Silent-Nightmare of Second- 作:reizen
基本素組+マーカーなので仕方ないかもしれませんが。
一夏が福音に斬りかかる。福音はまた刃の数㎜を回避した―――が、瞬がライフルで攻撃してダメージを食らわせる。箒はふと瞬の方を見ると、狙撃にはかなり無理な体勢で撃っていた。
瞬の援護があってから一夏は攻撃を当てることができている。しかしそれは最初だけであり、徐々に学習を始めた福音は綺麗に回避を始めた。
瞬は一度攻撃を止める。そしてまた一つ拍を置いて攻撃をしようとした時、ちょうど一夏の攻撃が大振りになった。福音はその隙を突いて銀翼を大きく開いて前に着き出す。
「回避しろ!!」
瞬の叫びに一夏と箒はすぐにその場から離れる。すると光を帯びた砲弾が次々と発射された。
「こんなの聞いてないぞ!?」
「僕の時は離脱を優先にしていたみたいだね―――あと」
「あと、何だ?」
「織斑君の攻撃が単調過ぎる」
やはりブレード1本という欠点は大きすぎる。もっとも今はそんなことを言ったところでどうにかなるわけでもない。
「箒、左右から同時に攻めるぞ。左は頼んだ!」
一夏からの命令に箒は頷いた。
瞬は福音の下に回って射撃を行う。射線に人が入ろうとした瞬間に銃を引き、被害を出さないためだ。
さらに言えば、福音の動きがさらに回避に特化し始めたことが原因だろう。遠距離射撃の練度が低い瞬は絶対的なタイミングでしか引き金を引かないことにしていた。
「一夏! 私が動きを止める!!」
「わかった!」
箒がそう言うと二刀流で突撃と斬撃を交互に繰り出していく。
紅椿の最大の特徴は「展開装甲」というものだ。機体の各所にはそれが備わっており、箒の動きに合わせて自動で装甲が援護するものとなっている。
流石は篠ノ之束と言うべきだろう。機体は箒の動きに合わせて装甲が展開され、射撃が追加で斬撃したりと福音に確実にダメージを与えている。
それを見ていた瞬はふとハイパーセンサーから送られた情報を読み取った。
(………船? 何でこんなところに……?)
不審に思った瞬は本部に通信回線を開いた。
「織斑先生、戦闘区域に船が侵入しました?」
『……福音は2人に任せてお前は船を止めろ』
「わかりました」
福音から離れた瞬はすぐに船に近付く。そして船に対して警告を発した。
「ここでは戦闘を行っています。至急離脱してください。繰り返します。この区域で戦闘が行われています。至急離脱して………」
瞬は途中で警告を発するのを止める。脳で隼鋼に指示を送ると、生命反応がいくつかあり、船の操縦がオートになっていること、そしてこの船が「密漁船」だと返答を得た瞬は切断しようと刀を展開する。そこで―――すぐに船の前に出てシールドを張って光弾を防いだ。
(……考えてみれば守る必要なかったな)
そして船を両断しようと刀のあるスイッチを入れたところで―――
「何をするつもりだ、瞬!!」
瞬の様子に気付いた一夏は福音から目を離した。
「何をしているんだ、一夏!!」
今度は箒が一夏に対して怒鳴る。瞬もそのつもりだったが、それよりも福音の挙動がおかしいと感じた瞬はすぐに2人の前に割って入りシールドで防ぐ。
しかし元々は1機分を守るためのもの。完全に防ぐことなどできない。何発かが船へと向かって行く。その弾にいち早く反応したのは一夏だった。
「うおおおっ!!」
瞬時加速と零落白夜の同時使用。しかもそれを最大出力で使用し、瞬が防ぎきれなかった光弾をすべて消した。
「な、何をしている!? 今影宮が囮になっているところで仕掛けていれば勝機が―――」
「船がいるんだ! 海上は先生たちが封鎖したはずなのに―――ああくそっ、密漁船か!」
瞬はナイフを思いっきり回転させた後に福音の方に飛ばす。福音は光弾を放つのを止めて回避し、その隙に瞬は《シュヴェルト・ゲヴェール》を展開し、移動しながら光弾を福音に撃った。
「馬鹿者! 犯罪者などを庇って……。そんな奴らは―――」
「箒!!」
2人は周囲が叫んでいるのにも関わらずに自分の世界に入った。
