Silent-Nightmare of Second- 作:reizen
眼を覚ますと、時間は6時。ここに来たのは5時過ぎぐらいだったはずだから、数十分は寝ていたみたいだ。
とりあえず立ち上がり、僕はシャワーを浴びるために着替えを準備し僕用のシャンプーセットを持って中に入ると、いかにも西洋式な感じのバスセットと、女性用のシャンプーセットがあった。
「…………え?」
女性……用?
いや、待って。そもそもこの部屋って僕だけの部屋じゃなかったっけ? ……でも、確か無理やり部屋割りを変更したとかどうとか言っていたような………。
僕は嫌な予感がして洗濯機の中を見ると、ブラジャーと女性用のパンツがあった。逆三角形のアレである。逆三角形のアレなのだ!!
(…………嘘でしょ?)
おかしい。常識的に考えておかしい。
普通、男女は別にするものだ。ただでさえここ数年は痴漢が増加傾向にあり、その内の99%は冤罪となのだから一緒に住んだ時点で「私、昨日犯されたの! 俺の子を妊娠するまで犯してやるって言われたの!」とか言われたら完全に性犯罪者扱いだ。………今していることを見られたら言い逃れできる自信はないけど。
何はともあれ、今は一刻も早く直談判するしかない。まだ6時だし、もしかしたら職員室に先生がいるかもしれない。そう思って行動した僕はドアを開けると、そこにはドアに手を伸ばした形で制止する女の子がいた。
お互い目が合い、僕はその女の子が教室内で織斑君ではなく僕目的で話しかけてきた物好きちゃんだという事を思い出した。
「……………えっと」
考えろ。考えるんだ。どうしてこんなところに彼女がいるんだろう。もしかして不法侵入―――ってことはまずないね。となれば、考えられることは―――
「………もしかして、君もここの部屋?」
「うん。そうだよ~」
そっかー。同じ部屋なのかー…………。
僕は一度頭を切り替える。まぁ、考えてみれば仕方ないよね。ここは一見すれば女子校だし、男性も用務員しかいないって話だし、女子と同室になるのは致し方ない―――わけがない。
仮に、仮に僕が1人だけISを動かしたとしよう。もちろん男子は僕1人。同居人が女子なのは人数の都合的に仕方ない。うん。仕方ないね。でも、今2人いるよね?
「………ごめん。ちょっと織斑先生に抗議してくる」
いくらなんでも横暴だよ。それにこのままだと僕ばかりが悪者扱いされるのは目に見えている。なんとかして部屋を変えさせてもらわないと。
「みーやんは私と一緒は嫌なの~?」
「いや、もうこれはそういう問題じゃないからね?」
って言うか普通、こういうのは女の子が嫌がるものじゃないだろうか?
「私は別にみーやんと一緒でも良いけど~」
「だからね。これは―――というか流石にここまで行くと悪質な虐めかと思えるものだからね?」
もはや「罰ゲーム」とも称せるのは間違いない。言うまでもなくお互いにだ。
「………」
頬を膨らませる同居人(仮)。
正直なところ、僕だって女子と同居したいさ。しかも同居人は可愛いと来たから普通なら即決だけど……なんだけど、ISを動かしたら話は別なのだ。
先輩から聞いたけど、ISを動かしたことによって僕の所属で揉める自体が起こっているそうだ。
そのため日本以外の他国はハニートラップ―――女性を使って男性を落とす作戦に取るかもしれないって言ってた。つまり僕はまともな生活を送りたいならそういうものにも警戒しないといけない。見た感じは女性らしいボンっキュっボンっというわけではないから大丈夫だと思いたいけど………実は着痩せするタイプだったらシャレにならない。
ましてや、男と同居するのに躊躇いがない人なんて怪しすぎる。
「何がそんなに気に入らないの~?」
「女子との同居」
「私は何もしないからね~」
残念だけど、そんなことで僕は騙せないぞ。人が良い織斑君ならノリにのりそうだけど。
「ごめんね。君個人に非はないんだけど……」
女性ってそういうものだし……。特にオルコットさんみたいな人がいる以上、警戒はしておいた方が良い。
「でも、今日はどっちにしろ無理だと思うよ~? だから大人しく、ね?」
天然なのかわざとなのか、妙にそそる仕草をした女の子。僕はため息を吐いてその日は諦めることにした。
「さて、瞬。IS学園に行ってからまず何をするべきか、わかるか?」
