設定資料にラフにワダさんと菌糸類会話とてもおいしいです!!
しかしラニとかラニの師匠の設定をみて凄く悶々となることになりました……おおう
青色魔法使いに橙色人形遣い、皆さま禁句はお忘れなきよう
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――たしかに、自分にはまだ戦場に立っている自覚は無い。
自分を形作る記憶を失っているという事もある。目覚めた瞬間から強制的に途中退場も許されない殺し合いに巻き込まれたのだから、現実逃避の一つもしたくなるというものだろう。
しかし、目の前の光景はそれさえも許してはくれないようだ。
――教会へ一歩踏み込むと、其処は戦場だった。
「…………なんでさ?」
そんな呟きも、真横を横切った長椅子が壁に当たって砕ける音にかき消される。それ以前に教会の外では一切聞こえなかった轟音が、まるで合唱のように内側を満たしていた。
「マスター、危険だから私の後ろに。決して離れないでくれ」
どう見ても普通じゃない光景に、実体化したランサーが彼女の盾と共に自分の前に立つ。加護を失っていると言われた盾だが、普通の盾としては充分機能するようで、度々こちらへ向かってくる破片や余波を防いでくれる。
「さて、これはどういうことなのかな。どうも争っている、みたいだけど?」
自分たちを守りながら、ランサーはつぶやく。この現状を受け入れることに精一杯でその原因まで考えていなかった私は、そこで漸く轟音を造りだしているモノへと目を向けた。
――それを私は、きっと正確には理解できない。
青の閃光、この世界では見ることの叶わない蒼穹を垣間見る。
本来ならば一筋の光であるはずのソレも、使い手の能力によって光の奔流と成り変わっていた。それが幾多も織り込まれ、編目模様を紡ぎだす。教会を飾る燭台も、本来ならば美しい旋律を奏でるだろうオルガンも、全て無慈悲に光が織り成す模様に編み込まれ、破壊され、壊れゆく悲鳴ばかりを上げていった。
けれど、それでも、その編目をかい潜るものがいた。正確には潜ってもいない、まるで計算し尽くされたかのように、ぽっかりとその場所だけが光を避けている。
「チッ……少しは当たりなさいよ、この馬鹿姉貴!!」
「当たる阿呆がいるか、当てる阿呆もいないがな」
本来ならば荒れ狂う音しか聞こえないはずなのに、何故か二つの声が綺麗に耳へ届いた。その二つは異質だと、非常識極まりないこの空間においても更なる非常識であると告げているかのようだ。
「大体ね、前提としてあんたと二人っきりで居なきゃいけないってことが間違ってるのよ!」
「それはこちらの台詞だ、馬鹿め。そもそもこの世界に居るだけでも苦痛であるというのに、身内がヘマをやらかさないかとお目付け役までしなければいけなくなったときた。お前にこの私の苦労が分かるというのか?いや、別に理解してもらうつもりなど一切ないのだがね」
「私だってきなくさい未来とあんたの怪しい秘密基地さえ見つけなければ、こんなところには来なかったわよ」
光を放つ数多の魔法陣は銃身の如く。魔弾を補充するため猛回転していくシリンダーは術者の怒りを代弁するかのように唸り声を上げる。
いつでも撃ち出せると明示したように青の閃光を付き従えたモノは、漸く立ち止まって目の前の相手と対峙した。室内のありとあらゆるものからこれ以上はやめてくれと叫ばんばかりにラグが走っている。
弾かせ、砕かせ、荒地を作り上げていた破壊の権化は、なんとヒトの形をしていた。
映える赤の長髪をなびかせて、相手を見据える瞳は燃える炎のよう。神秘に疎い自分でも、彼女はソレに近い存在であると理解できる。
対して、彼女の攻撃を避け続けたモノも人間だった。
こちらはうなじが見える程に切り揃えられた青髪に理知的を通り越して冷酷さえ窺える海のように凪いだ青の瞳。容姿こそ似ても似つかぬ二人だけど、会話からして姉妹らしいし、何より人間の身で人外に等しい行為を行なっている時点で似た者同士だ。
ヒトを越えた存在のサーヴァントであるランサーさえ、声を潜めて彼女たちを刺激しないようにして……
「――あれ、ミスブルー?」
いなかった。
刺激しないどころか、ご近所さんに偶然会ったかのような呆けた声で、赤の女性へ呼び掛ける。
なんなの、何でなの?混乱する自分を置いて、つい先程の破壊活動など目にも入らないように、ランサーは片手を上げてにこやかに微笑んだ。
「あの町以来じゃないか?こんなところで逢うなんて凄い偶然だ」
「…………えと、誰だっけ?」
「うん?覚えていないのか……というより、あれか。すまない、私は貴女に会ったけれど、貴女ではなかったのかもしれない」
「ん、んーー?なにそれ、もしかしてあの爺さんの知り合い?」
「いや、申し訳ないが私はかの宝石爺との関わりはない。所属していた組織としては、敵対する側であったぐらいだしね」
微妙に食い違う会話ながらも、ランサーは嬉しそうな表情を崩さない。
