ロクでなし魔術講師と二人の叛逆者   作:影龍 零

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どうも、影龍 零です。

遅れましたすみません(土下座)
そして今年最後の投稿間に合いました・・・

因みにコミケ初めて行ってきたんですが、Fateのボードゲームやラーマxシータのサークル本、デートアライブグッズといい収穫でした。
でも二日目に行きたかった(泣)


では、どうぞ。


夜、男(馬鹿)どもの戦い(笑)

その後全員が合流し、今回の遠征学修中に寝泊まりする旅籠に向かった。

道中、何故遠征学習の行き先を、軍事魔導研究所ではなく白金魔導研究所にしたのかとグレンは聞かれた。

同数だった希望調査にグレンは最後の一押しとばかりにセラの票も含め白金魔導研究所に入れたのだ。(セラに無断で入れたのでジト目で見られた。ノラとタクスは面白がって別々に投票)

 

すると、いつになく真剣な顔でこう答えた。

 

「美少女達の水着姿あらゆるものに優先する。当然だろう?」

 

周囲の男子生徒(ノラ、タクス、ギィブル、セシルを除く)は感嘆の声を漏らす。

馬鹿もここまでくると蔑みを通り越して尊敬できるものだ。

女子生徒は現に呆れかえっている(ルミアは苦笑いだが)。

 

「・・・アホみてぇな事言ってないで早く旅籠にいこう、グレン兄」

 

求道者のような男子生徒を物ともせず、気だるげにノラが声を掛ける。

まだ、顔は病人のように白い。

彼は己の睡眠時間の確保を最優先したいらしい。

 

「あー、わかったわかった。だから現実に引き戻すのやめてよね」

 

と、何か気付いたのかグレンは辺りをキョロキョロ見回す。

 

「おいノラ、タクスと白犬はどこ行った?」

 

するとノラは黙って前方を指さしたので、全員が視線をそちらに向けると_____________

 

 

「おーい!みんなも早く〜!」

 

「ちょっと待ってセラ姉!【疾風脚】レベルで速い!」

 

 

何の魔術も無しに素晴らしい速さで先頭を行くセラと、それを追いかけるタクスの姿があった。

詳細は後々語るが、彼女はとある一族の止ん事無き身分で、美しい景色などを見るのが好きだった。

案外、彼女が一番楽しんでいるのかもしれない。

グレンとノラは呆れ顔で、他の生徒達は生暖かい目で見つつ、その後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

だいぶ夜も更けてきた時間帯。

生徒達も船旅の疲れを癒やす為、速攻で睡眠をとると誰しもが考えるものだろう。

だがお生憎、そんな生徒の方がいたら珍しいものだ。

現に男子生徒のギィブルとセシルだけが、しっかり夢の中に入っている。

 

ではそれ以外はどうか?

それは今からお答えしよう──────

 

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

旅籠では男子生徒と女子生徒が別館と本館で分けられており、行き来するには中庭の回廊を通る。

だが、ここにいる勇者(馬鹿ども)は違った。

 

「・・・これより作戦を開始する」

 

中庭の茂みでカッシュが宣言した。

 

「回廊は流石に使えない・・・・・・誰かに見つかる可能性が高すぎる」

 

カッシュの後ろに控えたロッドやカイなど他数名の男子生徒がコクコクと頷く。

 

「よって、我々は裏手の雑木林から回り込み、木をよじ登って窓から侵入しなければならない。ルートや部屋割りは既に調査済みだから安心しろ」

 

「い、いつの間に・・・・」

 

「さ、流石カッシュ、抜かりないぜ・・・・・」

 

感嘆の表情を集めるカッシュ。

 

「で、でもグレン先生とセラ先生が巡回している可能性は・・・・?」

 

「それも大丈夫だ。一部協力的な女子生徒にそれとなく探りを入れてもらった。これからの三十分間、先生達が裏手の雑木林を巡回する可能性は限りなくゼロだ」

 

「スゲェ・・・・か、完璧過ぎる・・・・・ッ!?」

 

「あ、兄貴と呼ばせてくれ・・・・」

 

「ふっ、まだだ。感謝するにはまだ早すぎるぜ、皆・・・・・・」

 

カッシュが不敵に笑う。

 

「全ては女の子達の部屋に忍び込み、夢の一夜を過ごしてからだ・・・そうだろう?」

 

「そ、そうだった・・・俺・・・リィエルちゃんと徹夜で双六するんだ・・・・」

 

