Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.22 ごちそうさまでした

 日が沈んだこともあって僕らは旅館に戻り、一度風呂に入って宴会場で食事をしていた。何故かこの旅館では浴衣姿を強要されたけど、下にはいつでも動けるようにISスーツを着ている。

 隣には本音さんが座っていて、逆には誰にもいない。みんな僕に気を遣ってくれているみたいだ。

 

「―――あー、うまい。しかもこのわさび、本わさじゃないか。すげぇな、おい。高校生のメシじゃねえぞ」

 

 向こうでは織斑君が騒いでいる。当初彼は僕と一緒に座ろうとしていたけど、それはクラスメイト全員から却下された。

 

「みーやん、何見てるの~?」

「ちょっと昼に妙な気配があったから、僕らがいない間に誰かが来たかなって思ってね」

「そうなの? 私は何も感じなかったよ?」

「仕方ないよ。たぶん5㎞ぐらいは離れていたから」

「…………何でわかるの?」

 

 戦慄されながら聞かれる。何かおかしなことを言ったかな?

 

「直接的な視線っていうのかな? IS学園にいたらよく殺意を持たれていたから」

「……………やっぱ本格的に何人か再起不能にした方が良いかな」

 

 ぼそりと呟く本音さん。僕はもちろん、隣にいる人たちも聞こえたようで彼女たちは泣きそうになっていた。

 

「大丈夫だよ、本音さん。その時は僕が敵を全員潰すから」

(((まだ結婚していないのに似た者夫婦だ………)))

 

 周囲の意識が合致した気がする。

 

「でも今は問題ないかな。敵意を向けてきた人間もいないみたいだし」

「そっか。じゃあ今日は安心して眠れるね」

 

 2人で笑っていると、急に襖が開いて織斑先生が怒鳴った。

 

「お前たちは静かに食事することができんのか!!」

 

 織斑君の周りにいた生徒たちはもちろん、僕らの周囲にいた人たちは凍り付いた。僕はそこから飛び出すように移動して織斑先生の背後を取ってしまった。

 

「急に何ですか?」

「……影宮か。すまない、驚かせてしまったようだな………すまんが、武器はしまってくれ」

 

 言われた通り僕は武器をしまう。

 

「どうにも、体力があり余っているようだな。よかろう。それでは今から砂浜をランニングしてこい。距離は……そうだな。50㎞もあれば十分だろう」

「いえいえいえ! とんでもないです! 大人しく食事をします!」

 

 そう言いながら織斑君の周りに集まっていた生徒は座っていく。全く何をしているのだが。

 

「たまに思うんだけど、IS学園にいる生徒って本当に自分たちがどんな価値を持っているか理解していないよね。ああいう生徒はイケメンを宛がわれたらコロッと行くから容易に誘拐できるし」

「そうだよね~。もう少し警戒心とか持ってくれたら楽なんだけどね~」

 

 僕と本音さんはうんうんと頷く。どうやら本音さんも同じことを思っているようだ。やっぱり本音さんとは色々と気が合う。だからこそ大事にしたいと思う。

 

「あ、本音さん。口に醤油が付いてるよ」

「とって、とって~」

「はいはい」

 

 口を差し出す本音さんの口元を拭く。ああ、もう。可愛いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本音さん目当てなのか、彼女の友人が何人か部屋に来た。

 僕は軽く運動をしてから風呂に入り、ゆっくりしていると奇妙な場面に出くわすことになった。

 

(………何やってるんだろ?)

 

 篠ノ之さんと凰さん、それにオルコットさんまでドアに耳を当てている。確かこの部屋は―――織斑姉弟の部屋だったはずだ。そんなところで聞き耳を立てるのは自殺行為じゃないかな?

 案の定、しばらくすると織斑先生が現れてドアで攻撃し、凰さんと篠ノ之さんの首を掴み、オルコットさんは浴衣の裾を踏まれて倒される。そして、僕に気付いた織斑先生は今気付いたという風に僕の方を見る。

 

「まぁ、何だ。お前も一緒にどうだ? 話もあるしな」

「……………」

「そう訝しむな。何もつるし上げて聞こうというわけじゃない」

「………内容によっては斬りますが?」

「受けてたとう」

 

 一瞬、織斑先生から殺気が流れた気がした。

 どうせ部屋に帰っても本音さんはクラスメイトと一緒にいるだろうから、少し付き合うことにした。

 

「そうだ。篠ノ之、凰、お前らはボーデヴィッヒとデュノアを呼んで来い」

 

 2人は返事をして他の2人を探しに行く。

 

「あ、それで思い出したんですが、この前織斑君がボーデヴィッヒの服を剥いて夜這いさせていたんですが」

「…………ほう?」

「ちょっと待て瞬! アレは誤解だ!!」

「い、一体どういうことですか一夏さん!?」

 

