ロクでなし魔術講師と二人の叛逆者   作:影龍 零

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どうも、影龍 零です。

今年最後の投稿です!

ではどうぞ


授業参観 後編

そして、授業参観の時間が訪れた。

 

教室には生徒達に加え、保護者達も後ろのスペースに立って待っていた。

グレンとセラを待つ間、生徒達は保護者達と談笑しており、保護者同士で談笑している所もチラホラ。

 

ちなみにレナードとフィリアナも来ており、レナードの紳士然とした雰囲気に保護者も生徒も一目置いていたのだが・・・・・システィーナとルミアの二人を見た瞬間、年甲斐なく大はしゃぎし始めた為、フィリアナに締め落とされ、今は教室の隅でグッタリとしていた。

 

周囲の生徒達からクスクスと生暖かい笑いを貰い、システィーナは恥ずかしくてしょうがなかった。

ノラとタクスは普段なら寝ているのだが、システィーナとルミアの説得に了承して今回は大人しく座って待っていた。

その時である。

 

教室前方の扉が開き、グレンとセラが入ってきて───

 

 

「ようこそ、保護者の皆さん。僕がこのクラスの担当講師、グレン=レーダスです。以後、お見知りおきを」

 

「同じく、副担当講師のセラ=シルヴァースです。本日はよろしくお願いしますね」

 

壇上に立ったグレンとセラの姿に、生徒達は唖然とした。

 

いつもの雑な頭髪は整髪用の香油でしっかりと撫で整えられ、目元には銀縁の丸眼鏡、ローブをかっちりと着こなし、言葉遣いも立ち振る舞いも洗練された───若き賢者のような姿のグレン。

 

南原風に仕立て直された魔導士礼服に羽根飾り、きめ細かな柔肌に朱い顔料で伝統の民族紋様を描いた───異国の美しき精霊姫のような姿のセラ。

 

 

「おお!あの堂々とした若者と綺麗なお嬢さんがこのクラスの・・・・・」

 

「まだ若いのに立派なもんじゃ・・・・・」

 

いかにも知的な好青年と清楚なお嬢様ぶりに、何も知らない保護者達から感嘆の吐息が漏れるが───

 

 

「──ぶふっ!?」

 

「ぷっ・・・せ、先生・・・・・ッ!そ、それはズルい・・・・よ・・・・・・ッ!」

 

「だ、ダメだ・・・・お腹痛い・・・・・・ッ!」

 

「先生の衣装、どこかの民族のやつかな・・・・・?」

 

「ヤバい・・・・超綺麗なんだけど・・・・・・」

 

「良いなぁ・・・私も着てみたいなぁ・・・・・・」

 

 

クラス中から、そんな噛み殺した震え声と惚けた声が、微かに聞こえてくる。

ノラとタクスに関しては────

 

「ちょっと待って・・・・ヤバい、腹痛い・・・・・・ッ!」

 

「耐えられる自信無い・・・・ッ!てかもう腹痛すぎて・・・・・・ッ!」

 

 

涙目でなんとか笑いを噛み殺そうと頑張っている。

しかし、自分達の義兄の余りの変貌ぶりが応えたのか、交互に腕を全力で抓ったり、足を思いっきり踏んだりして我慢している。

しかも保護者達にバレないように音を極力抑えてだ。

 

 

その時。

 

(ちくしょー、お前らぁ・・・・・・ッ!?)

 

(アハハ・・・・・・)

 

引きつる頬を必死に抑えながら、グレンは心の中でそう呻く。

セラはグレンの心中を察したらしく苦笑いを心の中で浮かべる。

見ればシスティーナまで周りの生徒達と一緒に笑いを堪えていた。

 

(つーか、白猫ッ!お前まで笑ってんじゃねーよ!?お前がこうしろって言ったんじゃねーかぁ!?)

 

(ノラ君もタクス君も笑いすぎじゃないかな・・・・皆、私の格好ってそんなに変かなぁ・・・・・・?)

 

グレンは叫びたいのを必死に堪え、セラは自分の格好に好奇の視線が向けられていることに戸惑っている。

実際は見惚れているだけなのだがセラは初めて向けられたものの為、気付いていない。

すると・・・・・・

 

 

ばしゃっ!