「箒、そんな……そんな寂しいことを言うな。言うなよ。力を手にしたら、弱い奴の事が見えなくなるなんて……どうしたんだよ、箒。らしくない。全然らしくないぜ」
「わ……私は……」
箒は紅椿の装備である《雨月》と《空裂》を無意識に離し、手で顔を覆う。落とされた2本の武装は空中で粒子になって消えたことで一夏はある結論にたどり着いた。同時に―――上空から光弾が降り注ぐ。
「箒ぃいいいいッ!!」
一夏は箒を守るために最後の瞬時加速を行い、箒の前に出る。箒に当たる筈の光弾はすべて一夏に当たった。
福音が放つ光弾は着弾すると爆発するタイプのモノだ。それを諸に受けた一夏はそのまま箒に寄りかかり、その影響か2人はそのまま海へと落下する。
その様子を瞬は見下すように観察していた。
「な、何してんのよアイツ!」
一夏と箒が落ちたというのに動こうとしない瞬。それを助けようとせずただ眺めているだけだった。もっとも、視線は一夏たちの方へと向けているだけで周囲を警戒していないわけではない。
福音は瞬に対して攻撃を仕掛けた。それを見た本音と千冬をすぐに回避をしようと指示するが、いつの間にか瞬は―――福音の背後でビームを放っていた。
その流れ弾が密漁船に直撃する。その付近には一夏たちが沈んだ場所でもある―――が、瞬は構わない。
「ちょっ!? あの角度って一夏たちに当たるんじゃ―――」
「こ、攻撃を止めてください、影宮君!! その角度は織斑君たちに当たります!!」
真耶はすぐに零司に攻撃を中止するように呼び掛ける。しかし瞬は攻撃の手を緩めなかった。
「影宮、すぐに攻撃を中止して織斑たちを確保して離脱しろ!」
普通ではありえない行動に唖然としてしまった千冬は我に返るとすぐに命令を送る。
『………ゴミ2人の回収は山田先生とか他の教師にでもやらせてください』
「何?」
そこで千冬は理解した。瞬は今、福音を一夏たちから離していることに。
「おい影宮!?」
『つくづく思うんですよね。どうして僕がISを動かしちゃったんだろって』
そう言いながらも瞬は攻撃の手を緩めない。確実に福音を一夏たちから引き離していく。
『おっと、忘れてた』
瞬は巨大な剣を展開するとそれを密漁船の方に敢えて回転数を上げて投げた。
船は切断され、船体は2つに割れる。
『早くしてください。誰かわかりませんが船に潜んでいたみたいなので下手すれば織斑君らが回収されますよ』
「ならば何故船を攻撃したんですの!?」
『―――うるさいよ』
痺れを切らした瞬。ライフルからフルオートの銃に切り替えて展開し、自分が得意とするクロスレンジに持ち込もうとした瞬間、福音は
『…………逃げた?』
まさか逃げられると思っていなかった瞬は呆然とする。
少ししてため息を漏らし、瞬は一夏と箒を連れて離脱した。
瞬が離脱して少しした後、1人の少女が浜辺に現れる。
その少女はぼろ着を肌に纏っており、破片でところどころ切っていて血が流れている。
「……タス……ケテ……」
彼女は密入国者だ。あの船は確かに密漁船ではあるが、釣っていたのは行き場を無くした少女や年若い女性たちである。その少女もお金を稼ぐために非合法に海を渡ってきたが、ISの戦闘に巻き込まれてこうして近くの島に流れ着いたというわけである。
元々栄養失調だという事もあり、ボロボロな身体をこれ以上を動かすことはできないようだ。
だが、そのタイミングで一人の少年が現れた。
「…………はぁ」
その少年は心からため息を溢してその少女をかつぐ。
「瞬の奴、容赦なさすぎだろ」
少年―――静流はその少女が瞬の顔を見ていないことを心から願った。
■■■
任務から戻った僕は落ち込んでいる篠ノ之さんとは違い、ノビノビとリラックスしていた。
「…………」
まぁ、そんなわけなかったけどさ。
報告書を書いていて、改めて自分の入力スピードの遅さにため息を吐く。静流は気が乗ると手加減することを忘れてキーボードを壊していて、制御装置を着けていた事を思い出して笑っていると、誰かが近付いてきたことを感じて警戒態勢を取った。