 詰め寄るオルコットさんを意外なことに止めたのは織斑先生だった。

 

「落ち着けオルコット。おそらくだが、ボーデヴィッヒが変な知識を仕入れて暴走したんだろう。昔からそういうところがあったからな。………仮に影宮の言う通りだったら、私は弟の教育方針を変えなくてはいけないがな」

 

 織斑先生に睨まれて怯む織斑君。僕は慣れないといけない環境だったから普通に立っていられた。

 なお、静流は止まっている相手にも容赦なく殴る。気に入らなければ半殺しとか普通だ。骨は半分も折らないけどね。残念ながら織斑先生が勝てるビジョンが見えない。

 

「ところで、話って何ですか?」

「ああ、少し待て………それよりも、お前は窓の方を見ておけ」

 

 言われた僕は大人しく窓の方を見ておく。殺気とかくればすぐに反応して切り返せば良いだけだとナイフを持つ。さっきから織斑君がオルコットさんにマッサージしているけど、それと何か関係あるのだろうか?

 

「おー、マセガキめ。しかし歳不相応の下着だな。それに黒か」

「え………きゃああああッ!?」

 

 悲鳴を上げるオルコットさん。僕は意図を察して顔を戻すとオルコットさんが顔を赤くして立っている。

 

「せ、せっ、先生!! 離して下さい!!」

「……やれやれ。教師の前で淫行を期待するなよ、15歳」

「い、い、いっ、インコっ……!?」

「冗談だ。……おい、聞き耳を立ててる4人、そろそろ入って来い」

 

 ドアがゆっくりと開く。4人が何かを想像して顔を赤くいる。

 

「一夏、マッサージはもう良いだろう。ほれ、全員好きなところに座れ」

 

 言われて僕は少し離れたところでいつでも立てるように座る。

 

「ふー。流石に2人連続ですると汗かくな」

「手を抜かないからだ。まぁ、お前はもう一度風呂にでも行ってこい。部屋を汗臭くされては困る」

「ん。そうする」

 

 着替えを持った織斑君はそのまま部屋を去る。どうやら僕がここに残ることに関して違和感はないらしい。

 そんなことを考えていたけど、誰も何も発しない。見かねた織斑先生が口を開いた。

 

「おいおい、葬式か通夜か? いつものバカ騒ぎはどうした」

「い、いえ、その………」

「お、織斑先生とこうして話すのは、ええと……」

「は、初めてですし……」

 

 僕と織斑先生は少し呆れた。織斑君が他の女子生徒と仲良くなっているだけで武器を出す人たちが何を恐れているというのだろうか?

 

「まったく、しょうがないな。私が飲み物をおごってやろう。篠ノ之、何がいい?」

 

 だけど篠ノ之さんは何も言わないどころかいきなり名前を呼ばれて驚いていた。織斑先生は備え付けの冷蔵庫を開けて清涼飲料を6人分取り出して渡す。

 

「ほれ。ラムネとオレンジとスポーツドリンクにコーヒー、後は紅茶とコーラか。他のが良い奴は勝手に交換しろ」

 

 とはいえ、受け取った者に誰も何も言わないのでそのまま状況が進んでいく。僕も敢えて開ける振りと飲む振りをすると、織斑先生はニヤニヤした。

 

「飲んだな?」

「は、はい?」

「そりゃ……飲みましたけど……」

「な、何か入っていましたの?」

「失礼なことをいうな、馬鹿め。なに、ちょっとした口封じだ」

 

 織斑先生は新しく冷蔵庫から缶ビール。それを開けるとそのまま飲み始めた。

 

「ふむ。本当なら一夏に一品作らせるところなんだが、それは我慢するか」

「まぁ、調理器具を使うのは面倒ですからね。旅館の店で売っているものは流石にマズいですし。ところで良かったんですか?」

「何がだ? それに口封じは―――!?」

 

 織斑先生が驚いて僕を見る。そう、僕はまだ飲んでいない。

 

「飲め。今すぐ飲んでくれ」

「正直、喉は乾いていないんですよね。なのでコーラはお返しします。って言うか別に勤務中でもビールを飲むくらい構わないでしょ。織斑先生はいつでも出れるように拳銃を装備していてなおかつ真剣を手に届く場所に隠しているようですし」

「…………目ざといな」

「立場柄ですね。主に友人のせいでトラブル事がよくあったので」

 

 そう言うと同情的な視線を向けられた。

 

「まぁいい。……そろそろ肝心な話をするか」

 

 肝心な話、か。何か嫌な予感がしてきた。

 

