Silent-Nightmare of Second- 作:reizen
実際、ゲームって面白いのでしょうかね? 今度帰省するのでSwith版を買おうかどうか迷ってる。
突然、その会場に笑いが沸き起こる。
その場でその発表を聞いていた誰もが笑っていた。高が15歳の娘が一体何を言っているのかと。
嘲笑の嵐に発表者の少女が悔しそうに下唇を噛む。
―――パンッパンッパンッパンッパンッ
誰かが遮るように手を叩く。全員がその場に視線を移すと、40代以上が集まる学会の中で比較的若く落ち着いた雰囲気の男性が拍手していたのだ。
「おいおい。まさか君はあの出鱈目なものに関心を持ったとでも言うのかね」
「こらこら。冗談が過ぎるぞ。あんなものは所詮夢物語だろうに」
「ええ。確かに関心を持つのに値しないものでしょう。あまりに飛躍的すぎて再現できないその技術力は所詮は机上の空論に過ぎません。今回の発表で良くなかったものは―――想像力が乏しく頭の固い学者を語る者たちの前で発表したことでしょう」
さらりと出た罵倒に会場全体が凍る。しかしその男性は構わず言葉を続けた。
「おい君、あまり調子に乗らない方が良い。立場を危うくしたいのか?」
「そのつもりはありませんが、しかしあなた方の頭が固くなっているという点は否定のしようがないと思われますが。まだその証明を済んでいないのにも関わらず、否定から入るとは学者にあるまじき行為でしょうに」
男性は壇上に上がり、発表者である少女の前に膝を付いて手を差し伸べた。
「どうか、君の開発したコアを一つ分けていただけませか、篠ノ之博士」
「………いや……でも………」
「ああ。心配する必要はありません。もし信じられないのなら、私のラボに来てください。私が発表する予定の論文を一つを渡しましょう」
その言葉に会場内が騒ぎになった。
ふと、目を開けた少女―――いや、女性は自分が涙を流していることに気付く。
どうやらさっきまで見ていた夢が原因かもしれない。もっとも夢というよりそれは女性の記憶だが。
(久々に見たよ、あの記憶)
彼女にとって思い出深いものであり、初めて親友以外に認められた瞬間だったのだ。
だがその男性はもういない。自分が起こしたとある事件以降に、死亡していたことを知ったのだ。
『君は本当に、優秀だな』
世辞でも恐怖でもなく、心からの言葉に柄にもなく舞い上がったのは今では懐かしいことだ。
そう、彼女らしくもないことをしているととても珍妙な着メロ……というよりも、とあるシーンだけを抽出した音が彼女の携帯電話から流れる。
その着信音に珍しく落ち着いた反応をしたその女性は、そのテンションは一体どこから来ているのかと聞きたくなるほどに上げた。
「やあやあやあ! 久しぶりだねぇ! ずっとずぅううううっと、待ってたよ!」
『………………ね……姉さん』
「うんうん。用件はわかってるよ。欲しいんだよね? 箒ちゃんの専用機が。モチロン用意してあるよ。
だが束は知らない。今この時点ですでにこと機動力に置いて紅椿すら上回るだけで化け物級の機体を。
そしてそれも当然のことだった。その機体の操縦者は意図的にそう報告していたのだから。
■■■
7月の主だった行事と言えば校外学習だ。3日間の内、何故か1日目に丸々自由時間があって、クラスメイト達はそのことで話の華を咲かせているけど………。
(非常に面倒だな……)
僕は文字通り休むことにしよう。身体を休ませることもまたトレーニングの一環だしね。
そろそろ起床時間ということもあって寮内には薄着の女子たちが溢れかえっているけど、こればかりはどうにかならないかなといつも思う。そう言えば、本音さんは何故かいつも長袖なんだけど、熱中症とか大丈夫なのだろうか?
(まぁ、そういうのは人それぞれ何だけど……あれ?)
篠ノ之さんがドアを開けて中に入る。そこが自分の部屋ならわかるけど、何故か1025室―――つまり、織斑君の部屋だ。
今、彼は僕とは違って1人部屋だ。学年別トーナメントが終わってからまだ僕と織斑君が同居していないことに誰かが抗議したという話だけど、誰が少し触れれば弾け飛ぶ火薬庫なんかに詰め込まれたいのかという話だ。たぶん、織斑君と同居したら部屋の周囲にトラップは必須だろう。なんて思っていると―――
「一夏ぁっ! なな、何をしているかこの軟弱者っ!」
また騒ぎが起こったようだ。
織斑先生に今度僕らを一緒の部屋に押し込める人が現れたら僕を呼んでもらうように言おう。というか、先にその女性を部屋に住まわせるべきだと思う。たぶんその人の死体が出来上がっているから。
とりあえず僕は織斑君の部屋の中に入ると、篠ノ之さんが竹刀を構えていたが動けないようだった。ボーデヴィッヒさんがAICを展開しているし、彼女が止めたのだろう。……何故か事後を彷彿とさせるけど聞かないでおく。
「ふう、助かった……。ん? ラウラ、眼帯外したのか?」
「確かにかつて私はこの目を嫌っていたが、今はそうでもない」
「ほう、そうなのか。それは何よりだ」
「―――ラブコメする前にさっさと一人に決めろよ」
ゴミを見るような目で織斑君を見る。そしてボーデヴィッヒさんも見られているわけじゃないのに、前に凰さんに目の前で毒物を入れたことでかなり怖がらせてしまったようだ。
ちなみにボーデヴィッヒさんを「さん付け」で呼んでいるのは、少しは改心したみたいだし僕にもちゃんと謝ったから。その時の理由が何故か「織斑先生が好いていることに嫉妬した」とか言っていたけど、気のせいじゃないかな?
