ロクでなし魔術講師と二人の叛逆者   作:影龍 零

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どうも、影龍 零です。

ここ最近リアルが忙しくって全然時間取れませんでした。

明日ロクアカ12巻が発売されますが・・・この小説まだ2巻なんだよなぁ・・・
夏休み使ってなんとか6巻くらいは終わらせられたらと思います。

ではどうぞ


四人の逃走劇

「おいおい、裁判も取り調べも無しに勝手に決めるな。第一女王陛下がそんな命令を出すわけないだろ?」

 

騎士のあまりの言い分に、ノラが突っかかる。

 

 

 

「部外者に開示義務は無いな。これは高度に政治的な問題なのだ」

 

「ここに立ち会ってる時点で俺は充分関係者だ。いつから王室親衛隊は一般市民に仇なす盗賊になったんだ?お前らこそ帝国の恥曝しだ」

 

騎士の一方的な態度にノラは嘲笑を交えて返す。

 

「貴様・・・それ以上言うなら、反逆者に協力したとして貴様も不敬罪でこの場で処分するが?」

 

「はっ!弱い奴ほどよく吠えるってのはこのことだな。やれるもんならやってみろ」

 

ノラが挑発の言葉を口走った瞬間、五閃の銀光に風が唸った。

気付けば、目にも留まらぬ早業で五振りの剣がノラの喉元に四方から突きつけられていた。

 

 

 

「虚勢はよく無いな。この間合いでお前に何が出来る?そもそも我らは対魔術装備に身を固めている。

我々には、お前達お得意の三属攻性呪文(アサルト・スペル)も精神汚染呪文もそう簡単には通らん。それでもやるのか?我ら五人の精鋭と?」

 

 

だが、ノラは不適な笑みを崩さない。

 

「・・・何が可笑しい?」

 

「お前に何が出来る?ってか?お前らこそちゃんと自分の剣を確かめろ」

 

 

ノラがそう言った瞬間、喉元に突きつけられていた剣の切っ先が全て砕けた。

 

「「「「「何・・・!?」」」」」

 

 

見ると、ノラは一枚のトランプを手に持っていた。

あの刹那の瞬間に、ノラは全ての剣先をトランプで正確に迎撃していた。

 

しかもノラのトランプは魔力遮断物質かつ、最高位の硬度である真銀(ミスリル)が組み込まれているため、そんじょそこらの剣では傷一つ付かない。

だが、そんなことが騎士達にわかる筈もない。

騎士達が目の前で起きたことに動揺を隠しきれないでいると。

 

 

 

 

「ノラ!ルミア!目ぇ瞑れ!」

 

 

背後から聞き慣れた声がかかり、ノラとルミアは反射的に目を瞑った。

その数秒後、ノラの頭上で眩い光が炸裂する。

騎士達は反応が遅れ、目を手で覆いながら地面に倒れ伏した。

ノラが目を開けると、そこには見知った人物がいた。

 

 

 

 

「サンキューグレン兄、セラ姉。助かった」

 

「まったく・・・ノラ君はいつも無茶するんだから。誰かさんみたいに」

 

「おい白犬、それってもしかしなくても俺のことか?」

 

 

先程までルミアと共に食事風景を観察、もとい眺めていた対象であるグレンとセラがそこにはいた。

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

ノラは自己強化を行って騎士達を引きずって集め、ロープで縛った。

 

 

「一応ロープで木に括り付けて・・・っと、よし、ちょっとは時間稼げるだろ」

 

「いや、仲間が来たら真っ先に誤解されるだろーが。それに巻き込まれるのはいy────」

 

「グレン君!あっちから騎士達が来たよ!」

 

グレンの言葉を遮ってセラが叫ぶ。

見ると五、六人程の騎士達がこちらに向かって走って来ていた。

 

 

「み、見ろ!同士達が殺られているぞ!」

 

「おのれ、大罪人に与する不届き者め!我らが剣の錆にしてくれるッ!」

 

