ロクでなし魔術講師と二人の叛逆者   作:影龍 零

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どうも、影龍 零です。

今回から襲撃編に入ります。
ちなみに今回はタクスパートです。ノラパートは次回書きます。

ハンターハンターを読んだりアニメで見たりした方はわかると思いますが、今回はとあるキャラが使っていた武器が出てきます。

何かは本編を見れば分かります。

ではどうぞ。


襲撃 前編

「うおぉぉぉぉぉッ!遅刻遅刻ぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

ものすごい速度で足を動かしているのは、言わずもがなグレンだ。

 

「おい白犬!なんで起こしてくれなかったんだよ!?」

 

グレンは隣を走る銀髪の女性に向かって叫ぶ。

 

「何度も起こそうとしたよ!でもグレン君が全く起きなかったからじゃない!!」

 

セラは心外だとばかりに叫び返す。

 

「あー、もう!とにかく急ぐぞ!」

 

 

 

二人は表通りを突っ切り、路地裏を利用して近道を通り抜け、表通りに戻ってきた。

そして十字路に着いたとき、違和感に気づく。

 

 

 

「誰もいない・・・?」

 

「グレン君、これ人払いの結界だよ。魔力痕跡がいろんな場所にある」

 

セラの言う通り、十字路を中心とした一帯に結界が張られていた。

グレンとセラは一年ぶりであろう感覚を研ぎ澄まし、周囲に注意を向けた。

 

 

 

「・・・そこに隠れている奴、何の用だ?」

 

グレンが静かな威圧と共に視線を十字路の一角に向ける。

すると、ブラウンの髪の小男がでてきた。

 

「ほう・・・わかりましたか。たかだか第三階梯(トレデ)の三流魔術師だと聞いていましたが・・・見事ですね」

 

「あっそう、俺ら急いでるからそこどいてくれねぇか?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。なぜならあなた方の行き先は───

 

 

                     ───あの世に変更されたのですから!」

 

 

「「──ッ!?」」

 

 

振り上げられた男の右腕に短剣に絡みつく蛇の紋章が彫られているのが見え、二人は息を詰まらす。

 

 

その一瞬の隙を突き、小男が呪文を詠唱し始めた

 

 

 

「《穢れよ・爛れよ・──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・遅い!」

 

システィーナは懐中時計を見ながらプルプルと震えながら唸っている。

授業時間はすでに二十五分も過ぎている。

 

「あいつったら・・・最近は凄くいい授業してくれていたから、ちょっと見直していたのにすぐこれなんだから、もう!」

 

「でも、珍しいよね?最近グレン先生、ずっと遅刻しないで頑張っていたのに」

 

そんな二人の会話にノラとタクスが応える。

 

「あ~、昨日から人型全自動目覚まし時計が帝都に出掛けているからなぁ」

 

「それってアルフォネア教授のこと?」

 

ルミアの問いに二人は首肯して返す。

 

「セラ姉が頑張って起こそうとしていたけど全く起きる気配なかったし」

 

「いや、なんであんた達は起こそうとしなかったのよ!?」

 

「「面倒くさいからに決まってんだろ?」」

 

二人の返事にシスティーナは頭を抱える。

 

「まあ、責任とって探してくるよ。ノラも来いよ」

 

「え~面倒くさい「授業サボれるぞ?」よし、行くか」

 

「ちょっとタクス!今なんかサボれるとか言ってなかった!?」

 

「聞き間違いだろ?」

 

そんなこんなで二人は教室を出て行った。

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

「全く・・・あの二人はどこまでもマイペースなんだから・・・」

 

「でもいいんじゃない?そこが二人の良いところというかなんというか」

 

「ルミアってよくあの三人をフォローするわよね。特にノラとあいつ」

 

あいつとは勿論グレンである。

 

「それを言うならシスティだってよくタクス君とよく話してるじゃない」

 

「そ、それは・・・タクスがよく『メルガリウスの天空城』とかの話をもってくるから・・・」

 

言いよどむシスティーナを見てルミアは笑みをこぼす。

 

「貴女もノラと話しているとき凄く嬉しそうにするくせに・・・」

 

それを聞いてルミアは若干顔が赤くなる。

 

「な、なんでそのことを・・・?」

 

「見ればわかるわよそのくらい。何年一緒に暮らしていると思ってるの?」

 

「あ、あはは・・・」

 

みるみるうちにルミアの顔が赤くなる。

このことを聞いていた男子数名は、ノラに対する憤怒の炎を燃やしていたが、ノラは知る由もないだろう。

 

