今回は前半ほのぼの、後半微シリアスありといった感じですかね?
自分でもよくわかりません。
ラストエンブリオがやっと最新刊でてかなり舞い上がったり、最近投稿し始めた『ありふれ』のほうに集中したりしてかなり遅れました。
ではどうぞ。
午前の部が終了し、生徒達はぞろぞろと各自昼食をとるために解散となった。
ノラとタクスが弁当を食べようと蓋を開けようとした時、ふと後ろから声がかかった。
「ノラ君~!タクス君~!」
二人が振り向くと、システィーナとルミアが弁当を持ちながらこちらに走ってきていた。
「どうした?なんかようか?」
「えっと、どうせなら皆で食べようかなぁって・・・・・・だめかな?」
ルミアが小首を傾げながら言う。
「・・・別に一向に構わない。ちょうど俺らも食べようとしてたところだったし」
ノラがそう言うと、ルミアは嬉しそうに近くに座った。
「システィーナはどうすんの?」
「べ、別に私はルミアに誘われたから仕方なく来てるだけで・・・」
タクスが聞くと、システィーナはそっぽを向いてゴニョゴニョ言っている。
「ふーん、まぁとりあえず座って食べようぜ?すぐに昼休み終わっちまうぞ」
タクスがシスティーナにそう促すと、システィーナは恥ずかしそうにルミアの隣に座った。
そして、バスケットを開けて中にあるサンドイッチをタクスに差し出した。
「・・・あげる」
タクスは一瞬キョトンとするが、
「お、マジで?サンキューな」
嬉しそうにそれを受け取り、美味しそうにほうばった。
「うん、旨い!システィーナって料理上手なんだな」
「なっ・・・と、当然でしょう!?料理は女の子として必須技能なんだから!」
頬を赤らめながら言うシスティーナにタクスは笑いながら、
「まぁ、確かにそうだな。にしてもこれ、その辺の店超えてるんじゃないか?」
タクスの率直な意見にシスティーナはボンッ!と顔を赤くする。
「ん?どうした?」
「・・・・・・なんでもない」
一方のルミアはノラの色鮮やかな弁当に驚嘆していた。
「うわぁ・・・すごい、これ全部ノラ君が作ったの?」
「ん?あぁそうだな。タクスやセラ姉の分も俺が作った」
「へぇ~、すごく美味しそうだね。一口貰ってもいいかな?」
「別にいいぞ、てか食べたそうに見てただろ?」
「あはは・・・バレてたかな?美味しそうだったからつい・・・」
「まぁ、味は保障するよ。なんせ料理には自信あるんでね」
「それじゃあお言葉に甘えて・・・」
そんな二組の空間に男子達は嫉妬や羨望、殺意のこもった視線をノラとタクス(特にノラ)に浴びせていたが、二人は知る由もない。
□□□□
「ごちそうさまでした!・・・っと、そういえばグレン兄どこ行ったんだ?」
十数分後、弁当が空になった頃にタクスがノラに聞く。
「・・・どうせどっかで寝てるんじゃないか?タクス探してこいよ」
「えっ、ノラが行けよ」
そんなやりとりの後、二人はじゃんけんを始めた。
数十回のあいこの末、ノラが負けた。
「くそッ、めんどくせぇ・・・」
「いいから早く行ってこい。敗者は従うもんだろ?」
「あ、それなら私も行くよ。二人の方が探しやすいし。システィもタクス君もいいでしょ?」
「私は別にいいわよ」
「右に同じく」
「・・・サンキュー、ルミア。んじゃさっさと行くぞ」
そうしてノラとルミアはグレンを探しに行った。
「そういえばタクス、グレン先生は何でやつれていたの?」
「あ~・・・まぁ要約して言うなら完全にグレン兄の責任だな」
「と、いうと?」
「諸事情により一週間はまともな食事にありつけてないのですよ、はい」
「えっ、それってかなりヤバいんじゃ・・・」
「大丈夫、少なくとも今日の昼飯はまともな食事にありつけると思う」
タクスの確信めいた言葉にシスティーナは首を傾げて思案するのであった。
□□□□
「さーて、どうしたもんかね・・・」
グレンはフラフラとやつれた顔で、空腹を耐えながら敷地内をさまよっていた。
シロッテの枝や木の実でも流石に限界というものはある。
今日もセリカは食事を出してくれず、朝から水と枝しか食べていない。