 

 

そんな奇妙な音が教室に響いた。

 

 

「「「・・・・・・ん?」」」

 

「え・・・・・・?」

 

 

音のした方にグレンとセラ、音が気になったノラとタクスが目を向けると─────

 

 

「げ!?」

 

「え!?」

 

「は!?」

 

「い!?」

 

 

そこには何故か、学院教授でありグレンとノラ、タクスの魔術の師匠であり育ての親、さらにセラが居候している屋敷の主でもある女性─────セリカが立っていた。

 

セリカは風景を撮像する射影機のようなものを教室の隅に設置し、そのかたわらで四人に向かって得意げにサムズアップしていた。

 

 

((((って、なんでお前(あなた)まで参加してるんだよ(ですか)セリカ(さ)ぁあああ(ん)ーーーーッ!?))))

 

 

四人の胸中など露知らず、セリカはグレンとセラの姿をジッと見つめ・・・・やがて肩を小刻みに震わせ───

 

「・・・・ぷっ!くすくす・・・あははっ!あっはっはっはははははははははははーーーーーッ!」

 

 

保護者達の訝しげな視線も気にせず、腹を抱えて大笑いしだした。

 

 

(帰れよッ!?)

 

(止めてくださいッ!?)

 

 

グレンとセラはそう叫びたいのを堪えながら、拳を思いっきり握る。

その光景を見せられたノラとタクスも。

 

 

(勘弁してくんない!?)

 

(目立つから止めて!?)

 

 

頭を抱えたいのを必死に我慢して座っている。

そして────

 

 

「ふん、人目も憚らず大笑いとは・・・・・・まったく、非常識な輩もいたもんだ」

 

いつの間にか復活したレナードが、笑い転げているセリカを冷ややかに一瞥していた。

 

(・・・あのオッサンが白猫の・・・・・さっき写像画で見た・・・・・・)

 

(結構厳格そうな人だなぁ・・・・・さっきの行動からは信じられないけど)

 

「あの金髪の女性、誰の保護者か知らんが・・・・保護監督されている者はロクな奴じゃあるまい・・・・・その顔を一目見てみたいものだ!」

 

いきなり自身の心証評価が下がったことで頭が痛くなってくる三人。

しかし、なんとか引きつる頬を抑えて、グレンは一同に向き直り、ノラとタクスはグレンに注目する。

 

この後、グレンは慣れない敬語口調で舌を思いっきり噛み、生徒達はまた笑いを堪える羽目になった。

ノラとタクスは言わずもがな、今度はセラまでも後ろで手を組んで腕をつねり、笑わないようにしていた。

 

いつ爆発するかわからない爆弾を抱えて、授業参観が幕を上げるのだった。

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

今回は前半に座学、後半に実践系の授業という内容になっている。

現在、運動とエネルギーを操る黒魔術の理論を学ぶ『黒魔術学』の真っ最中だ。

生徒達はいつも通り授業に集中し、保護者は教室の後方で授業を見学している。

そして、グレンとセラ、ノラとタクスの四人が感じた嫌な予感が的中する─────

 

「ねぇねぇ皆さん、今の先生の解説聞きました?」

 

グレンが魔術理論を解説し、セラが黒板にそれを板書する最中、ことあるごとにセリカが周囲の保護者に嬉々として話しかける。

 

「なんて見事な解説なのでしょうか、板書している方もとても分かり易く書いてくれている。いやぁ、まだ若いのに、あの講師達は魔術への造詣があそこまで深いなんて凄いことだと思いませんかね?私は思いますね、うん、実に大した若者だ」

 

そう白々しく、困惑する保護者達にのたまっている。

 

───うぜぇ、帰れよ。

───恥ずかしいのでやめてください。

壇上にいるグレンとセラはそう言いたげに頬を引きつらせかけ、必死に堪える。

 

 

「ぐぬぬぬ、おのれ・・・・・・」

 

一方のレナードは、グレン達が予想以上に優れた授業をするのに焦れたらしい。

 

 

「先生、質問があります!」

 

そんなことを言って、レナードは手を挙げる。

───なんでや。

グレンはそう言いたげに頬を引きつらせかけ、堪える。

 

「グレン先生は今、三属呪文が根本的に同じだと言ったが、おかしくはないか?今の説明では導力ベクトルは根源素(オリジン)中の電素(エトロン)の振動方向と流動方向の二つしかないぞ?どうやってその二つで三属の呪文を構成するのだ?」

 

「えぇ、それを今から説明するところでした。三番目のベクトルは・・・実は電素の振動現象の停滞方向なのです」

 