「って、瞬!? 何でここに?!」
「篠ノ之さんが普通に君の部屋に入って行ったからさ。また下らない問題でも起こる前に未然に防ごうと思ってね」
4月からずっと何らかの問題が起きれば本音さんは苦労しながら帰ってきていたし。僕はもっと本音さんと一緒にいたいから。
「下らないとは何だ! これはどう見ても犯罪だろう!」
「それに関しては否定しない」
「は、犯罪って俺は何も―――」
「そうだ。それに夫婦水入らずのところに入ってくるのは無粋だぞ」
「………わからない人が見ればロリにエロいことを仕込んだ結果、朝から催促される風にしか見えないけどね」
「…………そうだな」
僕と篠ノ之さんが織斑君に対して軽蔑の眼差しを向けた。
「ち、違う! 俺はそんなことしてな――パシャッ――ちょっ!? 何やってんだよ瞬!?」
「篠ノ之さん、コレをネットでアップしたら間違いなくアウトだよね?」
「そうだな。世界が一夏の性癖に引いて嫌われるだろうな。そうだ。いっそのことアップして周りから貶される一夏もいいかもしれないな。そうすればいずれ私だけが味方に………フフフ……フフフ……」
どうやらかなり色々と溜め込んでいたようで、篠ノ之さんの裏面が表に出始めていた。うん。僕は知らなーい。
あの後、汗をシャワーで流してから僕は教室に向かった。最近色々と忙しかったのかよく眠る本音さんを起こして教室で食べさせる。
「はい、あーん」
「あーん」
寝惚けながらもきゅもきゅと噛む本音さんに癒されながら、僕もパンを食べる。周りが僕らを見て何とも言えない顔をするけど。可愛いよね。寝惚けながら食べる姿可愛いよね? あれ? 僕だけ?
食べ終わったら当然歯磨き。廊下にある水道で済ませてから教室に戻ると、少し早いけど織斑先生が既に来ていた。でもまぁ、少し時間があるし問題はない。
「……………」
「どうかしましたか、織斑先生」
「いや、仲がいいなと思ってな」
それが一体何か問題なのだろうか?
ともかく僕らは先に教室に戻ると、ISの風を切る音が聞こえてきた。
「到着っ!」
「おう、ご苦労なことだ」
……何をしているのだろうか、あの二人は。
まぁ実行犯はデュノアさんだけなんだけどね。というか、
「本学園はISの操縦者育成のために設立された教育機関だ。そのためどこの国にも属さず、故にあらゆる外敵権力の影響を受けない。がしかし敷地内でも許可されていないIS展開を禁止されている。意味はわかるな?」
「は、はい……。すみません……」
なのでISの使用は普通に禁止されている。これで女性が強いとか言うのだから何とも言えない。
「デュノアと織斑は放課後教室を掃除しておけ。次は反省文提出と特別教育室での生活をさせるのでそのつもりでな」
「「はい……」」
ちなみにこの学校は放課後に教室はもちろん廊下を掃除するという概念はないようだ。普通の学校なら当たり前だけど、その分の時間をIS操縦に時間を当てろということらしい。
「今日は通常授業の日だったな。IS学園生とはいえお前たちも扱いは高校生だ。赤点など取ってくれるなよ」
…………大丈夫だ。テスト日が近くなったらまた先輩に教えてもらえば良いだけだ。
この学校は一般教科も存在する。ただし、IS学園には日本人だけでなく他の国からも来ているので「英語」という教科ではなく「第二言語」は存在する。僕はもちろん英語―――と思われていたけど選んだのはドイツ語だ。だって英語は昔みっちりと鍛えられたから。
そしてこの学園の嫌なところは中間テストというものがない。期末テストにその期間中に習ったところが出てくるのだから範囲はまさしく鬼畜だ。
「それと、来週から始まる校外学習実習期間だが、全員忘れ物などするなよ。三日間だけだが学園を離れることになる。自由時間では羽目を外し過ぎないように」
それができない人がいるから本音さんみたいに苦労する人がいるんですよね………。
最近、一緒のベッドで寝たがるし抱き着いてくるけど、その分苦労していることはわかっているからするがままにしている。甘えたいお年頃なのかもしれない。
「ではSHRを終わる。各人、今日もしっかりと勉学に励めよ」
「あの、織斑先生。今日は山田先生はお休みですか?」
「ああ、山田先生は校外実習の現地視察に行っているので今日は不在だ。なので山田先生の仕事は私が今日一日代わりに担当する」
