ロクでなし魔術講師と二人の叛逆者   作:影龍 零

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どうも、影龍 零です。

今回の話はジャスト8000文字だったので驚き。

そして宣言通り、ノラとタクスの競技に入れました。
拙い駄文ですが、御容赦お願いです(土下座)

ではどうぞ!



魔術競技祭 開幕!

グレンとハーレイの賭けから数日後。

 

ついに魔術競技祭が開催された。

講師達は女王陛下から直々に渡される勲章を狙っているが、グレンは違った。

グレンは優勝して特別賞与を貰わないと、餓死が確定してしまう。

そのため、勲章などどうでもよく、特別賞与のみが狙いだった。

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

二人で一チームを作り、設定されたコースを一周ごとにバトンタッチしながら何十周も回る競技『飛行競争』。

 

そのラストスパートで、予想外な展開が起きていた。

 

 

『そして差し掛かった最終コーナーッ!二組のロッド君がぁ、ロッド君がぁぁぁ──ぬ、抜いたーーッ!?そ、そしてそのままゴォォォルーーーーッ!?なんとぉぉぉ!?『飛行競争』は二組が三位!あの二組が三位だぁーーーッ!こんな展開、誰が予想したァァァァァァ!?』

 

 

グレン率いる二組のロッドとカイが予想を上回る三位という大健闘をした。

当の本人達も、空を飛びながらハイタッチを交わしていた。

 

 

「・・・うそーん」

 

「グレン兄、自分で教えていたくせになんで驚いてるのさ」

 

 

目を点にして呆然とするグレンにタクスが思わず突っ込む。

 

 

 

「・・・この『飛行競争』・・・途中から脱落していったヤツらが多かったのをみると、どうやら去年は短距離戦だったらしいな。グレン兄はペース配分だけを教えていたから、漁夫の利みたいな形でこんな結果になったんだろう。このことを読んでいたんだな?グレン兄」

 

ノラは冷静に分析してグレンに話を振る。

 

「と、当然だ。俺はこうなることを、学院の『飛行競争』に対する認識から読み切っていた・・・なにしろ、今回は【レビテート・フライ】を使って一周五キロのコースを二十周する競技だ。一周だけなら瞬間的な速さが見られるが───」

 

 

「───後になっていくにつれて、他のクラスがペース配分を間違えて自滅するのを待てば、簡単に上位に入ることが出来る、でしょ?」

 

「そういうことだ、セラ。ふっ、楽な采配だったぜ・・・」

 

 

このことは競技が終わった後に気づいたことなのだが、グレンは最初から知っていたように振る舞った。格好悪いことこの上ない。

 

 

 

□□□□

 

 

 

それからも、グレンのクラスは快進撃を続けた。

 

 

『あ、中てたーーーッ!?二組選手セシル君、三百メトラ先の空飛ぶ円盤を見事、【ショック・ボルト】で打ち抜いたーーーッ!?『魔術狙撃』のセシル君、これで四位以内は確定!これは盛大な番狂わせだぁぁぁぁぁ!』

 

「や、やった・・・動く的に狙いをつけるんじゃなくて、動く的が狙っている空間にくるまで待ってろってグレン先生の言うとおりだ・・・・これなら・・・・・・ッ!」

 

 

成績が平凡な生徒達は予想外の活躍を見せ────

 

 

『さぁ、最後の問題が魔術によって空に投射されていく──これは・・・おおっと!?まさかの竜言語だぁあああーーッ!?これはえげつない!さっきの第二級神性言語や前期古代語も大概だったが、これはそれ以上!さぁ、各クラス代表者、【リード・ランゲージ】で解読にかかるが、これは流石に無理────」

 

「わかりましたわッ!」

 

『おおっと!?最初にベルを鳴らしたのは二組のウェンディ選手!先ほどから絶好調でしたが、まさかこれすらも解いてしまうのかーーーッ!?』

 

「『騎士は勇気を宗とし、真実のみを語る』ですわ!メイロスの詩の一節ですわね!」

 

