Silent-Nightmare of Second- 作:reizen
学年別トーナメントが終了したことで打ち上げが行われた。
でも僕はあまり人混みは好きじゃないから少し離れたところにいた。
「一人がお好き?」
「………あなたは」
話しかけてきた相手に驚いた。何故ならその人は―――
「確か、ロシアの国家代表。更識楯無さんですよね?」
「あら、私の事を知ってくれているのね」
「世界を滅ぼすかもしれない存在の事は頭に入れる必要はありますからね」
一歩間違えれば世界が消滅することもあり得る存在だ。ま、滅ぼすのは透さんだけどね。
「せ……世界を滅ぼすって……確かにできなくもないけど」
「で、結婚はいつですか?」
「真顔で本気で聞かないともらえると嬉しいんだけど……」
まぁ例え相手がそうじゃなくても、透さんだからなぁ……。少なくとも、ロシアが余計な事をしなければ良いだけだ。
「それで何か用ですか?」
「そうね。今日は見に来た、というところかしら。それに聞きたいこともあるし」
「………本音さんのことですね」
「そうよ。で、実際のところどう思っているのかしら?」
近付いてくるので僕は自然と距離を取る。1歩、また1歩と相手は近付いてくるので、僕はそのたびに距離を開けた。
「どこに行くつもりかしら?」
「今日は退散しようかと。透さんに一緒にいられるのが見られたら殺されることは必須でしょうし」
「いや、流石にそれはないと思うけど………」
「―――そりゃあ、流石にお前は殺さねえって」
笑いながら透さんが現れたので、僕はその隙にその場から離れた。
■■■
(粋なことをしやがる)
瞬の気配が遠ざかったのを感じた透は笑みを浮かべ、楯無に近付いた。
「こら。ここじゃダメよ」
「ケーチ。全員潰せば良いじゃん」
「後処理にどれだけ時間がかかると思っているのよ。それに私、あまりそう言うのはしたくないのよ」
そう言うと透は周囲にバリアを展開させ、楯無にキスをした。しかし楯無はすぐに離し、透にチョップを入れる。
「スキャンダルを起こす気?」
「バリアは張っているから大丈夫。とはいえここでしゃれ込むつもりはないけど」
楯無から少し離れた透はジュースを飲む。
「それにしても随分と仕込んだのね。あの警戒心の高さ、織斑君やデュノア君とは違ってやりやすいわ………ちょっと警戒心が強すぎる気がするけど」
「元々、警戒心は強かったからな。強すぎたが故に本音には嫌な思いをさせてしまったが」
「今では想像を絶するほどにラブラブだものね。当の本人はそのつもりなさそうだけど」
「………まぁ、これまでの女が女だったからな。織斑千冬もかなり気にかけているみたいだが、ほとんど裏目に出ているようだし」
透は千冬の行動を否定する気はなかった。しかし千冬個人の経歴そのものが瞬の疑いの源そのものであるので嫌うのもまた納得できるのである。
「そんなに酷いの?」
「今の本当の保護者が女尊男卑で、これまで瞬を扱き使っていたからな。何度か俺や静流のところの養子縁組も勧めたが結局は拒否。当時は優し過ぎたんだよ」
―――変わったとしたら、あの事件か
静流の祖父母が殺された事件。目の前で殺され、さらには透や静流が痛めつけられたことで本性の片鱗を見せたあの事件以降からだ。瞬の本質が変わったことだ。
(それでもまだ……LEVEL3、か)
高いような低いような、そんな位置にいる瞬を心から心配する透。
「楯無、お前はそろそろ動くつもりなんだろうが、これだけは覚えておけ」
「何かしら?」
「織斑一夏と瞬は同等に扱うな。下手すれば―――IS学園自体が消滅する」
そしてその消滅させる者はもちろん―――瞬だ。
■■■
パーティもお開きとなり、僕は織斑君に教えてもらって大浴場に向かっていた。前々から広々とした風呂場で足を伸ばしてのんびりしたいと思っていたが、まさかこんなタイミングで入れるとは思っていない。というか、
(ウザかったんだよねぇ)
正直、大人たちが「私のところに来ないか」というオーラが凄かった。ウザかった。本当にウザかったんだ。
「あれならまだ織斑先生と話している方が大分マシだっての……」
心からそう思う。普段はお節介が過ぎる織斑先生だけど、今だけは本当に彼女の方がはるかにマシに思えた。
ともかく、僕が今優先するのは風呂に入る事だ。他のことなんて無視一択。本音さんには悪いけど、僕のリラックスのために犠牲になってもらおう………なんてできないから2人揃って出て来ているんでるけどね。
「じゃあ僕、大浴場に行って来るから」
そう言って僕は本音さんを部屋に置いて大浴場に向かった。既に織斑君が着いていて、僕が着いた時には山田先生から鍵をもらっていた。
僕も中に入ると、織斑君はよほど楽しみなのか先に風呂に入る。僕は僕で念には念をかけて仕込みをしてから入ると、
