#51 Two Years Later
ギャラルホルン戦役を切っ掛けに、火星の実情は大きく変わった。
元々アーブラウ含む四大経済圏による実質的な植民地化と、さらに腐敗したギャラルホルンにより設置された火星支部の圧力により不当な支配を受けていた火星であったが、この版図はクリュセを筆頭に大きく覆され始めている。なにせ革命の乙女ことクーデリア・藍那・バースタインを擁し、さらに火星の英雄と評判高い鉄華団が関わる都市がクリュセなのだ。世界が大きく変わり始めた今、何も起きないはずがない。
ギャラルホルン側の英雄ことマクギリス・ファリドをトップとした新生ギャラルホルンは、手始めに火星支部の規模を縮小する。これによって傍若無人なまでの強権を振るうことは難しくなり、監視機構という元来の在り方を取り戻す一歩となった。
加えて数年前から関係の深かったアーブラウはこれを機にクリュセの完全独立を認めたことで、クリュセは火星初の独立を成し遂げたことになる。内外における風評やハーフメタル関連の利益、鉄華団という無視できない組織への影響を考えた末の結果だろうが、ともあれ遂に独立が叶った事実に違いはない。
ここからは坂を転がるように物事は進んでいく。クリュセ独立に倣い火星における各経済圏支配下の都市たちもこぞって独立運動を活発化、公平性を重んじ始めたギャラルホルン側の後押しもあり経済圏たちは独立を認めざるを得なくなる。彼らとしてもいつか鉄華団のような組織が生まれ、かつてのギャラルホルンのような被害を被るのは勘弁願いたかったのだ。
こうしてあっという間に火星は独立を認められていたのだが、そうなると困るのは火星全土を一丸とできるまとめ役が必要になるところだ。けれどこちらもこれまでの実績や他企業との繋がりもあり、すんなりと一人の女性が選ばれる事となる。
独立を果たした各都市によって形成された”火星連合”の初代議長に収まったのは、やはりと言うべきかクーデリアを置いて他にあり得ず。ギャラルホルン戦役から二年が経過した現在でも、彼女は火星のトップとして目まぐるしく奔走していたのである。
◇
かつてはテイワズやアーブラウ領と提携してハーフメタル産業と孤児院の経営を主としていたアドモス商会であるが、社長であるクーデリアが火星連合の議長の座に座ってからもそれは変わらない。
ただ、社長よりも議長を務める方が遥かに割合が大きくなってしまったのは事実だ。そのため経営自体が難しくなる──と考えられていたのだが、鉄華団との提携もあってそこまで深刻な事態とはなっていない。
「クーデリアさん、迎えの車着きましたよ」
「はい、ありがとうございます」
昼前頃、アドモス商会の社長室へと入室してきたのは鉄華団に所属する少年の一人だ。彼以外にも多くの団員が二年前から続く”他企業への研修”の一環としてアドモス商会で働いており、社会を学びながらもクーデリアが抜ける穴を補おうと必死に働いてくれている。それにそもそもの話、鉄華団もハーフメタル産業や孤児院の経営にはかなり関わっているのだ。研修という形で多少のフォローを入れる程度は造作もない。
社長秘書を務める恰幅の良い女性、ククビータに後を任せたクーデリアは正面入り口へと出た。既に鉄華団のエンブレムの入った黒い車が二台の
「久しぶりですね、三日月」
そうして車中へと乗り込めば、普段通り火星ヤシを頬張っている三日月・オーガスの姿があるのだった。
彼はクーデリアを見るや火星ヤシを一つ勧めてきたが、かつてはずれを引いた身であるクーデリアは謹んで辞退させてもらう。軽いトラウマになっていた。
「久しぶり、クーデリア。元気だった?」
「おかげ様で……と言いたいところですが、忙しい日々が続いてますね。火星独立から今日まで、やることはあまりに多い。ここ数日はアドモス商会で仕事をできましたが、議会の方で寝泊まりすることもままありますし」