周囲は瓦礫だらけにも関わらずさくさくと彼女たちの元へ進んでいくランサーに慌ててついて行く。二人も突然の闖入者にこれ以上争う気を失くしたのか、漂っていた殺気は霧散して互いに奇跡的に生き残っていた椅子に腰かけた。
「でも爺さんの真似事をしちゃってるってわけだ。ふーん……まあいいわ、面白そうだしちょっと話を聞かせなさいな、お兄さん」
……お兄さん。お兄さんか。
あ、ランサーが膝から崩れ落ちた。
……昨日、マイルームで言っていたことはこういう事だったのか。
「ははは、随分と容赦ないじゃないか。青子」
全身からやるせなさを滲みだすランサーを見て、青の女性が笑い声を上げる。そうして空中に術式を展開させたと思いきや、指を一振りしただけで周囲の瓦礫を消し去り、破壊し尽くされた装飾を全て復元させた。
まるで魔法。先程の絶対的な破壊が児戯であると言わんばかりの行為。素直に感嘆してしまうほど、彼女の実力が他者からして飛びぬけていることが判る。恐らく凛でもこんなに鮮やかにはできないだろう。
「うっさいわね、橙子。だってこの人、剥かなきゃ判らないじゃない」
そういう問題なのだろうかと言いたくなるが、青子と呼ばれた赤の女性にとってはその程度の問題でしかないらしく、ガラリと態度を変えてこちらを見つめてきた。
「で、ようこそ教会へ。ご用は何かしらって、魂の改竄なんだろうけど」
「ここは楽園の死角、セラビムも留守中でね。魂の改竄は行なえよう」
さぁ、君の願いを言いたまえ。二人の視線はそう語りかけてくる。魂の改竄が何を指すのか、いまいち判らないのだけれど、凛の助言通りならばそれがスキルポイントを利用して少しでも自分たちの状態を改善できるものなのだろう。
「んー、雰囲気的にもしかして君は素人さんかな。というよりもお兄さん、英霊に成りきれていない?なんか変な感じがするけれど」
はい、その通りてんで素人です。言いかけた言葉は、彼女の後の台詞が気になって飲み込まれた。
「さっきから気になっていたけど、ランサーと青子さんでしたっけ。二人は知り合いなの?」
「ああ、正確には『別の彼女』に少し世話になったことがあったんだ。今になると随分迷惑をかけてしまったけれど……そうだね、貴女ならば少しお聞きしたいことがある。良ければ話を聞いてもらえないだろうか、青の魔法使い」
「まさかこんな魔力尽き果てた世界で魔法使いって呼ばれるとは思わなかったわ―。別にいいわよ、そっちの話は退屈しのぎになるだろうし、改竄には時間かかるし、その間でいいのなら」
(…………むぅ)
砕けた雰囲気で会話する二人に、どうも、こう、自分一人が蚊帳の外であることが気になって仕方がない。けれど彼女たちから話を聞くことも間違っているように思える。
つまり、今の自分は黙って此処にいるしかなくて。それがちょっとばかり、心に靄をつくって気分が晴れない。なんて子供じみた、嫉妬心。
「蛇足だが、時間がかかるのはこいつが不器用だからだ。しかしなんだ、青子の知り合いについに英霊まで追加されたか。まさに歩く博覧会だな」
「橙子に言われたくない台詞ね。それに私は知らないわよ、あちらが一方的に知ってるだけ」
「出会いは似たようなものだったのは確かだけど。今も、その時も、英霊ではなかったし、人間としても認められるものだったかどうか
「なにそれ、奇怪ね」
……それにしても奇怪呼ばわりされるなんて、彼女と彼女が交差した物語は一体どんなものだったのだろう。
「……ん?英霊ではなかっただと?」
漠然とした疑問を抱いたなか、自分一人が橙子の独り言を耳に拾う。視線を向けると彼女の険しかった眉間の皺が、ランサーの一言によってさらに険しくなっていた。発言した本人はさほど気にしていないのか、ランサーに向かって施術準備の詠唱を鼻歌交じりに行なっている。
「それなりに改竄を行なえる余地がありそうね。いつも見たいにやれば余裕、余裕。ほら、マスターの君もこっちにきてパパッと始めちゃ……」
「待て、馬鹿妹!改竄は中止だ!」
鋭い一喝は雷鳴の如く。
空中で術式を操作していた青子は反射的に術式から指を離して作業を中断する。されるがままであったランサーも、一変した空気に身構えてこちらへと移動した。
「――どういう理由なの、橙子」
「ふむ、文句を言わないのは及第点だ。理由は簡単だ、私はムーンセルにお前がヘマをやらかさないから監視するようにも言われている。ただでさえ、お前は前科持ちだ」
「ちょ、だからあのG化は私のせいじゃないって!そうじゃなくて止める原因は何って言ってんのよ」
言わなければ、撃つ。冗談抜きで彼女の目の前には先程の凶悪な魔弾が籠められたシリンダーがカチリカチリと回っている。
対する橙子は氷の瞳で相手を見つめたまま電子煙草を燻らせる。自然体だからこそ、まるで獲物に狙いをつけて隙を窺う肉食動物の佇まいを思わせる。
どちらか一方が僅かでも動いたのならそちらの身を削り取ると両者が主張しだした空気にまるで生きた心地がしない。そんななかで全てを受け流すように遠くを見つめているランサーに賞賛を送りたい、彼女の精神構造は一体どうなっているんだろう、どうすれば危機的状況でもあそこまで平然としていられるのだろう。