『いったーーッ!?正解のファンファーレが盛大に咲いたぁーーーッ!?ウェンディ選手、『暗号解読』圧勝ーーッ!文句無しの一位だぁぁぁぁぁーーッ!』

 

「ふふん、この分野で負けるわけにはいきませんわ。とはいえ・・・もし、神話級の言語が出たら、いきなり共通語に翻訳するのではなく、一旦新古代語あたりに読みかえろっていう先生のアドバイスには感謝しないといけませんわね・・・・・・」

 

 

成績上位者は安定して好成績を収め続ける。

 

自分達でもできる、戦える。そんな二組の生徒の士気の高さに加え、使い回される他クラスの成績上位者は魔力を温存しなければいけないのに対し、グレンのクラスの生徒達はその競技だけに全魔力を尽くせるという構造的有利が働いていた。

 

さらに、過去に生きるか死ぬかの軍生活が長かったグレンとセラは、表向き精神論を掲げていたが、勝つという一点に関してはどこまでもシビアな戦術を指導していたことも、他クラスとの地力の差を埋める要因となっていた。

 

 

 

そして、午前の部も残り二つの競技を残すのみとなった。

 

競技『精神防御』、グレンのクラスからはルミアが選手として出場。

しかし、他クラスはこの意味がよくわかっていない。

なにしろ『精神防御』は、精神作用系の呪文を白魔【マインド・アップ】と呼ばれる自己精神強化の術で耐え、最後の一人になるまで続けるという敗者脱落方式である。

また、この競技は徐々に精神汚染呪文の威力が上がっていき、脱落者はほとんどが保健室で寝込むことになる。酷い場合は三日はうなされることもある。

 

 

よって、この競技はルミアのような女子生徒には向いていない。

しかしルミアは恐れるどころか意気込んでいる。

その様子を見た五組の生徒、ジャイルが噛みつくような声をかけた。

 

「おい、そこの女」

 

ルミアが目を向けると、ジャイルがこちらを睨んでいた。

 

「悪いことは言わねえよ。今すぐにでも棄権しな」

 

「!」

 

「この競技はお前みたいなヤワな奴じゃ務まらねえ・・・医務室で精神浄化されたくないなら、とっととすっこんでろ」

 

震え上がってしまうような恫喝と共に、射抜くような視線を向ける。

 

「あはは・・・確か、五組のジャイル君だよね?私のこと、心配してくれてるの?ふふ、優しいんだ」

 

「・・・あぁ?」

 

全く予想外の反応に、逆にジャイルが毒気が抜かれた。

 

「大丈夫だよ。クラスの皆も一生懸命頑張ってるんだもの。私だって頑張らなきゃ」

 

「ちっ・・・ああ、そうかい。後悔しねえこったな」

 

「それに・・・ジャイル君の五組は確か、二位だったよね?」

 

「・・・くだらねえ。それがどうした?」

 

「私のクラスは今三位だから・・・もし、私がジャイル君に勝ったら・・・順位、入れ替わっちゃうね?」

 

ルミアが人差し指を口元に当て、いたずらっぽくウインクする。

 

「・・・面白え」

 

ジャイルはウサギを見つけた狼のように、獰猛に笑った。

 

 

 

□□□□

 

 

 

『あー、あー、音響術式テス、テス。えー、そろそろ時間になりましたので、これより『精神防御』を始めたいと思いまーす!』

 

響き渡る実況の声に、観客は歓声をあげる。

 

『ではでは、今年もこの方にお出まし願いましょう!はい!学院の魔術教授、精神作用系魔術の権威!第六階梯(セーデ)、ツェスト男爵です!』

 

すると、突然どろんと煙が巻き起こり、燕尾服にシルクハット、髭といった伊達姿の中年男性が現れた。

 

「ふっ、紳士淑女の皆さん、ご機嫌よう。ツェスト=ル=ノワールです。

さて、早速競技を開始しよう。生徒諸君、今年はどこまで私の華麗なる魔術に耐えられるかな・・・?」

 