「まあ待てオチつけ。慌てるなんとかはもらいが少ないってな。まずは体を流してからだ。そう、体を流してからだ!」
「―――てい」
織斑君を蹴り飛ばして水風呂に入れた。
「な、何するんだよ! 体を急に冷やしたら病気とかできるんだぞ!!」
「ごめん。そこに入れば今君が言った言葉がどれだけ冷たいかわかるかなって」
「…………」
無言で出てくる織斑君。どうやら気持ちはわかってくれたらしい。
それから僕らは少し離れて体を洗い、それぞれ別々の場所に入ろうとすると、
「どこに行くんだよ、瞬。一緒に入ろうぜ」
「やはり織斑君のホモ説は正しかったようだね」
「ちょっと待て! 俺はホモじゃねえ!!」
「…………え? あ、うん。そうだね。ホモ斑君」
「だからホモじゃねえ!!」
いやだって、ねぇ。
「そう思われたくないなら誘わなければ良いじゃないか」
「……そ、それはそうだけど。やっぱり男同士語り合いたいことってあるじゃねえか!」
「で、実際織斑君は3人と寝て一体誰が好みだったの?」
「一体何の話だよ……」
そりゃあ、君が一体誰が好みだったのかという話以外あるわけないじゃないか。
「だって織斑君って、デュノア君が寝静まった後に3人の内の誰かを部屋に連れ込んでエロい事をしているんでしょ?」
「してねえよ!! って言うか、そういう瞬はどうなんだよ。のほほんさんと仲良いじゃん」
「流石に手は出していないよ。って言うかそもそも―――まず君のお姉さんを再起不能にするくらいの実力がなかったら無理だよ」
「………さ、再起不能って………」
「ま、あくまで例えだけどさ」
少なくとも、それくらいの実力があったら黙らせることはできるだろう。僕は静流や透みたいに殴って校舎をぶっ壊せるほどのパワーはない。実力を示すならISで、だろう。
幸い、隼鋼は僕が欲するマシンスペックはある程度は保有している。……本音を言えばブルー・ティアーズのようなBT兵器も欲しかったけど、単機であれだけ早い機体はほとんどないだろう。
………冷静に考えて、白式みたいにブレード一本とか僕には扱いきれないしね。
なんて思っていると、久々にリラックスできるからか僕は風呂に入った状態でボーっとしていた。
(そろそろ出よう)
外に出ようと思って先に上がり、ドアを開けると―――デュノア君がいた。
「……え? ……か、影宮……君?」
「デュノア君? 遅かったね。あ、僕はそろそろ出るから」
そう言って僕はデュノア君を躱して外に出た。
さっき全身見たけど、確かに女だった。それでも僕のアレが反応しないのは―――僕の環境が酷かったからだろう。特に、見た目クソ過ぎるゴミバ……もとい、叔母のパンツを畳んだ後に落としてしまい、それを目撃されて「それを使ったと言われた時は本当に―――殺意が湧いた。
(ま、本音さんがいる限りそんなことはここじゃ怒らないだろうけどさ)
………この時、まさか翌日になるなんて思わなかったけどさ。
「シャルロット・デュノアです。みなさん、改めてよろしくお願いします」
翌日、デュノア君…もとい、デュノアさんが転校してきた。
山田先生がかなり疲れた様子で入って来たから何かと思ったら、まさかである。
「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。ということです。はぁあ……また寮の部屋割りを組み立て直す作業が始まります………」
それくらいしろよ、教師なんだし。というか本来ならそれって織斑先生の仕事なんじゃ……。
まぁ織斑先生は向いてない指揮官とかしないといけないから、そのサポートとして山田先生が入って来たのだったりして。ま、頑張れ山田先生。それにどうせ僕らは関係ないから、適当に入れれば良いんじゃない?
「え? デュノア君って女………?」
「おかしいと思った! 美少年じゃなくて美少女だったわけね」
「……って、織斑君、同室だから知らないってことは―――」
「ちょっと待って! 昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」
その言葉で何故か僕の方に視線が向けられる。織斑君も一緒に入っていたのだから、彼にも向けるべきだろう。
―――と、思った瞬間のことだった
ドアが思いっきり開かれた。そんな開け方をすればドアが壊れるっての。たまに本音さんが愚痴っているんだから少しは大人しく―――なんて考えている場合じゃなかった。
現れた凰さんが織斑君の名前を叫びながらISを展開させたのだ。
「死ね!!!」
僕はすぐに本音さんの前に立って大型のシールドを展開する。衝撃波から本音さんを守るためだ。
襲って来る衝撃波は意外と小さかった……というかほとんどなかった。
(……ボーデヴィッヒ?)
