も会釈した。

 

「鉄華団のタカキ・ウノです。臨時ですが、鉄華団地球支部の指揮官をやらせてもらっています」

「同じく、鉄華団地球支部臨時参謀のジゼル・アルムフェルトです。お見知りおきを」

「ほう、ご丁寧にどうも。改めて、俺はガラン・モッサだ。話はもう聞いているかな?」

「ええ、もちろん。立ち話もなんですし、座ったらどうでしょうか?」

「……いいや、ありがたいが遠慮させてもらおう。傭兵稼業のせいでな、立っている方が落ち着くんだ」

 

 臨時でも参謀を自称するだけあって、会話の主導権は基本的にジゼルという少女の方にあるらしい。逆にタカキというらしい少年の方はあまり会話に参加しようとせず、静かにガランの様子を窺がっている。そしてもちろん、どこを見てもラディーチェの姿はない。

 これは少々きな臭い雰囲気が漂っている、直感的にガランはそう読み取って、入口付近から動かないよう心掛ける。扉も閉めたように見せかけて、ほんの少し開けておいた。これでひとまず、緊急時の退路は確保できたことだろう。

 

 最悪の事態を避けるための方策を数秒で生み出したところで、ガランは真っすぐ本題に切り込んだ。

 

「それで、ラディーチェは何処へ行ったのかな? 俺は彼との縁があってここに来たから、まずは彼と細かい打ち合わせをしておきたいのだ。もし忙しいのならすまないと思うが、此処へ連れてきてもらえるだろうか?」

「ああ、その話なのですが──」

 

 何が面白いのか、ジゼルが微かに唇を笑みの形に歪めた。対照的にタカキは何かを堪えるような、複雑な表情をする。それとほぼ同時に、肌を撫でる嫌な気配がした。

 猛烈に膨れ上がり空間を満たす嫌な気配、それは間違いなくジゼルから発せられているもので、反射的にガランは警戒態勢を最大レベルにまで引き上げてしまう。見た目は折れそうなほどに華奢なのに、歴戦のガランをして底知れないと思わせるのはいったいどういう事なのか。

 頭の中で銃を引き抜くシミュレーションすら確認しつつ、ガランはジゼルの次の言葉を待った。

 

「残念ながら叶いません。だって鉄華団地球支部事務員のラディーチェ・リロトは、既に裏切り者として粛清しましたので」

「なに……?」

 

 飛び出してきた言葉は、歴戦のガランをして動揺させるには十分な内容だったのだ。

 

 ◇

 

「ラディーチェさんの策に乗るって、どういう事ですか!?」

 

 非常に珍しい、タカキの怒号が室内に木霊した。めったにないその剣幕に、共に話を聞いていたアストンも驚きを隠せない表情だ。

 そんなタカキの勢いにもなんら心を乱すことなく、どこまでも素っ気ない調子でジゼルは自らの考えをもう一度開陳した。

 

「どうもこうも、そのままの意味ですよ。故ラディーチェ氏が招こうとしていたガラン・モッサなる人物を、彼の予定通りにこちらへ招き入れます」

「ですから、どうしてそうなるんですか!? 俺らを裏切っていた相手の策に敢えて乗るなんて、正気とは思えません!」

「タカキ、少し落ち着け。お前がそんなだと、俺も不安になる」

「ご、ごめん……確かに熱くなっちゃってた。でも、だからってこれは……」

 

 タカキが言い淀んでしまうのも無理はない。だってジゼルの策とは、故ラディーチェの思惑通りにガラン・モッサを鉄華団へと引き入れてしまおうというのだから。

 