ごくり、と参加者数名が唾を飲んだ。

 

『それでは第一ラウンド、スタート!』

 

「ふむ、まずは小手調べに恒例の【スリープ・サウンド】から始めるとしよう・・・行くぞ!」

 

 

こうして、『精神防御』の競技が始まった。

 

「《身体に憩いを・心に安らぎを・その瞼は落ちよ》」

 

「《我が御霊(みたま)よ・悪しき意志より・我が識守りたまえ》」

 

ツェストの白魔【スリープ・サウンド】に生徒達は対抗呪文(カウンター・スペル)として、白魔【マインド・アップ】で対抗する。

 

『ね、寝たーーーッ!?いきなり脱落したのは、一組のハーレイ先生の生徒だぁああああーーッ!?ちょっ、これ完全に捨て駒だーーーッ!やる気無さ過ぎでしょハーレイ先生!?』

 

「うーむ、私としてはもうちょっと耐えて欲しかったのだがね・・・・・・」

 

『まぁ、去年の覇者、ジャイル君がいますからねー、きっと主力温存作戦でしょう。彼の優勝は決まっているようなものですから。というわけで、実況の僕としては、紅一点、ルミアちゃんがどこまで残れるか・・・これが見所だと思うんですけど、どうです?』

 

「ふっ、そうだな。可憐な少女がどこまで私の精神操作呪文に耐えてくれるか、いたいけな少女の心をどのように汚染し尽くしてやるか、実に楽しみだ・・・ふひ・・・ふひひ・・・・・・」

 

男爵が気持ち悪い笑みを浮かべながら、ルミアを一瞥する。

 

『うわぁ・・・ここで男爵、まさかの嫌な性癖大暴露・・・ていうか、男爵ってまさかそういう変態的な人だったんですか?』

 

「何を言うか!私は断じて変態ではない!私はただ、喪心しちゃったり、心が病んじゃったり、混乱しちゃったり、恐慌を起こしちゃったりした女の子の姿に、魂が打ち据えるような興奮を覚えるだけだッ!」

 

 

「「「『へ、変態だァアアアアアアアーーーーッ!?』」」」

 

 

あいつ、クビにしよう。

そんなリック学院長の決意は誰も知らない。

 

 

『ツェスト男爵の白魔【コンフュージョン・マインド】がきまったーーーーッ!?うわぁ、やばい!?八組の生徒耐えられなかったぁあああーーッ!?』

 

「あばばばばばばばば・・・暑い!暑い!」

 

「ぎゃぁあああーーーッ!?ちょっと君!男子生徒に脱がれても私はちっとも嬉しくないのだが!?どうせならルミア君────」

 

『おい、やめろ!ちったぁ欲望隠せよ、この馬鹿男爵!救護班、早く八組の生徒連れてって!大至急!』

 

 

「次は白魔【マリオネット・ワーク】だ!皆を私の操り人形にしてせんじよう!さぁ、踊れ!」

 

『ぷっ!だっははははーーッ!耐えきれなかった十組の生徒が踊り出したーーッ!ていうか男にセクシーダンス踊らせんな、馬鹿男爵!キモいんだよッ!』

 

「・・・ちっ」

 

『ちょっ、男爵、あんた何ルミアちゃんの方見て舌打ちしてんの!?いい加減にしろよ、この変態エロ親父ッ!?』

 

 

 

その後も『精神防御』は続いていく。

 

 

「だ、男爵・・・俺、実は男爵のことがずっと好きで・・・・・・」

 

「ぎゃぁあああーーッ!?嫌ぁあああーーッ!?じ、蕁麻疹がぁあああ!?」

 

『く、腐ったぁあああーーッ!?男爵の下心全開の白魔【チャーム・マインド】!ド裏目だぁあああーーッ!?ていうか、ホント誰かなんとかしろよ!この変態犯罪貴族!救護班はとりあえず精神浄化!ついでに男爵の頭も浄化したれ!早く!』