「理由なら彼女が自分で言っただろう、“以前会った時は英霊ではなかった”と。それが気になって彼女のことをスキャンしてみたら驚いたよ、異常を許さないムーンセルだが、どうやら異例ならば認めるらしいな」
実に不味そうに煙草を吸っていた橙子は、そう言って何かのファイルを青子へ投げてよこした。怪訝な顔でそれを受け取った青子はしばらく黙々と呼んでいたが、次第にその赤の瞳を見開いて驚愕だした。
「ちょっと、これどういうこと?」
「それを説明してやるべきはお前ではなく、そこで途方にくれてる小動物マスターの方だな。結論から言おう、すまないが君のサーヴァントは少々特殊な立ち位置にいるらしい、通常ならば強化となる魂の改竄だが、事君のサーヴァントに対しては弱体化効果しか現れない」
――なんですと。
ようやく見つけた克服の術、それが目の前で崩れ去っていく。自分はただ足掻くことも許されないというのか。
「ん、待て。少し言い方が悪かったな。正確には君とサーヴァントの結びつきを強くすることが難しいということだ。君自身の魔術回路を強化する分には構わん」
「どういうことか説明しなさいよー、橙子」
自分の心を代弁してくれたかのように、不満そうな青子の声が横から飛んでくる。それに対して心底嫌そうな顔をした橙子が、わざわざ青子を背に向けてから説明しだした。
魔力を水に例えるなら、私が水道の蛇口でランサーは蛇口から出る水を受け止めるコップらしい。
問題は、蛇口から出す水の量が少ないうえに元々の水も少ないという事と、水を受け止めるコップが氷で出来ているために水を受けるだけでも精一杯だということだ。
「私たちが行なう事は蛇口から出す水の勢いを強めること。そして受け取る水をこぼさない様にコップに工夫を施すことと考えてもらえればいい」
既に頭が混乱しだしている私に呆れと憐れみの視線を投げてよこさないでほしい。ランサーに至っては自分の問題だというのに平然としていて、もはや問題を丸投げしているかのようにさえ見える。
「普通ならばマスターの魔力不足によって霊格を強制的に下げられてしまったサーヴァントでも、マスターの魔術回路を鍛え、こちらで魂の改竄を行なう事で魔力供給量の幅を広げられるので霊格は元に戻すことが可能なんだ……が、君のサーヴァントは違う」
青の瞳がこちらを静かに見つめる。じっくりと、身体の内まで観察されているような感覚に背筋が凍るが、目だけは逸らすまいと握りこぶしを作って見つめ返した。
「君、魔眼持ちをそんなに見つめてどうする。まぁいい、先程例えたように君のランサーはコップの材質が他のサーヴァントと異なるんだ。このまま君の魔力を受け取る量を増やしても自分の強度を下げるだけだろう」
どこからかコップを取りだした橙子は、まるでその未来を表すようにコップを放り投げ、静まった教会内に高く割れた音を造りだす。
砕けた硝子は氷のように溶けて床へ同化していく。あっという間にコップが在った証拠が消え去り、僅かに割れた音の残響が残るだけだ。
「材質が異なる原因だが、それは恐らく……」
「待ってくれ、それについては自分が必要だと判断した際に伝えるつもりなんだ。できれば、今はそういった事情があるという事だけを知っておいてもらいたい」
それまで口出しをしなかったランサーだが、その時だけは不意にこちらへ目を向けて自分の意志を伝えてきた。
なんとなく、その原因については察しが付く。きっとそれはマイルームで話していたランサー自身のイレギュラーと、ランサーを護るために能力が大幅に制限されてしまったという聖盾が関わってくるのだろう。
そうなると、どうしたって彼女の過去と向き合わなければならないし、その関係性を築くには彼女が拒む此方の世界との交流を深める他にないのだ。
(……悔しいな)
口に出かけた、そんな身勝手な言葉を慌てて手で抑える。その言葉を
言うだけの価値は、今の自分にはないのだ。だから心と身体の内面に反芻する。くやしい、くやしいね、と自分に言い聞かせる。
彼女が関わりを嫌がっているから、ではなく。
彼女に見合う自分になれないことが、悔しかった。
「じゃあ、私たちはどうすれば」
橙子にも自分は教えてもらわなくても構わないと意思表示するために、話を促す。
「まずマスターたる君は他の参加者と比べて圧倒的に魔術回路が稚拙すぎる。これについては経験を積むしかないからな、ひたすらアリーナに籠っていれば多少は使い物になるかもしれん」
こんな話を聞いている暇があるのならアリーナへ行けと罵倒したいぐらいだね、と橙子は追い討ちを忘れない。けれど彼女がこんなに饒舌なのは青子の意外そうな表情から珍しいことなのだと窺える。珍しいうちに色々と助言をもらうことに越したことはない。
自分の問題はとにかく経験不足だということは分かった。ならば、ランサーの問題は一体どうすればいいのだろう?