 そもそも、ジゼルとタカキ、それになし崩し的にアストンが加わったこの場が開かれているのは、今後の鉄華団が採る方針を決めるためである。

 まずはラディーチェの粛清直後、ジゼルの発案で鉄華団地球支部の団員を緊急招集し、タカキの口からラディーチェの裏切りと粛清を同時に告げた。彼らの反応はさまざまであり、怒りを露わにするもの、ざまあみろと言うもの、ごく少数だが残念だったと言うものまで多種多様である。そうして最低限の事実を伝えた後は死体の処理を頼み、現在の鉄華団地球支部の中核を担う三人はこうして集まっている次第となっているのだ。

 

「ジゼルさん、確かに俺はあなたに意見を求めました。きっと俺なんかよりもずっと良い考えを提案してくれると思ったからです。でも、こればっかりは明確な理由を教えてください。そうでなければとても頷くことはできません」

「道理ですね。分かりました、順を追って説明しましょう」

 

 今回の騒動にあたって、臨時の指揮官となったタカキによって臨時参謀の任を与えられたジゼルはゆっくりと口を開く。

 

「この一連の騒動は、何者かが描いた模様であるのはあなた達も察している通りでしょう。そしてその何者かは、故ラディーチェ氏を通じて鉄華団を取り込もうとしたガラン・モッサという人物の可能性が非常に高いです。少なくとも、彼がその渦中に関わっている可能性は確かでしょう」

 

 無言で頷く。これはタカキも理解していた。このタイミングで鉄華団を裏切ったラディーチェと、そんな彼と契約していたガラン・モッサ。この二人は間違いなく一連の事態に噛んでいると見なしてよい。

 だからこそ、騒動の渦中に居るであろうガラン・モッサをラディーチェの予定通りに鉄華団へ迎え入れてしまうのに多大な不安を抱いてしまうのだが。

 

「故ラディーチェ氏と交わした契約書面を読むに、おそらくガラン・モッサの狙いとは鉄華団の軍事力です。仮にも軍事顧問となれるだけの力を持つこの組織を上手く操ることで、戦争をどのようにかコントロールするつもりなのでしょうね」

「だったらなおさら……!」

「彼を迎え入れるべきではないと? それはその通りですね。ですが──これほどまでにコケにされたままで、本当に良いのですか?」

「……! それ、は……」

「タカキ?」

 

 ジゼルが何を言いたいのかを察してしまい、タカキは語尾を濁してしまう。

 一方でアストンはどういう意味かを理解できなかったらしい。そのためタカキは思考の整理もかねて、思い至ったビジョンを説明する。

 

「……今回の騒動は元はと言えば、こっちの警備態勢に穴があったのも一因なんだ。もちろん、全部が鉄華団のせいじゃないのはそう。でも、軍事顧問として責任の一端はあるし……何より、こっちの内部から内通者(うらぎりもの)が出てるんだ。もしこのまま鉄華団が手をこまねいて何もしなければ、きっと組織全体の信用問題に関わってきちゃうよ」

「つまり……今のままじゃ俺たちも悪者にされるかもしれないってことか?」

「おおよそそういう事ですよ。まあさすがに悪者とまではいかないでしょうが、確実に評判には傷がついてしまうことでしょう」

 

 落ち着いた調子のジゼルの肯定に、いよいよタカキは自身の考えが当たっていたことを悟ってしまう。出来る事ならこんな予想は外れていて欲しかった。だってこのままでは、自分たちは──

 

「故に、鉄華団自らの手で()()()()()()()()()()()()()()()()()()? こちらをコケにして、あまつさえ利用しようとすらしたのです。その代償は払ってもらわなければならないでしょう」

 

 ──経済圏同士の戦争に参戦する他、道がなくなってしまうのだ。

 

 どのみちこの状況では、開戦すれば逃れられないのはその通り。だがそこに、帰るべき家であり家族でもある鉄華団の名誉が関わってきてしまえば話は変わってくる。積極的に戦争に参加することで今回の主犯とその目的を探り出し、鉄華団(みずから)の手で落とし前をつけさせる必要が出てきてしまうのだ。

 そしてここまで理解してしまえば、先にジゼルが告げた案と言うのもその目的が透けて見える。

 