「志半ばで倒れた同胞の無念、必ず晴らしてみせるッ!」

 

見事なまでに勘違いされ、騎士達が妙に殺気立つ。

もう交渉の余地は欠片もなかった。

次々と抜剣していく騎士達を見て、グレンは青ざめる。

 

 

「ほらぁぁぁぁぁ!?だから止めろって言ったんだよぉぉぉぉッ!?」

 

「グレン君落ち着いて!ノラ君早く何とかしないと!」

 

「わかってるよっ・・・・・・と!!」

 

「きゃッ!?」

 

ノラはルミアをお姫様抱っこの要領で抱え、グレンとセラは学院を囲む鉄柵に向かって走り出す。

ノラもそれに続き、矢継ぎ早に詠唱する。

 

「「「《三界の理・天秤の法則・律の皿は左舷(さげん)に傾くべし》!」」」

 

すると、人の脚力では有り得ない高さまで、四人の体が空へと舞い上がった。

黒魔【グラビティ・コントロール】。三人は重力操作の呪文で自らの身体にかかる重力を弱め、体を羽のように軽くしたのだ。

 

そのまま学院を抜け出し、着地と同時に三人は全速力で街中へと逃げ込んだ。

 

「に、逃げたぞーーーッ!?」

 

「追えぇーーッ!逆賊共を逃がすなぁーーーーッ!!」

 

背後からそんな声が聞こえるが、気にしている余裕は無い。

三人は脇目も振らず、ただ走りつづけた。

 

 

「あいつら親衛隊じゃなくて盗賊かなんかにジョブチェンジしたほうがいいんじゃね!?」

 

「うるせぇ!全部ノラの責任だろーが!?だから働きたく無かったんだよ!ええい、引きこもり万歳ィーーーーッ!?」

 

「二人共いいから走って!追いつかれちゃうから!」

 

激流のように後ろに流れていく光景の中、三人の叫びが木霊した。

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

それから数分後。

 

グレンを筆頭に、四人はフェジテの街を走り回り、一般住宅街のある西区の路地裏まで至った。

王室親衛隊との命懸けの鬼ごっこは、四人に軍配が上がったらしい。

 

 

「なんとか撒いたな・・・あ~、疲れた」

 

「ノラ・・・テメェ巻き込まれた俺らのこともちったあ考えてくれ!」

 

ルミアを下ろしたノラの言葉にグレンは苛立ちMAXで不満を漏らす。

 

 

「ルミアちゃん、大丈夫?」

 

「は、はい。でも・・・ノラ君だけじゃなく先生達も巻き込んでしまって・・・」

 

「そのことは気にしなくてもいいよ。というより、ノラ君とルミアちゃんを見て真っ先に動いたのグレン君だったし」

 

 

セラの一言にルミアは目を見開いた。

あれほど道中でも不満ばかり言っていたグレンが、実はセラよりも先に行動し、窮地を救ってくれたのだ。

セラは未だに口論を続けている二人を一瞥して続ける。

 

「でもまぁ・・・見ての通り、グレン君は素直じゃないからね。一種の照れ隠しだよ、あれは」

 

「そうなんですか・・・ふふっ」

 

セラの話を聞くうちに、ルミアは思わず笑みをこぼす。

ノラとグレンはとうとう、口論から体術勝負へと移っていた。

流石に見かねたセラが、二人の間に割って入る。

 

 

「はいはい、二人共そこまで!喧嘩よりも目の前のことに集中して!」

 

「「だってノラが(グレン兄が)」」

 

「わ・か・っ・た・ら・へ・ん・じ・は・?」

 

 

「「はい!すいませんでした!」」

 

 

尚続けようとした二人は、セラの怖い、端から見れば美しい笑顔を向けられ、すぐさま姿勢を正して返事をした。

セラのこの部分は若干セリカに影響を受けた故なのかもしれない、ノラとグレンはそう強く思った。

 

 

「よ、よし。じゃあまずどうやって陛下に会うかだが・・・」

 

「グレン君って通信機持ってたよね?それでセリカさんに連絡して助けて貰えれば?」

 

