Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.11 完全依存現象

 一足先に空いている更衣室に来た僕は、服をすべて脱いでISスーツ姿になる。ISスーツは下に着ていれば着替えるのがすぐだけど、僕の場合は上下一体型だからチャックが2か所付いている。

 シャルル・デュノアという男が転校してきたことで、またしばらくカオスな状況が続くことを予想しながら着替える。終わってから外に出ると、織斑君とデュノア君がこっちに向かって走っていた。

 

(……デュノア、か)

 

 まだ休み時間ということもあって、グラウンドに先に来た僕は小型端末を起動させてアニメを見る。何故これをしているかというと、昨日先輩に相談したらこの端末に入っているアニメを見ろというお達しが来たからだ。確かにアニメを見て学習するというのは面白い案かもしれない。会話は邪魔だけど、ヌルヌルと動くから。

 

「みーやん!」

 

 後ろから本音さんに抱き着かれた。けど、正直そういうのは止めてほしい。なんか色々当たってるし、そういうのは彼女だって嫌だろうから。

 とりあえずやんわりと離すと、織斑先生と目がばっちり合ってこっちに近付いてきた。

 

「影宮、織斑たちはどうした?」

「さぁ? 僕が着替え終わって外に出た時にこっちに来ていましたけど、目前で捕まったんじゃないですか?」

 

 適当に言うと頭を抱える織斑先生。心中、お察しします。

 

「まぁいい。それとお前にデュノアの面倒を頼みたいのだが………わかった。その、済まなかったな」

 

 僕が絶望するような顔をしていたからだろう。織斑先生が心から申し訳なさそうな顔をする。正直、気持ちはわかるけど協力する気はさらさらない。男の割には細い体の線。自ら男を自称する相手に僕は警戒を隠せない。というか、あの有名なデュノア社の息子にしてはどうして今まで話題にすら上がらなかったのすらわからない。本当に男かどうかはともかく、いくら何でも怪しすぎる。

 

「みーやんも、怪しいと思う?」

「………うん。そのことに関しても先輩に相談しているんだけど……」

 

 思えば僕は先輩に頼り過ぎなのかもしれない。先輩も先輩で講義で忙しいのだから、少しは自分で解決しないといけないな。

 目の前で怒られている織斑君を無視してどうしようかと考えていると、織斑先生が授業を始めようと口を開くがあるグループがうるさくなったので無言で叩きに行った。

 

「―――安心しろ。馬鹿は私の前にも二名いる」

 

 織斑先生はそろそろ死神の鎌でも装備したらそれは面白いかもしれないと、ふと思った。

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

「はい!」

 

 後ろから呪詛が聞こえているけど、それは無視だ。

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。凰! オルコット!」

「な、何故わたくしまで!?」

 

 さっき織斑君を蹴っていた凰さんはともかく、オルコットさんは呼ばれたことに不満そうだった。

 

「専用機持ちはすぐに始められるからだ。良いから前に出ろ」

「だからってどうしてわたくしが……」

「一夏のせいなのに何でアタシが………」

 

 僕はつくづく同居人に恵まれたと思う。少なくとも、今のオルコットさんはともかく凰さんとは絶対に同居したくないと思った。

 

「お前ら少しはやる気を出せ。アイツに良いところを見せられるぞ」

 

 もはや手遅れなような気がするけど、それは二人には関係ないようで目を輝かせる。

 

「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」

「まぁ、実力の違いを見せる良い機会よね! 専用機持ちの!」

 

 あーうん。やっぱり僕は本音さんの方が良いや。まだ部屋は変わらないようだし、今の内に一緒にいておこう。

 

「それで、相手はどちらに? わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」

「ふふん。こっちのセリフ。返り討ちよ」

「慌てるなばかど―――」

 

 ―――キィィィィン………

 

 僕は嫌な音がしたので本音さんを持ってその場から離れた。少しした後に何かが落下した。

 どうやら他の人たちも避難していたようで、巻き込まれたのはいない……いや、1人だけ巻き込まれたみたいだ。

 地面を転がってから止まり、しばらくして土煙が晴れる。

 

「ふう………白式の展開がギリギリ間に合ったな。しかし一体何事―――」

 

 どうやら白式で衝突は防いだらしいけど、その後がまずかった。

 織斑君は山田先生を押し倒したような形ように上になっていて、胸を掴んでいる。これが俗に言うラッキースケベというものなのだろう。

 