「な!?ずるいぞ、カイ!俺も交ぜてくれ!」

 

「シーサー、俺はルミアちゃんとトランプで遊ぶぞッ!」

 

「ああ、ビックス。僕はこの機会にリンちゃんと、たくさんお話しするんだッ!」

 

「ウェンディ様に『この無礼者!』って罵倒されたい・・・・王様ゲームで奴隷のごとくパシられたい・・・・」

 

「システィーナは・・・・別にいいや。多分、説教うっさいし」

 

「「「「うんうん」」」」

 

「さぁ、いくぞッ!心の準備はいいか、皆!?楽園は目の前にあるぞッ!」

 

「「「「おうッ!」」」」

 

息巻きながら、カッシュを先頭に男子生徒達は行動を開始するのであった。

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

彼らの気迫は素晴らしいものだった。

『楽園』に行く為に行動する彼等は、隠密部隊もかくやという気配遮断とスニーキングを披露していた。

 

例え動機が不純だとしても、この技術は賞賛されて然るべきだろう。

だがまぁ、彼等はまだまだ学生。

このことがバレていない筈もなく───────────

 

 

 

 

「な、なぜアンタらがこんな所に──────グレン先生!?タクス!?」

 

 

どーん、と腕を組んで仁王立ちしているグレンと、頭の後ろで腕を組んで木に寄りかかっているタクスがいた。

 

 

「甘い・・・甘いぜ?お前ら。チョコレートに生クリームと蜂蜜かけて、砂糖まぶしたくらいに甘すぎる・・・・お前らの浅知恵なぞ、この俺には最初からお見通しだぜ・・・・・なにせ─────」

 

 

グレンは威風堂々と生徒達を睥睨し、不敵な笑みと共に言った。

 

 

「俺がお前らだったら、絶対このルート、このタイミングで、今晩、女の子達に会いに行くからなぁーーーーッ!?」

 

「ですよねーー」

 

 

何の後ろめたさもないグレンの宣言に、カッシュはため息をついた。

 

 

「ま、そんなわけで・・・だ。部屋に戻れ、お前ら。一応、規則なんでな」

 

「・・・・・・」

 

「なーに、心配すんな。んなコトいちいち学院側に報告なんかしねーよ。見なかったことにしてやるよ。だから——————」

 

 

くるりと背を向けヒラヒラと掌を振るグレン、その時だ。

 

 

「それは出来ないぜ、先生・・・・・・」

 

 

固い意志の灯ったカッシュの言葉に注目が集まる。

 

 

「男には退けない時がある・・・・俺達にとっては『今』がそうなんだ・・・・・」

 

 

言葉を聞いたグレンの表情がみるみる真剣なものになっていく。

 

 

「そうか・・・・お前ら、『覚悟』を決めた人間、なんだな・・・・・」

 

 

場に緊張が走る。タクスはため息をつく。

 

 

「残念だな。ならば、俺は教師としてお前らを実力で排除しなければならない・・・・・・」

 

「先生——————ッ!」

 

 

拳を握り拳闘の構えを取ったグレンに、カッシュは必死で呼び掛ける。

 

 

「アンタは俺達側の人間だったはずだッ!アンタは俺達が『楽園』を目指す理由を——————学院のどんな大人達よりも理解してくれているはずだッ!なのになぜッ!?なぜ、俺達が戦わなければならないんだーーーーッ!?」

 

 

カッシュの魂の叫びはグレンの心をえぐる。

 

 

「馬鹿野郎!わかってる・・・・そんなことはわかってるッ!そんなうらやまけしからんイベント、むしろ俺が率先して乗り込んでいきたいわッ!?だがな——————」

 

 

ずがん、と。

かたわらの木を殴ったグレンの頬を、堪えられない涙が落ちてくる・・・・

 

 

「駄目なんだ・・・・俺はもうお前達側に戻れないんだ・・・そんなことが知れ渡ったりでもしたら、白犬に・・・・セラに何されるかわかったもんじゃねぇ・・・・・・最近アイツの背後にちょくちょく風神が見えるんだよ・・・・これ以上いったら鬼神が見えるかもしれねぇと思うと、夜も眠れないんだ・・・・・」

 

 

ぐしっと涙を拭うグレンの背中は余りにも哀愁が漂っていた。

 

 

「・・・・そうですか。なら、タクス」

 

 

