Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.12 依存少年、知恵を絞る

「………どういうことだ」

「ちゃんと「二人だけで」と言わなかった君が悪いんじゃない?」

 

 そう返すと、何とも言えない顔をする篠ノ之さん。織斑君は何もわかっておらず、言葉を返した。

 

「天気が良いから屋上で食べるって話だっただろ?」

「そうではなくてだな………!」

 

 ちなみに僕の左隣には本音さんが座っておにぎりを食べている。最近では食堂には行かずに自分で作ることが日課になってきているのだ。

 

「せっかくの昼飯だし、大勢で食った方がうまいだろ。それにシャルルは転校してきたばかりで右も左もわからないだろうし」

「そ、それはそうだが………」

「あ、僕らのことは気にしないで。君たちはそこらに生えている野草程度にしか思わないから」

 

 そう言うと全員が何とも言えない顔をする。だってそうじゃない。

 

「はい、あーん」

「あーん」

 

 本音さんと一緒に食べているのに、他の人なんてどうでも良いんだ。

 

「………よくあんな堂々とできるな」

「……本当に羨ましいですわ」

「何であんな堂々とできるのよ。意味がわからない」

 

 はいそこの負け犬集団、文句を言わない。そんなに嫌ならちゃんと当たって砕ければ良いんだよ。

 最近は本音さんが整備技術を持っていると知ったからそのことで教えてもらったりしている。本音さんの教え方って、意外とわかりやすい。

 織斑君が、オルコットさんのサンドイッチを口にして顔を青くしている。どうやら相当マズいらしい。

 

(そう言えば、本音さんって料理できたっけ?)

 

 普段からケーキとか食べているから、もしかしたお菓子作りは得意かもしれない。そろそろ調理実習もあるし、一度彼女の実力を見てみたいものだ。

 

「ええと、本当に僕が同席して良かったのかな?」

「誘われた時に察せなかった時点で、じゃない?」

「…………うん」

 

 まぁ、彼もまた被害者だからとやかく言えないけどね。

 何にせよ、今回の事で関係を持てたということで彼の調査ができるというものだ。できれば本当に男で、僕の思い過ごしだったらいいけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デュノア君が転校して来てから数日が経ち、わかったことがある。

 

 ―――織斑君がホモの可能性が出てきた

 

 いや、ホント何を言っているんだろうかと思われるかもしれないけど、実際そう言わざる得ないんだ。例えば、

 

「なぁ瞬、俺たちの関係って、見直されるべきじゃないか?」

「織斑君。君が何が言いたいのかよくわからないんだけど」

「いやさ、俺たちって考えてみればそんなにドライだったじゃん。これを機にちゃんと友達として接するべきじゃないかと思ってさ」

 

 男子が増えたことによる興奮……だと思いたかった。そう、一時的な奴。

 だけど織斑君は明らかにおかしくなっている。一緒に着替えることを強要してくることもあるし、何かあったとしか思えない。なので僕はデュノア君に織斑君と同居している間に変わったことがあったか聞いてみた。

 

「一夏と同室になって気になったこと? …………うーん。特にないかな」

「本当に? 何もされていない?」

「……どうしてそんな質問を?」

 

 僕はこれまで織斑君のことで気になったことを挙げて尋ねると、デュノア君は微妙な顔をした。

 

「た、確かに一夏って他人と着替えたがるよね?」

「おかしいよね? いくら男同士だからって変に積極的だし………やっぱりホモかな?」

「…………」

 

 デュノア君は顔を青くする。気持ちはわかる。下手すれば尻の危機だからね。まぁ、もしホモだったらそれはそれで良いんだ。幸い、ちょっと性別が怪しいけどデュノア君を犠牲にすれば良いだけだし。

 だけど問題は、思春期……もとい、発情期だった場合だ。

 もしNTRをやりたいと思うようになったら、まず狙うのはおそらく本音さんだ。それだけは絶対、何があっても阻止しないと。

 

「だ、大丈夫?」

「ん? 何が?」

「今、凄く怖い顔をしていたから……」

 

 そんなにしていたかなぁ?