「あ、あのう、織斑君……ひゃんっ!」

 

 揉まれた山田先生は困った顔はすれど特に照れている様子はない。織斑先生も「あの馬鹿が………」と疲れたような声を出している。おそらくこれが偶然の出来事だから止めるに止められないのだろう。というか、この事態に慣れていない様子だ。そして僕も、これまでこんな状況に陥ったことがないのでどうすれば良いのかわからない。

 

「そ、そのですね。困ります……こんな場所で……いえ! 場所だけじゃなくてですね! 私と織斑君は仮にも教師と生徒でですね! ………ああでも、このまま行けば織斑先生が義姉さんってことで、それはとても魅力的な―――」

 

 欲望が駄々洩れになっていて、僕は心から引いていた。静流でももう少し慎ましいのにこの女は何を言っているのだろうか。

 もしかして、女性優遇制度によって一部の女性が暴走したことで女たちは欲求不満になったり結婚願望があったりするのだろうか? だとしたらさっさと署名を集めて撤廃すれば良い話なのに。

 なんて考えていると、織斑君の方にレーザーが飛んだけど身の危険を感じたのか上体を逸らして躱した。―――って、

 

「ホホホホホ……。残念です。外してしまいましたわ………」

「ちょっ、オルコットさん!? 一体何をしているんだい?!」

 

 ―――ガシーンッ!!

 

 音の方がした方を見る。凰さんが既に甲龍を展開していて武装を連結させていた。それを織斑君の方に投げた。

 

「うおおおっ!?」

 

 織斑君も驚いてこける。気持ちはわからなくない。むしろ正しい反応と言える。

 なんとか回避した―――と思っていたけど、その武装が織斑君の方に戻ってきた。

 

「はっ!」

 

 銃声が聞こえ、青龍刀に二発当たる。軌道を変えたようで織斑君に当たることはなくそのまま地面に刺さった。

 

(………あり?)

 

 山田先生からいつものオドオドした雰囲気がなくなっている。というか、何故か妙に迫力があるというか、警戒しないと後ろから刺されて「私が一生看病してあげますから」と言って誘拐するヤンデレの典型が彷彿させられる。

 

「みーやん、落ち着いて、落ち着いて」

 

 どうやら僕は山田先生を睨んでいたようだ。気持ちを落ち着かせるために本音さんの手を握らせてもらう。………うん。少し落ち着いた。

 

「山田先生はああ見えて元代表候補生で、その中でも実力そのものは代表に匹敵していたからな。今くらいの射撃は造作もない」

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし………」

 

 謙遜する山田先生。しかし何だろう。この人を警戒しておかないと後々マズいことになるのではないかと思う。

 

「さて、小娘共。いつまで惚けている? さっさと始めるぞ」

「え? あの、二対一で……?」

「いや、流石にそれは……」

「安心しろ。今のお前たちならすぐ負ける」

 

 そして、その宣言通りオルコットさんと凰さんは大敗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

 ゆっくりと降りてくる山田先生は少し恥ずかしそうだった。その少し先にはオルコットさんと凰さんがいがみ合っている。その光景から1組と2組の生徒たちからは哀れむ視線を向けられていることに気付いていないようだ。

 

「専用機持ちは織斑、オルコット、影宮、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では5、6人のグループに分かれて実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな? では分かれろ」

 

 すると案の定というか、織斑君とデュノア君の方に人が集中した。僕の所には本音さんが来てくれたけど、他は全員だ。これを見て思うんだけど、何で女性優遇制度なんてものがいるのだろうね?

 

「織斑君、一緒に頑張ろう!」

「わかんないところ教えて~」

「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」

「ね、ね、私もいいよね? 同じグループに入れて!」

 

 みなさんそろそろ気付いてください。織斑先生がキレそうです。

 

「この馬鹿者共がい……。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ! 順番は男子が来る前に言った通り。次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド100周させるからな!」

 

 流石に嫌なのか、彼女たちは大人しく僕の所に来た。本音さんからマズいオーラが出ている気がするけど、今は気にしないでいよう。

 

「……やったぁ。織斑君と同じ班っ。名字のおかげねっ……」

「……うー、セシリアかぁ……。さっきボロ負けしてたし。はぁ……」

「……凰さん、よろしくね。後で織斑君のお話聞かせてよっ……」

「………デュノア君、わかんないところがあったら何でも聞いてね。ちなみに私はフリーだよ……」

「………あーあ、影宮かぁ……。嫌だなぁ……。織斑君の方が良かったなぁ……」

 