「ところでお前ら5人は一体アイツのどこが良いんだ?」

 

 アイツとは、織斑君のことだろう。

 

「わ、私は別に………以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」

「アタシは腐れ縁なだけだし……」

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです」

 

 篠ノ之さん、凰さん、オルコットさんの順番でそれぞれ言っていく。完全に言葉を間違えたとも言える。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう」

「「「言わなくていいです!!」」」

 

 わかっている癖に意地悪な人だな。

 

「僕……あ、あの、私は………優しいところです」

「ほう。しかしなぁ、アイツは誰にでも優しいぞ」

「………そうですね。そこがちょっと悔しいかなぁ」

 

 嫉妬の視線をデュノアさんに向ける、織斑君に文句を言っていた3名。少し自重しろ。

 

「で、お前は?」

「つ、強いところが……でしょうか………」

「いや、弱いだろ」

「IS単位ではともかく、織斑君程度だったらいるよ。下手すれば織斑先生相手でも太刀打ちって言うか……殺せる人間」

「ほう、それは楽しみだな」

「あ、織斑先生。そいつ相手だと織斑先生が携行している武器なら普通に弾いたり切ったり返したりするような人間ですから意味ないですよ。刀だってもしかしたら普通に折る可能性が高いです」

 

 間合いに入って普通に折る未来しか見えない。

 

「………もしかして、そいつはあの―――」

「うん。舞崎静流」

「………前々から気になっていたんだけど、一体どういう関係なの?」

「幼馴染みたいなものだよ」

 

 そう答えると、みんなは納得したみたいだ。ただ一人、さっきからうずうずしている人がいるけど。

 

「それは良い。それよりも影宮、布仏とは今どれだけ進んだんだ? バスの中では抱き合って寝ていたが?」

「え? 嘘!?」

「本当だ。1組全員がそれを確認している」

 

 凰さんに篠ノ之さんが言うと、信じられないという顔を向けてきた。

 

「まぁ、本音さんだけは特別だよ。あの子は前に僕の事を守ってくれたから。他の人達が逃げていく中でね。だから彼女だけは信用しているし絶対に守るつもり。正直、僕は織斑君じゃないから他の生徒が殺されようが誘拐されて男に犯されようがどうでも良い。ここにいる君たちがそんな状況になっても動く気はない。自分の身は自分で守ってくれ」

「………それって家族も?」

 

 デュノアさんの言葉に頷いた。

 

「勘違いされているようだから言っておくけど、今の世の中で幸せな家庭なんてものはかなり珍しいよ。僕なんてIS適性があるってわかってからすぐに家族に売られたから。たまたま近くにいたのが静流と黒葉の魔王だから良かったけどね」

 

 あの2人だったらISを出されても逃げているだろうし……実際、生き残っているし。

 

「え? アンタ、あの「黒葉の魔王」とも知り合いなの!?」

「一体貴様の周りはどうなっているんだ!?」

 

 流石に国外には2人の偉業は知らされていないのか、2人が説明すると織斑先生を含めた4人が信じられないと言わんばかりに僕を見た。

 

「まぁ、ちょっと色々あってさ。あの人にはよくしてもらってるよ」

「…………って言うか、はっきり言ってイメージが湧かないんだけど。「舞崎静流」って言ったら親すらも病院送りにする悪魔で、「黒葉の魔王」は校舎破壊なんて意に介さない無慈悲な男でしょ?」

「………プライベートだから詳しくは言わないけど、静流に関しては両親の自業自得。むしろ元々野蛮ってわけじゃないから子どもが友達とはしゃいでぶつかったからって怒らないし、面倒見が良いから絆創膏とか貼って返したりするし、「魔王」は始まりは女の嫉妬だって。体力付けるために買った新しい自転車を壊された犯人をあらゆる方法で言い逃れできないように証拠を提示して暴走したところでかなりの数が反撃してきたので仕方なく使ったって話だしね。………というか、本人の前であまりそういうこと言わないでね。本人はあくまで自衛として戦っているだけに過ぎないから」

 

 まぁ、静流の場合は本気で強者を探しているから、完全に無害だとは言えないけど……。

 

「………仮に、仮にだ。もしその2人がお前と敵対した場合はどうする?」

「戦いますよ。その理由が本音さんで、世界のために殺さないといけないってことになっても………僕は本音さん以上に大切な存在を知らないから………」

 

 何とも言えない顔で僕を見る女性陣。? 僕、何かおかしなことを言ったかな?

 

「「「ごちそうさまでした」」」

「……何か奢ったっけ?」

 

 わけがわからないけど、話はそれだけで良かったのかしばらくしてから解散になった。




ちなみに、静流が祖父母の元にいたのは「Twin/Face」通りです。
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