Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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Lost Boyに専念すると言ったな。あれは嘘だ(と書いて「気が付いたら書いてた」と読む)。
ということで新連載。Lost Boyともどもよろしくお願いします。


ep.1 普通の地味男子

 今年は2人の男子がIS学園に入学することが決まった。

 どちらも15歳の少年。1人は別口から部屋を指定されて決まっているせいでもう1人の方の部屋割りが困ってしまう。

 

(………あの子と同室にするのも少し心配だし………だからって、倉庫に寝泊まりさせるのもどうかと思うのだけれど……)

 

 教師の中では「2人目を倉庫にでも住まわせればいい」という人もいるけど、それはいくら何でもあんまりだ。というかそもそも、それを理由に虐めるという魂胆は見え見えだし、生徒会長としてそんなことをさせるわけには行かない。

 

(………頼める、かしら?)

 

 危険性を考えれば女子生徒と同居させるのは少々問題。だけどだからと言って1人のために部屋を増設するのも費用がかさ張るだけ。長い目で見れば無駄な消費だ。

 

(……となれば、頼むしかないか)

 

 私と同居もアリかもしれないけど、私は生徒会の仕事がたくさんあるし、彼女はあると言っても高が知れている。となれば、後は機体の申請、ね。

 生徒会長の権限を使って、私は2機分の訓練機を持ち運べるように申請する。ここで織斑先生を通さないのは、彼女は1人目の保護者でもあるからだ。今のところ、他の国も2人目をモルモットとして扱おうとしているし、それ以外にもあの組織が狙っているだろうし、色々と面倒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 インフィニット・ストラトス。それは本来、男には動かすことができないはずのパワードスーツ。

 なのに何故かそれは僕に反応し、僕はIS学園に入学することが決まった。

 

(………どうして僕に反応したのかわからないけど、頑張らなきゃ)

 

 そう思ったのは入学式の時だけ。今では既にグロッキーになっていた。

 内容は辛うじて理解できるけど、スピードがあまりにも早すぎる。これじゃあ予習していた範囲はすぐに終わってしまうよ………。

 

「………はぁ」

 

 僕の容姿も相まってか、全員が織斑一夏君の方を注目している。まぁ、僕と違って向こうはイケメンだし女の子が気になるのは仕方がないのかもしれない。世界が女尊男卑になっても華の女子高生とはこういうものなんだろう。

 

(……とりあえず、勉強しないと……)

 

 本当は復習しておきたいけど、そんなことをしている時間はない。今は予習に専念しないと後が困る気がする。

 そう思って参考書とノートを開いて勉強を始めると、急に人が分かれて誰かがこっちに歩いてくる。

 

「よぉ、俺は織斑一夏。よろしくな」

 

 そう、イケメンが言った。

 

「こちらこそ。……でもごめん。今、勉強中だから」

「あんな授業の後によく勉強できるな。俺なんてもう頭が疲れたよ……」

「………そうしないと後が辛くなるからね」

 

 本当は僕だって辛いけど、そんな駄々をこねたところで状況は変わらない。抗っても無駄なことはわかり切っているからここは黙って知識を深めた方が安心する。………というか、たぶんこれは車で言うと「操作手順なしで乗れ。事故を起こしたら自己責任で」とか言われると死ぬから頑張って勉強している、みたいな感じだ。

 なんて言い訳を考えていると、女の子がこっちに向かってきた。…………僕は瞬時にその女の子の胸から目を逸らす。びっくりした。僕は座っていることもあって見てしまったけど、こっちに来た女の子の胸はかなり大きい。

 

「ちょっといいか」

「え?」

 

 気付いていなかったのか、織斑君は驚きながら振り向くと―――

 

「箒?」

「………え? ホウキ?」

 

 何故織斑君は女の子に掃除道具の名前を言ったんだろ……? あれ? 何で僕が睨まれてるの?