近付いてくるのは4人。相手が誰かという事は把握したけど僕は構わず武器を構える。あの子はいないことは既に把握しているから躊躇う必要もない。
「影宮、話があるわ」
そう言いながらドアを開ける凰さん。どうやら彼女には確認するという常識が備わっていないらしい。
「何かな?」
なるべく冷静を装って対応するけど、彼女が言いたいことはなんとなくわかった。
「どうしてあの時、一夏たちを危険な目に遭わせたの?」
「危険な目?」
「一夏たちが倒れたのに、福音と戦った時のことよ!!」
その事か。というか仮にも代表候補生なんだからわかっているだろうに。
だけど僕の予想を反して、軍人であるボーデヴィッヒさんを含めてここにいる4人はどうしてかわかっていないらしい。
「どうでもよかったから」
言葉を選ぶ必要性を感じなかった。
僕にとって織斑君の生死なんてどうでもいい。むしろ今回の戦犯は織斑一夏だと断言できる。
僕は怪しいから切った。法律的に殺人は犯罪ではあるけど、仮に一般の船だとしても偽装させれて妨害でもされたら面倒なことになる。仮に男の中に女性に対して良い感情を持っていない誰かが福音にウイルスを仕込んで暴走させたという線も考えられないわけじゃないからだ。
空想の世界でしかないと笑われるだろうけど、少なくとも僕は1人だけやろうと思えばできる人を知っている。
「ど、どうでもいいって………本気で仰ってますの!?」
「いくら何でもあんまりだよ!」
「…………それ、本気で言ってる?」
どう考えても代表候補生にあるまじき言葉だ。
確かに被害は最小限の方が良い。でも今回出たのは素人の集団でさらに言えば僕とて倒されてもおかしくはない状況だったといえる。そんな状況で見捨てると言う選択肢は必ずしもなしというわけではない。
そして何より僕がイラついたのは―――
「今回の事は彼にとっていい教訓になったはずだ。弱いくせに全員を助けるという下らない思想を振りまいた結果の自滅さ。そんな馬鹿が死ぬって言うんだったら僕は笑ってやるよ」
「―――!!」
繰り出されるのは小さな平手だった。普通だったら早く見えるはずのその平手は何故かゆっくり進んだため、僕は
「僕は言ったはずだよ。君たちが死んだところで何も感じないって」
正しくは違うが似たようなことは言ったはずだ。
メンヘラ? ヤンデレ? サイコパス? それがどうした。ならば一度本当の女尊男卑を味わってみるがいいさ。織斑一夏がああいう行動に出れるのは、姉の庇護下にあったからそう言う状況にいなかっただけに過ぎない。
「………狂ってるわよ、アンタ。いくら何でもこんな簡単にナイフを出すなんて―――」
「狂っているのはこの世界であり、始まりはバカな大人やオルコットさんみたいな女さ。それに僕の立場を考えればこれくらいの装備は当たり前なんだよ」
織斑君や僕は基本的に武器の装備は許可されている。
本来は僕の許可は危ういかなと思ったけど、あっさりと降りたのはたぶん透さんが暗躍してくれたおかげだろう。
「やるな。鈴だけじゃなく私たちに対しても警戒を怠らない。だが―――舐めるな」
戦闘モードに入ったらしいボーデヴィッヒさん。確かに軍人ならば多少暴力をかじった程度の存在を抑えることなど容易いだろう。でも―――こっちが最近まで対峙してきた暴力は化け物だ。
凰さんを無理矢理蹴り飛ばした僕は案山子のように立っていたデュノアさん、オルコットさんを蹴り飛ばしながらボーデヴィッヒさんに接近する。ボーデヴィッヒさんは余裕のつもりなのかシュヴァルツェア・レーゲンの右腕を部分展開してAICを発動させた。確かにそれならば素早い僕でも捕らえられるだろう。
「―――あげるよ」
でもそれは―――あくまで相手をただの雑魚と割り切った場合による。
僕は手に持っていたナイフを投げてボーデヴィッヒさんの集中を途切れさせた。
「遅い」
腹部に掌打を叩き込んでボーデヴィッヒさんを吹き飛ばす。
「ラウラ!」
「もう手加減は―――」
「―――いつから錯覚してたの?」
―――僕がボーデヴィッヒさんを倒しただけで一息入れるなんて馬鹿なことをするって
