Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.10 属性の塊な転校生…ズ?

 僕は、専用機を、手に入れた。

 とは言っても、有利になるのはアリーナが使いやすくなったりとかだし、これからは別の意味で辛くなるのはわかり切っている。

 

 ―――ドンッ!!

 

 そして僕は、新しい機体のピーキーさ振り回されていた。

 

(……いつになったら乗りこなせるんだろう)

 

 隼鋼(はやがね)。それが僕が譲渡された機体だった。

 どうやらこの機体は第一世代後期開発型の機体で、機動力が白式よりも高く第三世代機にも劣らないスペックを保有している。後期型は初期型と違って第二世代初期型と同等のスペックがあるという話だ。でも、搭載されているのは簡単な武装しかない。ナイフとか自動拳銃とか、だ。

 まぁでも、僕としてはそれだけで十分だろう。まるでアサシンみたいで嫌いじゃない。でも、アリーナの端から端に行くのに一般的なら5秒はかかるのにこの機体は1.25秒程度で移動可能だけどそれ故の加速で僕は反転しきれず壁にぶつかっていた。

 

(………こうなったら)

 

 僕は立ち上がって深呼吸して心を落ち着かせる。そしてまた加速した。

 従来のISは急停止ができるけど、それはあくまでも女の常識。僕にはそんなイメージがない。だから、別のイメージで対処する。

 時間にして0.064秒。だけど体感的には10秒近く感じた気がした。だからこそ僕はその場で前転し、壁に激突するまでに着地できた。でも、それだけじゃ動きは止まる。

 ISは常に状況が動き続ける。だからこそ止まっている暇なんてなく、止まればただの的でしかない。

 

(だからこそ………僕は……)

 

 ブースターを噴かせて地面を滑るようにして加速する。でも、これじゃない。

 

(………空を、飛ぶイメージ、か)

 

 隼鋼には翼がある。だけど僕には飛ぶための翼が存在しない。

 人はこれまで自分の力だけで飛ぶという事をしなかった。しても大抵の場合は死ぬ。だから空に思いを馳せる挑戦者以外は飛ぼうとは思わない。でも今は―――

 

(………飛ばなきゃ)

 

 僕の立場は危ういんだ。技術の方向でも勉強しているとは言っても、それで大成できるかわからない。今度行われる学年別トーナメントでは少しでも戦えるという所を見せないといけない。そのために飛ばないと、僕に勝ち目はない。僕はつい最近専用機を持ったばかりであり、周りは完全な初心者ばかりじゃない。少しでもできることを増やしておかないと初戦敗退というシャレにならない状況になる。

 

(……でも、どうやって飛ぶんだろ?)

 

 のほ……じゃなくて、本音さんに教えてもらいたいけど今彼女は別のことで忙しいようだし、少しは自重しないと。

 

(………あ、そう言えばPICって…)

 

 もう一度授業を復習する。確かPICはパッシブ・イナーシャル・キャンセラーと言って、ISは浮遊と加速、停止を行う。うん。わからん。先輩みたいに頭が良いわけじゃないから。

 

(あれ? そう言えば前にどこかでPICはマニュアルの方が高度の動きをするって書かれてあったような……)

 

 ハイパーセンサーで設定欄を開くと、PICの設定が「オート」になっていてたので僕は設定を変えた。

 

 ―――これがあのようなことになるとは、この時僕はまだ知らなかったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体がボロボロになった。

 PICの設定をマニュアルに変えたら普通に加速することすらままならず、落下なんて当たり前。それでも時間ギリギリまで頑張ったけどどうにもならなかった。

 その結果にため息を吐きながら食事をしていると、聞き覚えのある声がした。

 

「どうしたのよ、アンタ」

「………凰さん」

 

 2組のクラス代表の凰さんが現れた。彼女は織斑君のことが好きらしいけど、噂じゃ度々殴っているという話だから成就する確率は低いだろう。

 

「何か今変なことを考えなかった?」

「全然」

 

 当たり前な事を思っていただけだ。

 

「それよりもどうしたの? さっきから湿布臭いけど」

「さっきISの練習をしている時に色々とぶつけっちゃってさ。やっぱりマニュアルモードはハードだなって」

「………は? ちょっと待って。何をマニュアルにしたの?」

「PIC」

「バッカじゃないの!?」

 

 本気で怒鳴られた。何で?