 

 

「今度は白魔【ファンタズマル・フォース】で、名状し難き冒涜的な何かの幻影を見せてしんぜよう!我が秘奥が魅せる宇宙的脅威!存分におののくがよい!」

 

「ぁあああああああああーッ!嫌だぁああああああああーッ!?」

 

「うわぁああああああああーッ!やめろぉお!?それだけはやめろぉおおおおおーッ!?」

 

「ああ、窓に!?窓にィーーッ!?」

 

『正気を失い、狂気にのたうつ選手達!ちょっ、やり過ぎでしょ男爵!?救護班!精神浄化急いで!ていうか毎年思うんだけど、何でこの競技禁止になんないの!?』

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

観戦者は最初は冷めた目で見ていたが、段々と盛り上がりを見せていた。

なぜなら、早々に脱落すると思われていたルミアが、ジャイルと同じように平然として立っていたからだ。

 

彼女の親友であるシスティーナも、これには驚きを隠せない。

 

「う、うそ・・・・・・」

 

そんな様子を横目で眺めつつ、ノラは眠たげに言った。

 

「・・・白魔【マインド・アップ】は素の精神力を上げるだけ。つまり、元々肝が据わっている奴ほど効果は大きい。そういうところを見ると、ルミアは精神力じゃこのクラス一だ」

 

「あの子が・・・・・・?」

 

ああ、とノラが頷く。

 

「・・・あいつはある意味、異常な人種だ。常人とは心構えがまったく違う。それこそ、何時でも死ねるというぐらい・・・な」

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

一方のフィールドでは、この予想外の展開に男爵も困惑気味だった。

 

「むぅ、なんと・・・ジャイル君はともかく、ルミア君がここまで粘るとは正直予想外だったよ・・・・・・ちっ」

 

『・・・あの、男爵?なんで微妙に悔しそうなんですかね?』

 

「さて、そろそろ白魔【マインド・ブレイク】に移るとしよう」

 

『とうとう来ました!第二十七ラウンドからは【マインド・ブレイク】!この呪文はあらゆる思考力を一時的に破壊する、精神操作系の白魔術では最も高度で危険な呪文の一つ!最悪相手を廃人に追いやってしまうこともある恐ろしい呪文だぁああああああ!』

 

「──いざ行くぞ!」

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

結果から言うと、ルミアの優勝になった。

あれから勝負は第三十一ラウンドまで続き、グレンがルミアの状態を見て棄権を宣言。

一時的にブーイングが起こるが、ジャイルが既に立ったまま気絶していたことが判明し、ルミアの勝利となったのだ。

 

 

 

そして、午前の部最後の競技『タッグロワイヤル』が始まろうとしていた。

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

『えー、それでは只今より新競技、『タッグロワイヤル』を始めたいと思います!』

 

司会者の宣言に歓声をあげる観戦者達。

出場選手達も初めて行われる競技に緊張していた────二人を除いて。

 

 

「・・・たかだか二人一組でバトルロワイヤルするだけなのに・・・・・ここまで緊張するか?」

 

「まぁ仕方ないんじゃね?こういうの普段やらないんだから」

 

 

ノラの疑問にタクスが的確に返す。

その表情は、これから試合をする者とは思えないほどリラックスしている。

そんな二人の様子を他クラスは疑問に思った。

理由は単純で、『タッグロワイヤル』ではどちらかが落ちたら失格なのでどうしても緊張してしまう。

しかし、ノラとタクスは一切そんな様子を見せない。

 

 

「まぁ、少しばかりは楽しめると思うな」

 

「・・・むしろそうじゃないと困る」

 

 

タクスとノラのその発言(ノラはあからさまな嘲笑を含めた)に、他クラスの選手や観戦者はブーイングを飛ばす。

それを二人は気にもとめない。

この時点で、他クラスの選手は最初に倒す標的をノラとタクスに定めた。

これが最大の悪手になったことも知らずに・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ!まもなく試合が始まりますが、二組以外の選手どうした!?かなり鋭い視線でノラ選手とタクス選手を見ているぞ!?』