 なんて思っていると、デュノア君はかなり真面目な顔をしていたのでどうやら本当に怖い顔をしていたようだ。

 

(やっぱり土曜のアリーナは混むなぁ)

 

 土曜日は午前中は授業なので、残りはアリーナで訓練するか部活をするかのどちらかになる。訓練機を使用する人はこういう日は大体3,4人で回して使うし、グループで話し合って使用する場所を選べるから男子目的の人が殺到してしまったわけだ。

 

「こう、ずばーっとやってから、がきんっ! どかんっ! という感じだ」

「なんとなくわかるでしょ? 感覚よ感覚。……はぁ? 何でわかんないのよバカ!」

「防御の時は右半身を斜め上前方へ5度傾けて、回避の時は後方へ20度反転ですわ」

 

 何故か同時に教えるという珍妙な光景があった。

 

「率直に言わせてもらう。全然わからん!!」

「何故わからん!」

「ちゃんと聞きなさいよ、ちゃんと!」

「もう一回説明してさしあげますわ! つまり斜め上前方5度―――」

「―――一夏!」

 

 流石に同情したのか、デュノア君が遮るように織斑君を呼んだ。

 

「ちょっと相手してくれる? 白式と戦ってみたいんだ」

「シャルル! わかった。というわけだからまた後でな」

 

 まるで助けられた村人のように笑顔を向ける織斑君。デュノア君が周囲に試合をすると通知して場所を開けてもらうようにした。周りは「デュノア君の頼みだから」という事で場所を開ける。たぶん僕がしてもこうはならないだろう。

 そして織斑君とデュノア君で試合が始まったけど、デュノア君の技量が高いのか織斑君の技量が低いのか、決着は早く着いた。

 

(織斑君の技量はともかく、デュノア君の技量は高すぎるな………)

 

 デュノア社内で鍛えたかもしれない。詰めっぱなしだからこそのその技量かもしれない。

 

(………ここは待ち、だね)

 

 不用意に喧嘩を売らず、今は観察一筋だ。幸いデュノア君は連戦するつもりはないようで、僕と戦おうとはしなかった。

 

「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さん、それに影宮君に勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

「そ、そうなのか? 一応わかっているつもりだったんだが………」

「知識として知っているだけって感じかな。さっき僕と戦った時もほとんど間合いを詰められなかったよね?」

 

 確かにそうだった。織斑君には剣で銃弾を斬るという芸当はできないから、仕方なく装甲で受けて徐々にシールドエネルギーを減らされて負けた。

 

「一夏のISは近接格闘だけだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。一夏の瞬時加速は直線だけだから反応できなくても軌道予測で攻撃できるんだ。あ、でも瞬時加速中はあんまり無理に軌道を変えない方が良いよ。空気抵抗とか圧力の関係で機体に負荷をかけると、最悪の場合骨折するから」

「……なるほど。シャルルの説明ってわかりやすいな」

 

 そう言うと、後ろから嫉妬3人衆がぐちぐちと文句を言っていた。

 

「ふん。私のアドバイスをちゃんと聞かない癖に……」

「あんなにわかりやすく教えてやったのに……」

「わたくしの理路整然とした説明に何の不満が……」

 

 篠ノ之さんと凰さんは、どこぞのマフィアのボスぐらいしか無理じゃないかな。あと、オルコットさんの場合は織斑君の頭脳を無視しすぎだ。

 

「一夏の白式って、後付武装(イコライザ)がないんだよね?」

「ああ。何回か調べてもらったんだけど、拡張領域(バススロット)が空いてないらしい。だから量子変換(インストール)は無理だって言われた。なぁ、瞬」

「うん。本音さんもそう言ってたよ」

 

 あと、「ここまで極端な機体って中々ないよ~」とも。

 何故僕が知っているかと言うと、僕が隼鋼について調べるついでに調べようとしていた織斑君とバッタリ出会って、僕が端末の操作を習う時に試させてもらったのだ。ちなみに本音さんは織斑君に使い方を教えなかった。「また今度、誰かに頼んでよ~」とは言っていたけど、後ろには「空気を読めよゲロ野郎」という雰囲気が出ていたのは気のせいじゃないはずだ。

