ところでメルブラとかまほよとか月姫とかは、いえ、なんでもないです。
ストーリーの展開を加速させたいと試行錯誤していますがなかなか結果が現れません……申し訳ありません。
「ええと……ごめん、何の相談もなく勝手に物事決めちゃって」
ラニと別れて、階段を降りながら我に返った私がまずしたことは謝罪だった。
パートナーの意見を一つも聞かずに場の勢いで話を進めてしまったのだ、たたでさえ自分はこの世界では記憶喪失という異端で足を引っ張ってしまっているというのに更に足枷を作ってしまったものではないか。
『――いいんじゃないかな。君の望むものが、初めてできたんだろう?』
後先考えないでやった結果がこれだよ!?って、え?
「え、軽っ」
『うん?いや、マスターの言いたい事も判るんだけどね、前も言ったけど戦うしか能がないだけで、この戦争の初心者であるのは私も同じ』
手探りで進むことは否定しないとランサーはずっと閉じていた口を開いた。
いいや、けど、そういうことではない。ラニと関わることはランサーの秘密とも関わることと同義なことぐらい、私だって判る。ランサー自身が、それを誤魔化して、迷いを何処かへ置き忘れてしまったかのようだ。
流石にバツが悪いのか、背後のランサーから苦笑と諦観の気配が滲む。
『私はその資格を既になくしている。私は正しいことも、間違ったこともしたから、今は君に託したい。どんな結果でもいいんだ、私とは違う君が運んだものをただ見極めたい……ここは、私の世界ではないのだから』
願いはあると彼女は言う。けれど世界を動かすものではないとも彼女は言う。彼女の願いはこの世界とは関わらないモノだとしたら、いったいどういうものなのだろう。ランサーの姿も今は見えないこともあって、言い表せない心の不安がよぎった。
わかっている、もともと英霊は過去の存在で現在に存在していることが奇跡なのだ。それでも、今それを自覚できるほど、私の世界は強くない。彼女以外の味方を、立つことさえままならない私を支えてくれる存在は、まだいない。
だから、思わず振り返って消えないでと、意味も自分で理解できていない言葉を投げかけようとした。しかし其処に居たのは姿の見えないランサーだけではなく、緑衣に身を包んだ、ダンのサーヴァント――アーチャーだった。
「へーへー、随分とお熱いことで。白昼堂々痴話喧嘩ですかね、お二人さん」
「あ、アーチャーッ!?」
「くっ、気配遮断か!」
瞬時に実体化したランサーが私とアーチャーの間に入って身構える。
他の参加者やAIが多数いるこの衆人環視のなかで、いったいアーチャーはどうするつもりで現れたのだろう。彼の宝具
戦場の緊張感が場を包み始めた頃、対面のアーチャーはやれやれといった風に両手を広げて攻撃の意志がないことを示した。
「冗談だよ、冗談。殺るなら声をかける前に殺ってるつーの」
「そんな冗談を通じさせなくした張本人が何を言う」
「はっ、これだから堅物は……よく考えろよ、仮に俺が暗殺に成功しても旦那の俺への信頼はガタ落ちだ。それこそ二個目の令呪だって使われかねない」
「ならば、そのマスターはどこにいる」
詰問口調のランサーに対して、アーチャーは興味なさげに首を振る。どうやら本当に争う気はないようだ。
「うちのマスターなら、あの教会だよ」
「教会って……貴方は行かなくていいの?」
教会と言えばあの姉妹による魂の改竄が目的だろうに、改竄するべきサーヴァントが居ないなんて本末転倒ではないか。
「あんな底知れない女たちに身体をいじくられたくないからな、いくら美人っても御免だぜ」
「得体知れないのは同意するけれど」
しかも術を施すのは妹の方なので、姉よりもそこはかとない不安が常に付きまとっている。うん、二人が凄い人だって分かってはいるけれど、調子に乗って彼女たちに必要以上に頼ると取り返しのつかないことになりそうな気がするのも確かだった。やはり何事も自力で解決が一番だね……残念ながら、今の私はそんなこと言えるような立場ではないので、彼女たちに頼るしかないのが辛いところだ。
「それにマスターが用あるのは女じゃない、教会なんだよ」
その言葉に私は首を傾げ、ランサーは納得したように小さくうなずいた。