ノラもタクスも自分の弁当しか作らないので、たかることも出来ない。
最悪、今日餓死してもおかしくなかった。
一週間前、学院敷地内の北部に広がる通称『迷いの森』の入り口付近でシロッテの木を見つけたグレンは、昼食の時間になるといつもここに足を運び、シロッテの枝をかじって飢えを凌いでいた。
「とは言ってもなぁ・・・」
シロッテの枝を持ってベンチにぐったり腰掛けながら、シロッテの枝をかじる。
「なんかこう・・・人間としてどんどん落ちぶれていってる気がする・・・・ちくしょう・・・・もうギャンブルなんて二度としねぇぞ・・・・・・ぐすん」
自分の失態を今更悔やみ、涙が溜まった淀んだ目でグレンは枝を噛みしめていた。
「へへっ・・・今日はなんだか、妙に目にゴミが入りやがる・・・・・・」
目元を拭うグレンの腹が盛大に鳴った、その時だった。
「あっ、ここにいた!グレン君ーーーーッ!!」
声の方向に顔を向けると、セラが何かを大事そうに抱えながらこちらに駆け寄ってきていた。
「・・・・・・セラか、どうした?」
「もう、探したんだよ?せっかくこれ持ってきたのに・・・・・・」
「そういやそれ、何が入ってるんだ?」
グレンはセラの持っているバスケットを指差す。
「最近グレン君ずっとお腹空いていたでしょ?だからお弁当作ってきたんだけど、良かったら食べる?」
「ありがとうございます女神様!喜んで謹んで、頂戴いたしますぅーーーーーッ!!!」
グレンは凄い速さでセラから弁当をひったくると、中を見て感動していた。
そこには色とりどりのサンドイッチ、鶏肉の照り焼き、チーズサラダといった料理が所狭しと入っている。
見た目もかなり美味しそうだが、今のグレンにはこれらが最高級の宮廷料理に見えていた。
すぐさまグレンは料理にかぶりつく。
トマトのサッパリとした酸味が、レタスの瑞々しいシャキシャキ感が、鶏肉のジューシーな肉汁が、チーズのコクと風味がグレンの舌と腹を満たす。
グレンは今、猛烈に感動していた
「ぅおおおおお!?生きてるって、なんて素晴らしいんだぁあああああーーーーッ!!!?」
「大袈裟だなぁ、グレン君は」
隣で号泣しながら弁当を食べるグレンに、セラはニッコリ微笑んでいる。
□□□□
「ふぅ~、食った食った。ごちそうさん」
「お粗末様でした。それで、食べた感想は?」
「旨い」
セラの問いにグレンは即答する。
「シンプルだけど丁寧に作られてた。それに───」
「それに?」
「なんとなく、昔セラが作ってくれた料理の味がした」
「あ、覚えていてくれたんだぁ・・・ふふっ、嬉しいなぁ」
「う、うっせー白犬」
「あー!?また私のこと犬って言ったーーッ!?」
「別にいいだろ、そんくらい」
「よくありません~!」
セラが頬を膨らませながら怒り、グレンはそれをいつも通りにあしらう。
そんな微笑ましい光景を遠くから見る二人がいた。
□□□□
「・・・あれならグレン兄は大丈夫そうだな」
「セラ先生もいるし、私達は出ていかない方がよさそうだね」
「んじゃ戻るとしますかね・・・」
ノラとルミアが隠れていた茂みから出て、きた道を戻ろうとした時。
「そこの貴方はノラ、ですよね?・・・少し、よろしいですか?」
立ち上がった二人の背後から女性の声がかかる。
ノラは気だるそうに振り向く。
「はいはい、なんでしょーか。用件は手短に願いたいんd────って、ハイ?」
ノラは声をかけてきた女性を見て硬直する。
「え?なんで女王陛下がここにいらっしゃってるんですか!?」
そこにいたのは他でもない、アルザーノ帝国女王陛下アリシア七世その人であった・・・
□□□□
「つーか、なんで護衛も無しにこんなところまで一人で来てんすか!?あ、さっきの無礼な発言は取り消してください申し訳ございませんでしたーーーー!!」
いくらノラでも流石に女王陛下の前では傍若無人な態度はとれず、その場に恭しく平伏する。
「そんな、お顔を上げてくださいな、ノラ。今日の私は帝国女王アリシア七世ではありません。帝国の一市民、アリシアなのですから。さぁ、ほら、立って」