「ぬ・・・・・」

 

「つまり、電素の振動運動には振動加速運動と停滞運動の二つがあるのです。これがそれぞれ、炎熱と冷気の二属エネルギーとなるのです」

 

「ちっ、知ってたか・・・・若造め・・・・・・」

 

忌々しそうに引き下がるレナード。

 

(ちょっ・・・・お父様・・・それ、あからさま過ぎるでしょ・・・・大人げない・・・・・・)

 

頭を抱えるシスティーナ。

 

「因みに補足しますと、この二つのエネルギーを調節して1:1の比率で複合すると、水ができます。

ただし、この複合呪文は実例がとても少ないので、挑戦するには難易度がかなり高いですけどね」

 

このグレンの補足は知らなかったらしく、保護者達から「おお・・・・・・ッ!」と感嘆の声があがる。

そして・・・・・・

 

「やれやれ、授業の邪魔とは、誰の保護者か知らんが恥ずかしい奴だな」

 

レナードの意図をなんとなく察したセリカが青筋を浮かべながら、挑発的な態度をとる。

 

「しかも話を最後まで聞かずに早とちりとは・・・・お前のような大人に保護監督される奴は、さぞ恥ずかしいだろうよ」

 

「なんだと!?私はあの子達にとって、胸を張って誇れる理想の父親だ!あの子達が私を恥ずかしいと思っているはずが無い!」

 

 

 

(ごめん、お父様。スッゴく恥ずかしい・・・・・・)

 

(ごめんなさい、お義父様。流石に擁護できないです・・・・・・)

 

心の中で突っ込む二人の娘達。

 

「大体、恥ずかしさを問うなら貴女のような女に言われたくないわ!なんだ、射影機まで持ち出して!

誰の保護者か知らんが、さぞ恥ずかしく思っていることだろう!」

 

「何を馬鹿な。私はあの子達にとって理想の母親だよ。あの子達が私を恥ずかしく思うなんて、有り得ないね」

 

 

 

(いや、恥ずかしいから。割とマジで帰れ)

 

(すみません、本当に恥ずかしいです)

 

(・・・なぜあれで恥ずかしく思えないと思う)

 

(恥ずかしいからマジで勘弁して)

 

心の中で突っ込む四人。

ちゃっかりセラも突っ込んでいるが、気にしてはいけない。

 

「ぐぬぬぬ・・・・・」

 

「ふん!」

 

視線で二人は火花を散らす。

 

 

それからレナードは何かとうるさく突っかかり、セリカは射影機でドン引きしている保護者を余所に四人の姿を撮りまくっていた。

グレンとセラは胃がキリキリ痛むのを必死に我慢して他人の振りを続ける。

ノラとタクスは座っているだけにも関わらず、グッタリと机に突っ伏したい欲求に駆られた。

 

 

そして、そんなセリカを見たレナードは────

 

「ちっ・・・誰の保護者か与り知らぬが・・・・我が子の晴れ舞台を形に残したいという思いは本物ということか・・・・・・ッ!」

 

レナードのセリカを見る目が、長年の好敵手を見るような目に変わっていき・・・・・・

 

「ふっ」

 

セリカは何故か挑発的な笑みを浮かべ・・・・・・

 

「くそ、負けてたまるかぁぁあああああああーーーーーーッ!!」

 

レナードがどこからともなく大きな射影機を取り出し─────

 

 

(((なんでそこで張り合っちゃうわけぇぇええええええーーーーーーッ!?)))

 

「ちょ───それだけは止めてお父様ぁあああああああーーーーーーッ!?」

 

グレン、ノラ、タクスの三人が頭を抱え、システィーナが顔を真っ赤にして叫んだところで────

 

 

 

こきゃ。かくん。

 

 

フィリアナがニコニコしながら、夫を締め落としていた。

 

 

「ふふ、続けて」

 

「アッハイ」

 

にこやかに笑うフィリアナの異様な迫力に気圧されて、グレンはすごすご授業へと戻っていった。

ノラとタクスはフィリアナの鮮やかな早技に戦慄を隠せず。

 

「・・・システィ、お前の母親、どんな魔術使ったのあれ」

 

「・・・あれはお母様の単純な力よ」

 

システィーナに詳細を聞いてさらに驚愕した。

セラはというと────

 

 

(うーん、システィーナちゃんのお母様だよね?あれ私も教えてもらおう)