「つまりジゼルさんはガラン・モッサをわざと近い所において、その目的を探りたいという訳ですね?」

「はい。それによって彼かその背後の者の正体と目的さえ突き止めてしまえば、後はどうにでもなるでしょう。そのためにもまずは、自分から伝手がやって来てくれるのですから利用しない手はありません」

 

 これがこちらの案の全てですと目線で言われ、タカキは黙り込んだ。

 ここまでの理屈、恐ろしいほどに抜けがない。組織としての責任問題もそうだし、落とし前だってそう。そのために敵を敢えて引き入れるのは確か、虎穴に入らざれば虎子を得ずと言っただろうか。全部にそうするべきという筋と理屈が通っているのだ。

 

 よって問題点はただ一つにまで絞られる。すなわち、本部の助けを借りずにタカキたちだけで戦争へと歩を進めるか否かだ。命のやり取りに向かうかどうか、これが最も肝心要の決断となる。

 

「もし団長なら、どうするのかな……?」

 

 いつだって前を見据えて止まらないオルガなら、このまま愚直でも前へ前へと突き進むだろうか。それとも家族であるタカキたちを慮って、今はそこまですることは無いと言ってくれるのだろうか。

 分からない、どちらもきっと間違ってはいないはず。だからこそタカキは迷う。それこそ数分はたっぷり使って考え抜いたのに、まだ答えは出てこない程に。直接団長に判断を仰ぐか? だけどこの複雑怪奇な状況は、例えオルガといえども容易には答えを出せないだろう。それでは遅いかもしれない。

 

 結局、現場にいる自分たちの頭で考えるしかないのだ。そして発案者のジゼルはただ無言でその様子を見守り、「最後に決断するのはあなたです」と訴えかけているかのようだった。

 

「アストンは、どうするべきだと思う?」

 

 故に、彼は隣に並び立つ友へと訊ねかけた。情けないと言いたければ言えばいい。だけどこのような重大な判断を自分一人で下すのは、とてもじゃないがタカキには出来なかった。

 訊かれたアストンはちょっと困ったような顔をして、

 

「俺は、この鉄華団が好きだ。だから、鉄華団が万が一でも悪く言われるのは嫌だな」

「──そっか。うん、そうだよね。アストンならきっとそう言うと思ったよ」

 

 その一言で迷いは晴れた。悩みこんでいたタカキはいっそ清々しいまでの表情を見せて、決断を待っていたジゼルを見据えた。

 

「ジゼルさんの策に乗ります。俺たちは鉄華団なんです、どんな相手だろうと戦って突き進んでみせます」

「了解しました。ではジゼルも、この事態に誠意をもって全力を尽くすと誓いましょう」

「はい!」

 

 かくして、賽は投げられた。鉄華団地球支部は戦火へと飛び込むことに決め、リスクを承知で敵を懐に飼うことに決めたのだ。この判断が吉と出るか凶と出るかは、まだ誰にも分からない。タカキにも、アストンにも、そしてもちろんジゼルであってもだ。

 だけど一つ言えることがあると言えば──この状況を仕組んだ者たちはきっと、内心で笑っているという事であろう。

 

 ◇

 

「残念ながら叶いません。だって鉄華団地球支部事務員のラディーチェ・リロトは、既に裏切り者として粛清しましたので」

「なに……?」

 

 ついにこの時がやって来たかと、タカキは内心で改めて気を引き締めなおした。目の前にいる覇気のある男こそ、ガラン・モッサであるのだ。これから先は指揮官として、一片たりとてこの男の前で油断することは出来ない。

 それにしても、臨時の参謀であるジゼルに交渉を任せたのは失敗だっただろうか。まさかいきなり核心に触れてしまうとは予想もしていなかった。あまりに予想外の言動に、ガランと同じような表情をしないように我慢するのに必死である。

 

「粛清とはまた、穏やかじゃないな。いったい彼がどのような事をしたのかね?」

 