生憎僕はその程度で満足しない。
次の相手は3人―――いや、4人だ。ボーデヴィッヒさんにナイフを投げて踏みとどまって僕の方を向こうとしている凰さんの顔を両手で掴んだ状態になり、オルコットさんとデュノアさんの顔に蹴りを叩き込もうとしていると、急に僕らに向かって大声が飛んだ。
「何をしているんですか!!?」
山田先生だ。近くの部屋は織斑君が寝かされている簡易医務室。無駄に責任を感じている篠ノ之さんを諭した帰りかもしれない。
「別に。ただのスキンシップです」
「ただのスキンシップでボーデヴィッヒさんの近くにナイフがあるわけないじゃないですか!!」
今回は本気で怒っているらしい山田先生。その怒りを何故6月末の大暴走の時にしなかったのかと疑問が出てくる。
「今はとても大変な状況になっているんですよ! ピリピリするなとは言いませんが、こんな時ぐらい別命があるまで待機していたください!」
「………わかっていますよ」
「わかっていないからこんなことをしているんで―――」
「何もわかっていないのはあなたですよ、山田先生」
さっきから僕ばっかり責めているけど、先に絡んで来たのはそっちだ。
山田先生は何故か僕に対して怯えた顔をする。当然だけど今の僕は丸腰というわけじゃないけど武器は構えていない。
「……あ……ああ……」
「先に仕掛けたのは凰さんたちです。戦犯を見捨てたことに対してらしいですが、彼女でもないのに彼女面するなんていい迷惑だと思いませんか?」
「……………」
一言も発さなくなった山田先生。流石に様子がおかしいと思った僕は山田先生に近寄ろとすると、近くに来ていた本音さんに服を引っ張られた。
「どうしたの、本音さん」
「抱っこして~」
「………良いけど」
でも何故? と思ったけど今は本音さんを抱きかかえる。
「ぷはぁっ! ………はぁ……とても苦しかったです」
「いや、何が?」
別に僕は何もしていないのに。
「とりあえずみーやんは部屋で休んでて」
「………わかった」
ジュースを渡された僕は大人しく部屋に戻る。
彼女は生徒会役員という立場からこうして作戦に参加しているけど、帰ってから休憩している様子はない。
喉も乾いていたしちょうどいいと思って喉を潤す。さっきの自分も珍しく冷静じゃなかったし、少しは頭を冷やすつもりでシャワーを浴びてからまた報告書を書こうとした。
■■■
救った少女から話を聞くと、彼女らは日本に出稼ぎに来たようだ。
しかし渡航費はもちろんないため密入国という手段を使って日本に入国し、その途中であの現場に遭遇したようだ。操縦者はいたが、事件を察知するや否や他の乗組員と共に逃げたらしい。
実の所、こういう話はとても珍しい話ではない。ISコアは日本やアメリカなどの先進国が独占したことによってほとんどの国がまた植民地と化し、さらには仕事すら減るという危機的な状況になっているのが今の世界の実情である。
「事情がわかった。君たちの人権はこちらが保証しよう。なに。場合によっては君たちの正式な入国処理はこちらでどうにかしておく」
「……アリガトウ……ゴザイマス……」
カタコトの日本語でお礼を言う少女。その応対をしていたとある人物は交換条件を提示した。
「その代わりに、頼みが一つある」
「……
「いや、仕事は普通に掃除とか洗濯とか、後料理とかだ。他の男たちに関係を強制されたら言ってこい。遠慮なく制裁を下してやる。………じゃなくてだな」
まだ12歳前後の子どもが発する言葉に頭を抱えたその男はため息を吐いてから言った。
「さっき君は船を壊した人を知っているって言ったな? 悪いが、その人のことを恨まないでやってほしいんだ。本当は強いんだけど今は壁にぶち当たって本来の力を出せない故に警戒しちゃっているんだけど、本当は優しくて努力家で、事情を知ったらちゃんと謝る人間なんだけど………」
「…………ワカリマシタ。
言質を取った男―――夜塚透は心から安堵した。
実際、ISコアは一部の国が独占してもおかしくないと思う。素人が地球上に存在している国を知って適当に思ったことですが。