Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.27 襲来する異形

 大体はスッと目が覚める感覚で、頭も起きている。あ、起きているのはいつものことか………いや、この感覚は……

 

(とりあえず、透さん(あの野郎)に会ったら薬を全部燃やそう)

 

 即効性の回復クスリを目指した結果、強制睡眠後の覚醒剤を完成させたあの天才はたまには痛い目を見るべきだと思った。……とはいえ、今の状況は一体どういう―――って、はぁ!?

 

(何で福音がここにいるの!?)

 

 どこかに向かって離脱したところまでは覚えている。そこから帰ってきて凰さんらとのやり取り以外は何もしていないはずなのに―――どうして?

 僕はすぐに織斑先生との回線を開いた。

 

「織斑先生、これは一体どういうことですか!?」

『影宮、起きてくれたのか!』

 

 気になる言葉が聞こえたけど、とりあえず今は黙っておこう。

 

「それよりも現状を説明してください」

『……ああ』

 

 少し迷ったのか、間が置かれたけど織斑先生は話し始めた。

 福音は離脱後、少し離れた場所にて特殊なフィールドを構築して自身の傷の回復に努めていたこと。それが僕と織斑君以外の専用機持ちが察知して、5人で出撃したこと。一度は倒したが二次移行になったことで再起動し、専用機持ちと山田先生以外が使用した訓練機以外が撃墜され、先に復帰した織斑君が交戦していること―――そして、

 

「本音さんが―――何で!?」

『おそらく織斑が戦闘している場所が原因だろう』

 

 確かに織斑君が戦闘している場所は旅館のすぐ近く―――それも、生徒がハイパーセンサーを使わずとも視認できるほどだ。

 

(……君が生きてくれさえすればそれで良いのに)

 

 冷静に考えれば、更識姉妹が仮に命の危険に晒されたところでそうした組織が壊滅するどころか最悪の場合はそこを中心に地球が壊滅的な被害を受けるだけだから助ける必要はない。でも、本音さんは違う。たぶん生徒会だからとか面子だからとかで行動しているかもしれないけど、それは困るんだ。

 

 ―――そうなったら、アメリカとイスラエルにはこの地図上から消えてもらわないとね

 

 って、何を考えているんだ、僕は。僕の能力ごときでそんなことができるわけがないじゃないか。

 頭を振って思考を戻す。そう、今は福音をどうにか止めないと―――

 

 その時僕は、福音が本音さんに向かってエネルギーを放ったのを見た。

 

 咄嗟に隼鋼を展開した僕は、高機動型には似合わない綺麗な装飾をされた盾を展開しつつ本音さんの前に入った。

 

「………しゅ……瞬……」

「本音、無事?」

 

 そう言って僕は彼女の様子をハイパーセンサーで探る。画面に映る限りは問題ないみたいだ。

 

「君は今すぐ離脱して」

「………でも―――」

「大丈夫だから」

 

 異様に頭がスッキリする。そう―――むしろすべてが邪魔とすら感じるみたいに。

 

「瞬、後ろ!!」

「―――ねぇ」

 

 僕は後ろに腕を突き出すと、たぶん福音の装甲を抉った。

 

「いつから僕が、君如きの気配を感じられないって錯覚したの?」

 

 福音はさっきとは姿が違う気がする―――まぁでも、どうでもいいか。

 それにしても、まさかさっき逃げたのに今誰が自分の目の前にいるのか知らないのかな? というか、気付いていない?