数日前の話。僕は先輩が大学進学に当たってあてがってもらったと言っていた家族用マンションの1室で授業を受けていた。
「勉強じゃないんですか?」
「クラスを牛耳っている女と教師を潰すんですよね?」
「外れではないがな。俺はまず体力を付けるべきところから始めるべきだと思う」
隣にいる親友の意見は華麗にスルーした先輩だけど、もしかしたら先輩にとっても「クラスを牛耳っている奴を潰すこと」は外れではなく実践するべきことだと考えているかもしれない。何せ先輩は頭が良いだけでなくて喧嘩も強いからだ。具体的に言えば、僕の親友以外だとまず相手にならないレベル。
「そんなことしなくても別に良いんじゃね? どうせクラスは大半が女なんだろ?」
「静流ぅ。忘れているようだから言っておくが、瞬は一応は一般人だからな」
一応ってどういうことですか。……そりゃあまぁ、僕は存在感が薄かったりするけど………。
そう。僕は生まれつき存在感が普通の人よりも薄いらしい。どれくらいかというと、普通にしていたらまず認識されないバスケット選手と言えばわかるだろうか。
「それに今年は男子が別に1人入学するし。というかぶっちゃけるとそいつの被害者だから初対面で窓から落としても許されるレベルだ」
「そんなことしたらクラスメイトから総スカンですよ」
「「いや、ビッチ共の相手をするよりかマシじゃね?」」
見事にハモッた2人。やっぱりこの2人、思考回路が似ているよ。どれだけかというと、今の女性=男にISを持ち出さないと勝てない雑魚という認識を持っているぐらいだ。そういう考えはあくまでもこの2人だからだできることであって、普通の人はそうはいかないんです。
「あー、ビッチで思い出したが、あまり女子と仲良くするなよ。今の世の中で瞬の立場的に大体はハニトラ狙いだからだ」
「……ハニトラ?」
わからない単語に疑問を浮かばせていると、先輩が補足してくれた。
「ハニートラップって言ってな、男を落とすために女の身体を使って篭絡させる手法だ」
「そんなの、普通はしたくないんじゃ………」
「そうは言うが、結局ISを管理しているのは政府だからな。そして牛耳っているのも政府となれば俺が言いたいこともおおよそわかるだろ?」
「……………」
たぶん、先輩もそれを知っているから女=強いという法則が気に入らないのだろう。僕の親友は中学生の時点でヤが付く裏の家業の人たち相手に喧嘩を売っていたのは単純に力試しなんだけど。
「まぁそういうことだから、例え何らかの陰謀が働いて女子と同居しても決して発情するな。もしどうしてもしたいなら―――」
「したいなら?」
「これを注射して強姦すれば、後はなんとかなるらしいから」
そう言って差し出された薬物が入った箱と首輪とリードのセットを、僕は丁重にお断りした。あなたは僕に何をさせたいんですか?
「これ、餞別」
静流が僕に何故かメジャーを渡して来た。
「えっと……何で?」
「IS学園は広いって話だから、最適なランニングポイントは知っておくべき。だからこれを使ってある程度の目印を立てればいい」
………なるほど。
静流の気づかいに感謝しながら、僕はそれを受け取った。
そんなことがあって、僕は朝から測量して最適なポイントをマークして家に帰ったけど、同居人はまだ寝ていた。幸せな夢を見ているのか満面な笑みを浮かべている。こうして見ると癒されるなぁ。
(………って、そんなことを言ってる場合じゃないな)
流石に朝から汗臭い状態だと後々色々と言われそうだと思った僕はシャワーを浴びる。風呂も良いけど、シャワーも個人的には良いとは思う。
それが終わってから7時まで勉強だ。これからは5時からトレーニングで6時半から勉強という配分になるかもしれない。
―――そして7時10分
「…………放置しようかな」
未だに夢の中にいる同居人を放置しようかと本気で思っている。というか、そもそも彼女は本気で僕を篭絡する気なのか疑問なんだけど……でも着ぐるみパジャマはあったかいだろうなぁ。4月って言ってもまだちょっと寒いしなぁ。
―――7時20分
もしここで起こさなかったら起こさなかったで何か言われそう………いや、下手に触った方が問題なのかな?幸いと言うかやってしまったって言うべきか、今ここにハエたたきみたいなものはないし。
(……そうだ)
