ロクでなし魔術講師と二人の叛逆者   作:影龍 零

15 / 26
どうも、影龍 零です。

ちょっと今回は急ピッチで話が進みます。
そしてあの人の改変魔術が出ますよ~~~

まぁ原作読んでいる方は何となくわかると思いますが。



ではどうぞ。


状況整理と作戦

「このお馬鹿!一体お前、何考えてんだ!?」

 

「・・・・痛い」

 

路地裏の、さらに奥へと進んだ場所でグレンはリィエルのこめかみをグリグリしながらリィエルに説教する。

 

 

「俺が現役時代の時にお預けになった勝負の決着つけたかっただとぉ!?時と場合と状況をよく考えろ、ドアホ!この脳筋!お陰で死ぬ所だったわ!」

 

「・・・むぅ」

 

受けた【ライトニング・ピアス】が相当手加減されていたことや、生来の頑丈さもあり、すっかり回復したリィエルが感情の起伏が乏しい表情を、ほんの少ししょんぼりさせていた。

 

「せ、先生・・・その方達は・・・・・・?」

 

ルミアは少し離れた場所で、不安と恐怖の表情をしたまま、アルベルト達を見ている。

 

 

「あー、こいつらは俺と白犬の帝国軍時代の元・同僚だ。今のノラとタクスの同僚でもある。信頼出来る連中だから安心───」

 

「───出来るはずがないね、絶対」

 

 

グレンとノラの解説を聞くルミアの少し遠くでは、セラがリィエルにお説教をしていた。

 

 

「リィエルちゃん、いくら決闘の決着をつけたいからっていきなり切りかかるのは止めよう?」

 

「どうして?決着は早めにつけた方が絶対にいいはず」

 

「それは任務の時の話であって、こういう時は切りかかっちゃいけないんだよ」

 

「・・・そうなの?」

 

「そう、だから切りかかっちゃ駄目」

 

「わかった。次からは挨拶してから切りかかる」

 

「そういうことじゃないんだけどなぁ・・・・・・」

 

 

・・・若干お説教の効果が無いような気もするが。

 

 

「・・・話の続き、いいか?事態はとても深刻なんだがな」

 

「す、すまん。頼む」

 

アルベルトの態度は久方ぶりに再会した仲間に向けるものとしては、どこか冷ややかだ。

 

その後のアルベルト話を要約すると、以下の通りになる。

 

・王室親衛隊はルミアの始末を独断で行っている。

 

・陛下は貴賓室にいるが、親衛隊が周りにおり突破は至難。

 

・元執行官ナンバー21『世界』のセリカは陛下の傍らにいるが、行動の素振り無し。

 

それらに加え、先程グレン達が気づいた解決の鍵を元に作戦を考えていると、

 

「もういい。考えても仕方ないことはある」

 

突然リィエルが間に割ってきた。

 

「いや、お前はもうちょっと考えような?」

 

「だから私は状況を打破する作戦を考えた。グレンにセラ、ノラがいるならもっと高度な作戦が可能」

 

「ほう?言ってみろ」

 

「まず、私が正面から敵に突っ込む。次にグレンが敵に正面から突っ込む。同じようにアルベルト、セラ、ノラの順で突っ込む・・・・・・どう?」

 

「おい脳筋、それ作戦じゃねーから。ただお前が得意な突貫を全員でしてどうすんだよ」

 

「痛い」

 

ノラはリィエルの頭を鷲掴みにし、思いっきり力を込める。

 

「お前たちが居なくなった後の俺の苦労、少しは分かったか?」

 

「「うん、ごめん(なさい)。本当に」」

 

アルベルトの言葉には、どこか確実に棘があった。

そしてリィエルにお仕置きをしたノラが口を開いた。

 

「皆、作戦が出来た。これから言うからそれに従ってくれ」

 

「お前ってほんと頭の回転速いよなぁ・・・」

 

「で?その内容は何だ。早く教えろ」

 

「分かった分かった、そんじゃまずは────」

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・遅いなぁ」

 

熱気と観客の盛り上がりの中、システィーナは不安げに呟いた。

午後の部が始まってかなりの時間が経っているのにも関わらず、ルミアとノラ、グレン、セラが帰って来ていないからだ。

現在の二組の順位は四位。

ここで地力の差が出始めている。

一位を狙うにはかなり厳しい状況だ。

 

段々と二組の生徒達の士気も下がり、不味い状況だ。

タクスがそれを見てどうしようかと思っていると、不意に金属の共鳴音がポケットから響いた。

 

「誰?セリカか?それとも────」

 

『俺だ、タクス。ちょっとメンドイ事態に巻き込まれているんだよ。だから手短かに話すぞ』

 

「───ノラか。で、その内容って何?」

 

なんとなく状況を察し、声色が真剣身を帯びる。

 

『ルミアが狙われている。どうにか女王陛下に近づくために、何としてでも二組を勝たせろ。そうすれば上手くいく』

 

「大雑把な内容だなぁ、りょーかい。んじゃ切るぞ」

 

そう言ってタクスは通信を切った。

自分の席であるシスティーナの隣に戻って来た後、システィーナが話しかける。

 

