Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.13 踊る黒と影 そして……

 織斑君の目は真剣だった。

 そもそも僕は生徒的な立場で言ったからかなり優遇されてもおかしくない場所にいる。だから織斑千冬という絶対的な存在の番号を知っていて、いつでも頼れる状態にしていても別におかしくはない、と思う。

 

「おい答えろよ!」

「お、落ち着いて一夏。影宮君にだって事情が―――」

 

 必死に止めるデュノア君。まだちゃんと向かっていないけど、仕方ない。

 

『冗談だよ。実際、織斑先生に連絡は取っていない』

「え? それってどういう―――」

 

 僕はまた織斑君の股間を蹴って黙らせた。

 

「!? ―――?!?!」

『まぁ落ち着いて。さっきのはネタだよ、ネタ。ボーデヴィッヒさんは織斑先生のことを知っているからこそ、彼女の恐ろしさについても知っているはず。そこを突いたから、ああやって撤退させたんだよ』

「そ……それよりも痛い……」

「そりゃ痛くしたからに決まっているでしょ。それとも何、僕が知るもっとも残酷かつ冷酷な方法で痛めつけて欲しいって?」

 

 個人間秘匿通信を切って普通に話す。織斑君は首を横に激しく振って拒否を示した。

 

「どうでも良いけどさ。それとも何、僕が君のお姉さんとよろしくしていたら問題でもあるわけ?」

「そ……そうじゃねえよ。って言うかそれってどういう―――」

 

 僕は心から引いていた。たぶん織斑君は織斑先生に彼氏ができてもこんな反応をし続けるのだろう。弟離れよりもまず姉離れさせる必要があるようだ。ま、僕には関係ないけど。

 

「まぁ織斑君。姉弟でも子どもはできるから頑張れば良いと思うよ」

「…………なんか盛大に勘違いされていないか、俺」

 

 たぶん勘違いはしていないはずだ。っていうか、絶対にしていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後6時。

 あの後、生徒が帰り始めたので僕は一人で練習しようとすると、もう帰るらしい織斑君がデュノア君をしつこく一緒に着替えようと誘っていた。だから僕は敬意を表してホモ斑君と呼ぶことにした。

 しばらくしてから僕も上がり、シャワーセットを持っていないから仕方なく寮へと向かっていると誰かが会話をしているのが聞こえた。

 

「―――何故こんなところで教師などやっているのですか?!」

 

 今話題の問題児の1人だった。

 巻き込まれるのが嫌だという事もあり、僕は無視して行こうとした。周りに女子がいないので話し声は良く聞こえる。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」

 

 いや、あるんじゃない?

 むしろ織斑先生のように世界大会で優勝するような人間を簡単に他国に所属したら色々と面倒なことにあるという理由もあると思うんだけど……。

 

「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」

「ほう」

「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません」

「……何故だ?」

 

 あ、これ怒ってる。

 

「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている。そのような程度の低い者たちに教官が時間を割かれるなど―――」

 

 ………何言ってんの、この子。

 なんて言うか、織斑先生の教育が悪いのか彼女自身の思考自体が悪いのかわからない。たぶん後者なのかもしれないけど、とても信じられなかった。

 

「―――そこまでにして「ちょっと聞きたいんだけどさ」何!?」

 

 織斑先生が驚いた様子で僕を見る。聞いているのには気付いていたようだけど、まさか参加してくるとは思わなかったようだ。確かにこの行動は僕のキャラじゃないもんね。

 

「貴様………」

「その意識が甘く、危機感に疎くてISをファッションか何かと勘違いしている奴らに僕も含まれるのかな?」

「当然だ―――」

 

 その後に何かを言っているけど、僕は鞄を捨てて彼女の懐に入り彼女が所持していたナイフの刃先を彼女の首元に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体、誰がこのような状況を予測しただろうか。

 千冬は以前から瞬の気配を感じ取りにくいという感じは薄々していたが、まさかそれが今顕著になり―――仮にも軍人であるラウラ・ボーデヴィッヒからナイフを奪ってそれを所有者に向けるという大それた芸当を見せた瞬に驚きを隠しきれなかった。

 

「………そこまでだ」

 

 だがそれはラウラにとって良い薬になると思ったのも確かだ。

 ラウラは強い。それは贔屓目に見ても間近で成長していたのを含め、意識的にもまた強いことを知っている。だがそれを少しでも生命の危機に陥れた存在がいるとなれば、成長をすると思った。現にラウラはもまた、瞬の行った芸当を全く見えなかったことに心から驚いている。

 

「これでわかっただろう、ボーデヴィッヒ。お前が見ていたのはほんの少しの一面。ましてやこいつは、最初からISを兵器として見ながら自分のものにしようとしている」

 