前に静流にやって殺されかけたことがあるけど、たぶん彼女は普通の人だし問題ない。
そう思った僕は彼女の顔の上で手を叩いた。
―――完全に予想外だった
彼女は前までの感じから一体何があったと言うのか、跳び起きて僕の背後に素早く回って鋭利な何かを突きつけられた。
「……あれ? みーやん?」
「……………」
先輩の言う通りだった。女の子を信用するのは物凄くマズい。ハニートラップ以前に殺される可能性の方が高いけど。
「………ごめん」
僕はそう謝ったけど、許してもらえたのかどうかはわからなかった。
その日、僕は「部屋替え申請」をしたけどそれは受け付けてもらえなかった。
■■■
「本音ちゃん、お願い。今度入学してくる男の子と同居して!」
それは本音にとって意外な発言だった。
「てっきりおじょーさまがなられると思ってましたが~」
「それでも良いんだけど……むしろそうなると思っていたんだけどね。理事長が「緊急事態でもないのに他学年の生徒が別の寮に住むのはちょっと」って言い出してね」
ため息を溢すお嬢様と呼ばれた女性―――更識楯無。本来ならそこで権力を行使すれば良かったのだが、そうすれば関係は悪化―――もっと言えば理事長を敵に回せばいくら日本屈指の暗部「更識」とはいえ、大半の人間が消されるだろう。
「まぁ、今の内に親睦を深めてもらった方がやりやすいし、そういう意味では本音ちゃんの方が適任だからよろしくね」
そんな会話があったが、今本音は―――本気で悩んでいた。
(………またやっちゃったぁ)
思い出すのは瞬の背後を咄嗟にとって喉元に隠し持っていたナイフを突きつけたこと。本音は悪気があってしたわけではないが、それでも瞬との溝は深まったのは確かだった。
瞬はあの後から本音を避けるようになったし、本音もまた罪悪感であまり近付けないでいた。
(………どうしよ~)
資料はあらかじめ読んでいた。瞬のこれまでのことはそこに書いてあるので、自らそう言った行為は禁止するべきことだったと言うのに……。
そう、彼女が悩んでいる頃、とても予想外の声が本音の耳に届く。
「………布仏さん」
「え?」
目の前に立っているのは瞬であり、本音は思わず目を疑った。
だが瞬は構わず言葉を続ける。
「良かったら、一緒にお昼ご飯行かない? 1人で行くとあそこの食堂でカウンター席じゃ座りにくいから………ダメかな?」
願ってもないことだった。もし朝のことがなかったら本音の方から誘うつもりだったが―――
「うん。行こ!」
本音は勢いよく瞬に接近する。
すると瞬は本音を抱きかかえるようにして移動を始める。突然のことで本音は戸惑いを覚えたが、瞬が口を近付けて言った。
「急ごう。このままだと―――あの2人を放置できない」
その言葉に本音は急ぐ理由を納得し、ペースを合わせた。
瞬が本音に近付いたのは、部屋替えを拒否されたこともある………のだが、先輩に言われたあることを思い出したからだ。
『もし強い女子が現れて、そいつに敵意がなければ篭絡―――というのは無理でも防壁として近くにおいておけばいい。リスクも増えるがいい関係を気付けば何かあった時に敵対者を潰してくれるはずだ』
瞬は柄にもなく笑みを浮かべ、すぐに本音に近付いた。拒否していたことに関しては謝らない方が良いと言うのはこれまでの判断故である。結果的に、気にしていた本音には友好的だったが―――
(………ま、篭絡はできないよね)
本人は気付いていないが、身長が低い瞬は女子からの人気を獲得していた。また、子どもっぽさも相まってこれまで一部の女子から気にされていたが、付き合っている人物が問題すぎて敬遠されていたのだ。それもそうだろう。何故なら瞬の友人は―――普通の人間が近付くことすら恐れる黒葉高校を牛耳ったり、地域の不良を暴力で支配する化け物共なのだから。
4月〇日 晴れ
今日からIS学園に通うことになったので、念のために日記を付けようと思う。というか文章にするのにネタに困らないとか本当にこの学校は大丈夫なのだろうか?
そう思うのは女性が男性を見下すこともそうだが、何よりも男女で同居させるのを容認しているという点だ。やっぱり先輩の言う通り、この学校は結構おかしい。
………本音を言えば、とても可愛くて撫でたいけど、これは僕だけの胸の内に秘めておこう。バレたら変態扱いされるしね。