 そんな堂々と悪口を言わなくても………。

 ちなみに今僕は今すぐ悪口を言った女生徒を殺そうとしている布仏さんの手を掴んでいる。

 

「良いですかみなさん。これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は「打鉄」と「ラファール・リヴァイヴ」がそれぞれ3機ずつです。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよ!」

 

 うん。これは迷っている暇はなさそうだ。

 

「じゃあ、僕は訓練機を取ってくるから大人しく待っててね」

 

 そう言って僕はすぐに山田先生の所に向かってラファール・リヴァイヴをもらって行こうとしたけど、中々動かない。そうだ。ISを部分展開すればいいんだ。

 展開の許可をもらって、僕はラファール・リヴァイヴを乗せた台車を自分たちの班に持って行った。

 

「………えっと」

 

 眼を放した隙に、本音さんが誰かと喧嘩していた。

 

「か、影宮君! お願い! どうにかして!!」

 

 訳が分からない僕はその状況に口を開けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 話を聞くと、どうやら僕のことを良く思っていない人達がいるようだ。

 唐突に専用機持ちになったことで裏ではさらに僕に対する不満が溜まっているようで、数人が文句を言ったらしい。だけど本音さんは手に入れた経緯も理由も知っている人間でつい注意したそうだ。

 大まかに言えばそんな状況。だから僕は織斑先生を呼ぶことにした。

 

「どうした影宮。まだ始めていないようだが」

「実は、僕に教えてもらうのが嫌な人がいるみたいなんです」

「…………ほう」

 

 振り分けられた女子たちを睨む織斑先生。本音さんだけは僕の後ろにいるのでその影響はない。

 

「だがもうそうなってしまったんだ。今更変えようもない」

「………ボーデヴィッヒさんのところを見ていてもそう思えます?」

「何?」

 

 織斑先生がそっちの方を見ると、不満そうだけど相手が怖すぎて何も言えない雰囲気を醸し出している人がいる。織斑先生もそれに気付き、僕の意図を見抜いたようだ。

 

「影宮の指導が気に入らない生徒と、ボーデヴィッヒが嫌な生徒をトレードする、と?」

「はい。会話から過去に彼女は織斑先生から指導されているみたいですから彼女たちにとっても問題ないと思うんです。それに、これで時間をかけるならトレードの方が早いかと。そっちもそれで良いよね?」

「………良いわよ。アンタみたいな小物なんかに教えられて周りから遅れたらそれこそ問題だもの」

 

 本音さんを止める。当然だけど僕自身も気分的には悪いけど、ここは我慢して出て行ってくれた方が良いさ。

 織斑先生に交渉を任せた。そして僕らは新しい人たちに指導したけどやっぱり不評みたいだ。

 一通り指導が終わった後、本音さんと一緒に片付けたんだけど………。

 

(やっぱり、指導なんかせずにアリーナに行って一人で練習すれば良かったな)

 

 自分のためにならないし、まだ僕は隼鋼を完璧に操れないのだ。それに今回のことで本音さんがクラスメイトと完全に亀裂が入ったりしたら後々困るだろうし。

 

(………はぁ。色々と面倒だ)

 

 ため息を吐くと織斑君の腕が後ろから伸びてきたので回避する。

 

「どうしたの?」

「相変わらず凄い反射神経だな………じゃなくて、もう授業も終わりだろ? 良かったら昼飯を一緒に食わないか? シャルルも交えてさ」

「……………それって、誰が来るの?」

「他には、鈴とセシリアだな。箒もいるぜ。アイツが一緒に食いたいって言うからさ」

「で、オルコットさんと凰さんはもう誘った?」

「ああ。後は瞬だけだ」

 

 呆れてため息を吐く僕。とりあえずデュノア君が気になるので同席することにしたけど、篠ノ之さんの気持ちも汲んでやれと思ってしまった。ま、織斑君じゃ一生無理だろうけどさ。




1巻分の表紙が本音が妖精サイズの瞬を気遣う感じの絵なら、2巻分はデフォルメされた本音を少女がぬいぐるみを持つようにしている感じの絵になると思う。


………と、ふとそんなことを想像してしまった。
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