 

「一夏を借りたいのだが、構わないか?」

 

 彼女から「貸さなかったら殺す」と見えているのは決して気のせいじゃないと思いたい。

 

「い、いいよ。ごゆっくり」

「え? 俺はもうちょっと瞬と話した―――ちょ、耳を引っ張るなよ、箒!」

 

 とりあえず今するべきなのは、「箒」の意味を調べるべきだ。そうじゃなかったらこれから僕は彼女を憐れんで見そうだから。

 すぐにググろうとすると入力補助の所に「箒星」というのが出てきたのでそれをタッチする。………ふむふむ、つまりあの「箒」さんはこっちの意味で名付けられたのか。

 

 ………どっちにしても微妙かもしれないと思った僕がいた。

 

「ねぇねぇ」

「あ、ごめんね。織斑君関係の予約は受け付けていないから」

 

 そう言って僕は話しかけてきた女の子に断りを入れる。

 

「違うよー。私は君とお話ししたいんだ~」

「………え?」

 

 信じられなかった。むしろ、正気を疑った。

 見た目は可愛いの女の子………だけじゃなさそう。ダボダボな制服を着ているし。なんか眠たそうだし。そんな人が僕みたいな「超」が100個ほど付いてもおかしくはない普通の男に話しかけるなんて…………

 

「どう考えても楽しくないと思うけど……」

「そんなことないよ~………たぶん」

 

 最後のがなかったら「優しい」と印象付けられたんだけどね。

 

「でも、僕に何の用? 「男の癖にISなんか動かしてんじゃないわよ」って苦情を入れられても自分でもどうして動いたのかわからないんだけど……」

「わかってたら、それはそれで問題だよ~」

「だよね~」

 

 にしても、なんていうかこの子を見ていると和むなぁ。「抱っこしてください」という看板を掛けて歩かせたら殺到するかもしれない。なんて、馬鹿なことを考えていたらチャイムが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕、影宮瞬は普通の中学生だった。

 だけど何故かISを扱うことができ、こうしてIS学園に通っているけど………もはやこれは虐めだと思う。

 動かしたのは3月中旬。卒業式が午前中に終わったのでその後に適性試験が行われた。そこで僕は適性を見出されてIS学園に通うことになった。

 正直なところ、この学園に来るまでも死に物狂いだったし、助けてくれた親友と兄……というか、幼馴染と言うか……先輩のためにもISで結果を残さないと。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

 と思ったらこれだ。

 僕は基本的に女性が苦手だ。特に、女性にしか動かせないISが世に出てきてから急激に増えた「女尊男卑」思考を持つ女性は特に苦手だ。内面でそう考えられても、見た目で癒してくれる人なら良いんだけどね。さっきの人なら変態発言だけどムギューっと抱きしめたい。

 

「聞いてます? お返事は?」

「あ、ああ。聞いてるけど……どういう用件だ?」

 

 何故かまたこっちに来た織斑君。さっき彼のせいで僕まで参考書をほとんど読めていないことが発覚して僕まで1週間ですべてを覚えさせられるように言われた挙句に説教されるという事態に陥った。なのに、どうして彼は勉強しないでこんなところにいるのだろうか。確か織斑先生は「ISは兵器で危険だからちゃんと勉強して危険なく取り扱えるように覚えろ」って言ってなかった?

 

「まぁ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないのかしら?」

 

 僕は絶句した。どうやら織斑君も同じのようで言葉を失っている。けど社交性は高いだけあってすぐに復帰した。

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

 

 普通そうだよね。そして僕も知らない派です。

 そもそも、僕の周りって特殊だったからね。「女なんてクスリで壊して初めて信頼できる」って断言する人たちと一緒にいましたから。

 

「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!? まさか、あなたもわたくしのことを―――」

「ご、ごめんなさい……知りません……」

 

 そもそもIS関係のニュースとか真面目に聞いた覚えがありません。

 

「あ、質問いいか?」

「ふん。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

 気のせいか、ちょっと嬉しそうなオルコットさん。それを口に出して言ったら間違いなく怒られるだろう。

 

「代表候補生って、何?」

 

 それを聞いた瞬間、聞き耳を立てていた全員がこけた。やっぱりみんな気になるんだね。でも僕を巻き込むのは止めて欲しいかな。

 

「………あなた……本気で…本気で仰ってますの!?」

「おう。知らん」

「……そこは自信満々に言うべきところじゃないと思うよ」

 

 僕でもそれくらい知ってるのに。

 

「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、ここまで未開の地なのでしょうか。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」

 

 織斑君がおかしいだけです。というかこの人、周りにも日本人がいる中でそんなことを言ったら敵が増えるだけじゃないのかな?