 

 

すると、ドアが突然開かれた。

一瞬グレンが来たのかと思ったが、違う。

入って来たのはチンピラ風の男とダークコートの男だった。

 

「いやー皆勉強ゴクローサマ!頑張れ若人!」

 

クラスにざわめきが起こる。

なにせ知らない二人組がやってきたのだ、誰だって驚くだろう。

 

そんな中、システィーナは立ち上がり、二人の男に向かって叫ぶ。

 

「ちょっと貴方達、一体何者なんですか?ここは関係者以外立ち入り禁止の筈ですよ?」

 

「おいおい、質問は一つずつにしてくれよ!まあいっか。俺らはテロリストって奴だ。女王陛下に喧嘩を売るコワーイお兄さん達ってわけ」

 

「・・・は?」

 

「ここには守備兵さんをぶっ殺して、結界をぶっ壊して入ってきたの。オーケー?」

 

「・・・つまり、貴方達は侵入者ということですか?」

 

「うーん、まあそうだな」

 

「なら気絶させて警備官に引き渡します!《雷精の──」

 

「《ズドン》」

 

瞬間、チンピラ風の男の指先が光り、システィーナのすぐ横を閃光が通り過ぎた。

 

 

システィーナが恐る恐る振り返ると、後ろの机に小さな穴が開いていた。

 

 

 

「ぐ、軍用魔術・・・・・・ッ?」

 

チンピラ男の放ったのは黒魔【ライトニング・ピアス】

【ショック・ボルト】に似ているが恐るべき貫通力と比べ物にならない電圧を誇る。

 

 

 

 

 

 

 

「次刃向かったら・・・ぶっ殺すから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん・・・いないな・・・」

 

「もうちょっと【円】の範囲広げるか」

 

「よし、そうしよう」

 

ノラとタクスは【円】を使いながら学院中を歩いていた。

今は一通り探したので教室の方向に向かいつつ、グレンとセラを探していた。

 

 

「にしてもいないな、グレン兄とセラ姉」

 

「なんかあったのかは知らんけど────おいタクス、止まれ」

 

 

突然タクスの前を歩いていたノラが警戒する。

 

 

「ん?なんかあったのか?」

 

「その気楽さどうにかしろ・・・まあいい───

 

 

                  ───外道魔術師が侵入したっぽいぞ」

 

「・・・マジか。ちょっと様子見るか」

 

タクスも警戒し、【円】の形を変えて教室の方向に伸ばした。

 

 

 

「・・・・・外道魔術師は二人組みたいだ。ルミアとシスティーナの反応がそいつらの近くにある。恐らく二人の内のどっちかを狙った侵入だろう」

 

タクスが冷静に分析している間、ノラはそれを聞きつつ対策を練っていた。

 

「あっ、二人が教室から出てくる!ひとまず隠れよう」

 

 

タクスは考え中のノラを引きずって廊下の曲がり角に身を潜めた。

その際に二人は【絶】を発動。

 

これはオーラを消して、完全に気配を消すもの。疲労回復にもなる。

 

 

 

「えっと・・・ダークコートの奴がルミアを連れて転移塔の方に、チンピラ風の奴がシスティーナを連れて魔術実験室の方に行ったぞ」

 

「オーケー。大体作戦は出来たぞ」

 

「流石だな。で、どんなの?」

 

「まず二手に別れよう。お前はチンピラ風の方に行ってくれ。俺はあのコート野郎の方に行く。恐らくグレン兄はお前の方に来ると思うぞ。距離的に近いからな」

 

「ふむふむ、グレン兄は寝坊+何らかの足止めで遅刻したということか・・・セラ姉も足止めくらってるだろうな」

 

「違いない」

 

真剣身を帯びた顔で二人は頷く。

 

 

「じゃ、行くか。ちょうど魔導器を試したかったし、いいタイミングだよ」

 

「若干皮肉混じってるだろ。まあ俺も魔導器試せるし、良しとするか」

 

「じゃあ・・・」

 

「「作戦開始!」」

 

 

二人はそれぞれの場所に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、十字路には人だかりが出来ていた。

 

「あれは・・・酷いな。警備官はまだこないのか?」

 

「おい、どうなっているんだ?アイツ生きてるのか?」

 

「いや・・・わかんねえ・・・でもこのまま死んだほうが本人にとってはマシだろうな・・・・・・」

 

「うぅ・・・な、なんてえげつないんだ・・・・・・」

 