 いけしゃあしゃあと訊き返してくるガラン・モッサに、やはりタカキは自身の感情を抑えるだけで精一杯だった。元はと言えば彼が仕組んだことなのに、理由が分からないなど絶対にあり得ないのだから。

 しかし侮りがたいのは、どうもガランは最初から不穏な空気を感じ取っていた点である。入室した時からそれとなく警戒を怠っていないし、今だっていつでも逃げれるようにさりげなく退路を確保している周到ぶり。これだけでも、ガラン・モッサの有能さと踏んだ場数の多さを推し量れるというものだ。

 

「簡単な話ですよ。彼は、鉄華団を戦いから遠ざけようとしたのです」

 

 ならばそんな男を前にしているのに、暖簾に腕押しのごとく動じないジゼルとはいったい何者であるのだろうか?

 かつてひとまずの答えを出したはずの疑問が、再び鎌首をもたげ始める。

 

「子供たちを戦いから遠ざけるというのは、人として至極当たり前の事ではないのかね? それで裏切り者として粛清されるようでは、彼も浮かばれんと思うが」

「普通ならそうでしょうね。ですが、ジゼル達は戦いの中で成長した会社なのですよ? 武力をもって生計を立てる会社なのに戦いから遠ざけられてしまっては、とてもお金を稼ぐ事などできません」

「だから粛清したと言いたいのか? 君たちは戦いたいから、止めさせようとする彼を排したと」

「その通りです。彼の気遣いはとても嬉しいものですが、しかし必要なものでもないのです。だから、ジゼル達は泣く泣くラディーチェ氏を粛清することに決めたのですよ」

 

 こちらもまたどの口が言うのかとばかりに嘘の応酬である。しかも性質の悪いことに、嘘をついているとも思えない信憑性を纏わせている。言っていることは破綻者のそれなのに、もしかしたら本当にそうなのかもしれないという説得力がついているのだ。

 

「……なるほどな」

 

 ラディーチェと繋がっていたガランならば、ジゼルの発言がとんだ嘘というのは当然見抜いていることだろう。しかし、それを無視して嘘だと糾弾する事も出来るはずがない。

 だって彼は、鉄華団の力を利用するために此処へとやって来たのだ。そして目の前には、”優しい人間”を殺してまで自分たちは戦いたいと言ってのける参謀が居る。であれば、腹はどうあれ意見の一致を見ているこのチャンスを不意にするのも難しい。

 

 つまりガランは、『ラディーチェを粛清した上で、恐らくはガランが敵とすら見抜いている組織』を雇うしかない状況に置かれてしまっているのだ。

 

「お聞き苦しい事情をお聞かせしてしまいましたが、こちらが戦争に参戦する気なのは確かです。他の団員たちは皆、今回の事件で負傷した仲間の仇を取ろうと勢い付いていますから、士気は非常に高いことを約束しましょう」

 

 よってこれは、ジゼルを通じた鉄華団からの事実上の宣戦布告という事になり──

 

「よし、良いだろう。君たちのその気概を信じようではないか。なに、俺も傭兵なのだ。そういった感情があることも理解できるさ、はははははっ!」

 

 豪快に笑ったガランの返事は、宣戦布告を聞き届けた上で受けて立つということなのだ。

 

 ──互いに罠を仕掛け、利用する算段を立てた歪な関係性。静かに、けれども確実に始まった闘争の波を乗りこなして、傭兵と殺人鬼は不敵な握手を交わすのだった。

 




信憑性(戦いたいのは本心から)
説得力(このために策を回してきた)
本格的にジゼルが悪人じみたムーブをしてまいりました。こんな邪悪が主人公で本当に良いのかと、作者自身疑ってしまいます。まあ言っていること自体はほとんど嘘もなく、状況から推測できる事ばかりなのですが……そのせいで余計にヤバイ奴になってますね(白目)
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