 

「でもそれは単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)に容量を使っているからだから、最悪消せば他の武装は入れられると思うって話を前にしたよね?」

「ワンオフ・アビリティーっていうと………えーと、何だっけ?」

 

 僕は織斑君の股間を蹴った。決してイラついたわけではない。薔薇の鞭だ。

 

「ISそれぞれに備わっている特殊能力だよ。言い換えれば必殺技。何で忘れているの? 君、ホントに男なの?」

「ちょ、言い過ぎだよ影宮君。って言うか今のって確実に入っているのね!?」

「大丈夫だよデュノア君。精子なくても人間生きていけるから」

 

 それに蹴って倒した後に頭を踏み抜くか腹部を蹴り上げて連続で蹴りを入れない辺り、僕は優しいと思う。

 

「…………い………いてぇだろ………」

「全く。君は先人者の話を何だと思っているんだい? 懇切丁寧に説明してくれたって言うのにもう忘れるなんて頭がおかしいとしか思わないよ。あんまり調子乗ってると、消すよ?」

 

 この男は女を落とすしかできないのかと聞きたいぐらいだ。せっかく本音さんが説明してくれたって言うのに「何だっけ?」はないよね。まぁ、織斑先生や山田先生が説明したって言うなら別に良いけどさ。

 

「ヒッ!?」

「どうしたの、デュノア君?」

「う、ううん。何でもないよ!」

 

 何をオドオドしているのだろうか。僕の知り合いの前じゃ、そんな余裕なんてないというのに。

 

「……えっと………じゃあ、白式のアビリティーってやっぱり零落白夜なのか?」

「うん。でも白式は第一形態なのにアビリティーがあるっていうだけで物凄い異常事態だよ。前例が全くないからね。しかも、その能力って織斑先生が使っていたISと同じだよね?」

「まあ、姉弟だからとかそんなもんじゃないのか?」

「ううん。姉弟だからってだけじゃ理由にならないと思う。さっきも言ったけど、ISと操縦者の相性が重要だから、いくら再現しようとしても意図的にできるものじゃないんだよ」

「そっか。でもまぁ、今は考えても仕方ないんだろうし、そのことは置いておこうぜ」

「と、問題を先送りするので織斑君は学年最下位の座をキープし続けるのだった」

「うっ………」

 

 ま、実際ISのことなんて僕ら素人にはわからないだろうしね。案外、あるとしたら―――

 

「織斑君の使っているISコアが、織斑先生が前に使っているコアだったりして」

「それはあるかもしれないね。ISコアを別の機体に移植する時は初期化するけど、初期化しきれなかったとか……まぁでもそれはいくら何でもないはずだよ。もしそれなら機体に異常が起こっていても不思議じゃないし。あ、でも―――」

 

 デュノア君がアサルトライフル《ヴェント》を展開して織斑君に渡した。

 

「今は問題を置いておくのは賛成かな。ここで唸っているよりも射撃の練習をした方が良いだろうし」

 

 そこで織斑君は驚いているけど、その表情だけで彼がどれだけ勉強をしていないかがわかる。

 

「え? 他の奴の装備って使えないんじゃないのか?」

「普通はね。でも、所有者が使用許諾(アンロック)すれば、登録してある人全員が使えるんだよ。……うん。今一夏と白式に使用許諾を発行したから、試しに撃ってみて」

「お、おう」

 

 初めて扱うからか、織斑君の動きはぎこちなく慎重に扱う。今では僕も慣れたけど、確かに最初は怖かった。

 その様子を見ていると、後ろから嫉妬する声が聞こえてきた。

 

「ねぇ、あの二人って仲良すぎるんじゃない?」

「………確かにそうだな。妙に絵になるというか……」

「怪しいですわね。もしかして、一部の方が騒いでいるような関係に発展していたりして………」

 

