Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.15 死に物狂いの成果

 学年別トーナメントはその名の通りトーナメント形式で、タッグマッチ式となっている。さらに試合を円滑に進めるためか、1年はIS学園にある5つのアリーナの内の3つを使用して、3ブロックのトーナメントを行うようだ。ただし2年と3年は1つずつ。これは1年生のみ全員矯正参加だからだろう。2年生から操縦科と整備科に分かれるからね。

 で、何故か僕は対戦相手に思いっきり睨まれている。

 

「現れたわね。とっととあの男の居場所を教えなさい!」

「………………誰の事? 織斑君なら第一アリーナだと思うけど」

「違うわよ! 舞崎静流のことよ!!」

 

 アイツ、絶対何か言って帰ったな。

 僕は心から息を吐く。全く、何をしてくれているんだ……。

 正直、静流の経歴を考えれば女ごときがって思う気持ちはわからなくもないけど、だからと言って僕に遺恨が残るようなことはしないでもらいたい。

 

「たぶん静流なら日本のどこかにいるんじゃない? でも止めておいた方が良いよ」

「ハァッ? まさかアンタもあの男が女より強いと思ってるの!?」

「むしろ静流より僕が動かしてくれて良かったって感謝するくらいだと思う」

 

 僕は基本的に無害だから。

 大体、僕の後ろ盾がまともにいないからって周りが僕を実験台にしようと企む奴らだ。静流にだって同じことをして、静流の場合はわざと捕まって、データとISを全て奪ってIS学園を強襲し、生徒を誘拐してひたすらサンドバッグとして殴るに決まってる。

 それほどまで強く、また鬼畜な男なのだから僕の方が良かったと泣くくらいだろう。

 

 試合開始の合図が鳴り、相手の2人は突っ込んで来た。

 

「死ね! このクズ男が!!」

「私たちの血肉になりなさい!!」

 

 僕はその間を通って反転。本音さんのところに戻って打鉄を装備した本音さんを抱っこしてカタパルト射出路の上に移動した。

 

「もう良いの?」

「うん。だって―――」

 

【試合終了。勝者、影宮瞬、布仏本音ペア】

 

「頸動脈を切ったら流石に死ぬでしょ? それを利用して絶対防御を発動させ、シールドエネルギーを削ったから。………流石に50回ずつ切ったら確実みたいだ」

 

 次もこの戦法で勝てるかな、なんて考えながら2人でピットに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(流石に、早すぎて唖然としているな)

 

 夜塚透の家は政治家と繋がりがあり、その縁を利用してIS学園に訪れていた。弟分である瞬の成長ぶりの再確認と、馬鹿をやっている奴らの観察だが彼にとって舐めていた奴らの慌てぶりの方が面白い。

 

(今頃評価を改めているだろうが、もう遅いっての)

 

 元々、瞬は決して弱いわけではない。だが瞬には透や静流とは違って残虐性―――すなわち、相手を倒すという確固たる意志が存在していない。というよりも、今まで必要としなかったのだ。

 だからこそ透は瞬に「布仏本音」という確かなものを与えた。瞬が変わる絶対的なものを。

 確かに布仏本音(ソレ)は瞬を守ろうとするだろう。しかし実際は逆なのだ。

 

(だからこそ、俺の目標としていた状況を簡単に打破していたが……)

 

 もっとも、瞬は流石に静流を倒すことは叶わなかった。しかし透にとってそれはどうでも良いことである。

 

(………にしても………)

 

 一夏と同じブロックにいる自分の知り合いの試合を見て、透はふと思った。

 

(………………相変わらず可愛いなぁ)

 

 その透の様子は、どこからどう見ても娘バカな父親のそれだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 試合が終わり、本音さんが「ちょっと別の試合見てくる」って言って離れたので僕は僕でリフレッシュすることにした。………もっとも、約一名物凄くウザいのが現れたけど。

 

「なぁ瞬! あれって一体どうやったんだ?!」

「………いや、別に」

 

 ただすれ違いざまに連続で切りつけただけだけどね。まぁ、僕もあれを誰だってこなせると思ってはいない。というか、思ったら可哀想だ。

 

「でも凄いよ、あれは。たぶん全IS対戦時間を下回ったんじゃないかな?」

「………そうなの?」

 

 正直、そんなこと気にしたことなかったからわからないや。

 

「俺たちも負けてられないな!」

「そうだね。僕らも次は新記録を目指して頑張ろ―――」

「大体、一騎打ちだったら静流がワンパンで倒してたから、あんまり感覚がわからないな………」

「「……………」」

 

 それに比べて僕はそれぞれ10回ぐらいは切っていたから、やっぱり強さは静流の方が上だろう。結局倒せなかったし。

 