「そっか、大変なんだね。こっちは昔とそこまで変わってないからなぁ……」
静かに三日月が呟いた。それが表面上のものだけであり、実際は鉄華団もまた大きく変化していることをクーデリアは良く知っている。彼もまた夢に向かって日夜進んでいるのだろう、かつてのクーデリア自身のように。
そうこうしている間に車が動きだす。物々しい護衛のままクリュセの街を走り出すが、車内はあくまで穏やかな空気に包まれていた。
「あなたには色々と聞きたいことがありますが……ひとまず、暁君の方はどうですか?」
「すっごい元気だよ。毎日アトラを困らせてるくらいには元気に溢れてるし、皆もちょくちょく遊びに来てくれてるからね」
「それはさぞ賑やかでしょうね。きっと良い子に育ってくれますよ」
淡々としたように喋る三日月だが、いつもより心なしか嬉しそうな色が見えた。それがクーデリアにとっても微笑ましい。
暁。その名前はおよそ一年前にこの世へと生を受けた、三日月とアトラの子供であった。元々それなり以上に好意を抱いていた二人──特にアトラ──だが、鉄華団の躍進が少し落ち着いた一年前の段階でとうとう恋仲にまでなったのだ。
二人がそういう関係になったことはオルガを筆頭に鉄華団でもかなり喜ばれたが、「まさかここまで子供が出来るのが早いとも思ってなかった」とはやはりオルガの談である。たくさんの祝福とちょっとの生々しさを感じさせるアトラの妊娠に鉄華団は大いに沸いたものだ。
とうとう父親にまでなってしまった三日月だが、彼自身も阿頼耶識の改善により身体はマシになっている。動かなくなっていた右腕は感覚が薄れた代わりに不器用ながら動き始め、右足はほぼこれまで通り動くようになったという。さすがに右目の視力までは治らなかったようだが、それは同じく左腕が不器用になってしまった昭弘共々仕方ないと受け入れていた。
こうしてバルバトス無しでも満足に動けるようになり、現在は鉄華団が保有する農業地帯で念願の農場経営を任せられている。まだ二年目であるが農場は順調に軌道へと乗り始め、作物の不当な値段も見直されつつある火星での収入源になり始めたと聞いていた。
「俺もアトラも子供じゃないけど、知ってることは子供みたいに簡単なことばかりだからさ。難しいことはクーデリアにも教えてもらえると嬉しいな」
「えぇ、もちろん協力しますよ。なんだったらそちらに泊まりこんででも──って、それは三日月とアトラさんに迷惑でしたね」
「……? 俺は別に構わないし、アトラも気にしないと思うけど。それとも嫌だったりする?」
「嫌だなんてそんなこと! あ、ありませんから……やっぱりその……」
勢いで叫んでしまってから、今度ははっきり分かるくらい声が小さくなってしまう。クーデリアから三日月へ好意が全くない、などと言えば嘘になる。むしろ好きな方だろう。けれどハッキリ恋と断じて良いかは分からず、また既にアトラと夫婦にまでなってるところに割り込むのも気が引けた。
あれ、でもキスはされたしアトラさん結構乗り気だったしあれやっぱり私どうすれば──一気に思考が過熱して顔を赤くしたまま黙り込んでしまったクーデリアに、三日月が無言で火星ヤシを勧めてきた。今度は空気を誤魔化すために遠慮なくもらった。非常に甘い。
「ええっと、その、三日月さえ良ければ今度そちらの方に──」
お邪魔させてくれませんか? と続けようとしたときだった。
不意に運転席の方から咳払いが聞こえてきた。これっぽっちも空気を読めていない咳払いにクーデリアが完全に凍り付き、続きを言う機会を逸してしまう。そういえば三日月ばかりに注目していたが、運転手は誰なのかとクーデリアが運転席を覗いてみれば──
「惚気るのは構いませんけど、ジゼルの居ない所でやってください。聞いているとすごく胸やけしますから」