「・・・では、御言葉に甘えて」
それを聞くとノラはスッと立ち上がった。
相変わらず切り替えが早いんだかわからない。
「ところで、なんか用でもあったんですか?」
ノラはすすっ・・・とルミアに目を向ける。
アリシアも同じように視線を横にずらす。
その視線の先には、呆然と立ち尽くしているルミアがあった。
「・・・・お久しぶりですね、エルミアナ」
そんなルミアに、アリシアは優しく語りかける。
「・・・・・・・・・・・・」
ルミアは無言でアリシアの首元を見る。
その首に翠玉色のネックレスがかかっているのを見ると、何故か目を伏せる。
その様子を、ノラは見逃さなかった。
「元気でしたか?あらあら、久方見ないうちに随分と背が伸びましたね。うふふ、それに随分と綺麗になったわ。まるで若い頃の私みたい、なぁんて♪」
「・・・・ぁ・・・・・ぅ・・・・・・・」
「フィーベル家の皆様との生活はどうですか?何か不自由はありませんか?食事はちゃんと食べていますか?育ち盛りなんだから無理な減量とかしちゃだめですよ?それと、いくら忙しくても、お風呂にはちゃんと入らないとだめよ?貴女は嫁入り前の娘なのですから、きちんとしておかないと・・・・・・」
「・・・・・・ぁ・・・・そ、その・・・・・・」
硬直するルミアをよそに、アリシアは本当に嬉しそうに言葉を連ねていく。
ノラは珍しくジッと二人を見据えていた。
「あぁ、夢みたい・・・またこうして貴女と言葉を交わすことが出来るなんて・・・・・・」
そして、感極まったアリシアは、ルミアに触れようと手を伸ばす。
だが──────
「・・・お言葉ですが、陛下」
ルミアは逃げるように片膝をついて平伏する。
「!」
「陛下は・・・その、失礼ですが人違いをなされております」
ぼそりと呟いたルミアの言葉に、アリシアは凍り付いた。
「私はルミア。ルミア=ティンジェルと申します。恐れ多くも陛下は私を、三年前御崩御なされたエルミアナ=イェル=ケル=アルザーノ王女殿下と混同されております。日頃の政務でお疲れかと存じ上げます。どうかご自愛なされますよう・・・・・・」
「・・・・・・」
慇懃に紡がれるルミアの言葉に、アリシアは気まずそうに押し黙る。
「・・・・そう、ですね」
そして、アリシアは寂しそうな微笑みを浮かべながら、目を伏せる。
「あの子は・・・エルミアナは三年前、流行病にかかって亡くなったのでしたね・・・・あらあら、私はどうしてこんな勘違いをしてしまったのでしょう?ふふ、歳は取りたくないものですね・・・・・・」
アリシアの哀愁漂う言葉を、ノラは黙って聞くばかり。
ルミアは淡々と言葉を続ける。
「勘違いとはいえ、このような卑賤な赤い血の民草に過ぎぬ我が身に、ご気さくにお声をかけていただき、陛下の広く慈愛溢れる御心には感謝の言葉もありません・・・・・・」
「いえいえ、こちらこそ。不愉快な思いをさせてしまって申し訳ありません」
しばらくの間、沈黙が場を支配し、アリシアは何かを言おうとしては、諦めたように口を閉ざすことを繰り返した。
そして───
「・・・・・・そろそろ、時間ですね」
未練を振り切るように、アリシアはノラへ振り返った。
「ノラ。エル───ルミアを、どうかよろしくお願いしますね?」
「・・・わかりました」
ノラはそれ以降何も言わず、静かに去っていくアリシアの背中を見つめていた。
□□□□
「・・・・あれで、本当に良かったのか?」
アリシアが中庭から見えなくなった後、ノラはルミアの方を向いて言う。
「陛下が私を捨てた理由・・・わかるんだ。王室のために必要だったことも、どうしてもやらなければならなかったことも・・・・・多分、私はどこか心の中で陛下に怒っているんだと思う。それでも・・・あの人を母と再び呼びたい、抱きしめてもらいたい・・・・・・そんな思いも確かにある・・・・・・ズルいよね?」
「理屈じゃないからな、俺にはそういうことがよく分からん。失礼かもしんないが、経験したこともないしな」
「でも、あの人を母って呼んだら、私を引き取って本当の両親みたいに私を愛してくれていたシスティのお母様やお父様を裏切ってしまうみたいで・・・・・・」