『教会は何も、強さを求める場所ではないよ』
私にだけ聞こえる声でランサーが答えを教えてくれた。成程、姉妹が教会に居るだけであって、教会本来の役割は私たちの強化ではなく別にある。
――祈り、懺悔、神への信仰を捧げる、救いを求める場所。
記憶喪失の私にはそういった意味で使用する縁が薄いけれど、ブラックモア卿は違った、ということか。
「俺はそういったのに縁がないし、マスターの時間を邪魔するほど無粋でもねえ。かと言って、好き勝手やって信頼をこれ以上落とすわけにもいかないときた」
殺す気がなかったとはいえ暇だから暗殺未遂とかやめてほしい。思わず苦い顔をするとアーチャーはそんなことなど気にも留めず、ニヒルに口角を歪めて緑衣を翻した。
「なあ、お前らだって勝てればいいんだろ。勝つことに全力を出して何が悪い?」
このまま立ち去るのかと思いきや、不意に背を向けられたまま問いを投げかけられた。
きっとその問いには、ラニと共に垣間見た彼の世界を構成する想いがあるのだろう。彼の真名を得るために、ゆさぶりとして先程の彼の過去を問い返すのもありだったのかもしれない。
けど私は彼の言葉を噛みしめ、意味を理解して、それでもなお彼に抉る言葉も応える言葉も口から出すことはできなかった。
勝つことは必要だ、私は死にたくないしランサーは叶えるべき願いを持っている。死なない、死ねない覚悟を私は一回戦を通してしなければいけなかった。これだけはもう避けてはいけないし、ブラックモア卿に解毒を施してもらった以上……別の覚悟もあるのだと知ってしまった。
弓兵はそれが正しい覚悟なのかと問うていた。
その問いには、私は答えなければいけないのに。
「アーチャー、貴方は何の為に戦う。何かを得る為に勝利があるのか、勝利を得るために戦うのか」
答えられない私にも、アーチャーにも、私の隣に居たランサーは静かに言葉をかけた。
「私とて、人に語れるようなものを持ち合わせていない。この身に秘めるのは利己的な願いだしね。マスター、だから私からも問おう、この先の戦いについて」
――勝利を過程と捉えるのか、それとも結果とするのか。
闘う覚悟を得た後の覚悟。私が次に進まなければいけない一歩だ。
「答えは今すぐに必要なわけではないよ。いつになっても構わない、ただ心の隅でもいいから考えていて欲しい」
「うん、わかった。ランサーにはいつか聞いて欲しい、私が見つけた答えを」
「へいへい、俺はまるっと無視かよ。質問も質問で返しやがって」
背中越しで別の話題に変わったのが気にくわなかったのか、こちらへ振り返ったアーチャーの野次にランサーは困ったような口調で返す。
「見ての通り、私たちは未熟者同士だからね。その問いに対する答えをまだ持ち合わせていない。それにアーチャー、そういった問いは敵ではなくまず己のマスターに投げかけ理解するものではないかな」
その返しに答えを窮したアーチャーは緑衣をきつく握りしめて今度こそ去っていった。
「じゅ、寿命が縮んだ……」
『大人しく立ち去ってくれてなによりだ』
アーチャーの姿が見えなくなってから漸く息をつく。既に再び霊体化して姿を見せなくなったランサーの言葉に心の中で同意しつつも、これでアサシンとの対戦になったら本当にいくつ命があっても足りないのではないかと不安になる。そんな未来よりも今考えるべきは現在の対戦相手なので、マイナス思考を追い払う為にも私は頬を一度大きく叩いた。
『うわっ、マスター?』
「気にしないで、気合いをいれただけだから」
一回戦では現状理解に手一杯だった。
二回戦では新たな問題が降ってきた。
でもきっとそれは一歩踏み出した証なのだろう。
「ひとまず、やるべき事を確認しよう」
アリーナへ赴く前にやっておかなければいけない。今までよりも必要なものが、少しずつでも増えているのなら取りこぼさないようにしたかった。ランサーも同意してくれて、指折りで確認を始めた。
『一つ、まず基本として二回戦突破を狙う』
「まあ、大前提だよね。その為にも必要な事としてアーチャーの真名が解らなきゃ……」
『これについては、図らずともブラックモア卿やラニから有力な情報が貰えたから真名看破だけなら時間の問題だろう』