カッシュに呼ばれ、タクスが身を起こす。

 

 

「どうしてお前はそっち側についたんだ・・・・?この夢は男なら・・・お前ならわかるはずだろ!?どうして!?」

 

 

今の今までだんまりだったタクスがようやく、口を開いた。

 

 

「そりゃ、俺はセラ姉に頼まれたからな・・・・有無を言わさない圧で」

 

 

タクスは遠くをみながら言った。

 

 

「俺とノラが寝ようとした矢先にセラ姉呼んできて・・・勿論断ろうとしたさ、寝たかったからな。そしたら俺らがやらかした事をつらつら挙げて・・・・直感したよ、『断ったら終わる』ってな」

 

 

そう言ってタクスが向き直る。

 

 

「だから、俺らは一秒でもお前らを早く排除して睡眠をとりたいんだ・・・・・ッ!」

 

 

見るとタクスの目元には隈が浮かんでいた。

 

 

「なら、ノラはどこに?」

 

「アイツなら今頃、上でお前ら狙ってんじゃね?」

 

 

次の瞬間、一条の閃光が夜空を掛けた。

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

「・・・・ふざけんなよこっちは早く寝たいのになんでこんな事に当たらなきゃいけない船酔い患者にする仕打ちじゃねぇどれだけ俺の睡眠を奪えば気が済むんだ・・・・・・」

 

 

ブツブツ怨み言を吐きながら【ショック・ボルト】を連発していくのはそう、ノラだ。

彼の視線の先では大混戦が繰り広げられている。

 

 

「ふはははは!どうしたどうした!?こんなんじゃいつまで経っても当たらないぞぉおお!?」

 

「く、くそぉ!全然当たらない!?」

 

「ちょこまかと・・・・ッ!?」

 

「ま、待て!固まったらまた【ショック・ボルト】が飛んで——————」

 

「こっちだこっち、捕まえてみな!」

 

 

グレンが林の隙間を縫うように駆け回りながら跳んで、転がって、その勢いで跳ねて、タクスが木の上を自由に動き回って、宙返りして、ターザンのように飛び移って、カッシュ達の呪文を避け続けている。

そして二人に注意が向いているところを、ノラが【ショック・ボルト】の即興改変で次々に男子生徒を撃ち取っていく。

 

 

「あ、アルフぅうううううッ!?しっかりしろ、アルフぅうううううッ!?」

 

「か、・・・・カッシュ・・・・お、俺はもう・・・・・」

 

「馬鹿野郎!傷は浅いぞ!?目指すんだろう、『楽園』をッ!?こんなところでくたばっている場合じゃないだろうッ!?」

 

「た、頼む・・・・カッシュ・・・・『楽園』を・・・・俺達が追い求めた『楽園』を・・・・・ッ!俺の屍を越えて・・・・俺の分まで・・・・『楽園』を・・・・、見て、・・・・、来・・・・、・・・・・・」

 

「アルフぅうううううぅわぁあああああああーーーーッ!俺は一体———なんのために戦っているんだぁあああああああーーーーッ!?」

 

 

ぐったりとしたアルフを抱き起こしたカッシュの慟哭が、林間に響き渡り・・・・・・・

 

 

 

 

「【ショック・ボルト】で死ぬわけないでしょ。十分もすれば目を覚ますわ」

 

 

旅籠本館の屋上テラスから、頬杖をつきながら冷ややかなジト目で、眼下の熱い光景を見下ろす者がいた。

システィーナである。ゆったりとしたネグリジェに身を包み、風呂上がりの肌にはほんのりと湯気が立っている。

 

 

「・・・なんだ、きたのかルミア、システィーナ、リィエル」

 

「何が起きてるの?システィ、ノラ君」

 

「おバカ達とおバカ達が、くだらないことでじゃれ合ってるわ」

 

 

同じくテラスに来ていたルミアが眼下で起きていることに疑問を持つ。

 

 

「それにしても・・・先生とタクス・・・・無駄に見事な立ち回りだわ。ただでさえ魔術師同士での少数対多数は不利だっていうのに・・・こんな時だけ本気なんだから・・・・」

 

「あはは・・・ノラ君も【ショック・ボルト】の何度も即興改変をしてるのに全然疲れてないし・・・・三人らしいね・・・・・」

 

「・・・俺は<ただ><早く><寝たいだけだ>」

 

 

そう言いながら【ショック・ボルト】を立て続けに放ち、男子生徒の意識を刈り取っていく。

 