 

 ―――どっちでも良いけどね

 

 僕は確信していた。この機体相手なら―――僕1人で十分だと。だから―――

 

「え?」

 

 向こうで織斑君が間抜けが顔をしていた。それもそうかもしれない―――何故なら僕が《雪片弐型》を装備したからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「回収はどうなっている?」

『とりあえず生徒は。ただ、人数がちょっと―――』

「…………は?」

 

 隼鋼が《雪片弐型》を展開したことを目撃した千冬は真耶の説明を無視し呆然とする。

 

(……あ……ありえん……)

 

 通常、1つのISに登録された武装を他のISが使う事はできない。もちろん一夏は許諾書を発行すればできることは知っているがしていないはずなのだ。

 

「織斑、応答しろ」

『え? あ、はい』

「お前は今すぐに山田先生と合流して回収を行え」

『ちょっ!? 瞬の援護は―――』

「邪魔なだけだ」

 

 そう言うとすぐに瞬が仕掛けた―――いや、消えた。

 少なくとも千冬と一夏にはそう見えた。実際、本音にもそう見えたのは確かであるし、福音にもそういう風に見えており攻撃が捉えられていない。

 

『………でも、いざって時は―――』

『いらないよ』

 

 福音はその場から離脱するが、上下左右と縦横無尽に攻撃が当てられる。

 

『織斑一夏、君は大人しく離脱してほしい。邪魔だ』

 

 はっきりと言った瞬に驚きを露わにする一夏。すると瞬は見かねたのか―――一夏に攻撃した。

 

「何をやっている、影宮!」

 

 驚く千冬。今すぐ止めさせようとするが、先に瞬が言った。

 

『織斑君、君がいつ織斑先生クラスになったんだい』

『え………』

 

 攻撃はそれだけであり、瞬はさらに福音の所に戻る。一瞬で距離を詰めてまた福音に《雪片弐型》で攻撃する。

 

『僕が知る本当の化け物の世界は、織斑先生すら小物として扱う』

『な、何言ってんだよ、瞬―――』

『なのに君たちは力を持っただけで強くなったと勘違いし、それを振るい、権力に溺れていく。本当の暴力を知らない故の傲慢さ』

 

 攻撃を絶やさずも言葉を紡ぐ瞬。福音は移動しながらも弾幕を張るが、瞬の回避力が異常すぎて当たることがない。

 

『見ててイライラするよ』

 

 福音の翼をすべて消した瞬は背部に回って《雪片弐型》で背部をズタズタにした。

 それは見るも無残な姿だった。あらゆる回路を切断し、二度と飛び立てないようにするぐらいの勢いでしていたため、かなり惨い。

 おそらくもう再生は不可能だろうと思えるほど破壊した瞬だが、その手はまだ止める気はないようでさらに斬ろうとしている。

 

『君の不幸―――それはIS操縦者の道を選んだことだ』

 

 蹴り倒し、福音を海面に叩きつける瞬。そして頭部を抑えて福音の背中に《雪片弐型》を突き立てようとした。

 

『―――止めろ!!』

 

 一夏が瞬に叫びながら接近する。千冬はすぐに一夏を制止しようとした。

 

「何をしている織斑! 今すぐ山田先生の援護を―――」

『できるか!!』

 

 二段瞬時加速をした一夏。あまり距離がなかったこともあり、一夏は瞬を蹴り飛ばした。

 

『何やってんだよ瞬! いくら何でもやり過ぎだ!!』

「それはこちらが判断することだ! 織斑、そこを退け!!」

『嫌だ! これ以上見ていられるか!!』

 

 まるでそれは駄々をこねる子どもそのものだった。

 

『大体、何で虐殺行為に《雪片弐型》を使う必要があるんだよ!? 確かに攻撃力は高いけど―――』

『―――そう』

 

 力説する一夏をさらに止め、命令しようと思った千冬の耳に届いたのは―――ただただ冷たい言葉だった。

 

『でもそれは―――君の考えでしょ』

 

 千冬は見た。隼鋼の右腕部装甲に巨大なパイルバンカーを展開されるのを。

 

『―――死ね!!』

 

 福音にそれが炸裂し、周囲の地面が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 土の雨が降り注ぐ。

 福音を操縦者に大ダメージを受けたことによって動かなくなった。結局のところ、操縦者はISのパーツでもあるということだ。瞬はそこを突いてあの大威力を食らわせたのだ。

 

「何でだよ」

 

 瞬は福音が解除された女性を安全な場所に移動させると一夏が怒りを露わにしながら声をかけた。

 