「だめだ・・・酷い・・・酷すぎる・・・・・・うっ・・・直視に耐えられない・・・・・・」

 

「クソッ・・・悪魔だ・・・・まさしく悪魔の所業だ・・・・・・ッ」

 

 

人だかりの中心には、

 

全身をボコボコに殴られまくられた挙げ句、素っ裸にひん剥かれた上に、亀甲縛りに縛りあげられ、露骨な悪意に満ちた恥ずかしい落書きが満遍なく施され、尻に花が突き刺さり、股関に『極小』と書かれた紙を貼られ気絶している小男(・・)の姿があった。男の周囲には男のものであろう髪が無惨に散らばっていた。

 

 

 

□□□□

 

 

 

「ち──何が起きてやがる!?クソッタレが!」

 

「この守衛、息をしていないよ・・・多分侵入者達に殺されたんだと思う」

 

倒れていた守衛を調べていたセラがそうグレンに告げると、グレンは地面を叩いた。

 

「一応学院の関係者の俺達が入れないってことは・・・結界の設定が変更されてやがる。ったく誰だこんな面倒なことしやがったアホは!」

 

「グレン君、あの紋章を見たでしょ?絶対天の智恵研究会・・・外道魔術師の集まりだよ」

 

 

天の智恵研究会───簡単に言うと、宗教過激派組織の魔術師版のようなもの。

先ほど小男が振り上げた際に二人が見た紋章は、この組織に入っているということを示している。

 

 

グレンとセラはその男を返り討ちにし、気絶させた後、白魔【スリープ・サウンド】の呪文でさらに深く眠らせ、黒魔【マジック・ロープ】で手足を縛り、黒魔【スペル・シール】の付呪(エンチャント)で魔術起動を封じるという過剰な無力化を行った。

ちなみになぜ髪が散らばっているかというと、セラが黒魔【エア・ブレード】を使って男を吹っ飛ばした際に髪が巻き込まれたからである。

 

 

「だとするとあいつ等のいる教室は占拠されたと見ていいな・・・まあ、ノラとタクスなら大丈夫だと思うが・・・」

 

「でも万が一ってこともあるでしょ?なら急がなきゃ!」

 

「落ち着け白犬。俺が見てくるからお前は教室に行ってあいつ等を救出してくれ」

 

「う、うん分かった!グレン君も無茶しないでね・・・?」

 

「おう、任せとけ」

 

かくしてグレンとセラも学院内に突入した。

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

タクスはシスティーナとチンピラ男を見つけるべく、魔術実験室を探していた。

 

 

 

「さーて、魔術実験室は・・・ここか!」

 

 

タクスは勢いを緩めずにそのまま跳躍し、ドアノブに右足をかけ、左足で思い切り空中を踏み、回転をつけてドアをこじ開けた。

 

 

「そりゃーーーー!!!」

 

 

タクスがドアを蹴っ飛ばすと、チンピラ男が今にもシスティーナを襲おうとしていた。

タクスとチンピラ男の目が合う。

 

 

「・・・・あ、すいませんでした。ごゆっくり~」

 

「助けなさいよ!?」

 

システィーナは思わず突っ込んだ。

 

「な、なんだテメェは!?どっから出てきやがった!?」

 

「いや、さっきドアから入ってきたでしょ?何言ってんの?」

 

全く緊張感のない会話にシスティーナは呆れるが、すぐにタクスに向かって叫ぶ。

 

「だめタクス!逃げて!」

 

「いや、助けにきてなんで帰んなきゃいけないんだよ?」

 

「いいから!貴方じゃこの男には───」

 

 

「もうおせぇよ!《ズドン》!」

 

システィーナとタクスが言い合っている内にチンピラ男──ジンがもう魔術を完成させていた。

 

ジンの指先から放たれた閃光がタクスの頭を────

 

                        ────貫くことはなかった。

 

「・・・・・・は?」

 

 

 

「おいおい、俺はこっちだぜ?」

 

タクスはいつの間にか棚の近くにいた。

 

 

「な・・・ッ。クソッ!《ズドン》!《ズドン》!」

 

ジンは魔術を連発するが、タクスは瞬時に移動するためかすりもしない。

 

 

「どういうことだ!なんなんだよそのデタラメな速さは!?」

 

「えっ?知りたいの?しゃーねーな・・・・・・これは俺の固有魔術だ。お前の魔力容量(キャパシィ)、魔力の操作技術、身体能力・・・その他もろもろが優れていればいるほど、俺のあらゆる能力が向上する。それが俺の固有魔術───────【叛逆(はんぎゃく)(やいば)】」

