Silent-Nightmare of Second- 作:reizen
僕の実力が認められないという声はまだ大多数だ。
最初に見せた高速勝利以外は本音さんとの連携を重視した戦いにしたからかもしれない。
「本音さん、苦しい戦いになるかもしれないけどお願いね」
「うん。わかった」
予め打ち合わせをした通りに本音さんは動いてくれるようだ。本当に本音さんは頼りになる。
本当は撫でまわしておきたいけど周りの視線があるから今は我慢しておこう。
「行こうか、本音さん」
「うん」
僕は隼鋼を展開し、脚部装甲をカタパルトに接続させる。
発射先に障害物がないことを確認したのか、ハイパーセンサーに進路クリアと表示される。
「影宮瞬、隼鋼、行きます!!」
主人公がよく言う口頭を述べてフィールド内に入る。向こうもほとんど同じタイミングで現れた。
「ふん。よくも逃げ出さずに現れたものだ。おめおめとやられるに来るとは」
「それはこっちのセリフだよ。静流に手も足も出なかった雑魚が僕にどうやって勝つって?」
まさか、透さんの挑発術がこんなところで役立つなんて思わなかった。
「………貴様ぁ……停止結界に全く歯が立たなかった雑魚が!!」
「……あんな見え見えな結界に、わざとじゃなければ引っかかるわけないでしょうが」
「………何を馬鹿な。AICは使用者である私以外は見えないはず」
「知らないの? あれが展開されている間はその空間は微妙に歪んでいるんだよ」
「何!?」「そうなの?!」
何で他の方からそんな反応が出たんだろう。
『本音さん、実際そうやって見れないから』
『そうなの?!』
『僕は見える、そう言う事だよ』
最近気付いたけど、どうやら僕の目は良すぎるようだ。
いつからかはわからないけど、少なくとも小学生の時はそうじゃなかったはずだけど。
「良いだろう。ならば攻略して見せろ、そしてその上で貴様を完膚なきまでに叩きのめしてやる!!」
その言葉と共に試合開始の合図が鳴る。それと同時に僕は篠ノ之さんの方に向かった。
「逃げるな!!」
僕が移動したことによってボーデヴィッヒさんが僕を止めるためにAICを発動させる。だけど―――それを本音さんが阻んだ。
「あなたの相手は私だよ」
「邪魔をするな!」
その間に僕は篠ノ之さんの懐に入った。
「やはり私を先に潰しに来たか」
「後顧の憂いは立っておくのは戦いのセオリーだからね」
近接ブレード《葵》を展開し、僕に振り下ろした。でも―――僕にとってそのスピードは遅すぎる。
素早くナイフを展開してブレードを切り裂く。
「は!?」
「遅い」
右腕を素早く動かし、篠ノ之さんの急所を斬り刻む。
「何!?」
「反応しすぎだよ。これくらい―――常識だよ」
むしろ静流と戦うならこのスピードのあと10倍は欲しいところだ。
「まだだ、まだ終わらな―――」
「ごめん。終わりだ」
最後に首を斬り、絶対防御を発動させて篠ノ之さんを終わらせた。でも―――
「―――終わりだ!!」
僕は本音さんとボーデヴィッヒの間に入って攻撃を防いだ。
「みーやん!!」
「ふん。ゴミ掃除は終わったか」
「篠ノ之さんはまだマシな部類だよ。君たちみたいな屑とは違って―――ね!!」
プラズマ刃から距離を取って本音さんを回収して距離を取る。
「ありがとう、本音さん」
「いいよ~」
本音さんを離して僕はボーデヴィッヒを睨む。
「片方は虫の息。そして貴様も停止結界によりやられるだけだ」
「―――大丈夫だよ。最初から―――君は僕が潰すから」
大丈夫。静流を相手にした時みたいに―――集中すればいいんだから。
■■■
少年はただひたすらに無力だった。
目の前で知り合いが惨殺されてもただ隠れることしかできず、救急車を呼んで居場所を突き詰めるために尾行していたが、バレて袋叩きに合うだけだった。
「………んで……」
「はい?」
「何でこんなこと………平気でできるんですか………あの人たちは殺されるような人間じゃなかったのに………」
少年の言葉に笑いを溢す女性。それにつられて彼女の取り巻きも笑い始めた。
「冥途の土産に教えてあげるわ。あの人たちにはね、裏で稼いだ莫大な遺産があって、温泉も所持していたのよ。私たちが言い値で買い取ってあげるって言ったのに、あの老害ども、何度も断ったのよ。だから殺したの。それにどうせ騒ぐことしかできない老害なんだから生かしておいても無意味じゃない」
「…………害があるのは………あなたたちじゃないか!!」
渾身の叫び。少年は女たちを睨むが、それを見た女性は生意気と思い少年を蹴る。
その時だった。女性の一人が車にぶつかって下敷きになった。