「何が?」

「何であんな凶悪な物を持ってるんだよ! そして、それを人に向けて撃てるんだよ!!」

「簡単だよ。僕は本音さん以外の女なんて基本的にどうでも良い。この人があのダメージで障害を負おうが知ったことじゃない。それだけだよ」

 

 その言葉を聞いた一夏は瞬に殴りかかった。だが瞬にはまだスローモーションに見え、簡単に回避する。

 

「ふざけんなよ! お前は何とも思わないのか!? お前には心がないのかよ!?」

「―――今の世の中で、そうやって女を思える男が何人いるんだか」

「何?」

「君は姉に守られてきたから知らないだけ。どうせ碌に注意されなかったんでしょ? 加えてその容姿じゃまともに注意する人間もいなかったんだね。でも―――迷惑だ」

 

 一夏の顎に隼鋼のマニピュレーターが直撃した。

 ハイパーセンサーをもってしても捕らえることができない速さ。それを食らった一夏がふらつくだけにとどまったのはシールドエネルギーが消費されてシールドバリア―が作動したのだろう。

 

「瞬!」

 

 本音が近くに降り立つ。瞬は打鉄のバランサー調整を終えたことに驚きながらも冷静に言った。

 

「任務は終わりだよ、本音さん」

「…………知ってる。でも、中々帰ってこないから―――」

「じゃあ―――戻って。そこの人を連れて」

 

 急に上を向いた瞬は何かを感知したようで焦り始める。そして、女性を本音さんに押し付けて一夏を蹴り飛ばした。

 

「な、何するんだ―――」

 

 シールドを展開した瞬は攻撃を防ぐ。その一撃でシールドは融解し、瞬は陸の方へそれを捨てた。

 

「2人共、今すぐ離脱しろ」

「わかった! でも―――」

「わかってる。絶対に戻るから」

 

 その言葉を聞いた本音はすぐに離脱する。

 

「織斑君、君もだ」

「何でだよ!?」

「先生、状況を教えてください! そっちでは何か感知していないんですか!?」

『………近くに隕石が来ていることぐらいだ。だがこの質量では燃えつきるはずだ』

「………じゃあ、その隕石が何で燃え尽きずにこっちに狙いを定めているんですか」

『何!?』

 

 瞬は飛び立つ。瞬には見えているからだ―――その隕石から虫のような姿をしたものが次々と飛びだっているのを。

 

『―――その理由はただ一つだ』

 

 どこからともかく男の声が聞こえる。それは風花の間の仮設本部にも、瞬たちにも聞こえた。

 

『彼らは遥か昔にも一度飛来し、特殊なバイオテクノロジーを用いて人族を操っていたんだ。だが、操れた人族は女だけであり、それもまた不完全なもの―――もっとも操られた人間はどういう因果かとある組織のトップになったけどね』

 

 その言葉を聞いた瞬は次々と虫が飛来しているにも関わらず動きを止めていた。そしてたった一言呟いた。

 

「………パパ……?」

 

 

 

 

 

 その頃、花月荘に戻っていた箒たち。だが、箒はあるものを目撃する。

 

「何だアレは!?」

 

 戻っていた全員がその言葉に反応する。しかし全員が首を傾げたのだ。

 

「何言ってんのよ、箒。何も見えないでしょ!?」

 

 実際、鈴音たちには見えていなかった。そんな時に彼女らに千冬から通信が入る。

 

『全員、ハイパーセンサーを切れ』

「へ? ちょ、何言っているんですか織斑先生!」

 

 当然のことに慌てる真耶。だが千冬は繰り返して言った。

 

『ハイパーセンサーを切って空を見ろ。今すぐにだ』

 

 その言葉から付き合いの長い真耶とラウラが察し、全員にハイパーセンサーを切るように促した。

 千冬からの指示という事もあったのだろう。次々とハイパーセンサーの機能を切ると、そこには信じられない光景があった。

 

 ―――虫の大群

 

 小さいものなら吐き気がする程度だろう。だがすべてがISと同じかそれ以上の大きさを保有している―――言うなれば、巨大虫の大群だった。

 