つまりは名前を知ったところで対処できなければ意味がないとも言います。経験を積むだけじゃなくて、彼の弓術への対抗策も考えなければいけないだろう。
『次に、先にも名前が挙がったラニ=Ⅷ。マスターは、彼女のことをもっとよく知りたい、ということで間違いはないかい?』
ランサーの言葉に、私は拳を握りながら頷いた。まだ方法はおろか成功するイメージさえ少ないけれど、私がこの世界で初めて関わりたいと願った、それを確かなものにしてみたい。
「それに欲が出てきてさ、凛やレオたちのことも知っていきたい」
『敵ばかりの戦場だとしても此処は決して孤独の場所ではない、ということかな。君は弱いけれど、だからこその強さを持っているね、感服する』
若干諦めにも似た溜息をつかれた気がするのだけど、気にしたら負けだろうか。
「急ぐ必要はないけれど、やっぱり記憶がない状態もどうにかしたいね」
『あとは頼まれ事として眼鏡探しか……眼鏡か…』
「今更なにを言っても仕方ないし、アリーナには行かなきゃいけないから別に構わないんだけどね……ランサー、眼鏡に何かあるの?」
眼鏡に対して随分とぶつくさ言っているので気になって問いかけてみたら、珍しくランサーは答えにつまりながら悩ましげに言葉を探していた。
『いや、眼鏡には何の恨みつらみもないのだけど、眼鏡をつけた一見好青年にみえて中身は化物にも負けず劣らずなトンデモ存在だけど一番恐ろしいのは近しい女性を次々と落としていくあの無自覚フラグ乱立者が』
「うん。落ち着こうか、ランサー」
眼鏡は早めに見つけ出して彼女から話題を遠ざけた方がよさそうだった。
***
第二層は第一層よりも深く、潜っていくイメージ。ようやくアリーナへ赴こうとしたとき、端末からアリーナの第二層が開放されたという連絡がきた。
やはり一回戦と同じように、第二層は第一層の無機質な空間と違って周囲には多くのオブジェクトが散乱している。朽ちた街、崩れた闘技場、石材が漂う廃墟が第二層の舞台だった。
「ふむ、朽ちた闘技場……といったところかな」
「中の構造も一回戦のときより複雑になっているみたいだけど、前と同じようにまずは全体を把握するためにぐるっと見て回ろうか」
「了解だ、マスター。トリガーだけでなくスキルポイントの取得やタイガたちとの約束もある。時間は有限だけど無理をして倒れてしまうのは本末転倒だ、気をつけるように」
あいあいさー、マイサーヴァント。礼装と所持アイテムを確認してから、私はランサーと共にエネミ―ひしめくアリーナへと足を踏み入れた。
動物を模したエネミ―の鋭い攻撃をかわしつつ、まずは周囲の把握に専念する。
「なんというか……隠れられる場所が一回戦よりも多い」
「アーチャーが本領発揮できる舞台、というわけだね。ただ彼の戦術とマスターの方針が一致しない以上、不意討ちは少なくとも準備期間中はないと考えていいだろう」
以前よりも周囲の状況に疑心暗鬼になっている自覚はあった。ブラックモア卿はあくまで決戦での死合を求めていた以上、確かにその可能性は高い。けれど一回戦と違ってまだ私たちは二人と刃を交えていないこともあって、彼らの戦闘スタイルがどのようなものか推測しかできないのだ。そうなると、少しでも可能性は広げておいた方がいいだろう。
「うん、でもこの調子なら期日前にはもう少し私のスキルが利用できるになるだろうね」
「そうだね、だいぶポイントが貯まってきているから……眼鏡を渡す時に一緒で強化してもらおう」
本来なら眼鏡なんて小さくて見えにくいものは、この広いアリーナ上で見つけるのは困難だろう。ただ此処は電子虚構世界なのだ、アイテムはアイテムボックスに収納されている。ある程度はボックスの形状や色で判別はつくが宝箱の様に開けるまで中身が分からないようになっていた。
問題があるとすれば、私たちが秘かにタイガークエストと呼ぶ藤村先生の頼まれ事ではアイテムボックス外にアイテムが存在しているのがよくあること、
――そしてその例外では大抵が厄介な事態になっていることだ。
「またしても、虎だね」
「虎だ……眼鏡をかけた」
「虎、なんだよね……眼鏡をかけてるけど」
………そんな虎が居てたまるか!
