Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.2 ラッキースケベはありえない

「それでは、この時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 織斑先生が教壇に立ってそう説明する。今は3限目であり、その前2限は山田先生が担当していて授業はほとんど勉強していない僕でも理解できたほどだ。中学の頃は結構酷い人に当たったから、こういう人がしてくれると本当に嬉しい。

 

「……そうだ。その前に再来週行われるクラス対抗戦に出るクラス代表を選ばないとな」

 

 クラス代表? もしかしてそれは委員長とかの古い言い方だろうか?

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦に出場することもあるが、生徒会の開く会議や委員会への出席が主な仕事になる。ちなみにクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大して差はないが、何よりも競争は向上心を生むため実施されることがある。それとクラス代表者は一度決まると一年間変更がないからそのつもりで」

 

 まるで釘を刺すように織斑先生は言ったけど、周りは聞いていないみたいで誰にするかと話を続ける。

 ……でも、代表者を選ぶのにどうして「クラス対抗戦」なんだろう? そのことに疑問を感じて僕はずっと考えていると、女子の1人が挙手して意見を言っていた。

 

「はいっ。織斑君を推薦します!」

「私もそれが良いと思います!」

 

 どうやら織斑君は自分が選ばれているようだ。さっきから頷いているということはかなりやる気があるらしい。となればちゃんと勉強しないとね。

 

「では候補者は織斑一夏。他にいないのか? 自薦他薦は問わないぞ」

「―――って、「織斑」って俺のことかよ?!」

 

 君以外に「織斑」は織斑先生くらいしかいませんよ?

 大体、一体何で「自分じゃない」と思ったのだろうか。これは非オタの僕でもわかるくらい簡単な話だと言うのに。

 

「織斑、席に着け、邪魔だ。さて、他にいないのか? いないなら無投票当選だぞ」

 

 やったね織斑君。これなら君のクラス代表は確実だよ。ちなみに僕は流石に何の知識もない状態で代表になりたいとかは思わない。こういうのはカリスマ性がある奴がなるべきだ。

 

「ちょっと待った! 俺はそんなのやらな―――」

「自薦他薦は問わないと言った。他薦された者に私が納得できるような理由を言え」

「やりたくないです!」

「却下だ」

 

 横暴にも程があるけど、チャンスはちゃんと作ってくれていることは評価するところかな。

 

「くそっ。……だったら、だったら俺は瞬を推薦する!」

 

 フフフ。甘いな織斑君。この僕がクラス代表に選ばれるわけがないだろう。

 そもそも君が選出された理由は、「イケメン」だからさ。君は知らないだろう。僕の特殊能力を。

 

「………えっと、影宮君……?」

「あー……うん……」

「いや、正直ないわー」

 

 それは、周りの罵倒に耐えられることだ。なお、気にならないわけじゃないからそこを注意してもらいたい! 僕だって泣くんだからね!

 

「待ってください! 納得が行きませんわ!」

 

 机を両手で叩いて立ち上がるオルコットさん。少し話を逸らさせてもらうと、それって痛くないの? 普通に立とうよ。

 

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年も味わえと仰るのですか!?」

 

 ………それは中学時代にやる男子がいないからって影が薄いから女子が仕切りやすいってことさせられた僕に対する嫌味だろうか。

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!!」

 

 一応、僕らって同じ人間種だと思うんだけど。僕の勘違いだったかなぁ?

 もしかして、彼女は実は女尊男卑思考に加えて白人至上主義だったりするの? 嫌だなぁ、それ。

 ………ところでイギリスって島国じゃなかったかな? あ、もしかして橋で繋がっているから厳密では島国ではないってパターン?

 

「良いですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

 まぁ、それは否定しない。あそこまで言うという事は彼女も自分の腕には自信があるんだろう。まぁ、頑張れ?

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

 ボクシングで例えると、オルコットさんがジャブを連続で出している間に隙を見つけた織斑君がオルコットさんにスカイアッパーした感じだった。

 

「あっ、あっ、あなたねえ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

「先にしたのはそっちじゃねえか!! おい瞬! お前も何か言ってやれ!!」

 

 って、どうして僕?