 本音さんがいないことが悲しいよ。生徒会の面々が戻ってきているから仕事行かないといけないとか、やっぱり帰れば良かったと思うよ。

 しばらくすると、僕の危険センサーが何かを捉えた。近くのピットから見覚えがある銀髪が現れ、ISを展開する。そして―――

 

「織斑一夏」

 

 呼ばれた一夏はちょうど撃ち終わったのか、ドイツの代表候補生「ラウラ・ボーデヴィッヒ」に顔を向ける。

 

「……何だよ」

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

 そう言えば、某アニメに出てきたドイツ軍人もかなり好戦的だったっけ? それに確か、ヤバすぎる敵に生命反応が探知されていなかったから、あの時点ですでに死んでいたんじゃとか思わせる人。

 

「嫌だ。理由がねえよ」

「貴様にはなくても私にはある」

 

 そう言われた織斑君の顔は段々と険しくなっていった。

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業を成し得ただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様の存在を認めない」

 

 ………これだけ聞くと本当に訳が分からない。

 たぶん、織斑君に何かがあって、その何かを怒っているということだけは理解できるけど………これだけ見たらボーデヴィッヒさんは電波少女にしか見えないね。

 

「別に今じゃなくて良いだろ。もうすぐ学年別トーナメントがあるんだから、その時で」

 

 ………織斑君が大人な対応をしている!?

 もしかして明日は雨……いや、氷柱でも降ってくるんじゃないかと思いながら空を見上げる。雲はあるけど、そこまで荒れるような天気ではなさそうだ。

 

 ―――ま、夏でも氷柱を降らそうと思えばできる人はいるんですけどね

 

「ならば、戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 ISを戦闘状態へとシフトさせ、彼女の右肩に装備されている大型のレールカノンが光りを帯びる。

 ほとんど反射的だった。僕はすぐに飛び出し、彼女のレールカノンを切断、離脱した。

 

「なにっ!?」

 

 彼女の近くで爆発が起こる。幸い、周りに人がいなかったからそこまでの被害は出ていない。

 

「貴様ぁッ!!」

「…………」

 

 確かに周りに人はいなかった。でも、織斑君とデュノア君の周りは違う。

 少しでも見ようと見学していた人たちがいるし、最悪その人たちに着弾する恐れが…………あ、別に見逃しても良かったかもしれない。まぁどうでもいいや。

 

「邪魔をするな、臆病者が!!」

「……………」

「何か言ったらどうだ、この雑魚―――」

 

 黙ってやり過ごそうと思ったけど、どうやら無理みたいだ。

 

「聞いているのか、きさ―――」

 

 僕はボーデヴィッヒさんの罵詈雑言を無視して電話機を取り出し、ある番号に電話をかける―――

 

「あ、織斑先生。忙しいところすみません。影宮です」

「な―――」

「え!?」

「実はさっきボーデヴィッヒさんが、ISを装備していない人に避難指示を出さずに織斑君に発砲しようとしてまして、反省文を出してあげたいのですが―――」

「おい貴様! いい加減にしろ!!」

 

 ボーデヴィッヒさんが叫びながら飛んできたので回避する。しかしボーデヴィッヒさんも負けじと僕に飛び掛かろうとする。

 

「はい。では伝えておきますね」

 

 そう言って僕は電話を切った―――振りをした。

 

「ボーデヴィッヒさん。織斑先生が話があるそうだから、至急職員室に来るようにだって。逃げたらどうなるかわかってるなっとも言ってたよ」

「………きさまぁあああああッ!!」

『―――そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 

 ―――遅いんだよ、ノロマが

 

 ようやく出てきた教員に呆れつつも、僕はゆっくりとグラウンドに降りた。

 

「ど、どういうことだよ瞬! 何で千冬姉の番号を知っているんだ!?」

 

 そして何故か、織斑君が本気で怒っていた。

 ホモな上にシスコンなのか、と正直呆れそうになった。織斑先生の胃が潰れる様子を想像してしまいそうになり、可哀想になったのは言うまでもない。




周りの気持ちに気付かないのに、やけに姉にデレる主人公。
ホモ疑惑あるし、ある意味千冬に同情できる要素はありますよね(笑)
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