 

「お、固有魔術だと!?テメェ、もうその域に至っているっていうのか!?」

 

 

その話を聞いて、システィーナは顔を驚愕の色に染めていた。

なにせ相手が強ければ強いほど自分も強くなるのだ。しかも自分の素の能力に上乗せである。

まさに下剋上を具現化したような固有魔術だった。

 

「そんじゃ、そろそろ始めようぜ」

 

「舐めやがって・・・・・・死ねクソガキ!《ズド──」

 

ジンがタクスに指先を向けた瞬間、タクスが爆発的に動いた。

そのままジンの懐に入り込み、鳩尾に掌底を打ち込む。

 

「ごはッ!?」

 

たまらずジンは肺の空気を全て吐き出す。

その隙を突いてタクスは背後にまわり、ジンの口に小さな赤い球体を入れて──

 

 

「ムグッ!?」

 

ジンの頭と顎を掴んで無理やりそれを噛ませた。

ジンはしばらく咀嚼していたが、カッと目を見開くと───

 

 

 

 

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!辛い辛い辛い!」

 

 

 

───悶絶し始めた。

 

 

「どう?俺特製の【極辛ボール】。因みにそれ食べたら二日は舌が麻痺してろくに喋れないよ?」

 

「く、くしょう!まだ辛しゃが残ってりゅ・・・」

 

 

若干ふざけている感じがするが、効果は抜群らしい。

その間にタクスはシスティーナを縛っている【マジック・ロープ】を解呪(ディスペル)した。

 

 

「よーし。そんじゃ次の実験だ」

 

タクスはポケットからヨーヨーを取り出し、ヒュンヒュンと音が出るほどの速さで回す。

そして頭上を一周する感覚でジンに繰り出した。

 

 

「うわっと!」

 

ジンは咄嗟にしゃがんで避けるが───後ろにあった棚は粉砕された。

 

 

 

「なッ!何で出来てんだそのヨーヨー!」

 

「んー?これ?これも俺特製のヨーヨー。重さは三十キロくらいあっから───」

 

 

 

タクスは瞬時に背後にまわり───

 

 

 

「────くらったら、効くぜ!!」

 

 

 

思い切りヨーヨーをジンに飛ばした。

放たれたヨーヨーはジンの左肘を正確に捉え、メキッという嫌な音と共に骨を粉砕した。

 

「ぎゃあああぁぁッ!?」

 

 

「どうした?まだ俺ノーダメなんだけど?」

 

ヨーヨーを回しながら腹立たしいどや顔を決めてジンを挑発している。

システィーナはこんなところはグレンに似ているなと思わざるを得なかった。

 

 

 

「テ、テメェ・・・・・・だがもう舌は治ったぜぇ?自己治癒力をあらかじめ強化していたからなぁ・・・」

 

 

「あっそ。逆に想定内でホッとしたよ」

 

「あん?どうゆうことだ?」

 

「今にわかるさ」

 

タクスは回していたヨーヨーを操って──

 

 

「そらよ!」

 

──ジンの顔の右側めがけてヨーヨーを飛ばした。

 

 

 

「うわっと!」

 

だがジンは右を向いてそれを紙一重でかわした。

 

 

「へッ!今度こそくらえ!《ズド───」

 

 

ジンはタクスに指を向けて【ライトニング・ピアス】を撃とうと詠唱するが────

 

 

 

 

ゴッ!!という衝撃が後頭部に走り、それは中断された。

 

 

「────ガ・・・ハッ・・・・・・」

 

 

たまらずジンは倒れ込んだ。

 

 

 

「あーゴメンゴメン。ヨーヨー2個(・・)あるって言うの忘れてたわ」

 

 

 

 

タクスの左手をみると、確かにヨーヨーの糸であろうものが結ばれている。

 

ヨーヨーをジンに向けて飛ばす際、タクスは左手でポケットからヨーヨーを素早く取り出し、そのまま左手を背中にまわしてヨーヨーをジンの死角めがけて飛ばしたのだ。

しかし、これはかなりの命中精度が要求されるため、ノラやグレンも成功した試しがない。

そんな荒技をタクスは見事一発でやってのけた。

 

 

 

 

「さーて、実験も上手くいったし、あとはアンタを気絶させれば───」

 

 

タクスがヨーヨーを持ちながら近づいた瞬間。

 

 

 

 