「え、あー……すみませんでした。それとお久しぶりです、ジゼルさん」
「はい、お久しぶりですねクーデリアさん」
顔を真っ赤にしたクーデリアと対照的に、ハンドルを握るジゼル・アルムフェルトはいつも通り白皙の無表情だった。淡々とした声音もやはり普段と変わらないが、わずかに呆れが含まれているのも感じられる。周囲には基本的に無頓着なジゼルでも、他人の恋愛話を聞かされて困るのは同じようだ。
普段ならこういう送迎の運転手はアトラか鉄華団の平団員辺りがやりそうなものだが、わざわざジゼルを引っ張り出してきたのは団長からの厚意の証か。鉄華団のエース、遊撃隊長にして農場責任者の三日月はもちろんのこと、一年前の組織再編成において正式に『参謀兼団長補佐』に任命されたジゼルは今や結構な立場である。それだけこなすべき仕事も多いはずだが。
「忙しい中わざわざすみません。いまや鉄華団の規模もかなりのものですし、お仕事の方も大変なのでは?」
「団員の規模はかつての五倍以上にまで膨れ上がり、色んな企業と関係を持った
だから本当はアクセル全開で本部へと戻る予定だったのですが、などと空恐ろしい呟きが聞こえてきた。もし前後がMWで挟まれていなければ、今頃クリュセの只中を爆走していたのだろうか。正直考えたくない。
ですが、とジゼルはのんびり続けた。車は丁寧に角を曲がりクリュセの郊外へと出る。赤茶けた土地をしばらく行けば農園と、それに鉄華団火星本部が見えるはずだ。
「火星でも一番忙しいだろうあなたの前で弱音を吐くほどジゼルも恥知らずではありません。それにこうして運転手と護衛を任されているということは、団長さんからの信頼でもありますからね。なら多くは言いませんよ」
「では、せめてその信用に応えられるだけの働きをしなければなりませんね。責任重大です」
そもそも今回こうして鉄華団の車に揺られているのも、決して休暇だとか療養のために鉄華団火星本部へ向かっている訳ではない。むしろ火星の代表としてハーフメタル採掘場の視察という、二年前にも行ったことのある仕事が主だった。
鉄華団がテイワズから渡された巨大なハーフメタル採掘場は当時こそMAやセブンスターズの思惑の巡る土地になってしまったが、全てが終わった今ではただの金の成る木でしかない。本腰を入れて採掘のための準備を整えたことでようやく採掘を始める目途が立ち始めたのである。
今回クーデリアが視察する採掘場にはそういう来歴があり、鉄華団の面々が必死になって用意した将来のための資金源だ。けれど本当に資金源になってくれるかどうかはクーデリアが主導となる火星のこれからに掛かっている。
──改めて、”火星独立の立役者”という看板の重さを感じてしまった。
差別されつづけていた火星の現状を憂い、なんとか改善しようと走り回った。それでもいまだ課題は多く、クーデリア次第でこの上向きつつある現状も崩れてしまうかもしれない。責任の重さはこれまでの比ではないのだ。
それからもしばらく他愛のない話を交わしている内に、気が付けば車は農園のすぐ脇を走っていた。ここら一帯の大部分は桜・プレッツェルという老婆の管理する土地だが、その奥には鉄華団が運営を開始した農園もある。
「それじゃ、俺はこの辺で降りるよ。もう護衛も必要ないだろうしね」
農園のど真ん中に立つ孤児院まで着いたところで三日月がそのように告げた。彼の仕事場はこの先にある。ジゼル達も承知していたらしく、特に問題なくMWと車は止まった。
そのまま降りていこうとする三日月の背中を惜しむように手を伸ばしかけたクーデリアは、代わりに声を掛けた。
「三日月! また、会えますよね……?」
「そっちがその気ならいつでも。この仕事が終わったらこっち来なよ、きっとアトラも喜ぶからさ」
「ええ、是非行かせてもらいます!」