「それにあれくらいなら誰だってできるよ。ただ頸動脈を切るだけだから」

「さらっと恐ろしいことを言うなよ!?」

「そうだよ! いくらなんでもそれはアウトだよ!!」

「何を言っているの、2人共。ISを装備している人は絶対防御が備わっているから例え殺す気で攻撃しても問題ないんだよ?」

 

 そう言うと、僕は自分に注がれた視線を感じる。意図してか、それともたまたまかわからない。でも、敵意ある視線。

 

「ごめん、2人共。ちょっと用事を思い出したから別行動するね」

「お、おう。後で一緒に飯を食おうぜ!」

 

 適当に手を振って僕は2人から距離を取る。そして、まだ感じる視線に向けて銃を撃った。

 同時に木を登っていつでも移動する体勢を取る。すると、誰かが逃げ始めるので僕も追おうとしたけど―――

 

「うわっ?!」

 

 そんな声が聞こえ、何か大きな音が聞こえた。

 

「………透さん?」

「―――よく見破ったな」

 

 別の場所の木から透さんが現れる。流石、と言うべきだろう。透さんは自らの身体能力の低さを補うためにISコアと同じサイズのエネルギー体を作り、自在に操る魔法使いになった。今のはおそらく「大地(アース)」の能力。

 ………ところで、静流と素で渡り合える人間を果たして「身体能力が低い」と言えるのだろうか?

 

「というか、摂理法則無視して一瞬で地面に穴を開けれるのって、あなたぐらいしかいませんし」

「否定はしない。で、一体何が目的で瞬に近付いた?」

 

 相手は女―――というより少女という言葉が合っているかもしれない。

 

「黙れ! 男風情が見下すな!!」

「ほう」

 

 透さんは地面を操作して穴を塞ぐ。塞いだのは入り口だけなので中には空気が残っているはずだけど、有限。つまり――――最悪死ぬ。

 

「ちょっ、止めてください透さん! 流石に死体はマズいですって!!」

「と言うと思って、ちゃんと考えておいた」

 

 そう言うと透さんは土で作った大きな手で少女を持ち上げ、どこかに連絡して思いっきり投げ飛ばした。距離にもよるけど、途中は「(ウィンド)」の能力で飛ばしているに違いない。

 

「………どこに放り投げたかは聞かない方が良いですか?」

「いずれ話すさ。それに今は試合に集中した方が良いしな」

「……心遣いは感謝しますけど…さっきの女性にはあまり変なことしない方が良いですよ。もしかしたら身内が―――」

「あの女はIS学園の全生徒の身内にはいないさ。5等親遡って覚えているからわかる」

 

 おおう……スペックが異常すぎて逆に笑いが出てくるぜ。

 

 

 

 

 結局、今日の試合は最初の1回戦だけだった。

 2人組になっているとはいえ、やっぱり人数が多いからそれなりに時間がかかるのだろう。明日からは試合時間が早い僕らは2回することになるだろうけど、それこそ静流との戦いを思い出せば軽いものだ。

 ………ホント、何故か廃車がプロ野球選手がボールを投げる速度で飛んでくるから、それに比べたら明らかにヌルゲーだろう。

 

「うみゅ~」

 

 眠いのか、本音さんが僕の服を掴んで離さない。それを見ていた先輩が微笑ましく僕を見てくるけど、どちらかと言えば妹みたいな感じがする。

 

「ホント、予想以上に懐かれているな。俺は精々ガス抜き程度に使えば良いと思ったが」

「さらりと凄いこと言いますよね」

「そういう環境に慣れちまったからなぁ」

「どんな環境にいたんですか………」

 

 ちょっと気になる………。

 聞こうかどうか迷っていると、透さんが先に「止めておけ」と言った。

 

「お前がまだ知るには早すぎる。知りたいならまずこの大会で優勝しろ。ISで強くなるという事は必然的に裏に関わる。お前が関わり、生き残るなら教えてやるよ」

 

 不敵な笑みを浮かべる先輩。この人は今年19歳になるはずなんだけど、その割にはどこか達観している感じがする、まぁ、この人の場合は家の事情がとても複雑だから仕方がないかもしれない。

 透さんの家の「夜塚」家は「朝間」という政治家一族の裏の人間……というよりも分家だったりする。

 かなり危ない橋を渡っている家でもあり、その家の人間の能力はとても高いらしい。

 

 ―――まぁ結局俺に勝てた奴はいないんだけどな

 

 と、僕が中学生の時に自慢げに話していた。

 ちなみに僕が中学生の時と言えば、この人が高校時代の時に「黒葉の魔王」という異名を轟かせていた。確か、この時から先輩の言う魔法を使うようになったっけ。

 …………おかしいな。それまでは確か素手で戦っていたような………。

 

(どっちにしろ……!?)