「誰がするか!《ズドン》!」

 

突然ジンが起き上がり、あろうことかシスティーナめがけて魔術を撃とうとした。

 

 

「え・・・?」

 

咄嗟のことで身動きがとれなかったシスティーナは思わず目を瞑った。

 

 

 

しかし、いつまで経っても衝撃はやってこない。

恐る恐る目を開けてみると─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~、危ねぇ危ねぇ。ま、遅れてくるのがヒーローのお約束だしな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かを手に持って佇むグレンの姿があった。

 

 

 

「お、おい!なんだ!?魔術が起動しねぇぞ!?」

 

 

「そりゃそうだろ。俺が封じたんだからな」

 

そう言ってグレンは手に持っているものをひらひらと動かす。

 

「愚者の・・・・・・アルカナ・タロー?」

 

「これは俺特製の魔導器だ。俺はこのカードに書かれている魔術式を読み取ることで俺を中心とする一定範囲の魔術起動を完全封殺することが出来る。それが俺の固有魔術─────

 

 

 

                          ─────【愚者の世界】」

 

 

「固有魔術だと!?テメェもその域まで達してんのか!?」

 

 

「でもグレン兄、それ使ったらグレン兄も魔術使えなくなるじゃん」

 

「「は?」」

 

「おーい、それ言うなよタクス~」

 

「あ~、ゴメンゴメン!ちょっと口がすべっちまってな?」

 

 

そんな緊張感ゼロの会話にジンとシスティーナは目を点にする。

 

 

 

 

 

「んじゃタクス、頼むわ」

 

「りょーかい、っと!」

 

 

その一瞬の隙を突いて、タクスは手に持ったヨーヨーを二つともジンの頭に飛ばした。

 

 

 

「は・・・?・・・・・・ごぷぁ!?」

 

咄嗟のことに反応出来ず、もろにくらったジンはそのまま気を失った。

 

 

システィーナは鼻血を出しながら気絶しているジンに少しだけ同情した。

 

 

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

「これでよしっと」

 

「ふぅ~、完全無力化完了だ」

 

あの後、グレンとタクスは【愚者の世界】の効果が切れた後に【マジック・ロープ】でジンの手足を縛り、【スペル・シール】を付呪(エンチャント)して魔術を封じ、【スリープ・サウンド】を重ねがけした。

 

それから全裸にひん()いて、亀甲縛りに縛り上げ、全身に見るも無惨な落書きを書き込み、置いてあった花を尻と帽子に差し込み、最後に股関へ『不能(ふのう)』と書いた紙を貼った。

 

 

「全く、魔術師の捕虜はこれだから大変なんだ」

 

「いや、それでもそこまですることに何の意味があるんですか!」

 

「「ん~、特にない」」

 

二人の返答に思わずシスティーナは頭を抱える。

 

 

「そうだ白猫。今どうゆう状況なんだ?」

 

「あ、はい!えーっと・・・・・・」

 

 

システィーナはテロリストたちが急に入ってきたこと、ルミアが目的らしいということ、クラスの皆が教室で捕らわれていることを伝えた。

 

 

「うーん、まず教室は白犬が向かっているから大丈夫だな」

 

「ルミアのところにはノラが向かってる。まあテロリストには遭遇するだろうけど・・・」

 

 

するとグレンのポケットから甲高い共鳴音が響いた。

グレンはポケットから半割りの宝石を出して耳に当てた。

 

「てめぇ、セリカ!?一体何してたんだ!遅ぇぞ馬鹿!」

 

『すまんな。ちょうど講演中で着信を切っていたんだよ』

 

宝石からセリカの声が聞こえてくる。

 

 

「こっちはそれどころじゃねーんだぞ!」

 

『・・・何かあったのか?』

 

「ああ、学院がテロリスト共に襲撃された。結界は掌握され、生徒は人質。人質はセラが救出に向かっているけど、生徒が一人連れて行かれた。下手人は天の智恵研究会だ」

 

『あのロクでなし共が出っ張ってるとはな・・・』

 

 

「でもここまで鮮やかにセキュリティを掌握されたということは・・・学院内に裏切り者がいる」

 

『そこまで用意周到なら転送用魔法陣は破壊されているだろう。私も出来るだけ対応を急ぐ。一旦切るぞ・・・・・・死ぬなよ?』

 

「こんなとこで死んでたまるか」

 

 

グレンはそういうと宝石をポケットにしまった。

 

 

「先生・・・助けは来そうですか?」

 

「今の会話で来ると思うか?」

 