 

「良い? そもそもPICをマニュアル制御するのってかなり難しいのよ? それを指導者なしでやるなんて一夏みたいな馬鹿がすることよ!」

「………凰さん」

 

 僕は凰さんを思わず憐れんでしまう。この子はまだ織斑君の事をちゃんと理解できていないらしい。

 

「な、何よ。何か文句ある?」

「そもそも織斑君みたいな大馬鹿野郎がPICの意味を完璧に理解しているわけないじゃないか」

「いや、まさかそんな―――」

 

 まさかそんなことがあるわけがない―――しかし凰さんは後日僕に「アイツ、本気でわかってなかった」と漏らすことになるなんて、僕も予想していなかった。

 

「でも最後の方は少し飛べたよ」

 

 機動型の機体をかなり減速させて、だけど。

 

「まぁ、向上しているんだったら良いけどさ。でも、そういうのはちゃんとした人に教えてもらった方が良いわよ」

「そうなんだろうけどね。そういう人って中々いないから」

「なんだったら、アタシが教えてあげよっか? 前に話を聞いてくれたお礼にね」

「良いよ。こういうのは相性というものが必要だし、凰さんも織斑君に勘違いされたら困るでしょ?」

「そ、それはそうだけど………良いの?」

「大丈夫。それに僕は人を選ぶ性格をしているから」

 

 ………あんな幼稚な教え方をされたら、織斑君ならなおさら上達しないよ。

 大体、感覚理論なんて今時どころか古今東西浸透できるわけがない。理解できるのは同レベルの存在だけだ。

 

「じゃあ、僕はこれで」

 

 そう言って僕はカレーライスが盛られていた皿とスプーンを乗せたお盆を返却し、食堂を後にした。しばらくしてから妙な叫び声が聞こえてきたけど、あれはなんだったんだろう。…………凰さんの叫び声からして、織斑君が余計な事をしたんだとは思うけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。クラスメイト達が騒ぎ始める。というのも、この時期になるとIS学園の1年生は自分好みのISスーツを選べるからだ。なお、僕は―――というかそもそも男用のISスーツは2パターンしかない上に腹出しか否かしかないという仕様しかなかったので、僕はお腹が出ていない方を選んだ。お腹を冷やす典型だし、僕はあの二人ほど体型が良いわけじゃないし。

 

「やっぱり、ハヅキ社製のがいいなぁ」

「え? そう? ハヅキってデザインだけって感じしない?」

「そのデザインが良いの!」

「私は性能的に見てミューレイのが良いかなぁ。特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。モノは良いけど高いじゃん」

 

 正直、ISスーツに関してはあまり勉強していない。売られている物は着ればどれも同じだし、基礎的なものは同じだからだ。確か、ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達させ、ISは伝達されたデータから必要な動きを行うだったかな。しかも驚くことにISスーツは一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができるって話だ。まぁ、衝撃は言わずもがな、だけど。

 僕から少し離れたところでは織斑君らが山田先生の説明をしていて、女子たちが山田先生をあだ名で呼んでいる。

 

「諸君、おはよう」

「お、おはようございます!」

 

 大魔神降臨………もとい、織斑先生が現れたことでクラスメイト達は席に戻る。いつものことだけど、織斑先生が現れることでクラスメイトたちは自分に出席簿が飛び火しないように身を守っている気がする。

 

(……あれ? もしかしてあの服って生地が薄い?)

 

 前の服と違って織斑先生の素肌が見える。別に彼女の肢体に興味があるわけじゃないけど、見えてしまった。……そう言えば昨日は織斑君が朝早くから出かけてたんだっけ? その時に家にあった夏用のスーツでも出していたのかな?

 

「今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたら代わりに学校指定の水着か、最悪下着でも構わんだろう」

 

 僕は良いにしても生徒たちが構うんじゃないかな? あ、ちなみに僕は女子が下着姿で授業を受けようものならその日はボイコットして逃げ出す所存です。一緒に受けて変態扱いされるなんて真っ平だからさ。

 

「では山田先生、HRを」

「は、はいっ」

 

 連絡事項が長いと思ったのか、山田先生は眼鏡のレンズを拭いていた。慌ててかけなおす様は周りからすれば好感度が高いのかもしれないけど、教師としてはそれはどうなんだろう。僕は眼鏡をかけていないからわからないけど。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! しかも2名です!」

「へ?」

「え……」

「「「ええええええっ!?」」」

 

 あ、織斑君が倒れた。あれはもう助からないな。

 というか普通、クラスは分けるんじゃないの? 何故2人も同時に1つのクラスに入れるのだろう?