「ええっ、山ちゃん一足先に海に行っているんですか!? いいなぁ!」
「ずるい! 私にも一声かけてくれればいいのに!」
「あー、泳いでるのかなー。泳いでるんだろうなー」
「………もしかして、ナンパされてお持ち帰りされてもう学校に来なかったりして」
と小さく呟いたつもりだけど、どうやらクラスにはハッキリ届いていたらしい。
「な、なんてこと言うのよ! そんなことあるわけないじゃない!」
「それに前にやまやはセシリアや凰さんを圧倒してたのよ!? そんなことあるわけ―――」
「……………織斑先生以外にIS無くても強い女の人がいるのか最近疑問だけどね。この前の騒動の時に他の人はさっさと逃げちゃうし、山田先生は教卓に引っ込んで震えているだけだし………それに―――」
僕は毒物を見せながら言った。
「結局、ISを着けててもこれには無力だったし」
毒々しいものを見て、僕の被害に遭った人たちはふらついた。もっともこれはホログラムなんだけどね。
「織斑先生、さっき2人に随分と生温いことをしていましたけど、これを直接食わせるというのもアリだと思うんですが………」
「…………それもそうだな。今度からそれを借りることにしよう」
そう宣言させられたことは僕にとっても嬉しいことだった。ま、食らった人たちは震えていたけどね。
数日経って日曜日。僕らは買い物に行こうとしている………けど、いるのは僕だけだ。
本当だったら本音さんが一緒に来るはずなんだけど、本人の希望で別々に行きたいという話になった。
(………普通にスルーしたけど、何であんなこと言ったんだろ?)
そして何故か知らないけど、生徒会長が本音さんを迎えに来ていたし。一体何が起こっているのだろうか?
ともかく僕は目的地に移動する他はない。まぁ僕は先に出たからモノレールで来た以上は僕が先に着くけど。
(何かの漫画で「男が先に待つもの」ってあったし………間違いはない)
うん。たぶん間違いじゃない。そう思って僕は柱に持たれて指定された場所で待っていると私服姿の織斑君とデュノアさんが前を通った。僕も私服だから向こうは全然気づいていないみたいだ。………ま、手を繋いでいるのは見なかったことにし―――あ、うん。たぶん学校に帰ったら織斑君は死ぬかもしれない。英中コンビが尾行しているから。
(見かけたらどっちも牽制しておかないと)
ま、そもそも好きだと言うだけでだからと言って独占権があるわけがないのに、一体何を勘違いしているのだろうかという話だ。それは透さんにも言えるけど、あの人の場合は一歩間違えれば世界が終わるから言わない。
幸い、毒物はすぐに作れるから最悪夜に呑ませて24時間苦しんで臨海学校欠席もアリだ。
どのタイミングで仕掛けようかと思っていると、駅の方に見覚えのある顔がした女の子が囲まれていた。―――って、あれは………
「ねぇ彼女、俺たちとどっか行かない? 良いところ知ってるんだ」
「ごめんなさい。私、人と待ち合わせをしてて―――」
「それって女? だったらその子も一緒に―――」
「本音さん」
素早く移動して見知らぬ男たちと本音さんの間に入る。
「あ……みーやん」
「ごめんね。今度から一緒に行こっか」
「あ、後ろ―――」
知ってる。
迫ってきている拳を躱して腕を点いて麻痺させた。
「っつう…テメェ、痛えじゃねえか」
「慰謝料出せよ。なんだったら代わりにその女の子でも良いぜ」
僕は本音さんを引き寄せて抱きかかえ、男の人たちをバク転で回避する。
「ごめん、本音さん。少し下がってて」
「うん」
僕を追いかけてくる男の人たちの前に移動した僕は彼らの前で軽く手を叩く。するとその場にいた半径5m以内の人たちが全員その場で倒れた。
「じゃ、行こ」
「うん。……ところで今のは?」
「猫だまし……って言いたいけど、本当は違うんだ。静流と戦いで身に着けた一種の防御技」
技名を敢えて言うならば、柏麻痺。一定の範囲内に入っている人たちを一時的に麻痺させる技だ。たぶん、ISを出すよりもマシだろう。
……ちなみに、この技は僕だからこの程度で済んでいるけど、透さんや静流がしたらただじゃ済まない。
僕はできるだけ早く本音さんから離れる。それにしても………白いワンピースに緑のシャツの取り合わせはちょっと良いと思ってしまった。