「テメェら……どういう状況だこれは!!」
「瞬を返してもらうぞ、家畜共」
静流と透が現れた。静流は少年を―――瞬を助けようとした時、女性の一人が瞬を人質にとった。
「止まりなさい。このガキを殺すわよ」
「………チッ」
「わかっているな、静流」
「わかってるわ!!」
2人は殴られ続けた。
だがその余興も飽きたのか、女性らは2人を叩いて縛り上げる。そして―――
「もういいわ。死になさい」
リーダーの女性が瞬に銃を向ける。それを見た静流が暴れようとした。が、無慈悲にも引き金が引かれ、銃弾が瞬を貫く―――かと思われた。
しかし瞬は回避しており、銃弾が頬をかすめた。
「ふん。感が良いわね。でも―――もう死になさい」
もう一度、女性が瞬に銃口を向けた瞬間、女性の右目に小石が当たった。
「っつぅ……何するのよ!?」
「この男……死ね―――」
だが、女性たちが見た場所には瞬の姿はなかった。
―――ダンッ
さっきまで瞬を撃とうとしていた女性が倒れた。血が流れ、瞳孔が開いた状態で全く動かなくなっている。
さらに銃声が2回。今度は静流と透の近くにいた女性が倒れた。どちらも既に―――死んでいる。
「―――なんだ。やっぱり死ぬんだ」
消えたはずの瞬がいつの間にか銃を持っており、他の女性に対しても簡単に―――一切臆するなく銃を向け引き金を引いた。
次々と殺されていく女性たち。中には瞬を殺そうと躍起になったり静流や透を人質に取ろうとする人もいたが、瞬は躊躇いなく引き金を引き、間に合いそうになければ爪で頸動脈を的確に切った。
―――そして、女性が全員死んだ
(あれから3年、か)
透は少し懐かしく思っていた。
どうして瞬が豹変したのか、もうすべてを知っている透はただ瞬の成長を楽しんでいる。
(だがまぁ………もう既に3回目、か)
本当に透は瞬に本音をあてがってもそこまでの期待はしていなかった。精々、ガス抜き程度にしか期待していなかった。だが今では、少しでも触ろうと手を出した時点で容赦なく手を払うなんてことも珍しくなく、透は心から笑っていた。
「ここまで会心続きの2人目ですが、果たしてドイツの代表候補生に勝てますかねぇ?」
「どうでしょうか? さっきああ言ったとはいえ、ハッタリの可能性もありますから」
まるで「無理だと」思って観戦している周囲の人間に透はため息を吐いた。
「そうだと良いのですがね」
「何か言いたいことでも」
「ええ。やはり人間というものは実に愚かだと思いまして」
その言葉に何人かが眉を動かす。
「何が言いたい、若造」
「そんなに実験体として連れて行きたいなら、我々が手をこまねている内にとっとと誘拐しておけば良かったんですよ。もっともそんなことをすればあなた方の国は終焉を迎えることは必至ですが」
一人の護衛が透に敵意を向ける。しかし、どこからともなく現れた透の護衛らが武器を構えた。
「レア、アクア。下がれ。この程度の相手に一々出てくる必要はない」
「ですが、我々はあなたの護衛が任務ですので」
アクアがそう答えると透はため息を吐いた。
「本当は護衛なんてものは必要ないんだけどな。俺、強いから」
「否定はしません。ですが対面上、そういう配慮は必要ですので」
その言葉に透はため息を吐き、今度2人に3日ほど休みをやろうと思った。もちろん、静流も一緒である。
上で役員たちが会話をしている頃、瞬はラウラと戦っていた。
「ハエ風情がちょろちょろと……目障りだ!!」
瞬時加速で瞬が移動する先に移動してプラズマ刃を振り下ろす。同時にワイヤーブレードを射出して逃げ場所を少なくした。
足を止める瞬。しかしそれは一瞬のことですぐにチャフを巻きながら離脱する。しかも―――
「何よ、あの軌道は!?」
誰かが驚きの声を上げる。それもそのはず、瞬時加速をしながらアクロバティックな動きをして回避したのだから。さらに、着地と同時にラウラの視界から―――そして周囲の視線からも消えた。
「一体どこ行ったの!?」
「まさかステルス機能を使ったんじゃない……?」
「だったら反則よ! 今すぐ失格にしなさい!!」
だが、それは審判も担う管制室では却下された。管制室では厳重にイカサマが行われているか審査している。
しかしその管制室でも瞬の姿が確認されていないのはまた事実だった。だが―――
「………こんな……信じられません……」
まるでレーダーがバグでも起こしているのかと思うほどだった。
ラウラの機体「シュヴァルツェア・レーゲン」を中心に不規則に動く線。決まった場所を走らず、決まった形を取らずに動く。
「どこにいる! 出て来い、臆病も―――」
―――ドッ!!