 

司会者の言うとおり、真っ先に二人を脱落させようと選手達は目を光らせている。

当の本人達はどこ吹く風、それどころか会話をしていた。

 

 

『では、『バトルロワイヤル』!制限時間はありません!最後の一組になる為頑張ってください!それでは・・・・・・スタート!!』

 

 

司会者の開始宣言と同時に、選手達は一斉に呪文を唱え始めた。

 

 

「「「《雷精の紫電よ》ーー!」」」

 

「「「《大いなる風よ》ーー!」」」

 

「「「《白き冬の嵐よ》ーー!」」」

 

 

狙いはもちろん、ノラとタクス。

次々と魔術が殺到する中、ノラとタクスは動いた。

二人はぎりぎりまで魔術を引きつけた後、爆ぜるようにノラは右、タクスは左に駆け出した。

 

他クラスの選手はしめたとばかりに二人を落とそうと呪文を唱え始めるが────

 

 

 

 

「《水流よ》──《氷結よ》──」

 

 

───ノラの方が圧倒的に早く呪文を完成させ、黒魔改【アナクルーズ・モズ】と黒魔改【エーテル・ブリザード】を放つ。

 

先に唱えた【アナクルーズ・モズ】から水が放たれ、競技場を水浸しにする。

そこを【エーテル・ブリザード】からの吹雪が即席の氷塊を無数に生み出す。

瞬く間に競技場は、氷塊が囲む密林と化した。

 

 

 

「《大地の砂塵よ》───《虚空の残響よ》───」

 

 

そこをタクスが黒魔改【サンド・トラップ】を唱え競技場の石盤の一部を砂塵に変え、黒魔【スタン・ボール】を撃ち、土煙を発生させる。

 

 

「な、何だ!?」

 

「くっそ!何も見えない!」

 

「ここは固まった方が──あぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

困惑していた選手達は最後に聞こえた悲鳴に身を強張らせた。

すぐさま周囲を警戒するが、氷塊と土煙で視界が塞がれているため襲撃が予測出来ない。

 

 

「あ!居たぞ!《雷精の紫電よ》ーー!」

 

選手の一人が人影を見つけ、そこ目掛けて【ショック・ボルト】を放つ。

 

「ちょっ、待て俺はちが、ぎゃぁぁあああああ!」

 

「くそッ!誰が味方で誰が敵かわかんねぇ!」

 

「でもそれはあいつ等だって────」

 

 

「同じじゃあないんだよなぁ?」

 

 

選手達が困惑していると、不意に後ろから声がかかる。

咄嗟に呪文を唱えようとするが────

 

 

「《風よ》──《吹け(ツヴァイ)》、《吹け(ドライ)》」

 

 

タクスの【ゲイル・ブロウ】の連続起動(ラピッド・ファイア)に吹き飛ばされる。

 

「《吹っ飛べ》」

 

そこを、まるで読んでいたかのようにノラが【スタン・ボール】を放ち、選手達を気絶させる。

 

「《大いなる風よ》ーーーッ!」

 

ふと、誰かが唱えた【ゲイル・ブロウ】が土煙は吹き飛ばし、視界が元どおりになった。

だが状況は変わらない。

未だ氷塊の密林は健在しており、視界に制限がかかる。

そのせいでノラとタクスがどこから襲いかかってくるか予測できない。

かといって何もしないと瞬く間に魔術の餌食となる。

 

これらの理由で、選手達は間接的に動きを封じ込められている。

 

 

「やっぱノラとタクスのコンビは強すぎだな・・・」

 

試合を見ながら、グレンは改めて自分の弟達のコンビネーションに舌を巻いた。

ノラとタクスはどんなに不利な状況でも、あらゆる手段で自分達のペースに持って行く。

また、ノラは氷系や水系の魔術を、タクスは電撃や錬金術といった魔術を得意としているため、相手の動きを制限する術に長けていた。

加えて二人は帝国宮廷魔導士団特務分室に所属しているため、戦闘経験も豊富だ。

 