 唐突に振られた僕は驚いたけど、深呼吸してから言った。

 

「オルコットさん、1つあなたに言いたいことがある」

「あら、何ですの?」

「織斑君はあくまで日本人だけど、織斑君だけが特別遅れているだけで日本の文化は進んでいるんだよ!! 日本人が織斑君みたいな人しかいなかったら、今頃代表候補生や代表なんていないよ!!」

「ちょっと待て! それじゃあまるで俺だけが悪いみたいじゃないか!!」

「…………代表候補生すら知らない人とその他大勢が同列扱いされるのはちょっと……」

 

 たぶん、聡明な子どもは5歳ぐらいの時点で知っている気がする。

 

「………確かにな。影宮の言う通りだ。オルコット、何を基準にして言っているのか知らんが、そもそもお前は日本に戦争を吹っ掛けでもしているのか?」

「……そ、そんなことをするわけが―――」

「お前のこれまでの発言はそれそのものだった気がするがな?」

 

 言われてオルコットさんは現状に気付いたらしい。

 後から知ったんだけど、国家代表もしくはその候補生はあくまで「国の代表」として見られているらしく、発言の1つ1つがその国の言葉として扱われることがある。とはいえIS学園にいる間はあくまでの「勉強の場」としてそれなりの措置が取られるけど、もしこれが学外なら間違いなく問題が発展するだろう。

 

「…………それは……その……」

「まぁいい。さっきまでの発言はあくまで感情が昂ったあまりとして報告しておくが以後気を付けるように」

「はい………」

 

 そう言われてオルコットさんは大人しくなった。あーうん。わからなくもない。正直怖いよね。試験の時も「これくらいできて当然だと」とか言われたし。あの人はもしかして僕らの心を折りに来ているのかなって感じる。

 でもこれで、推薦者が2人に立候補者が1人。まぁ、僕は積極的に参加する気はないから後はどうぞって感じだ。

 

「とはいえ、これ以上はお互いが納得しないだろう。よって今回のことは「クラス代表決定戦」とし、来週の月曜の午後8時から試合を執り行う。織斑にオルコット、そして影宮は準備しておくように」

「………え? 僕もですか?」

「そうだ。理由はともあれお前も推薦された身だ。よって出場する義務がある」

 

 それ、放棄できないかなぁ。僕はまだ戦う気なんてさらさらないんだけど………。うん。言ってみよう。

 

「辞退します」

「ダメだ。義務を果たせ」

「えー………じゃあ、オルコットさんにハンデを負ってもらうしか……」

 

 そう言うと織斑君とオルコットさんからそれぞれ驚きと喜びが飛んできた。

 

「何でだよ瞬! むしろこっちがハンデを負う側だろ!?」

「影宮さんはどうやら理解しているようですわね。しかし織斑さん、あなた方ハンデを負うとは一体どういうことですか?」

「え? だって……女の子に対して戦うってわけにはいかないし……」

 

 すると教室内に突然として笑いが上がった。

 

「お、織斑君、それ本気で言ってるの!?」

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

「織斑君は、それは確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎだよ~」

 

 …………言えない。僕の親友とか先輩がこの教室を軽く吹き飛ばせるとか言えない。

 でも確かに、女性がISを使用すれば男なんて逃げ惑うだけの獲物となってしまう。先輩だったら華麗に弾丸の如く論破しそうだけど、僕にはそのスキルはない。

 

(………一度黒葉高校が勉強しやすい環境になったって聞いて見学に行ったけど、物凄い変わり様だったもんね)

 

 基本的に服装は制服を一部着用しておけばOK―――そんな緩い校風で髪型も大体の統一性はないものの、全員が式の時はビシッとしていて、整列する時は背筋を伸ばして直立不動をしていた時は本気で驚いた。一体何をしたのだろうか………そう言えば、先輩は女生徒にモテてたけど、一部は「私をペットにしてください」と懇願に土下座までしている人がいたからよほど恐怖を味わったのだろう。正直、その気持ちは本気で理解できる。

 

「………じゃあ、ハンデはいい」

 

 織斑君がそう答える。でもハンデは負ってもらっておいた方が良いんだ。

 

「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろわたくしが影宮さんのようにハンデを負わなくて良いのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の殿方はジョークセンスがあるようですわね」

 

 よし、口にチャックだ。彼女らが恐怖を味わうかどうかはわからないからね。

 

「ねー、織斑君。今からでも遅くないよ? オルコットさんに言って、ハンデ負ってもらったら?」

「男が一度言い出したことを覆せるか。ハンデは無くていい」

「えー? それは代表候補生を舐め過ぎだよ。それとも、知らないの?」

 

 織斑君が女生徒とそんな会話をしているけど、確かに僕らは何も知らない。でも、あの2人レベルだと思って置けば良いだろう。人外じゃないのに人間を辞めている2人なら普通にISも倒せそうだし。

 

「さて、話はまとまったな。ではこれより授業を始める。………ただし、余計な私語によって削られた時間分の延長をするので覚悟しておくように」

 

