Fate/Steam of Metal Heart 作:塩麹
「一般枠‥‥‥‥ああ、そういえば数合わせに採用した一般枠があるんだっけ。君はそのひとりだったのか 」
「パンフレットで見たんですけど、私以外の方は魔術師…なんでしたっけ?よく分からないけど、魔術師って言うからには何か特別な能力があるんでしょう?でも私にはなんの能力も無いんです。ごめんなさい」
魔術師といえば魔術が使えるはず。そんな凄い人たちの中に、「なんかスカウトされて給料がめっちゃ良かったから」と軽はずみで入った私が居るだなんて。改めて考えるとなんだか申し訳なくなる
「いやいや、一般枠だからって悲観しないでほしい。今回のミッションには君たち全員が必要なんだ」
「たしか、私含めて50人近く居るんですよね」
「正確には48人だな。魔術の名門から38人、才能ある一般人から10人も集まった。これは実に喜ばしい事なのだよ立香君。なんせこの2015年において霊子ダイブが可能な適正者すべてをカルデアに集められたのだからね」
魔術の名門というと早稲田大学とか東京大学レベルなのだろうか。そんな所から38人も来てるだなんて、カルデアはやっぱり凄い。
「わからない事があったら私やマシュ遠慮なく声をかけて‥‥そういえば彼女と何を話していたんだいマシュ?君が私や職員以外の人間と楽しそうに話すだなんて、らしくないじゃないか」
以外、彼女は人見知りだったのか。
でもこれで謎がまた増えてしまった。なぜ私の事を先輩と呼ぶのか、なぜ私には普通に話かけてくれたのか‥‥
うぅむ謎だ、マシュ2大ミステリーだ。
「いえ、先輩とは初対面です。この区間でまるで死体のように熟睡していらしたので、つい」
「ちょっと、その言い方ひどい」
「し、死体のように熟睡?‥‥‥‥あぁそうか。さては入館時の戦闘シュミレートが原因だな。
霊子ダイブは慣れないと脳にくる。立香君はゲートから開放され、半ば無意識のままここまで歩いてきた。そして倒れ熟睡した。一種の夢遊状態だな」
「なるほど、でしたら合点がいきます」
戦闘シュミレート?そんな事あったような‥‥‥‥慣れないことをした影響だろうか、よく思い出せない。
が、1つだけハッキリしていることがる。3人、私に協力してくれた人が居たんだ。
1人目は翡翠色の鎧に深紅の弓を持った優しそうなお兄さん。だけど戦闘になったとたん、その
雰囲気は一変。まるで獲物を狩る鷹のような目付きで、正確に敵を撃ち抜いていた。
2人目は全身タイツの青い人。彼は獣のような闘争心を纏いながら戦っていたが、かといってその動きは乱雑という訳ではなかった。さながら自分の体の一部かのように槍を操っていたのである。大胆かつ正確に敵を突くその姿に、素人の私ですら美しさを感じた。
そして最後。青と銀の甲冑に後ろで結い上げられた美しい金髪、そしてなんと言ってもその手に持つ一振りの剣が特徴的な女性。あの剣は絶対に普通の代物じゃない、その神々しさは「天叢雲剣」や「エクスカリバー」といったような類のもの。
雰囲気、その見た目も相まって、さながら騎士の王のようだった
とまぁこの3人が協力してくれた訳なんだけど、それ以外のはさっぱり。何をしたのか、相手は誰だったのか、そして彼らの名前は何なのか‥‥‥‥やはり駄目だ。その姿だけしか思い出せない。
あれは一時の幻だったのだろうか?だが姿だけハッキリと覚えているというのもおかしい。う~ん、実にモヤモヤする。
「‥‥‥‥い?先輩?どうかされましたか?」
「‥‥ちょっとね。まだちょっとボーッとしてるみたい」
「ふむ、まだシミュレートの影響を受けているようだね。所長の説明の最中だが、医務室まで送ってあげようか?」
「いえ大丈夫です。お気持ちだけで‥‥‥‥せつめいかい?」
待って、何だろう。凄くイヤ~な予感がする
「説明会は説明会ですよ。本日付で配属されたマスター適正者の方達へのご挨拶です」
「ようは組織のボスから、浮ついた新人たちへのはじめの挨拶ってヤツさ。
所長は些細なミスも許容できないタイプだからね、既に5分遅刻している君は一年間睨まれる事確定だな」
「わ、忘れてたぁ!!!」
大事な説明会に爆睡して遅刻するだなんて!初日に何てことをしてくれたんだ私!!