以前の竹刀を守っていたものと同じように変質したエネミ―が妙にコミカル化された虎になっていた。今回はエリート教師風に見える眼鏡付きで賢そうにも見える。
「こんなヘンなものと戦っているのが知られたらアーチャーには絶対話のネタにされるだろうし、ブラックモア卿に見られるのはなんかもう私のささやかなプライドが無くなってしまうから……速攻でいこうランサー!」
「マスターの体面を気にするその姿勢はどうかと思うけど、こういった不可思議なものは早めに倒すことに異議はない」
ああいうのは放っておくと更に性質が悪くなるのが常なんだ、と何処か経験談めいた発言をするランサー。本当に彼女はどんな人生を送ったのだろう、少し心配にさえなってくる。
「目標はあの眼鏡だろう?アレを破壊してしまわないようにしないと」
他のエネミ―に比べてこの虎型エネミーは大柄なので、攻撃は充てやすいはず。なら眼鏡に当たらないよう腹部を狙えば……
「って、ランサー危ない!?」
私の声よりも一瞬早くランサーは敵の動作に勘付いた。もはや直感による反射に近い動作で背後の私に向かって飛び退ると、直前まで彼女が居た位置に轟く音と共に衝撃が走る。
なんだこの虎、見た目に反して速い!
「気を抜くなマスター、攻撃はまだ止んでいない!」
そう言うや否やランサーは状況を飲み込めない私を抱えてアリーナを駆けていく。紙一重に避け続けるランサーだがそれは一歩分、彼女が着地してから移動する次の瞬間には虎の攻撃が襲っていた。
「遠距離型……魔法を扱う虎っ」
「そんなマジカル
「眼鏡でインテリっぽいから魔法型なのかなぁ」
「そんな安易な発想でいいのか!?」
外見はコミカルなのに、中身はランサーの攻撃を素早く避けるうえ咆哮にも似たアクションで遠距離攻撃を放ってくる。以前の虎よりも攻撃力が上がっているし、容赦がない。
「ランサー、私を持ったままじゃまともに動けないでしょ。適当に降ろしていいから」
「そういうわけにもいかない、というより、いま止まったらやられてしまう……よっと」
またもや紙一重に虎の咆哮をかわしたランサーの発言に肩を落とす。確かに言われてみればそうだった……なら、この状況を変えるのは彼女に抱えられているだけで手持無沙汰な私ということか。激しい移動の中で揺られながら、なんとか自分のアイテムと礼装を確認して打開策を考える。
――といっても、戦略なんて考えられるような頭の構造じゃない。ランサーの戦力を信じての特攻ぐらいしか、思いつけない。
「隙、一瞬つくるから!ちょっと誘導おねがい、ランサー!!」
「心得た、我がマスター!」
ぐん、と今までの疾走から更に加速してランサーは相手を翻弄する。今まで以上の揺れで酔いそうになるのを我慢しながら、私は手元にあるものをしっかりと握って狙いを見定めた。
対人戦闘ではきっと役立たない、プログラムされた敵だからこそ攻撃はある程度一定になるし、素人の私もなんとか対応できるのだ。
一歩、ランサーの着地に対して反応が僅かに遅れる虎の攻撃モーションが始まる――その口が開く瞬間を見逃すな。
「そ、こっ!」
――コード展開 release_mgi(c)
「空気撃ち……一の太刀!!」
振り抜いたその礼装から、放たれるは雷を纏う一閃の刃。
空気を裂いた
「ダメージに加えてスタン効果って……学校の購買部で売っていい代物じゃないと思うんだけど」