 

(…………もしかして、どっちも織斑先生が管理する必要がある、とか?)

 

 織斑先生の立ち位置はどうやら学園内の問題児の管理かもしれない。本音さんを理解しようと思い始めてから、なんとなくそう思うようになった。…ということは、もしかしてどちらも問題児なのか?

 

(………お願いだから、少しはまともな人が来てほしい)

 

 そう思っていると、二人の転校生が入ってきた。一人は銀髪で髪が長く、軍靴を思わせる長靴でかぼちゃパンツを思わせるズボンとなっている。そして、左目に眼帯をしていた。

 怖いという雰囲気があるけれど、静流と比べるとそうでもない気がしてきた。いや、まぁIS操縦者としては強いかもしれないけど、人としてはそうでもないという認識だ。僕よりも強いのは確かだけど。

 でも、問題はその女生徒じゃない。むしろ後から入ってきた人よりもまだその女生徒はまともだと言える。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

 気になるのは、彼女(?)そのものだった。男子の制服を着ているのは趣味だろうか。というか趣味であってほしい。

 

「お……男………?」

 

 誰かが呟やくように聞くと、デュノアさん(くん?)は肯定した。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入を―――」

 

 途端に教室内からサイコウェーブが発せられた。僕の頭を狂わせそうな音が響くのだからあながち間違いではないかもしれない。

 

「男子! 三人目の男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形! 守ってあげたくなる系の!」

「地球に生まれて良かったぁああああああッッ!!」

 

 何故そんな声を出すのかな? 正直、僕は女性優遇制度というものは不要な存在だとしか思えない。本当に男が嫌いならこんなに騒がないはずなのに。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

 鬱陶しそうに止める織斑先生。教師としての仕事はちゃんとしてほしいという気持ちはあるけど、今回ばかりは全面的に同意したい気分だ。

 

「みなさんお静かに! まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

 どうやらそっちも気になっていたのか、叫び声がぱったりと止んだ。

 彼女はどうやらこのクラスには悪印象を持ったようだ。さっきの叫び声といい、軍オタか本物の軍人化はわからないけど良い気がしなかったかもしれない。

 そう考えると、織斑先生が銀髪の人に指示していた。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

 

 え? どういうこと? 何で教官呼び?

 混乱していると、織斑先生がラウラさんに注意していた。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、個々ではお前も一般生徒だ。私のことは「織斑先生」と呼べ」

「了解しました」

 

 冷静に考えて、織斑先生がなんらかの理由で彼女と出会って彼女を指導していたのだろう。そう思っておく。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 織斑君の時と同じように続きを待つクラスメイト達。でもボーデヴィッヒさんは別の意味で答える気はないだろう。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

「以上だ」

 

 キッパリと言ったボーデヴィッヒさん。空気が微妙になるし、山田先生は泣き始める。いや、何で泣いているのですか。

 呆れていると、ボーデヴィッヒさんは何かに気付いて織斑君に近付いて引っ叩いた。

 

(…………もしかして)

 

 僕の脳内にある思考が過ぎる。

 以前に織斑君はボーデヴィッヒさんと遭遇していて、その時に織斑君が酷いことをしたかもしれない。

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

 ………どういうこと?

 もしかして、実は織斑姉弟は血が繋がっていないとか?

 

「いきなり何しやがる!」

 

 織斑君は怒鳴るが、ボーデヴィッヒさんはやることはやったという感じでスタスタと歩いて僕の隣の席に座った。別にその1つ隣でも良いんじゃない?

 

「あー………では、HRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 職務怠慢だと注意したいところだけど、今回は家の事情もありそうだし僕は先に教室から出た。そして、柄にもなく後で織斑先生に栄養ドリンクを差し入れようと思った。




あくまでも、本音を受け入れたから、そのついでにこれまでの状況を見直した、という解釈でお願いします。
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