 千冬なりのフォローであり、またこれまでの努力を見てきたが故の賛美のつもりだった。だが、

 

「………何か勘違いしていない?」

 

 瞬からは、そんな言葉が出てきた。

 

「何?」

「これくらい、やろうと思えば誰だってできる基礎中の基礎だ。むしろ褒める部分がわからない。それに、ISを使おうと思ったのはそうしないと僕を庇ってくれた2人に申し訳がないから。今だって嫌いだよ、ISも、そして女もね」

 

 そう言って瞬はラウラの足元にナイフを置き、そこから去る。ラウラは忌々し気にナイフを拾い、しまうとふと千冬の顔を伺った。

 その顔はまるで―――一夏を、いや、それ以上の顔をしていた。

 まるで好きな人を、そしてその恋が叶わないことを知っている少女のような顔を浮かべる千冬を見たラウラは―――一人部屋で荒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奇妙な出来事が起こった日の2日後。何故か僕はボーデヴィッヒさんにずっと睨まれていた。

 まるで親の仇でも見るような目で見られ続け、また授業中でもそれを続けていたボーデヴィッヒさんは織斑先生に叩かれたが一向に止める気はないようだった。何故?

 

「何かしたのか?」

「さぁ? ただナイフを奪って彼女の首元に当てただけだよ」

「原因は間違いなくそれだよね?」

 

 デュノア君の言葉に頷く織斑君。でも仕方ないじゃん。平和ボケしたクソ女共と同類扱いされたら誰だって怒る。静流が聞いたら間違いなくボーデヴィッヒさんは腹パンされた後に泣き喚くまで意識が飛ぶぐらいの平手とかを食らわされ、異物で股を裂かれるだろう。あ、もちろん例えで、裂かれるのは子宮だ。

 

「でもあの時のボーデヴィッヒさんは驚いていたんだよね。それこそ僕を睨むどころか「貴様のことは認めてやる」ぐらいのことは言ってきても良いと思うけど………。それよりも織斑君、そろそろ教えてくれないかな? ボーデヴィッヒさんと何かあったの?」

「………ごめん。それは言えないんだ」

「………そうだよね。あまりの可愛さに姉の名前を出して「お前は姉貴に惚れているんだろう? だったら俺の女になれよ。そうしたら義妹になれるぜ」とか言って無理矢理したんだよね?」

 

 そう返すとデュノア君は軽蔑の眼差しを織斑君に向けた。

 

「ち、ちげぇよ!! そんなことするか!! って言うか、それならそう言う瞬はどうなんだよ! 急にのほほんさんと仲良くなってさ!」

「え? そうなの?」

「ああ。それまで俺以外とはまともに話そうとしないし、必要な連絡を終えたらすぐに席に戻るだけだったんだ」

「だって必要ないしね。実際、君のお姉さんを含めて僕はまだ女は嫌いだし。本音さんが例外ってだけだよ」

 

 もし、仮に僕が告白されたら「死んでください」とか「身の程を弁えてください」とか言いそうだ。

 

「そうなんだ。じゃあ、もしかして2人は………」

「だよな。やっぱりそういう関係だよな」

「なお、織斑君は同棲していた篠ノ之さんに手を出していた模様」

 

 するとデュノア君は何故か殺意を帯び始める。

 

「どういうことなのかな、一夏?」

「ち、ちげぇよ!! 俺は箒とは何もないって!!」

「そういう反応をするってことは、もしかしてデュノア君は篠ノ之さんに一目惚れ?」

「ち、違うよ! そういうわけじゃないよ!!」

 

 ところで、さっきからこの話は篠ノ之さんに筒抜けだ。そしてそのすべては篠ノ之さんが怒る材料になり………あれ?

 

「どうして……こんなことになったんだ……」

 

 頭を抱える篠ノ之さん。どうやら彼女は悩んでいるらしいけど、僕は女性の悩みを聞くような紳士じゃないから織斑君にでも相談してもらいたい。

 なんて、男3人で話をしていると僕らの周りを移動する人たちが慌ただしくなっていくのを感じた。

 

 ―――第三アリーナで代表候補生3人が模擬戦やってるって!