これはアレだ。入った途端全員に見られて恥ずかしい思いするやつだ。そしてすれ違う度に「あ、説明会に寝坊して遅刻した一般人だ」って馬鹿にされるやつだ。
「どうしよおおおおおおマシュううぅぅぅぅ」
「お、落ち着いてください先輩!あと抱きつかないでください!恥ずかしいです!」
「あらまぁ微笑ましい」
いけないいけない。思わす抱き着いてしまった。
知り合って間もない人にも馴れ馴れしくしてしまうのは私の悪い癖だ、ここでも気をつけないと。
「レフ教授。私も説明会の参加が許されるでしょうか」
「うん?まぁ、隅っこに立っているぐらいなら大目に見てもらえるだろうけど‥‥なんでだい?」
「管制室まで案内するべきだと思いまして。それに私が同行すれば先輩の負担が軽減する上に、所長に事実を説明できる証人となれます」
「なるほど、1人よりも2人か‥‥確かにそれは合理的だ。マシュのしたいようにすればいい」
やだ、2人とも優しすぎ‥‥?
というかマシュに限っては私なんかのために共に犠牲になってくれるっていうの‥‥?マシュは天使の生まれ変わりだったり‥‥?
とりあえず今回は甘んじることにしよう。正直な話、その「ちょっと遅刻しただけで一年間も睨みつけられる所長」から1人で説教を受けるだなんてとても耐えられない。なんだか凄くネチネチと説教される気がするからだ。あと初回サービスって事で。次回から気をつける。
「他に質問がなければ管制室に向かうけど。今のうちに訊いておく事はある?」
「あ、じゃあ彼女が私のことを先輩って呼ぶ理由が知りたいです。別にいいんですけど、どうも気になっちゃって」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
あれ?反応ナシ?さっきも軽くスルーされちゃったし、聞かれたくない事情でもあったのかもしれない。
「ああ。気にしないで。彼女にとって、君ぐらいの年頃の人間はみんな先輩なんだ
‥‥いや、ここまではっきりと口にするのは珍しいな。もしかしたら初めてかもしれない。ねえマシュ。なんだって彼女が先輩なんだい?」
「それは‥‥‥‥立香さんは今まで出会ってきた人の中でいちばん人間らしいからです」
‥‥‥‥一番人間らしい?私が?
「ふむ。それは、つまり?」
「まったく脅威を感じません。ですので、敵対する理由が皆無です」
「なるほど、それは重要だ!カルデアにいる人間や来る人間ってのは一癖も二癖もあるからね!」
「あの、それってどういう意味ですか?」
「言葉通りの意味さ。ここカルデアの職員はいい意味でも悪い意味でも曲者揃いということだ。
あと、君も言っていた魔術師ってのが特に曲者だな。魔術を使えない一般人は無価値、目的のためなら躊躇いなく実験材料にする‥‥まぁ一言で言えば、道徳がないってヤツさ」
「っ!?」
人間を‥‥実験材料に?自分と同じ種族である人間を?
私は思わず想像してしまう。異様な色をした薬品を投与され悶え苦しむ人、ホルマリン漬けにされ標本のように扱われる人、何らかの兵器の為に実験台にされる人‥‥
これらが本当に行われているかどうかは分からない。ただ私は、自分の為に人の命を、たった一つしかない命を、躊躇いもなく実験なんかに使う事が許せなかった。
先程、「こんな凄い人たちの中に私が居るだなんて」と言ったが訂正しよう。
そんな非人道的な輩が、凄い人な訳が無い。ただの精魂が腐ったバケモノだ。
「それに、マシュには特別な事情があるからね」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥っ」
‥‥これについては聞かないでおこう。彼女の顔が明らかに変わった。これは過去に
何か嫌な事があって、それを思い出したくない時にする顔だ。
レフさんの言動からして、彼女には魔術師の実験台にされていた過去でもあるのだろうか。だからそんな暗い顔をしているのかもしれない。
だったら私は‥‥マシュを助けてあげたい。
「‥‥うん。君は実に人間らしい、良い思考の持ち主のようだね。マシュとはいい関係が築けそうだ!」
「ですが、レフ教授が気に入る=所長が一番嫌うタイプの人間となります。いっその事トイレに篭って説明会をボイコットする、というのはどうでしょうか?」
「いいや、それでは逆効果だ。ますます所長に目をつけられてしまう。ここは運を天に任せて出たとこ勝負といこうじゃないか。なに、慣れれば愛嬌のある人だよ、彼女は」
「‥‥はい、色々とありがとうございました!レフさん!」
もしかしたら私は恐ろしい場所に来てしまったのかもしれない。が、逃げるという選択肢はない。
何故なら私はマシュを救う「
私はレフさんに軽くおじぎをして、彼女と共に管制室へと向かった。
いくらなんでも立香の人格とか予想とかおかしくね?と思う方も多いかもしれませんが、基本的に彼女の知識や人格はヒーロー物のアニメや特撮から来てるって事で‥‥‥‥