 

システィーナは肩を落として俯いたが、すぐに何か決心した顔になり、踵を返した。

 

「おいシスティーナ、どこ行くんだ?」

 

すぐにタクスがシスティーナの腕を掴んで止める。

 

「ルミアを助けに行くわ」

 

「よせ、お前が行っても無駄死にするだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも・・・私・・・悔しくて・・・・・・」

 

我慢できなかったのかシスティーナはポロポロと涙を零し始めた。

 

「先生の言うとおりだった!魔術なんてロクなものじゃなかった!魔術のせいでルミアが・・・ルミアが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泣くなよシスティーナ」

 

「・・・・・・え?」

 

タクスはシスティーナの頭に手を乗せながら言った。

 

「それにルミアなら大丈夫だ。だってノラがいるんだからな!」

 

自信ありげに言うタクスにシスティーナが首を傾げていると、グレンもどこか納得するような顔になった。

 

 

「あ~、確かにアイツなら大丈夫だろうな。むしろ不安要素が見当たらない」

 

「そ、そんなにすごいの?ノラって」

 

「まあ、アイツが負けたとこ見たことないし───」

 

 

タクスが喋っている途中、突然魔法陣が展開され、中から剣や盾で武装した骸骨が無数に出てきた。

 

 

「先生、これは・・・・・・」

 

「ちぃ!竜の牙で錬成されたボーン・ゴーレムじゃねーか!?随分と大盤振る舞いだなぁ!?おい!」

 

 

召喚【コール・ファミリア】で遠隔連続召喚(リモート・シリアル・サモン)された竜の牙製のゴーレム。これをやってのけている魔術師は問答無用で超一流であろう。

しかも竜の牙製なので、三属性耐性や身体能力が高い。

 

 

 

「てかなんだこのふざけた数の多重起動(マルチ・タクス)は!?人間業じゃねーぞ!?」

 

 

「んなこと言ってる場合じゃねーぞグレン兄!さっさと脱出してセラ姉と合流すんぞ!」

 

タクスはヨーヨーを取り出して前列のゴーレム達にめがけて飛ばす。

頭部を正確に狙った一撃はたちまちゴーレム達を粉砕した。

 

「《その剣に光あれ》!」

 

咄嗟にシスティーナがグレンに向けて黒魔【ウェポン・エンチャント】を唱えた。

 

「ナイスだ白猫!」

 

グレンは目の前のゴーレムに拳を浴びせる。

三発ほどで頭部を砕いた。

 

 

「《大いなる風よ》!」

 

続いてシスティーナが黒魔【ゲイル・ブロウ】で扉を塞いでいたゴーレム達を扉ごと吹き飛ばす。

 

「今だ!走れ!!」

 

すぐさま三人は実験室から走り出す。

休まずに廊下を走りつづける。

途中、何か柔らかいものを切るような音が聞こえたが、三人は速度を緩めず振り切るように走った。

 

 

 

 

 

□□□□

 

 

 

 

 

 

 

「確かこっちが近道だ!急ぐぞ!」

 

ゴーレムをヨーヨーで粉砕しながらタクスが叫ぶ。

グレンも拳で次々にゴーレムを倒していく。

そうして走りつづけること数分。三人は教室にたどり着いた。

 

「おーい!白犬!開けてくれー!」

 

グレンが叫ぶとセラが出てきた。

 

「グレン君、大丈夫!?タクス君にシスティーナちゃんも!」

 

「なんとか三人共無事だ。今ノラがルミアのところに向かってる」

 

グレンがそう答えるとセラはホッと胸をなで下ろす。

 

「一応扉をバリケードにでもしておこう。まだ外道魔術師がいるかもしれないしな」

 

「うん、わかった。生徒達は皆無事だよ。拘束されていただけみたい」

 

「そうか、良かった」

 

 

グレンとセラの会話を聞いていたシスティーナはタクスにそっと話し掛ける。

 

「先生達ってなんかこういうことに手慣れてる感じだけど・・・何か知らない?」

 

「まあ・・・時が来たら話してくれるよ。それまで待ってくれ」

 

タクスの声はどこか哀愁が漂っていた。





正解はキルアのヨーヨーでした!
えっ?重さが違う?そこは五十キロなくても十分かなと思って変えました。

次回はノラとレイクが戦います。

【イクスティンクション・レイ】はノラとレイクを戦わせるために撃たせませんでした。
システィーナの【ストーム・ウォール】も同様な理由です。


ではまた。
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