「ああ、その点は私自身が大体を察しているよ。貴女の言う事が正しいのなら、マスターとの繋がりを求めず私の武器を強化すればいい」
「ふむ、大まかに言えば間違いではないな。君を護るその盾に攻撃へ能力を割けるようメモリを増築しよう。もとより概念武装は力を発揮できる相手が限定的すぎる」
「あの代行者のように近代兵器を搭載するような改造もしていないからね……いや、あれは邪道な気もするが」
「ふむ、そういった改造か。改造は楽しそうだな……ふふふ」
「お、お手柔らかに頼みたい……」
「そして君に対してもムーンセルに削除されないためのプロテクトを施していけば疑似的な霊格の回復、及び強化に繋がるだろう」
幾つか不穏かつ理解が出来ない言葉が聞こえたけれど、つまり彼女自身を強化することはできないがその周囲を強化することは可能らしい。ランサーが取りだした盾を興味深そうに橙子が観察しているなか、手持無沙汰だった青子が我慢の限界を迎えたらしく手元の仮想端子を使って強化の詳細を表示した。
「疑似的にその武器をサーヴァントと見立てて強化するわよー、解説とかは橙子の役目でも残念なことに施すのは私の方だからねー」
先程の破壊の有様を見た身からすると、はっきり言って破壊の権化のような青子ではなく橙子に施術してもらいたいのだが、説明し終えた橙子は腕を組んでいて“絶対にやらないぞ”なんて意思表示をしている。
一応ランサーにも伺う様に視線を投げかけるが、思わず心臓が高鳴るような笑みを返してきただけで、文句の一つも言わない。これ以上は自分の我儘になるので、仕方なく青子に強化を依頼した。
「はい、毎度ありー。お兄さんとは縁あるようだし、暇だし、何かあったら遠慮なくおいで?」
「あまりいい関係ではなかったように思えるんだけど……マスター、好意には甘えていいんじゃいかな。彼女たちの実力は私を遥かに凌ぐ本物だし、今後の助けにも必ずなるだろう」
ランサーの申し出に同意するように頷いた。
人外境地のランサーが認める力の持ち主がどうしてこんな場所で聖杯戦争にも参加せずにいるのか気にならないといえば嘘になる。けれど、話題が落ち着くと途端に険悪な雰囲気になった二人と同じ場所に居続けると絶対寿命が縮むので、早く教会から脱出したいという気持ちが勝った。
「私たちは基本的にこの教会に居座っているから好きな時に来なさいな」
「と言っても、私の方は改竄の監視というのは別件でね。君たちへの対応は片手間のモノになる」
なんでも話を聞くと橙子は人探しをしているらしい。他人に対して探すという行為を起こすほど興味を持っていなさそうな彼女だが、人は見かけで判断してはいけないようだ。
「あ、そこで感心しなくていいわよ?どうせ踏み倒してたツケをここにきて払う羽目になっただけだろうし」
「知らないくせに変な憶測をたてるな、阿呆め」
また見えない火花が散り始める。その火花が再び破壊への導火線に火をつける前に、私たちは慌てて教会の外へ飛び出したのだった。
***
pixiv版では青子は月姫世界の青子として描写したのですが、マテリアル読んで、そういえばこの人たちはこの世界の二人じゃんと……気付くのが遅いorz
公式でも月姫・Fate/SNの世界とextraの世界はどこまで共通した世界観(月姫の事件は発生しているのか等)があるのかまではっきりとされていないのですが、この蒼崎姉妹はどう扱えば……生温い曖昧さを見逃してください