「ちょっ!? 何ですかアレ!!」

 

 一人の教員が叫ぶ。ほとんど全員が同じような気持ちだった。

 ただひたすらに思うことは「気持ち悪い」だ。

 だがそれらは一直線に花月荘に向かっている。ISには自動回復機能があり、先にやられた専用機持ちたちが動けるので向かおうとしたその時―――花月荘と虫たちの間に熱線が走った。

 それによって虫たちは万単位で消失される。虫たちは危機を察知して逃げ惑うが、何かが接近して次々と落としていった。

 

「まさか……あれはBT兵器!?」

「『流石はオルコット。もっとも、こいつはちょっと違うけどね』」

 

 どこからか声がした。彼女らはその方向を見ると、黒く禍々しい機体が紅黒い光を放っている。

 

「『君たち弱者の出番はないよ。ゴスペルが倒れるのを待ってあげたんだから我慢してよね』」

 

 そう言ってその操縦者はビットを飛ばしながら自身も移動しつつ射撃で次々と虫たちを倒していく。

 

 

 

 

 

 そして、同じような状況が別の場所でも起こっていた。

 

「『―――弱ぇ』」

 

 突然現れた機体が1体の虫を破壊するとそう言った。

 真耶たちの近くに現れた機体とは違っていたが、どうやら性格も違うようだ。

 

「『この雑魚共が、もっと本気出せや!!』」

 

 次々と金棒で破壊していく。まさしく「鬼」という風貌が似合っており、その近くでは金棒を振り回す機体を助けるように別の機体が次々と破壊していく。

 

「だ、誰なんだ………アンタたちは―――」

 

 瞬は驚きつつもすぐに本音たちの場所を探し、襲われているのを見てすぐに向かった。

 近くの敵を一瞬で4つに裂き、遠くにいる敵は

 

「こちらは彼女の援護に回る。そちらは任せた」

「『了解した』」

 

 千冬の許可を取らずにそう伝えた瞬。だが、まるでそれが罰当たりだと言わんかのように突然瞬の後ろに巨大な生物が現れた。

 本音を守らんと位置を変えた瞬間、虫たちが瞬を襲う。回避を続ける瞬だが―――数の差で押され始めた。

 

「瞬!!」

 

 流石に一夏もマズいと思ったのだろう。すぐに瞬の援護に入ろうとするが無理だった。

 

「クソッ!! 数が多すぎる!!」

 

 瞬は何とか抜け出したが、彼の目には信じられない光景があった。

 

 ―――本音が襲われているのだ

 

 尋常な数ではない。今もなお教員や他の専用機持ちたちがこちらに向かっているという通信も入っているが、瞬は本音を助けるために向かった。

 

 ―――それが罠だということも気付かずに

 

 瞬の近くで何かがぶつかる音がした。同時に身体の制御が効かないことに気付いた瞬は、少ししてから自分が攻撃をまともに食らってしまったことに気付く。

 瞬はその状態を見る。自分の身体に大きな円が開いており、誰がどう見ても致命傷だった。

 

 

 

 

 

 本音が悲鳴を上げる。一夏は瞬を助けようとするが虫たちに阻まれる。

 虫たちの次の狙いは本音であり、本音も一瞬で無力化されて連れて行かれた。一夏たちが抜け出した後には本音がいた場所には銀の福音に乗っていたナターシャ・ファイルスが浮き輪を付けられた状態で浮かんでいた。




少しこんがらがっていると思うので現状を。

・瞬が本音を守るついでに割と残虐な方法で福音を撃破

・一夏と瞬で喧嘩している所に本音がしばらく帰ってこないなぁと思って瀕死と思われるナターシャ・ファイルスを回収

・虫の大群が襲来

・ついでにヤバそうな奴らが乱入

・瞬が本音(とナターシャ)を守ろうと奮闘するけど、致命傷を受けて海に落ちる

・本音が連れて行かれる寸前にナターシャを落としても衝撃がない高さに移動して解放


こんなところです。
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