「ねぇタクス、先生達はどこにいるか知らない?」

 

「なんか野暮用があるってさっき通信がきたぞ」

 

「まったく・・・こういう時に野暮用だなんて・・・」

 

システィーナが愚痴を零していると、背後から覚えのある気配がし、二人は振り返った。

 

「やっと帰って来たの!?遅いですよ先せ────って、あれ?」

 

四人が帰って来たのかと思ったが、そこにいたのは見知らぬ男女だった。

長髪に鷹のように鋭い目つきの青年。

帝国では珍しい青髪で、感情と表情が死滅したような少女。

システィーナはどこか違和感を拭いきれなかったが、タクスはそんなことを気にも止めず話しかける。

 

「あれ、なんでアルベルトとリィエルがいるんだ?」

 

「えっ?タクス知り合いなの?」

 

タクスはその問いに頷いてから続ける。

 

「この二人はグレン兄とセラ姉の昔の友人だよ」

 

「そうだ。グレンに魔術競技祭の後、旧友を深めようとこの学院に招待されてな。この通り、正式な入院許可証もある」

 

そう言ってアルベルトが懐から、学院の校章である梟の紋が銀で箔押しされたカードを取り出した。

 

「だが、奴とセラは少々厄介事に取り組んでいるそうだ。そこで、唐突で戸惑うだろうが、グレンとセラに頼まれた。俺が代わりにお前たちの指揮を執る、と───」

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

「監督を代われって・・・優勝してくれって、なんで?」

 

システィーナを筆頭に、タクスを除いた二組の生徒全員が、アルベルトの物言いに動揺していると、アルベルトの隣にいた小柄な少女がシスティーナの前に出て、手を取った。

 

「お願い・・・信じて」

 

システィーナは少女の瞳を深く覗き込んだ。

一方のタクスは何か察したような神妙な表情をしている。

システィーナとタクスは、青年と少女を交互にみた後、目配せをして頷いた。

 

「・・・・わかったわ。私たちの監督をお願いするわ、アルベルトさん」

 

そんなシスティーナにクラスの困惑した視線が集まる。

 

「大丈夫よ。この人達は多分信用出来るわ。それに誰が指揮を執ろうが、私たちのやることは変わらないでしょう?」

 

そりゃそうだ、と生徒達が顔を見合わせる。

そしてタクスが続きを言う。

 

 

「それにさぁ、俺達がグレン兄達抜きで負けてみ?グレン兄は絶対、『ぎゃははは!お前らって俺がいないと全っ然ダメダメなんだなぁ~~!ゴメンねぇ、途中でボクが抜けちゃって~~!』とか言って爆笑するぞ?」

 

 

むかっ。いらっ。かちんっ。

 

「言いそう・・・・・・」

 

「うざいですわ、とてつもなくうざいですわ・・・・・・」

 

「あのバカ講師にそんなこと言われるのだけは断じて我慢ならないな・・・・・・」

 

「ああ、もう、くそっ!考えただけで腹立つ!わかったよ、やってやるよ!」

 

一発でクラスの闘争心に火ではなく炎が付いた。

それほどグレンに馬鹿にされるのが嫌らしい。

 

タクスが必死で笑いを堪えている隣で、システィーナは意味有り気な視線をアルベルトに向けていた。

 

「さて、お手並み拝見させて貰おうかしら?ア ル ベ ル ト さん?」

 

挑発気味のシスティーナの物言いに青年はしかめ面で頭を掻いた。

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

ノラが考えた作戦というのは、以下の通りだ。

 

・ルミアは異能者なので、絶対にそれは知られてはならない。

 

・その条件の下、女王陛下に近づくには、まず二組が優勝する必要がある。

 

・優勝すれば、女王陛下が一人で表彰台に立ち、担当講師が勲章を賜る。

 

・その時は親衛隊の連中も徹底的なマークを外さざるを得ない。

 

「タクスにさっき連絡して、士気を上げるように伝えといた。そこで確実に女王陛下に近づくために、グレン兄とルミア、アルベルトとリィエルが【セルフ・イリュージョン】ですり替わる。俺とセラ姉は──────」

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

そこから二組は息を吹き返し、リンが『変身』の競技で、アルフ、ビックス、シーサーの三人が『グランツィア』で一位を取り、他の生徒も『使い魔操作』、『探査&解錠』で結果を出し、三位にまで上り詰めた。

 

そして、最後の競技である『決闘戦』が始まろうとしていた。

 

「ねぇ、タクス」

 

タクスがうとうとしていた所にシスティーナが声を掛けた。

どこか不安げな彼女に、タクスは眠たげに目を擦りながら返す。

 

「んぁ、何?」

 

「あの・・・私ちょっと改変魔術を使いたいんだけど、何かいい案とかない?」

 

「うーん・・・そうだな・・・・・・」

 

少し考える仕草をした後、タクスは口を開いた。

 

「システィーナ、お前は一番風系魔術の扱いに長けている。『魔術戦』で使うなら攻撃特化より防御特化に改変して、お前の今の技量を考えると三節詠唱が一番安定するな」

 

 