 そんな処刑申告をされた僕らは悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく授業が終わり、放課後。僕は少しだけ頭を冷やしていた。

 

「うう……」

 

 前の方では織斑君がうめき声を上げている。その様子を見ていた女生徒の一部が「介抱してあげようかしら」とか言っているのが聞こえたけど、なんだかエロ展開に発展しそうだなって思った。

 本来なら僕らは家に帰るなり、ここは寮があるのでそっちに戻ったりするけれど、僕はこれまで政府が用意したホテルで暮らしていて今日からは寮に移る。そのためこうして鍵が来るので待っているのだ。

 

「お待たせしました、織斑君、影宮君」

 

 どうやら到着したようなので、僕らは教卓に移動した。

 

「えっとですね、寮の部屋が決まりました」

「じゃあ鍵ください。もう今日は帰って寝ます」

 

 初日なのに物凄く疲れたんだけど、

 

「すみません。実は説明も残っていまして……」

「………わかりました」

 

 大人しく説明を聞くことにする。そうした方が早く寝れそうだ。

 

「ん? でも俺の部屋って決まっていないんじゃなかったですか? 前に聞いた話だと、1週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」

「そうなんですけど、事情が事情なので無理矢理変更したんです。織斑君はその辺りの事って政府から聞いています?」

 

 多分これ、僕がISを動かしたことが原因だよね? 僕自身驚いているからあまり言わないでほしいな。

 

「でも、荷物は家に帰らないと準備できないですし、今日はもう帰って良いですか?」

「あ、いえ、荷物なら織斑先生が今取りに行っています」

「…………え?」

 

 青い顔をした織斑君。そして素早く電話をかける。

 

「あ、千冬姉? 食材は1週間分残ってるんだけど―――」

 

 どうやら織斑家の家事事情は織斑君が仕切っているらしい。となると織斑先生はあまり料理しないのだろうか。確か3年くらい前にモンド・グロッソの決勝戦を棄権したってニュースがあったから、その時は国家代表なんだっけ? 彼はどれくらい前から料理しているんだろ。

 電話を終わらせた織斑君はこっちに戻ってきた。

 

「じゃあ、時間を見て部屋に向かってくださいね。夕食は6時から8時。寮の中にある食堂で取ることができます。あと、部屋にはシャワールームがありますが、別個に大浴場もあります。学年ごとに使える時間は違いますけど、その、今のところ2人は使用することができません」

「え? 何でですか?」

「時間をずらせば入りますよね?」

 

 僕はお風呂が好きだ。1日の疲れを落としてくれるのはまさしく至福である。

 

「そ、その時間調整がまだ………」

「……わかりました」

 

 仕方ない。しばらくはシャワーで我慢するか。

 僕らは鍵を受け取って寮に戻ると、そこで問題が発生する。

 

「あれ? 織斑君なにしてるの? 不法侵入して女の子を襲うの?」

「そんなことしねえよ!? それよりも瞬こそどこ行くんだよ」

「え? 部屋はもっと向こうでしょ?」

「ここだろ?」

 

 怪しいと思った僕らはお互いに鍵を見せあう。………あれ?

 

「番号が違う?」

「もしかして、俺たちだけ個室じゃないのか?」

「なるほど。それはあるかもしれないね」

 

 という話になったので、僕はそこで織斑君と別れて自分の部屋に向かう。

 ともかく疲れた僕は部屋の番号と鍵が合っていることを確認して、ドアを開けて中に入る。荷物は既に運び込まれているって話だから荷物整理の必要があるけど、それは明日で良いかな……明日も疲れてそうだけど。

 にしても、何か温かいな。もしかして部屋に入ると自動的に何かが起こる仕掛けになって……いるのでは……。

 

「「…………」」

 

 僕らはお互い黙り込む。視線の先には肌色と日本人には珍しいピンクに近い茶髪をしたロングヘアーの女の子がいた。

 

「……………」

 

 僕は一度冷静になって部屋の外に出て番号を確認する。……うん。確かに番号は間違いない。

 つまり、ここでたどり着く結論は………1つだけだ。

 

「おやすみなさい」

「え? 待って!? リアクションなし!?」

 

 何故なら僕は主役じゃない。だからラッキースケベなんて発動するわけじゃない。つまりこれは―――僕の思春期騒動が暴走した結果の夢だ。

 そう思った僕は荷物を放ってベッドにダイブ。そのまま眠りにつくのだった。




ラッキースケベは不可抗力なので責められる謂れはないって言うのは間違いではないと思った。
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