そう言って目を伏せるルミア。
「俺はいつも先のことを読んでから動く。その方が面倒事を回避出来るしな」
ノラはそんなルミアを見つめてから、素っ気なく言う。
「でも俺だって偶には先を読まないこともある。その方が面白いってこともあるが・・・・・先を読んでそれにこだわらないようにするための方が大きいかな。たった一つ答え見ただけでその先が決まるのは絶対にない・・・断言する」
「そう・・・なの・・・・・・?」
ノラは頷いて続ける。
「要はチェスだ。一つのパターンじゃなくて何パターンも考慮して行動したり、思い切って何も考えずに打ってみたりする・・・・・人生も似たようなもんだ。進めば進むほど、大量の選択肢が迫ってくる。そこで選ぶ前から後悔するよりかは、選んでから後悔した方が幾分かマシだ」
ノラはそう言って遠くをぼんやりと見つめる。
その頭の中には、とある過去が映っていた。
□□□□
【ノラ・・・・・・タクス・・・・・・!早く・・・行け・・・・・・ッ!もう・・・ここはもたない・・・・・・】
【えっ・・・ど、どうして・・・】
【三人で逃げよう!そうすれば・・・・・】
【それは─────無理・・・・・・かな・・・・─────私は、長く──ない・・・・・・からな・・・】
ごうごうと燃え盛る炎の中、幼きノラとタクスは、血にまみれた妙齢の女性の近くで絶句していた。
女性の身体からは、誰が見ても致命傷と確信する量の血が流れていた。
恐らくもって一分もないだろう。
【気に──するな・・・・・お前らには・・・・・・未来が・・・ある・・・・・ゴホッ・・・】
女性は吐血しながらも続ける。
【願い・・・・・とは・・・言っては・・・・何だが、どうか───お前らが・・・・・せめて・・・──────ッ ──────】
女性は何かを言った後、最期の力で魔術を使って二人を遠くへ転送した。
二人が最後に見たのは、血にまみれながらも微笑みを崩さずに目を閉じた女性の姿だった。
□□□□
ノラは意識を戻すと続けた。
「だからこそ、一度でいいから本音をぶつけたほうがいい。向き合わずに逃げるよりは・・・な」
あの日、とあるキッカケで起きた事件。
それと今のルミアが重なったのか、ノラはそう告げる。
「私、怖いんだ・・・・・またあの人が私に冷たくするんじゃないか、あの冷たい目を向けてくるんじゃないかって・・・・・・」
「不安がったって何か変わるわけないだろ?」
「そう・・・だね・・・・・」
意を決した様子でルミアは顔をあげる。
「一緒についてきてくれる?」
「・・・断るって言ったら極悪人だしな。了解」
ルミアとノラは並行して歩き始めた。
二人の間に流れる穏やかな時間。
だが、前方の異変にノラはいち早く気づいた。
「・・・・・王室親衛隊?なんでこんなところにフル装備で来てんだ?」
ノラの視線の先には、王室親衛隊の騎士五人がこちらに歩み寄ってくるのが見えた。
騎士達は二人の前で止まると、二人を囲むように散らばる。
「ルミア=ティンジェル・・・だな?」
騎士のうち隊長らしき者が低い声で問いかけてくる。
「え・・・あ、はい、そうですけど・・・・・・」
ルミアが戸惑いながらも答えた瞬間。
騎士達が一斉に抜剣し、細剣の切っ先をルミアに突きつけた。
それと同時にノラは【念】を発動し、騎士に問いかける。
「・・・何してんだ?」
「傾聴せよ。我らは女王の意志の代行者である」
隊長らしき騎士はノラを一瞥した後、朗々と宣言する。
「ルミア=ティンジェル。恐れ多くもアリシア七世女王陛下を密かに亡き者にせんと画策し、国家転覆を企てた罪、もはや弁明の余地なし!よって貴殿を不敬罪および国家反逆罪によって、発見次第、その場で即、手討ちとせよ。これは女王陛下の勅命である!」
ノラとタクスの過去・・・一体なんなのでしょう?
次回は原作改変をかなりすると思います、多分。
そしてだんだんと二章がノラ回になっている・・・
まあこうでもしないとこれから先が組めないので・・・
ではまた。