 

「・・・やっと終わったか」

 

 

そう言って座っていた場所から降り、眠たげに目を擦っていた。

そんなノラを呆れながら見ていたシスティーナは、ふと、リィエルが眼下の光景を背伸びしながら見ているのに気がついた。

 

 

「あー、リィエル?その・・・乱暴したら駄目よ?カッシュ達のアレは・・・・なんていうか・・・・先生の敵とか、そんなんじゃなくて・・・・・遊んでいるだけっていうか・・・・・・」

 

 

この間ハーレイに切りかかった事件を思い出し、システィーナは内心慌てていた。

 

 

「・・・ん、大丈夫。何もしない」

 

 

だが、リィエルは意外にもそんな返答をした。

 

 

「だって、カッシュ達からは嫌な感じがしないから」

 

 

どうやらリィエルは誰彼構わず突っ込んでいくわけではないらしい。

恐らく人一倍感情の機敏に敏感なのだろう。

 

 

「あんなに楽しそうなグレン・・・初めて見た・・・・」

 

 

ぽつり、とリィエルが呟いた。

 

 

「そうなの?学院だといつもあんな感じよ?」

 

「昔は・・・もっと暗かった」

 

「・・・・・リィエル?」

 

「セラも、ノラもタクスも前より楽しそう・・・・・」

 

「え・・・・?」

 

「セラがそばにいて支えていたけど・・・グレンは暗かった・・・だから、わたしがそばにいて守ろうって・・・・そう思っていたのに・・・・・・」

 

 

いつもより無感動なリィエルの表情からは、システィーナは何も読み取れそうにない。

そういう機敏に聡いルミアはこちらの変化に気づかず、ニコニコと光景を見ている。

現在、グレンとタクスが男子生徒を台車に乗せ退散しようとしているところだった。

 

 

「・・・んじゃ、俺はこれで・・・・・やっと眠れる」

 

 

そう言ってノラはテラスから飛び降りていった。

 

 

「え、ちょ、ノラ!?ここ屋上よ!?」

 

 

システィーナはギョッとするが、既にノラはいなかった。その時だった。

 

 

「あらあら、こんなところにいたんですの?お三方。探しましたわよ」

 

 

屋上テラスに通じる扉が開き、ウェンディが姿を見せた。

 

 

「あ、ウェンディ。どうしたの?」

 

 

ルミアが眼下の光景から目を逸らし、ウェンディを振り返る。

 

 

「ええ、これから私達の部屋に集まって、皆でカード・ゲームにでも興じませんかと思いまして、セラ先生に皆さんを集めて頂いている間に、貴女達を探していたのですわ」

 

 

そして、ウェンディはリィエルをちらりとリィエルを見て、微笑んだ。

 

 

「その・・・・リィエル。貴女も私達と一緒に、カード・ゲームに興じませんこと?」

 

 

最初のギクシャクした雰囲気は、すっかりなりを潜めていた。

 

 

「かーど?遊ぶの?・・・・わたしも?」

 

 

リィエルのその眠たげな双眸が、興味深そうに瞬いていた。

 

 

「ええ、そうですわ」

 

「・・・・・ん。わかった。なんかよくわからないけど・・・・・・遊ぶ」

 

「ふふ、それではご一緒に参りましょう?」

 

 

ウェンディが優雅に踵を返し、リィエルがそれに続く。

 

 

「良かったね・・・・リィエル、もうすっかりクラスの皆と打ち解けたね?」

 

「え?あ・・・うん・・・・そう、みたいね・・・・・・」

 

 

嬉しそうなルミアに、どこか曖昧に返すシスティーナ。

 

 

「あれ?ルミアちゃんにシスティーナちゃん、もう皆集まっているよ~~」

 

 

声がした方を見ると、セラが手を振りながら二人を呼んでいた。

 

 

「はーい。ほら、行こう?システィ?」

 

「・・・うん」

 

 

ルミアに続いて、システィーナも屋上を後にする。

 

 

(うん・・・気のせいよね・・・・気のせい・・・・・わりとすんなり上手くいってるから、そう思うだけ・・・・・・よね?)

 

 

先ほど感じた、一抹の不安。

正体不明のそれが杞憂である、とシスティーナは努めて考えないようにするのだった




来年のHF最終章に、FGO第六特異点と映画が楽しみですね!


それでは皆様、良いお年を!

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