 

「瞬、代表候補生ってなんだ?」

「……………ISの国家代表の、その候補生ってことだよ。大体候補生になる人って小学生からなる人が多いから、IS学園に一般で入学した人にとってはエリートになるのかな?」

「そう! エリートなのですわ!!」

 

 ………まぁ、不良集団を壊滅させた親友曰く、「ISを使わなければ男に喧嘩を売れない雑魚集団」と言われているとか言わない方が良いのかな。オルコットさんも機嫌を損なうだろうし。

 

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……いえ、幸運なんですのよ? その現実をもう少し理解していただける?」

「そうか。それはラッキーだ」

「………馬鹿にしていますの?」

 

 ………うん。高校受験にインフルエンザにかかって失敗して不良校に入学した先輩が1日で高校を支配して日都大学の総合工業学科に主席合格したとか言わない方が良いよね。あそこ、IS学園の卒業生でも現役で合格できないって言われる難関学科なんだけどなぁ。実際、その先輩が受験しようとした高校が藍越学園の特進科―――所謂、日本三大難関高校の一角なんだけどね。ちなみにあと2つは聖マリアンヌ女学園とIS学園だ。

 まぁつまり何が言いたいのかというと、この人が果たしてそんな人よりレア度が高いかと言われれば、僕は正直返答できない。

 

「大体、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じ支えるかと思っていましたが。しかももう1人はさっきからだんまりですわね。口が付いていないのかしら? まぁ、どちらにしても期待外れですわね」

「………いえ、言葉を口にするタイミングを失っていただけです」

「俺に何かを期待されても困るんだが」

 

 それに関しては言えてる。

 さっきから例に挙げているのは僕と違って天才ばかり。僕なんて所詮は凡人だ。その凡人の唯一の救いはそんな人たちが本当は優しい人たちだという事を知っていることかもしれない。

 

「ふん。まぁでも? わたくしは優秀ですから、あなた方のような人間にも優しくしてあげますわよ」

 

 既に優しくされていませんが!? さっきからほとんど罵倒ばかりでしたよね!?

 

「ISのことでわからないことがあれば、まぁ……泣いて頼まれたら教えた差し上げても良くってよ。なにせわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 途端にクラス中―――いや、僕ら男子の様子を伺いに来た他の女生徒も驚く。どうやらそれほど教員を倒すのは難しいことらしい。

 

「入試ってあれか? ISを動かして戦うってやつ」

「それ以外に入試などありませんわ」

「あれ? 俺も倒したぞ、教官」

 

 言われてオルコットさんは固まった。あー、その気持ちわかるわー。

 

「わ、わたくしだけと聞きましたか?」

「女子ではってオチじゃないのか?」

 

 ……もしかして織斑君って、わざと相手を怒らせているのかな?

 プライドが高いオルコットさんだからこそ、今回のその発言で怒るって考えは彼にはないのかだろうか?

 

「まさか、あなたも教官を倒したと仰りますの!?」

「僕は倒してないよ……」

「まぁ当然ですわね。所詮、男とはそういうものなんですから……」

「そもそも、スペックが同じはずなのに一体どういう加速をしたら早く動けるか逆に聞きたいよ……」

「それは操縦センスの差ですわね。それにこの学園は元代表候補生が多いと聞きますし」

「………じゃあ、織斑先生に当たった僕は運が悪かったんだね」

 

 そう言うと2人は固まった。

 

「………ど、ドンマイ」

「う、運も実力の内とは言いますし、仕方ないことですわ!」

 

 何故かオルコットさんに同情された気がした。まぁ、仕方ないよね。相手はかの有名なブリュンヒルデだし。誰だって微妙な反応をするよね。

 そう言えば、織斑先生に当たった理由って「ちょうど手が空いていた」とかだったよね。……もしかして仕事を押し付けて僕の相手をしたとかじゃないよね? ………副担任の山田先生に睨まれたのが気のせいじゃない気がしてきた。

 僕はまたため息を吐く。そして織斑君に改めて聞いた。

 

「ところで、織斑君ってどうやって教官を倒したの?」

「倒したって言うか、いきなり突っ込んで来たのでかわしたら勝手に壁にぶつかってそのまま動かなくなった」

「…………それ、倒したって言わないからね」




今作の主人公は比較的一夏たちに友好的です。私らしくないとか言いながら岩石投げるのは勘弁してください。
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