 

 

なにやら不穏なことを考えていた。

そんなこんなで、前半の授業は終了した。

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

後半。

実践系───魔術を使用した戦闘経験を積む『魔術戦教練』授業が始まる。

 

生徒達と保護者は、学院の敷地北東部の魔術競技場に足を運んでいた。

今回は『荒地』の設定なので、足場の悪い地帯が荒涼と広がっていた。

 

グレンとセラが簡潔に目的を講釈した後、かたわらに立つ人型ゴーレム四体のうち一体の肩を、グレンがポンと叩く。

 

「本日は戦闘訓練用の、このゴーレム相手に魔術を使用しての戦闘訓練をしましょう」

 

「グレンく・・・グレン先生にゴーレムの強さを聞きたい人がいると思いますが、今回は初めてのゴーレムとの戦闘ということで、戦闘レベル2でやってみましょう」

 

 

「「「「「ぇぇええええええーーーッ!?まさかの戦闘レベル2~~~ッ!?」」」」」

 

 

水を指すようなセラの発言に、主に血気盛んな男子生徒達から不満げな声があがる。

保護者の前でいいとこを見せたいのだろう。

 

 

「レベル2は喧嘩慣れした町の不良程です。不満かもしれませんが、正式な訓練積んだ者と一般人では訳が違います」

 

セラは真剣な表情で生徒達に語る。

 

「戦闘レベル3・・・これは帝国軍一般兵の平均と言われています。不良とは文字通り次元が違います。私見では対処できそうな生徒達もいるようですが・・・・・・」

 

セラはノラ、タクス、システィーナ、ギィブル、ウェンディ、カッシュらの顔をちらりと見る。

 

 

「今回はレベル2で『戦闘』というものを実際に経験してください。敵意を持って襲ってくる相手の恐ろしさや手強さ・・・・・帝国軍の体感している難しさを実感できるでしょう」

 

 

セラの説明が一段落した後、グレンが戦闘レベル2の設定を施している時だった。

 

 

「こらぁあああーーーッ!?ゴーレムを使った戦闘訓練だとぉ!?それ危なくないのか!?」

 

レナードがまた騒ぎ出した。

最早何度目かわからないグレンはため息を吐いた。

そして、小声でセラ、ノラ、タクスに話しかける。

 

「白犬、ノラ、タクス、ちょっと見ててくれ。俺はあのモンペに説明してくる」

 

「了解。システィーナとルミアも連れてけば説得し易いと思うぞ」

 

「そうだな・・・じゃあ白猫とルミアを呼んでくれ。白犬、あいつ等頼むわ」

 

 

そう言ってグレンは保護者の方へ向かい、ノラはルミアとシスティーナを呼びに言った。

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

「私も娘も魔術師だ!怪我をするようなことをさせるなとまでは言わん!だが本当に大丈夫なのか!?もしシスティとルミアに何かあったら私、泣くぞ!?」

 

「だから大丈夫だって、先生が何度も説明しているじゃない・・・・・・」

 

グレンとレナードのやり取りで、システィーナはうんざりしながらため息をついた。

レナードは娘の大切さ故か、グレンの説明に首を縦に振ろうとしない。

娘達が一緒に説得しているが、なかなかそれでも是としない。

 

 

その時だ。

 

「せ、先生!大変です!」

 

小柄な女子生徒───リンがグレンに駆け寄って来た。

 

「どうかしましたか?リン」

 

「そ、その・・・・ロッド君とカイ君が勝手にゴーレムを弄り始めて・・・・なんか設定を変えるとか言って・・・・・・ッ!」

 

「?白い・・・セラ先生がいるはずでは?」

 

「それが・・・・ゴーレム四体全部を弄って、その対処に追われて・・・・・・ッ!」

 

「なんだと!?」

 

 

グレンが血相を変えた瞬間。

 

「「うわぁぁああああーーーーーーーッ!?」」

 

男子生徒達の悲鳴が聞こえてきた。

振り返ると、訓練用ゴーレムが腕を振り回して、ロッドとカイを吹き飛ばしていた。

 

「【風よ】!」

 

セラは素早く黒魔【ゲイル・ブロウ】を唱え、そのゴーレムを吹き飛ばす。

 

「よっこいせ!」

 