もはや、二人と選手達の差は歴然だった。

 

『ノラ選手とタクス選手に翻弄されつづける選手達!応戦する者もいますが全く意味がない!これはまさに、二人の独壇場だぁぁぁああああ!?』

 

 

 

「そろそろ全員落とすか!」

 

タクスがそう宣言し、ノラが笑みを浮かべ頷く。

他クラスの選手達は、身を守れると思ったのか氷塊の後ろに隠れ始めた。

しかし、二人は気にもとめない。

ゆっくりと呪文を唱えていく。

 

 

「《白き夜の吹雪よ・───」

 

「──黒き夜の雷精よ・───」

 

 

二人は交互に一つの呪文の節を唱え始めた。

これを好機と思ったのか、他クラスの選手が次々に魔術を唱える。

 

 

「「「《虚空の残響よ》ーーーッ!」」」

 

「「「《白き冬の嵐よ》ーーーッ!」」」

 

「「「《雷精の紫電よ》ーーーッ!」」」

 

 

魔術が二人に殺到するが、二人はそれを悉くかわしていく。

 

 

「──紫電を纏う嵐となって・───」

 

「──すべからく敵を討て》!」

 

 

唱え終わった瞬間、二人を中心に電気を纏った吹雪が吹き荒れる。

そして、渦巻くように広がっていき、他クラスの選手に襲い掛かった。

 

「《大気の壁よ》ーー!」

 

「《光の障壁よ》ーー!」

 

反応出来なかった選手が次々と気を失ったり、場外に吹き飛ばされたりしたが、一部の選手は黒魔【フォース・シールド】や黒魔【エア・スクリーン】で対処する。

吹雪によって視界が悪いが、吹き飛ばされることもない。

全員を落とすのなんてやはり無理だったんだ、誰もがそう思っていた。

 

しかし、その考えは吹雪が止んだ後、驚愕と共に吹き飛んだ。

なぜならステージの石盤一枚が自分達目掛けて飛んできたからだ。

選手達は慌てて魔術を唱え始めるが、

 

 

 

 

 

 

「《そらよっと》」

 

タクスの気の抜けた声と同時に石盤が形を変え、無数の球体となって選手達を襲い、一人残らず場外に叩き出した。

 

 

 

 

 

 

『決まったぁぁぁああああああ!?ノラ選手とタクス選手、他クラスの選手達を圧倒し、文句なしの一位だぁぁぁぁーーーーッ!?』

 

 

司会者の言葉と共に歓声が巻き起こった。

 

ノラとタクスは興味なさげに右手をヒラヒラ振るだけ。

 

 

 

しかし、何故最後の方で石盤が襲い掛かってきたのか。

 

実は吹雪が巻き起こっている時、操作していたのはノラだけで、タクスはステージの石盤を錬金術で模倣し、それを【ゲイル・ブロウ】の即興改変で四方に飛ばしたのだ。

その際に、必ず相手は魔術を使うか避けるため、タクスは黒魔【アース・チェンジ】でそのどちらの選択肢でも対処出来ないように無数の球体に変化させたのである。

 

 

 

これで二組の順位は一位に限りなく迫る点数で二位となり、魔術競技祭午前の部は終了した。




【アナクルーズ・モズ】
かなりの量の水を出す改変呪文


【エーテル・ブリザード】
加減次第で霊体も凍らせられる改変呪文


【サンド・トラップ】
岩石類や鉱物を砂状に変える改変呪文


【アース・チェンジ】
岩石類のみ好きなように形状を変化できる改変呪文


【フリーズ・ボルト】
電撃と吹雪が同時に襲い掛かる複合改変呪文


次からは若干ノラパートになります。

もう少し早く書けるようになりたい・・・


できるだけ早く書けるように頑張ります。

ではまた。


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