 

 僕は本音さんを退かして何らかの意思を感じた。どうやらそれはこちらに向けて移動している。透さんも同じように感じたようで立ち上がった。

 

「………どこのどいつだ?」

「さぁ……? でも、僕らに喧嘩を売ろうとしているのは確かですね」

 

 僕はナイフを、透さんは木刀を出す。今いるのは僕の部屋だから遠慮してくれているのかもしれない。

 ドアが思いっきり叩かれ、ドアの向こうから聞き覚えのある。声がした。

 

『開けなさい、影宮! そこにいるんでしょ!!』

 

 あ、透さんが笑みを浮かべてドアに近付いて行った。ま、あの人だから問題ないだろう。

 鍵を開けると、僕だと思った凰さんが思いっきりドアを開ける。

 

「ちょっと! アンタいつの間に帰って来たのよ!! って言うか帰って来たんだったら何か言いなさ―――」

「痛いじゃないか」

 

 突然現れた男に凰さんは驚きを隠せないようだ。

 

「誰よアンタ! どこから入って来たのよ!!」

「あまり無闇にISは展開しない方が良い。部分展開だとしても、な」

 

 いつの間にか凰さんの後ろに回り込んでいる透さん。彼女の後ろで銃を構えている。創造の能力かな?

 

「兵器を展開したという事は、すなわち相手を殺すという事だ。その覚悟は君にはあるかい?」

「早い……まさかこいつもISを―――」

「ただ強いだけだよ。この学園の誰よりも、ね」

 

 事実そうだ。そうじゃなければ、朝間家当主という座についてもおかしくないルートを放置するために不良校と名高い「黒葉高校」のボスの座に着いていない。

 

「ちょっと鈴さん、いくら会いたかったからって―――な、何ですのこれは?!」

「もう一人―――あ、この子は楽勝か」

「そして会った瞬間に罵倒されましたわ!?」

 

 ………もしかして、あの兵器のことかな? 透さんはISなくてあの武装を使うことができるから。

 

「くっ。どこのどなたか存じませんが、ここは生徒以外立ち入り禁止ですわよ!?」

「そうよそうよ! 部外者は出て行きなさいよ!!」

「………別に良いよ」

 

 そう言うと2人は驚いて僕の方を見た。

 

「どうせその人が本気出したら妨害システムとかないようなものだし、むしろIS出す前に全員串刺しとか当たり前だから下手に抗うより普通に入れておいた方が安全だよ」

 

 来た時も普通に入って来たから普通に接していたしね。

 

「でも生徒に出したらどうするのよ?!」

「大丈夫。この人は婚約者とその妹を手籠めにすることしか頭にないから。あ、セキュリティ云々は突っ込まない方が良いよ。この人にかかれば並大抵のものは普通に壊せるから」

「ま、当然だよ。所詮はゴミが総出になって組み上げたセキュリティ。俺が本気を出せばこれくらい10秒とかからない」

 

 ちなみにISを持っていないのは作る気がないというのもあるけど、「巨大メカの方がロマンあるだろ」ということらしい。

 

「ところでお前ら、一体何しに来たんだ? 瞬に文句があるって言うんだったら―――潰すぜ?」

 

 なんか急に戦闘状態に入っている人がいるんですけど………。

 

「やれるものならやってみなさいよ!!」

「………あの、鈴さん。わたくしたちはあの時のお礼を言いに来たのではなくて?」

「そ、そうよ。そうだけど………」

「………お礼?」

 

 僕、彼女たちに何かしたっけ?

 覚えがないので考えていると、オルコットさんが言ってくれた。

 

「あの、覚えていないのですか? ボーデヴィッヒさんからわたくしたちを助けてくださったではないですか」

「………え? そんなことしてないけど?」

「…………………はい?」

「…………あー」

 

 何か心当たりがあるそうな透さん。気まずそうな顔をして説明した。

 

「悪いな2人共。こいつ、ラウラ・ボーデヴィッヒみたいな女が嫌いでたぶん再起不能にしたかったんだよ」

「……うん。でもあそこじゃ意味がないって思ったから止めた」

 

 そう答えると2人は信じられないって感じに僕を見る。

 

「正直言って、ああいう風に他人に配慮できない女って嫌いなんだ。特に、ラウラ・ボーデヴィッヒみたいな女は―――全員精神的な苦痛を与えてから殺したいよ」

 

 ドロドロのグチャグチャにして、泣いて生きていることを後悔させてからにしたい。

 周りが引いているけど、僕は構わず自分の士気を上げた。

 

 

  その翌日から僕らは快進撃を続け、ブロック優勝を決めた。

 それから各ブロックの代表チームでくじ引きを行うことになった。最初の相手は―――ボーデヴィッヒと篠ノ之さんだった。




瞬のキャラが違う? たぶん気のせいだと思います……思います。
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