ラウラの頬にISの脚部装甲がぶつかる。相手は女。一夏のように道徳をきちんと持っていればこんなことはしないだろう。だが―――
「遅いよ」
顔を上げるラウラに、瞬は容赦なく踏みつけ、離脱すると同時にガトリング砲を展開してラウラの顔に浴びせた。
「舐めるな!!」
AICを発動させたラウラだが、その場には既に瞬はいない。
「どこを見ている。敵はここだぞ」
「はっ―――」
ラウラの後ろに瞬が現れ、距離を取った。
「馬鹿が! 距離を取れば私の停止結界の餌食になると知らんのか!!」
「あるさ」
たった一歩の踏み込み。それで瞬は、ラウラの目の前に移動していた。
ラウラは咄嗟に防御する―――が、腹部までは防御が間に合わず膝蹴りを受けた。
―――カチッ
何かを踏んだ―――そう感じたラウラは上に飛ぶ。
地中からナイフが飛び出したがラウラは既に上に逃げている。
「馬鹿め。そんな見え見えの―――グアッ?!」
後頭部にハンマーによる重い一撃を食らったラウラ。だが彼女も伊達に軍人になってはいない。
痛みに耐えながら立ち上がり、瞬時加速で瞬に近付いた。
「死ね!!」
「遅い」
プラズマ手刀で瞬を攻撃しようとしたラウラ。しかし瞬がプラズマ刃を弾き、両腕が見えない速度で切りつけた。
「君の言う停止結界はオートバリアのような便利なものじゃない。君の集中力が必要なら―――対応できないほど切りつければいい」
その通りだった。ラウラは瞬の攻撃を防ぐだけだ。もっともそれは―――瞬がラウラの対応するレベルに合わせている。
「舐めるな!!」
そう叫びながらラウラは腕を出さずにAICを展開した。
今までは腕を突き出して動きを止めることしかできなかったラウラ。しかしここに来て声のみで止めるという成長は大きい。
今までなし得なかったことに興奮するラウラ。しかし―――すぐに瞬は動いて消えた。
「成長おめでとう。そして死ね」
そう言った瞬はラウラの眼前に現れた。
突然のことで理解が追いつかないラウラ。だが瞬は無慈悲にナイフを展開する。
「―――動脈、断斬」
1秒間に左右に25回切りつけた瞬。ブザーが鳴り響くと距離を離すためか、ラウラを蹴り飛ばした。
【試合終了。勝者、影宮瞬、布仏本音ペア】
瞬は着地すると息を吐いて言い放った。
「やっと決勝か………。面倒だなぁ」
本心からそう言った瞬は本音を回収するために踵を返した。すると、突然の絶叫にまた武器を構え直す。
「ああああああああッッ!!!」
彼女が見せる光景はあまりにも異常だった。
通常、ISがその形を変えるのは形態移行を行う時のみで、しかもどこぞの戦うヒロインのような感じに変体する。しかしシュヴァルツェア・レーゲンは一度スライムが形を保てずに溶けたような感じになり、また徐々に形を生成していった。
「な、何だあれは!?」
「………なんか、物凄くめんどくさそうな感じがする。本音さん、篠ノ之さんと一緒に逃げて」
「わかった」
頷いた本音は箒と一緒に近くのピットに上がろうとした時だった。急にカタパルト動いているのを感じた本音はそのまま動きを止める。
「この野郎ぉおおおおおおッ!!」
一夏が白式を纏った状態で変形したシュヴァルツェア・レーゲンに飛び込んで行ったのを見た本音、そして瞬は心から思った。
―――ああ、面倒だ、と
数分後、暴走したシュヴァルツェア・レーゲンは織斑一夏とシャルル・デュノアによって止められた。瞬も出ようと思えば出れたのだが、思いのほか隼鋼のエネルギーが消耗していたので後は任せたのである。
―――まさかこれがあのような事になる前兆だとは、この時は誰も思わなかった