「そ、んじゃ待ってるから」
相変わらずクールな雰囲気だが、確かに笑っているのを見てクーデリアは安堵した。彼もまた多感な少年から少しづつ大人へと成長できているのだ。その事実が嬉しかった。
そんなやり取りを果たしてジゼルはどう捉えていたのか。ミラーに映る彼女の口の端が微かに歪み、ニヤニヤしているように見えたのは気のせいではないだろう。また顔が熱くなるのを意識してしまう。
「嬉しそうですね、クーデリアさん。惚気るなら他でやって欲しいと言ったのですが」
「す、すみません……久々に三日月に会えて嬉しかったもので、つい……」
「彼も言ってましたが、会おうと思えばいつでも会えますよ。宇宙にまで出て命のやり取りなんていうのも、今はほとんどありませんからね」
「では、オルガ団長の目標は達成されつつあるのですね……私もとても嬉しく思います」
「はい、ジゼルとしても団長さんが頑張っているのは素直に喜ばしいことです」
出来るだけ命を張った仕事を無くそうというオルガの方針は鉄華団の組織運営にも反映されている。鉄華団の名前も売れた今では護衛任務もほとんど暇をすることばかりだし、喧嘩を売って来るヤクザな企業や海賊なんかもほぼゼロだ。たまに命知らずが出てこようと、平穏な生活を手に入れた三日月を呼ばずとも鏖殺の不死鳥が待ち構えている始末。少なくとも三日月はほぼ鉄火場から遠ざけられてるし、他の団員たちもめっきり命の危機に曝されることはなくなったといえよう。
まさしく理想を実現しながら火星企業の頂点に立ったオルガ・イツカであったが、最近は悩みの種も増えているとジゼルは零した。ちょうど先ほどまでのクーデリアと三日月のやり取りと似たような話題である。
「まだ団長さんは独り身ですから、『自分の娘はどうだ?』なんて縁談を勧めてくるお偉方が増えてきているのですよね。はっきり言って良い迷惑ですけども」
「つまり政略結婚ということでしょうか……? こう言っては何ですが、その──」
「なりふり構わず、そう言いたいのですか? 客観的に見てその通りですし、団長さんは怒らないと思いますよ」
それこそ貴族だとか大企業の社長の子供同士で婚姻させるというのはよくある話だが、それを鉄華団に当てはめると少々事情が異なってくる。確かに一大企業とまで化した鉄華団であるが、なにせオルガの生まれは火星のストリートチルドレンである。重視されやすい血統やら伝統やらは皆無に等しいだろう。
なのに現実は大量の縁談が舞い込む始末である。それだけ鉄華団と団長の名が大きくなったことの証左であるし、出来るだけ繋がりを強固にしたいという欲もある当然あるはず。だがそれにしても珍しいケース故にクーデリアをして”なりふり構わず”と感じてしまったのだ。
「まぁ副団長さんはすごく羨ましがってましたけど、愛のない結婚なんて辛いだけですからね。三日月さんとアトラさんの子供が生まれた時の喜びようを思えば一目瞭然ですよ」
「そ、そんなにすごかったのですか? あのオルガ団長が?」
「それはもう、自分の子供かってくらい喜んでましたよ。オーバーすぎて逆に三日月さんの方が冷静だった程ですね」
なんとも意外な話を聞いてしまったものである。けれど彼の
「オルガ団長にもそういうところが……ですが、あの方は女性関連の浮ついた話を少しも寄せ付けない雰囲気がありますよね。自分の幸せよりも他人、特に団員さん達の幸せの方を優先してしまうと言いますか」
「ジゼルも同感ですね。実際に縁談の話なんかは全部断ってしまいましたし、団長さんも特に興味はないと思いますよ?」
「……? えぇ、そうですね、当人たちの気持ちが一番ですから」
──ほんの一瞬、ジゼルの言葉に違和感を覚えた気はしたが。
その正体を掴む前に車体へとブレーキがかかった。気が付けば鉄華団火星本部の正門がすぐ前にある。どうやら目的地まで着いたようだ。すぐに内部へと案内され、車も所定の位置へと止められた。