どうやら機体は修復されているようで、彼女も全装甲を展開している………と思ったら右肩にあるはずの大型レールカノンがない。どうやら彼女がAICで相殺させたようだ。
「た、助かったぜ。サンキュ……っていうかISもう直ったのか? すげえな」
「コアは辛うじて無事だったからな。つい昨日、予備パーツで組み直した」
「へー。そうなん―――むぐっ!?」
ボーデヴィッヒと織斑君がキスをした。
一体どういう心境の変化だろうか。つい最近まで「織斑一夏ぶっ殺す!!」と某自分以外のセイバー殺すヒロインの如く織斑君を目の敵にしていたのに。
というか、織斑君は織斑君でいくら何でも警戒心無さ過ぎだと思う。流石は姉の加護で生かされている男だ。
なんて考えていると、ボーデヴィッヒはとてもズレていることを言った。
「お、お前は私の嫁にする! 決定事項だ! 異論は認めん!」
「………嫁? 婿じゃなくて?」
外国人特有のオタクワード勘違い降臨とか誰得ですかね。
「日本では気に入った相手を「嫁にする」というのが一般的な習わしだと聞いた。故に、お前を私の嫁にする」
とりあえずあのガキに間違った知識吹き込んだ奴は頭がおかしいと思っておこう。
「―――アンタねええええッ!!!」
キレた凰さん。そして彼女は何故か衝撃砲の砲口を開かせた。
「待て! 俺は悪くない! どちらかというと被害者サイドだ!」
「アンタが悪いに決まってんでしょうが! 全部! 絶対! アンタが悪い!!!」
それに関しては否定しない。
というか、痴話喧嘩でISを持ち出すな。ここにはまだ一般人が―――
―――ビシュンッ!!
僕はレーザーが凰さんの魔の手から逃れようとした織斑君の前を通るのを見てしまった。
頭を抱える。大丈夫かこの人たちは。
「ああら、一夏さん? どこかにおでかけですか? わたくし、実はどうしてもお話しなくてはならないことがありまして、ええ、突然ですが急を要しますの。おほほほほ………」
「その前にオルコットさん、凰さんも! 今すぐISを解除しろ!」
けど2人は聞く耳持たず、織斑君を攻撃する。織斑君がこっちに来るものだから僕まで巻き添えだ。
本音さんを守っていると今度は篠ノ之さんが普通に抜刀していた。いや、何で彼女は日本刀を持ってるの!?
「………一夏、貴様どういうつもりか説明してもらおうか」
「待て待て待て! 説明を求めたいのは俺の方で―――おわっ!?」
「篠ノ之さんも今すぐ納刀しろ!!」
案の定話を聞かないし! もういい!
ともかく今は動けない本音さんを安全な場所に避難させないと。今はそれが先決だ。……って言うかクラスメイト達はどうしてクラスメイトを放置して逃げてるの!?
本音さんには悪いけど素早く教室の外に出る。とりあえず4組辺りに逃げて僕はこの事態をどうにかしないと。
(デュノア君と織斑君が合流してる!? しめた!)
おっと、デュノアさんだっけ。
ともかくデュノアさんは男装していたことを除けばまだ良識人のはず。だったら―――
「一夏って、他の女の子の前でキスしちゃうんだ。僕、びっくりしたなぁ」
―――ああ、なるほど。
確かに女ごときを優遇することは大きな間違いなのかもしれない。ましてや、高が勘違いや下らない出来事でこんな騒ぎを起こす奴らを優遇するなんて気が狂っているとしか思えない。
僕は隼鋼のマイク機能をIS学園の全スピーカーに接続して―――本音をぶちまけた。
「大体、凰鈴音みたいな胸が全くなくて可愛げのない女に一体誰が腰を振るというのか。セシリア・オルコットみたいな勘違いした自称エリートのクソワロスに寄る男なんて精々体目当てでしょ。ああ、大層な胸を持っている癖に男一人落とせない篠ノ之箒みたいなド短気な上にカマトトぶった文字通りメス豚とか、男が入浴しているにも関わらずに堂々と入ってくるシャルロット・デュノアとか言うクソビッチとかいる時点でIS学園に所属する女子生徒が如何に発情しているかよくわかるよね。ほんっと、よくこんなので「男より女の方が強い」とか言えたよねぇ。どうせ年がら年中男の上で腰振っている癖にさぁ」
さて、種は巻いた。後は―――ありとあらゆるメシマズたちが作ったレシピたちの出番だ。
■■■
その日、IS学園は休校になった。生徒のほとんどが倒れ、医療棟に運ばれたからである。もちろんそのほとんどは瞬が挑発したことで怒りを露わにし、襲い掛かった者たちだ。そのせいか、非番の医師たちも出払うことになり医療棟は少しばかりパニックになった。中には山田真耶も含め教員も気絶しているのだから仕方ないだろう。
瞬は本来処分される存在だったが、そもそもの発端が発端故に処分は保留となった。
ちなみに本音もまたこの放送を聞いていたが彼女は「この程度で済んで良かった」と安堵していたようだ。
なお、鬱憤を晴らされたとある男子は「三途の川を見た」と述べた。
一夏「セシリアの料理が可愛く思えた」
ヒント:激辛や豆腐などの防壁などを無効化するとあるピンク髪の悪魔よりかはマシだった様子。つまり瞬は―――とてつもなく切れていた。
良い子も悪い子も絶対にマネしないでください。