「おぉ、その手があったか!んじゃ早速・・・」

 

グレンがポケットから半割れの宝石を取り出し、呪文を唱えて起動させた。

金属の共鳴音のようなものが鳴り、そして。

 

 

『・・・・・グレンか』

 

宝石ごしにセリカが出た。

 

「お、セリカか!よーしよし!今回は一発で出てきてくれたな。突然なんだが、頼みがある。今俺らは非常に不味い事態に巻き込まれちまってな。それで────」

 

 

グレンが事情を説明しようとしたとき。

 

『私は何も出来ない』

 

セリカから予想外の言葉が返ってきた。

 

「は?お、おいセリカ。俺はまだ何も──」

 

『もう一度言うぞ、グレン。私は何も出来ないし(・・・・・・・)何も言えない(・・・・・・)

 

グレンは文句を言おうとしたが、セリカの様子がどうもおかしいことに気づく。

まるで、少しでも関わったら最悪の事態になることを危惧しているような様子だ。

 

「・・・おい、お前は事件をどれだけ知ってる」

 

『あらかた知っている。そしてグレン、お前だけだ』

 

「は?」

 

『お前だけがこの状況を打破出来る・・・・・・お前だけ(・・・・)がな』

 

「・・・・あ~、クソッ!訳わからんが取りあえず俺が行けばいいんだな!?」

 

『そうだ、そうすれば親衛隊くらいはなんとかしてやる。切るぞ』

 

そう告げた後、セリカは一方的に通信を切ってしまった。

グレンはポケットに通信機をしまうと、頭をかきながら後ろを向いた。

 

「どうだった?」

 

「何でか知らんが、セリカは何も出来ないらしい」

 

「と、なると・・・なんかセリカが関わると不味い事態になる制約(ギアス)でもあるのか?」

 

「多分そうだ。それに、俺だけが状況を打破出来るんだと」

 

「グレン兄が状況を打破する鍵ねぇ・・・・・・なんかあったか?」

 

 

グレンとノラが頭を悩ませていると、セラが思い出したような顔つきになった。

 

「グレン君、もしかしてセリカさんが言ってるのって【固有魔術(オリジナル)】のことじゃない?」

 

それを聞いてグレンは納得すると同時に、なぜセリカが何も出来ないのかがなんとなくわかった。

 

 

「俺の【愚者の世界】は魔術起動の完全封殺・・・ってことは、セリカがなんかしたらヤバいことが起きるのか!」

 

「それで、そのヤバいことが多分・・・・・・」

 

「『女王陛下の死』、そしてその魔術の解除条件がおそらく『ルミアの死』だろうな。そうでもなきゃ、ルミアを襲う理由にならない」

 

 

グレンとセラが一通り事件の内容を予想し、ノラはそれを聞いて作戦を考えていた、その時。

 

「「「──ッ!?」」」

 

突然、背筋が凍るような感覚に襲われた。

弾かれるように振り向くと、建物の上に二人の男女がいた。

二人組は明らかに三人を見下ろしている。

 

二人は黒を基調としたスーツと外套に身を包んでおり、外套には要所要所に金属板やリベット、護りの刻印ルーンで補強されている。

一目で魔術戦用のローブだということがわかった。

 

「アルベルトにリィエル?なんでこんなとこに?」

 

ノラが二人の存在を認知した瞬間。

伸び放題の青髪を後ろ髪だけ雑にくくり、印象的な瑠璃色の瞳を眠たげに細めた小柄な少女────リィエルが弾かれたように屋根を蹴り、建物の壁を駆け下りた。

着地の瞬間、何らかの呪文を早口で唱えながら両手を地面につく。

 

すると魔力の紫電がほとばしり、リィエルの手に十字架型の大剣(クロス・クレイモア)が瞬時に出現。

その代わりに近くの石畳がごっそりと消えた。

 

そして剣を担ぐように構え、四人の内、グレンに向かって弾丸のように突貫する───

 

 