この後は確か、オルガ団長と視察の打ち合わせを終えてから採掘場へと向かう手筈になっていた。相変わらず休まる時間が少ないとはいえ、こうして車に揺られて雑談しているだけでもかなりのリラックスにはなる。強張っていた精神がほぐれたのを感じつつ、クーデリアは車から降りた。火星に吹く風が心地よい。
「そういえば、一つだけ聞かせてもらえますか?」
「おや、なんでしょうか?」
役目は終えたとばかりに去って行こうとするジゼルを呼び止めた。立ち止まり振り返った金の瞳と視線が交わる。やはり感情の読み取り辛い、けれど神秘的な光を湛えている。
「その、あなたは誰かを傷つけるのが趣味だと言っていました。鉄華団は通常の企業へと変革されつつありますが、共に手を取り合って笑うことは出来ていますか?」
ジゼルの本性をあまり大っぴらにするのもどうかと考えたので、クーデリアなりに婉曲的な表現をしたつもりだった。もし伝わらなければどうしようかとも思ったが、どうやらその心配はなかったらしい。
口元にニタリと笑みが浮かんだ。瞳の奥に妖しい揺らめきが見て取れる。静かな、けれど情熱的な何かを秘めた揺らめき。決して嫌な輝きではなかった。
「問題ありませんよ。この一年はすっかり殺せていませんけど、特におかしな行動はしてないつもりですし。今のジゼルはもうちょっとマシな目標を見つけたのですよ」
「差しさわり無ければ聞いてみてもよろしいでしょうか?」
「……いいえ、秘密です。これは男の人の沽券にも関わる約束ですからね」
すげなく断られてしまい、今度こそジゼルは去って行った。代わりに他の団員がクーデリアを案内しようとやって来ている。彼らと簡単に会話を交わしながら綺麗になった本部内を進んでいくが、彼女の心は先ほどのジゼルと自分の姿を思い返してばかりだった。
「惚気るなら他でやって欲しい……あのようなことを人前でされたら、確かに文句の一つは言いたくもなりますね……」
「どうかしましたか?」
「いえ、何でもありません」
クーデリアにとっての戦いはまだまだ続く。火星独立後の基盤作りもそうだし、今回の採掘場視察もそう。議長として各都市を纏めるのは骨が折れる上にギャラルホルン側でもまた大きな動きがあると聞いている。
なんでも、ヒューマンデブリを根本的に廃絶しようという気運が高まっているらしい。ついにそこまで来たかと喜ぶ反面、恵まれない子供を少しでもなくしたいと願って行動を起こしたクーデリアが関わらない訳にはいかないだろう。本当に、やるべきことはいくらでもある。
それでも、彼女は決して折れないだろう。自らの現状に不貞腐れず投げ出さず、前を向いて生きた人たちがすぐ傍に居るのだから。彼らの背中を想えば、容易く止まることなどあり得なかった。
「という話をジゼルさんとしたのですが、オルガ団長も大変ですね。心中お察しします」
「……? ちょっと待ってくれ、そりゃ何の話だ? 縁談? んなもん一言も聞いてないぞ」
「え?」
「いや、マジだマジ……ホントにジゼルの奴がそう言ってたのか?」
「はい、副団長がすごく羨ましがってたとも言ってましたが……」
「それでここしばらくユージンの視線がキツかったのか──いや、にしてもなぁ。そりゃよく知りもしない誰かとくっ付く気なんざないとはいえ……」
「あの、オルガ団長?」
「悪い、ちょいと話を付けてくる。部屋は用意してあるから好きなように使ってくれ。……ったく、こりゃ髪を梳いてやるとかそういうのは全部無しだな」
「あ、あの、オルガ団長!? ……行っちゃいましたか。それにしてもジゼルさん、髪の毛を梳かせるまでしてるとなると、これはもしかして……いえ、人の諸々に首を突っ込むのはよくないですね! まずは自分の方をどうにかしなきゃなりませんし!」