 

 そんな言葉が僕の耳に届く。どうやらそれは織斑君とデュノア君も同じようで僕らは急いで第三アリーナに向かった。

 

 僕は途中で別れてピットの方に移動すると、ちょうど様子を見に来ていたのか、本音さんもいた。

 

「本音さん!」

「みーやん! ……どうしよう。2人が……」

「あれは放置で良いよ。でも、ボーデヴィッヒさんは―――」

 

 どうやらボーデヴィッヒさんは凰さんとオルコットさんから手痛い仕打ちをもらったらしく、煙の中にいるようだ。しかし彼女の機体のシグナルは未だに健在。それに驚いた凰さんとオルコットさんは驚いていた。

 

「終わりか? ならば―――私の番だ」

 

 そう言ってボーデヴィッヒさんは瞬時加速で2人に接近した。ほとんどダメージを受けていない彼女は容赦なく凰さんとオルコットさんをいたぶる。その時だった。

 

【甲龍並びにブルー・ティアーズが「操縦者生命危険域(デッドゾーン)」到達を確認】

 

 僕はそれを見た瞬間、隼鋼を展開して飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラウラにとって、摩訶不思議な状況が起こった。

 鈴音とセシリアを拘束していたシュヴァルツェア・レーゲンのワイヤーブレードが切断され、バランスを崩したのである。

 

「誰だ!?」

 

 ―――ダンッ!!

 

 激しい音がBピットカタパルトが聞こえたラウラはそちらに顔を向ける。そこには鈴音とセシリアを抱えた隼鋼を展開した状態の瞬がおり、かつてないほど冷たい目をラウラに向けた。

 

「貴様か………ちょうどいい。私の目的のために死ね!!」

 

 ラウラの瞬時加速。シュヴァルツェア・レーゲンの両手首からはプラズマ手刀が展開されているが、瞬は付き出される左手を掴んで回転して投げ飛ばした。

 

「素人が……舐めるな!!」

 

 再び瞬時加速。シュヴァルツェア・レーゲンが瞬の隼鋼に接近する。しかし瞬は恐れることなくその場で立つ。そして、一瞬でラウラの背後に回った瞬は手榴弾を爆発させた。

 ラウラは瞬の自爆覚悟の攻撃に驚きを露わにするが、経験豊富の軍人らしくすぐに切り替えてできる限り爆発の威力を相殺させて瞬時加速で隼鋼の懐に入った。

 

「遅い!!」

 

 距離を取ろうとした瞬。しかし既にAICを発動されたことで逃げることができずに大型レールカノンによって発射された砲弾をまともに腹部に食らった。

 絶対防御が発動した隼鋼はシールドエネルギーを大きく削られる。今ので瞬自身もダメージがあったのか、フラフラだ。

 

「馬鹿が! 素人が安易に出てくるからそうなる!!」

 

 勝ちを確信したラウラ。AICで瞬の動きを完全に止めたラウラはひたすら、ただひたすら八つ当たりも含めて瞬を殴り続けた。

 

 

 

 あの日、ラウラはキレそうになった。

 ラウラから見て瞬は影が少し薄い存在程度。専用機を手に入れたのも偶然でしかなく、その後の戦績も決していいものではない。そんな相手に自分が憧れる織斑千冬が認めていないとはいえ一夏にするならばまだ納得はできる。しかし瞬に対してあんな顔をするのが心から耐えられなかった。だから―――

 

(この場で、徹底的に叩く!!)

 

 先程の鈴音やセシリアのように容赦なく瞬を叩くラウラ。この時、もし彼女はちゃんと瞬の事を理解していればある疑問を浮かんでいただろう。

 

 ―――何故、まだ布仏本音が現れないかを

 

 

 

 

 

 観客がひたすら殴り続けられる瞬を見て歓喜する様を見て、ある者はまるで馬鹿にするように笑って投擲した。

 

 実はシュヴァルツェア・レーゲンに搭載されている第三世代兵器「アクティブ・イナーシャル・キャンセラー」は慣性を停止させることによってそのものの動きを封じたり衝撃によって生じるエネルギーを相殺するという特徴を持つが、実はそれはとある弱点を持っていた。それは、AICは1つしか停止させることができないということだ。

 

 ―――つまり、外部から妨害が行われた限り、今のラウラでは回避することしかできない

 

 もっとも飛来したそれは回避する隙すら与えず、一瞬で衝突して吹き飛ばされた。

 あまりのことに全員が何が起こったのか理解できず、呆然としてしまう。しかしそれは唐突に聞こえたこの場にいないはずの男の声によって解除された。

 

『茶番しゅーりょー! これにて閉幕~』

 

 歳は自分たちとあまり変わらないくらいであり、腕は細いが充分すぎるほど筋肉が付いた美すら感じる両腕。容姿はイケメンの部類に入るその男の声を聞いた瞬は―――殴られた影響か、はたまたその存在が誰かわかったからか、ともかく気絶した。




感想は、後程返させていただきます。
徹夜テンションで書き上げたぜ! ま、ただ書きたかったところの一つなんですけど……ちゃんと返すので書いてくださると嬉しいです。
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