「ちぃ!?錬金術──【形質変化法】と【元素配列変換】を応用した御自慢の超高速武器錬成かよ!?」

 

グレンが慌てて迎え撃つ態勢をとろうとした瞬間。

 

「《風の息吹よ》!」

 

グレンの隣から凄まじい突風が吹き荒れ、リィエルのスピードを奪い取った。

隣を見ると、セラが右手を突き出した状態でいた。

 

リィエルが突貫してきた時、セラは黒魔【ゲイル・ブロウ】の威力向上と効果持続を中心とした即興改変を行い、グレンの危機を救ったのだ。

それを好機と直感したグレンは爆ぜるように動き、事前に唱えた黒魔【ウェポン・エンチャント】で強化した拳でリィエルの持つ大剣を砕いた。

 

その瞬間、グレンはリィエルの後ろを見て焦燥感が掻き立てられた。

 

(不味い・・・ッ!?アルベルトが後ろにいること忘れてた・・・・・・ッ!?)

 

鷹のような鋭い目でこちらの様子を窺う、藍色がかった黒髪の青年───アルベルトだ。

彼は魔術狙撃の名手であり、魔術戦においても敵のみを正確無比に狙撃する神業を持っている。

さらに一度の詠唱で二度の魔術を起動する二重起動(ダブル・キャスト)と呼ばれる超高等技法も習得している。

 

 

帝国宮廷魔導士団特務分室、執行官ナンバー17『星』のアルベルト。

同じく、執行官ナンバー『戦車』のリィエル。

 

魔術起動を完全封殺する【愚者の世界】の効果範囲外からの狙撃を得意とするアルベルト。

【愚者の世界】の意味が無い肉弾戦を得意とするリィエル。

 

この二人はまさしくグレンの天敵だった。一人ならば(・・・・・)

 

 

(こっちには【力の支配】を持つノラがいる・・・ッ!それにセラも!二人ならアルベルト相手でも問題ない・・・これなら大丈夫だ)

 

風の魔術を得意とするセラと、あらゆる力を操れる【力の支配】のノラはリィエルとアルベルトの長所を潰すことが出来る。

グレンがそう確信してリィエルの突貫を受け流していると、アルベルトがゆっくりと指を向けて構えているのが見えた。

 

(バーカ、お前の得意な魔術狙撃もノラの【力の支配】の前じゃあ無力だ!そのくらい分かれ!)

 

確信じみた笑みを浮かべるグレンをよそに、アルベルトの指から黒魔【ライトニング・ピアス】が放たれる。

 

超高速の稲妻の力線が、真っ直ぐにこちらへと向かって飛んできて────

 

 

 

「きゃん!?」

 

 

 

リィエルの後頭部に突き刺さった。

そのまま地面に倒れ伏し、リィエルはぴくぴくと痙攣している。

 

「・・・・・・え?」

 

不意に訪れた静寂に、グレンは疑問を隠せない。

一方のセラは苦笑いを、ノラは痙攣しているリィエルをツンツンとつついている。

ルミアは未だに状況が飲み込めず、混乱していた。

その一同の前に、屋根伝いに駆け下りてきたアルベルトが軽く着地する。

 

 

「久しぶりだな、グレン、セラ」

 

「あ、あぁ・・・」

 

「久しぶりだね、アルベルト君」

 

 

若干咎めるような冷たい声色で挨拶してくる元・同僚にグレンは困惑する。

セラはそうでもないような様子で返事を返した。

 

「場所を変える。俺について来い」

 

アルベルトはリィエルを引きずりながら奥へと歩いていく。

それにセラとノラは何の躊躇いもなくついて行く。

困惑気味のグレンと未だに状況が飲み込めないルミアは、顔を見合わせた後、大人しくついて行った。





魔女の旅々にスライム倒して三百年、このすばにデート・ア・ライブ、ロクアカに大魔王と買いたい本や買った本が多すぎて読み切れません。助けて(泣)

皆様も買いすぎには気をつけて下さい。

ではまた

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