タクスはもう一体のゴーレムの攻撃をしゃがんでかわし、そのまま足を払払って態勢を崩し、腕を掴んで投げ飛ばす。

しかし、まだ人手が足りない。

逃げようとする二人に襲い掛かろうと、別のゴーレムが腕を振り上げ───

 

 

「馬鹿野郎ぉぉおおおおおおーーーーーッ!?」

 

硬直する生徒達や保護者よりも早く、グレンが動いた。

シュバッ!と空気を裂く音が唸り─────

がぁん!と甲高い音が鳴り響いた。

 

見ると、ゴーレムが仰け反っている。

 

「え!?」

 

システィーナが目を見張る。

グレンが手近の石を投げ、ゴーレムの頭部に当てたのだ。

そのままグレンは猛然とゴーレムへ駆け出し、生徒達とゴーレムの間に割って入った。

 

「お前ら下がれ!ノラはあっちの奴を頼む!」

 

「・・・言われなくてもわかってる!」

 

ノラは残るもう一体の方へ駆けつけているのを見て、生徒達はようやくわたわたと逃げ出す。

 

 

「お前の相手はこっちだ!このデクノボーが!」

 

『ゴォオオオオオーーーーーーッ!』

 

グレンを新たな標的と定めたのか、ゴーレムは物凄い速度で向かってくる。

対するグレンは、眼鏡を捨て───

 

「しぃ───ッ!」

 

鋭いステップと軽捷な左ジャブで正確無比にゴーレムの顔面を突いて、足を止め───

 

「────シャ!」

 

続く閃光のような右ストレートで、骨が砕けるような音と共にゴーレムが吹き飛び、そのまま動かなくなった。

 

 

一方のノラは。

 

「全く面倒くさいことに───ッ!」

 

暗殺術の【暗歩】で音も無くゴーレムの背後へ回り込み───

 

「よいせっ──と!」

 

頭部と首に腕を回して態勢を崩し、バックドロップの要領で地面に叩きつけた。

 

「皆、大丈夫!?」

 

法医呪文(ヒーラー・スペル)が得意なルミアが駆け寄る。

既に全部のゴーレムは動きを止め、ロッドやカイも無事のようだ。

 

 

(ほっ・・・良かった・・・・・・!?)

 

胸をなで下ろすシスティーナだが、すぐに不味いと察する。

グレンが魔術師らしからぬ対応をとったのだ。

急場なので仕方ないかも知れないが、レナードへは余りに不味い対応だった。

 

グレンは気にもとめず、騒ぎの元の二人を普段の粗野な口調で説教し、ローブを千切って応急措置をしていた。

レナードの顔が徐々に赤くなるのを見て、システィーナは焦りまくる。

保護者と生徒数名に付き添われてロッドとカイが医務室に行った所で・・・・・・

 

 

「あの・・・先生・・・・・・あれ」

 

ルミアが後方を指差す。

グレン達が見ると、余りの豹変振りに呆然とした保護者達がいた。

 

「・・・・・・えーと」

 

 

グレンが気まずそうに言い訳を言おうとしていると。

 

「・・・・・・グレンと言ったな」

 

鬼のような形相のレナードが詰め寄ってきた。

 

「それが貴様の本性か」

 

「あー、いや、その・・・僕、こう見えて結構普段は真面目なんですよ?」

 

「やかましい!男が言い訳するんじゃない!大体、貴様が魔術師らしからぬ対応をとるから───ッ!」

 

 

慌てて説明しようとシスティーナとルミアが口を開きかけ、

 

 

「おかげでうちのシスティとルミアの活躍が見れなかったじゃないか!?」

 

「「「・・・・・・は?」」」

 

 

意味不明な言葉に揃って目を点にした。

なんでも、ゴーレム相手に立ち向かう娘達が見たかったらしい。

セリカは相も変わらず、保護者達に弟子自慢をしていた。

 

そして。

 

「ふん・・・貴様には色々言いたいことはあるが・・・・・・」

 

レナードはグレンを値踏みするようにジッと見つめ。

 

「まぁ、いい目をしている」

 

思わぬ言葉をグレンにかけた。

その後、空気だったセラも含めて、娘達の欠点を言い、上手く指導してやってくれと言い、そのまま引き下がった。

 

同じく空気だったノラとタクスには、変に敵意を乗せた視線を送っていたが。

 

 

こうして、波乱の授業参観は幕を下ろしたのだった。





皆さんもお体に気をつけて下さい!

それでは、良いお年を!!

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