そうつらつらと分析し最適な選択をするタクスに、システィーナは目を丸くする。

 

「ベースにする魔術は【ゲイル・ブロウ】でいいだろ。威力は・・・・・・そうだな、前のゴーレムを足止め出来るぐらいにすれば強力だ。後はシスティーナの技量次第でどうとでもなる」

 

「うーん、わかったわ。じゃあ目の前にゴーレムがいると思って改変すればいいのかしら?」

 

「その通り。お前って魔術の腕前はピカイチだしな・・・・・・お、そろそろだな。じゃあ、頑張ってこいよ!」

 

「勿論!任せといて!」

 

そうハイタッチをしながら笑顔で会話する二人。

それを見ている二組の男子は嫉妬と怒りの視線を、女子は暖かい視線をそれぞれ送っていたのだが、二人は知る由も無い。

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

『決闘戦』は三人一組でチームを組み、一人ずつ出て闘う決闘方式の競技だ。

二組は順調に駒を進め、遂に一組との決勝戦に入った。

 

 

先鋒のカッシュは持ち前の運動神経で互角に渡り合ったが、後一歩という所で行動不能にされ惜敗。

 

続く中堅のギィブルは時間が経つに連れて徐々に優勢となり、召喚【コール・ファミリア】で呼び出されたアース・エレメンタルで相手を捉え、勝利。

 

そして大将戦、システィーナ対ハインケルの試合となった。

 

大将戦とだけあり、魔術が幾度と無く飛び交う激戦となった。

 

ハインケルが【ショック・ボルト】を撃てば、システィーナが【トライ・バニッシュ】で打ち消す。

システィーナの【ゲイル・ブロウ】をハインケルが【エア・スクリーン】で防御、

ハインケルが【ファイア・ウォール】の炎を【トライ・レジスト】でシスティーナがいなし、

【ディスペル・フォース】をハインケルが発動しようとすれば、システィーナが【フラッシュ・ライト】で詠唱を中断させる。

 

 

 

 

そんな魔術の応酬が続き、遂に終わりが訪れた。

先の事件で、命のやり取りをする本物の魔術戦を経験したシスティーナに一日(いちじつ)の長があったらしい。

 

互いに手の内の呪文を尽くし、魔力が底を尽きかけた時。

システィーナはタクスからのアドバイスを参考に、改変を高速で行った。

 

(敵を前に一歩も引かなかったルミアみたいな強さを・・・グレン先生やセラ先生、ノラやタクスみたいな強さを・・・)

 

『焦らず、自分のペースで。そうすりゃあ、システィーナの技量は絶対だ。自分を信じろ』

 

(今度は私が───皆を助けられるように!)

 

 

「《拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを》────ッ!」

 

その瞬間、呪文が完成。

システィーナの両手から、爆発的な突風が広範囲に吹き荒れる指向性の嵐となって、ハインケルに襲いかかった。

 

名付けるならば、黒魔()【ストーム・ウォール】。

 

 

「な、何だ!?この呪文は─────!?」

 

まったく見覚え無い魔術に反応が遅れ、辛うじて【エア・スクリーン】を張ったが、広範囲を埋め尽くす風の壁に動きを封じられ─────その一瞬の焦りを、システィーナは見逃さなかった。

 

 

「そこッ!《大いなる風よ》────!」

 

駄目押しとばかりに放った【ゲイル・ブロウ】は、【ストーム・ウォール】の威力が上乗せされ、【エア・スクリーン】の守りを打ち破り──────

 

 

「う、うわあぁぁぁぁぁ────!?」

 

ハインケルを場外へと弾き飛ばした。

 

 

 

『き、決まったあぁぁぁぁぁ!?場外、場外だぁぁぁぁぁ!?なんというどんでん返し!二組が一組を下し、見事優勝だぁぁぁぁぁ────!?』

 

会場は総立ちで、溢れんばかりの拍手と大歓声を送っていた。

 

優勝への立役者であるシスティーナは、友人達に胴上げをされていた。

ふと見ると、少し離れた場所でタクスがいたずらっ子が浮かべるような笑みと共にサムズアップしていた。

 

システィーナはそれに、花のような笑顔で返した。

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

そして、魔術競技祭閉会式。

式は着々と進んでいき、女王陛下が勲章を賜るときに、会場がざわめいた。

 

生徒達の間を縫って出てきたのはグレンではなく、アリシアの知る人物だった。

 

「・・・あら?アルベルトとリィエル・・・・・・?」

 

「・・・・・・来たか」

 

戸惑うアリシアをよそに、セリカがぽつりとそんなことを零す。

 

「なぁ、オッサン」

 

厳めしい面構えのアルベルトが突然、アリシアの傍らにいる親衛隊隊長、ゼーロスに、似合わない砕け口調で言い放った。

 

「いい加減、馬鹿騒ぎも終いにしようぜ?」

 

そして、アルベルトらしき男がぼそりと呪文を唱えると、男女の周囲がグニャリと歪み────

 

 

───グレンとルミアが突然現れた。




多分次回で二巻が終わります。

夏休み中にいけるとこまで進めたいなぁ~~。
もう一つの方も平行しているので大変ですが。


ではまた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。