けれど、今はこの一瞬を作りだせたのだから物騒なものとはいえ感謝しなければならない。既に私はランサーから離れ、彼女の駆けていくその行く末を見守っている。こんな拙い作戦でも、彼女は全力で応えてくれた。
「その眼鏡、貰いうけよう!」
相手にも負けない咆哮と共に、ランサーは盾による円撃を虎の顎へと叩きこむ。
「ブレス・カンティーノ!!」
……普段なら剣戟のはずなのに対格差から、どうみてもアッパーだっ。キラキラと舞い落ちるのは虎の涙か汗か、あるいは現実的に見るのならプログラムの破片だろうか。
そのエフェクトと一緒に零れ落ちたアイテム、例の眼鏡をしっかりと確保して、私は慌てて彼女たちの攻撃範囲から逃れて見守ることにした。
大柄な外見の割に随分と討たれ弱かったらしく、ランサーの一撃で相手はかなり体力を削られたようだ。先程の様な素早い身のこなしもなくなり、攻撃も何処か弱々しい。それはランサーにも理解できたらしく彼女は私を守るよりも先に虎を撃破することを優先して追撃に走った。
「これで……おわりだっ」
トドメとして盾に仕込まれた杭を虎の胸中へ叩きこむと、それは煌めくエフェクトと共に砕け散る。
「さて、任務達成かな?眼鏡は無事だろうか、マスター」
「私も眼鏡も無事です、ありがとうランサー」
近くにエネミ―の気配もなく、漸く一息をつけた私たちは休憩も兼ねて戦利品ともいえる眼鏡をしげしげと観察してみた。
といっても、一見すれば何の変哲もない眼鏡だ。強いて言うなら、地味目の黒ぶち眼鏡であることぐらいか。アイテム名の『魔眼殺しの眼鏡』という見た目と反して物騒な名前からは全力で目を逸らしているけど気にしない。しかし何故かランサーの表情は眼鏡を観察する程に険しくなっていく。何事かと恐る恐る尋ねてみると、彼女は渋い顔のままだが答えてくれた。
「これと似たものを私は知っているんだ……ただの眼鏡じゃない、どころか滅多に見ないものだ」
そんなトンデモなものを持って来いとあの姉妹はのたまうたのか。いや二人ならありえそうだから余計にランサーの発言に真実味が増してしまう。
「この眼鏡が効果を発するのは特殊な人間だけだろうからマスターに影響があるわけじゃないよ」
「それはそれで怖いんだけど……人生ポジティブにいこ……あとはトリガーだけ取って、明日朝一番に教会へこれ渡しに行くよ」
安心できるのか、できないのか判断に迷うけれど彼女が大丈夫というならそうなのだろう。明日姉妹へ渡すついでに色々聞いてみようか……ここまできたら乗りかかった船だし、なにより彼女たちや藤村先生からもう便利屋扱いされる予感しかしない。それならある程度事情を知っていた方がまだ危険は軽減されるはず、だと思う。
「しかし今回の虎は素早いうえに遠距離攻撃が得意ときた。アーチャーの仮想敵として殺さずにしておくべきだったか」
「だからブラックモア卿たちにあんな愉快な相手を見せるわけには。でも確かに、少しは参考になったかな。ランサーは遠距離の相手はどうするの?」
「得意とするのは隊を組んでの戦術だから、あまり参考にならないのが申し訳ない。しかし策がないわけじゃない、期待していてくれ」
敵だらけの中で信じるしかない、だけじゃない。彼女と進んでいく為に、私はランサーへ自らの意志で信頼している。
だからこそ、今日提示し合ったやるべきことを一つずつ乗り越えよう。まずは一歩、既に進んでいるのだから。
次々回で二回戦決着になると思います。
相変わらずの遅筆で申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします。