Silent-Nightmare of Second- 作:reizen
―――ああ、外伝が本編、か―――
↑なお、やる気はない模様。
放課後。僕はISの貸し出し申請をするために職員室に設けられているブースで書類に目を通してサインをしていた。近くでは織斑先生が仕事をしていて、僕が詰まった時にアドバイスしてもらうことになっている。
「それにしても、影宮は熱心だな。普通ならボイコットを考えるだろうに」
「………それ、巻き込んだ本人が言います? ……それに、織斑君と違って僕に専用機が来るのはまだまだ後なので、今の内にISに慣れておこうと思ったんですよ。負けた時のケアもちゃんと考えてくれているんですよね?」
「そうだな。有無を言わさず訓練機に乗せて私が相手をしよう」
「人によってはご褒美に早変わりですね」
と言いながら、昨日の彼女の自己紹介を思い出す。かなりワイルドと言うか、中々男らしい挨拶だったけど人気があるからか嫌がるどころか黄色い声が上がったんだ。……僕は少し耳をやられたけどね。入学が決まった時期が時期だから1人後ろの窓際の席に座っているけど、それでも耳がやられるんだからどれだけの声量だったからは言うまでもないか。
僕は許可証を書きあげて織斑先生に提出する。そして剣道場に足を運ぶことにした。…というのも、実は今そこで織斑君が篠ノ之さんと剣道をしているのだ。
次の試合の参考にもなるかもしれないし、一見する価値はある―――と思ったんだけど、どうやらすでに終わっていたみたいだ。織斑君が正座していた。状況がわからない僕にとって織斑君が篠ノ之さんに平伏している風にしか見えない。
「どういうことだ」
「いや、どういうことだと聞かれても………」
それにしても、妙に険悪だ。織斑君が何か言ったのだろうか? 「やーい、お前の名前、掃除道具!」とか。
「どうしてそこまで弱くなっている!?」
「受験勉強をしてたから、かな?」
それを言うと、静流は全く弱くなってないのは……勉強していないからかな? まぁ、静流は頭も良いから授業聞いていなくても普通に70点以上の点数は取っていたけど。
「中学では何部に所属していた」
「帰宅部。三年連続皆勤賞だ」
………それって学校を休まなかったってことかな。
なんて考えていると、篠ノ之さんは叫ぶように言った。
「鍛え直す! IS以前の問題だ! これから毎日、放課後3時間、私が稽古を付けてやる!」
「え? それはちょっと長いような……・って言うか、ISのことをだな」
「だから、それ以前の問題だと言っている!」
って言うか、ISのことを勉強したいなら教科書とか参考書とか使えばいいのでは? それに篠ノ之さんはISを作った篠ノ之博士の妹だって話題があったけど、いくら家族でもそう言う頭脳の差はあるし、正直篠ノ之さんがISに詳しいとは思えない。
「情けない。ISを使うならまだしも、剣道で男が女に負けるなど……悔しくはないのか、一夏!」
「そりゃ……まぁ、格好悪いとは思うけど」
僕も負けるけどね。あの2人と一緒にいて鍛えられたのは回避能力ぐらいだ。
「格好? 格好を気にすることができる立場か! それとも、なんだ。やはりこうして女子に囲まれるのが楽しいのか?」
「楽しいわけあるか! 珍動物扱いじゃねえか! その上、女子と同居までさせられてるんだぞ! 何が悲しくてこんな―――」
「わ、私と暮らすのが不服だと言うのか!!」
織斑君に竹刀が振り下ろされる。彼はなんとか受け止めるけど、片手だからか腕がプルプルと震えている。そして僕はその助けに入るのは―――自殺行為と判断して止めた。だって僕、死にたくないし。
とはいえ、このまま放置するのもどうかと思うのもある。先輩みたいに頑張ってみよう………決して学校そのものを変えることは頑張らないけど。
「篠ノ之さん、落ち着いて。流石にそれ以上は危ないよ」
「貴様は引っ込んでおれ!」
篠ノ之さんが僕を睨むけど、大して怖くないのは慣れだろう。慣れって本当に恐ろしい。
「そうは言うけど、織斑君の言う事は一理あるしね。今君がするのは大人しく竹刀を引っ込めることじゃないかな」
「この―――」
織斑君から竹刀を退かす―――と見せかけて僕に攻撃してくる篠ノ之さん。剣道経験者だからかそう言うのは上手い気がするけど―――僕はそれを回避した。
「「「え?」」」
周りから驚かれるけど、僕は驚かれるようなことしていない。わかりやすく言うと僕は腕の動きから竹刀が通る軌道を予測し、回避しただけにすぎない。
「………貴様、何をしたんだ?」
「いや、ただ身体を逸らしただけでおかしな芸当はしていないけど……」
そう言ったけど篠ノ之さんは僕のことを信じていないのか僕を睨みつける。
「でもすげぇよ! 箒は全国大会で優勝してるんだぜ!?」
「え? 本当!?」
まさかそんな猛者だとは思わず、僕は驚いた。……ん? その割には心の動揺が激しい気がするけど。まぁ、僕は武術関連はからっきしだから、本当は武術をしていると心が強くなると言うのは嘘だったりして。
「………影宮、と言ったな。貴様、防具は持っているのか?」
「………ないけど。しないからね? 僕は戦わないから!」
そう言って僕はすぐに下がった。戦ったところで何か得があるというのだろうか。僕ができるのはあくまで回避だけであり、攻撃は慣れていない。もし篠ノ之さんと戦って誤って胸を触ることになったら逆上して殴られる―――だけで済むならまだいい。僕に「変態」のレッテルを貼られ、教室に入ると同時に物を投げられ、挙句にサンドバッグ扱いになって―――
「おい! 影宮!」
「!? あれ、篠ノ之さん? どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるか、お前の瞳から段々光が失われていったから体調が優れないのかと思ってだな……」
「そ、そう? 大丈夫だよ。心配させてごめんなさい」
「いや、いい。それよりもこれから織斑の特訓をする。戦う気がないなら出ていてくれないか」
「あ、そうだね」
僕は白い枠内から外に出て、織斑君の応援した。
「ねぇねぇ、みーやん」
「何かな?」
「さっき言ってたおりむーの言っていることは一理あるってどういうこと~?」
「……ああ、あれね」
おそらく織斑君が言っていた「女子と同居させられている」という点で僕が同意したことだろう。
「今、僕ら男と君たち女の格差って生じているでしょう? 法律でも大概は冤罪だと訴えられても受け入れてもらえずに最後は有罪判決を下されるし、メジャーな話だと痴漢されたという事で金を巻き上げるものがある。つまり何が言いたいのかというと、男女で同居している時に女子生徒が「同居人に強姦された」と教師に話をしたら一発でアウトになる。そんな状況で女子と同居なんてまっぴらごめんだってことを僕は同調したんだ」
そう説明すると布仏さんは構った。
「つまりみーやんは私のことを信じてないんだね」
「そうだけど? むしろ織斑君と同居より完全に1人部屋が良いなって思ってる」
1人でいる時間が欲しいって言うのが本音だ。1人っきりの空間は僕を癒してくれるから。
「……………………」
「どうしたの、布仏さん?」
「ううん。なんでもないよ。ただ、世界なんて滅びてしまえばいいのにって思っただけだよ~」
「布仏さん。冗談でもそんなことは言わない方が良い。洒落ではなく国会議事堂やIS学園が跡形もなく吹き飛ぶ可能性が出てくるから」
いくら僕がいるって言っても、あの先輩は躊躇いなく攻撃するだろう。だってあの人、自分の母校を一度半分消し飛ばしているからさ。
「やだなぁ、みーやん。そんなことあるわけ―――」
「僕の見立てだと、僕の先輩と親友が本気を出してIS学園を襲撃したら生徒と教員は全滅すると思う」
「いくら何でも過大評価すぎ―――」
「相手は「魔法が使えないなら作れば良いじゃない!!」とマリーアントワネットも真っ青の兵器を中学生で中二病を発動させながら作る人だから!」
決してあの人を馬鹿にしてはいけない。………まぁ、そんな人だから僕を助けてくれた後に「逃げきった」という連絡が来た時は安堵したけど。だってあの人が「逃げ切った」ということは間違いなくそうだし………冷静に考えればあそこには静流もいるから無事以外あり得ないんだけどね。
なんだかんだで、そんな会話から1週間経った。
僕と織斑君だけの確認テストが終わったけど、どちらもグロッキー。最後まで解くことはできなかった。
「う~。頭が少しくらくらする~」
「大丈夫か、瞬」
「う~………20点あれば良い方だと思う……」
そもそも発覚した時期が物凄く遅かったんだ。1週間あると言ってもISは複雑な用語がたくさんあるから覚えるのが大変だし、さらに応用問題も入っているので解くのに時間がかかる。
僕は一度頭を切り替えるために荷物を纏めて教室を出る。纏めると言っても筆記用具だけなので大した時間ではないけど。
(………やっぱり、頭痛いな)
疲れから来る頭痛だろうか。今日は8時から試合もあるし、行く用意だけして少し休もう。
しばらくして、僕は起き上がる。確か5時半から寝たから今は6時半。1時間は寝ていたみたいだ。
僕はすぐにこれまで調べたことを書き留めたノートを出して復習する。
オルコットさんは射撃メイン―――というよりもおそらく射撃しかできないタイプだ。それゆえに観察眼に優れていて、どう撃てば相手の行動を制限、もしくは不能にさせるかをよく理解しているはず。射撃特化と予想したのは、サルベージした動画では一切近接武装を使わなかったから。他人を育成する趣味を持つ先輩なら「どのように改造しようか」と考えるだろうけど。
そして織斑君はおそらく近接特化。僕と同じで一般人だし、射撃の訓練をしていないのは既に調査済み。IS学園には軍事学校なのではないかと思うほどの施設がたくさんあり、ISの練習はもちろん、射撃場や諸々の道場は完備されている。そこの貸し出し票の中に織斑君もしくは篠ノ之さん辺りの名前がないことは調べがついていた。………まぁ、篠ノ之さんは全中覇者だけどちょっと頭が固い気がするから射撃訓練なんて考えそうにないけどね。
と少し失礼なことを考えて、作戦を新たに練ろうとするけど、頭が痛くて満足に働かない。
(………あ、もう時間だ)
そう思った僕は荷物を持って部屋を出ようとすると、外から戻ったらしい布仏さんがドアを開けた。
「みーやん、そろそろ行く?」
「そのつもりだよ」
ドアを閉めようとする布仏さんを遮るようにドアを開けようとする僕―――だけど、ドアがあると思った場所には何もなくて、僕はそのまま倒れた。
「みーやん!? みーや―――」
あれ? 何でだろ。布仏さんの声が段々と聞こえなくなっていく。おかしいな。
8時になっても瞬が姿を現さないことに疑問を感じた千冬。彼女は瞬のことを少し評価していたが、このことで下がり気味になっていく。その時、彼女の携帯電話から着信音が鳴った。
千冬は人間に分けて着信音を変えている。音から本当に珍しいなと思った千冬は電話に出た。
「どうした布仏」
『お、織斑先生。すみません、その……』
普段とは違って饒舌な本音に少し驚きつつも、千冬は次に本音から発せられる言葉を待っていると、
『……影宮君が、倒れました。熱があって、今ようやくベッドに寝かせたところです』
「………何だと?」
心から千冬は意外そうな反応をした。
千冬は大体5時過ぎに起床し、学園の敷地内を走っていることがある。2日目の朝から見慣れない顔があり、本人とはよく走った。
「いや、いい。これからそっちに行く。すまないが見張っておいてくれ」
そう伝えた千冬は電話を切り、副担任の山田真耶に任せて瞬と本音の部屋に向かった。
それを見送った真耶は、心から面白くなさそうだった。
真耶はISが普及し始めた頃、IS操縦者として代表候補生になった時には既に千冬は時の人となっていた。真耶はそんな彼女に憧れ、思いを抱いていた………のだが、最近の千冬は大きく変わった。
(まだあの雑誌を読んでいるのでしょうか……)
ふと、真耶は千冬の机の上に乗っていた2冊の雑誌を思い出す。「女尊男卑だからこそするべき女の魅力の上げ方」と「男性目線から語る女性を見る部分」というものだ。言うなれば、恋愛サポート用の雑誌とも言えるそれを未だに忘れないでいた。そのことについて千冬に尋ねたが彼女は「もう一人は弟の友人というわけではないのでな。アプローチ方法がわからない以上はちゃんとした方が良いだろうと思ってな。君も読むか?」と返されたことがある。
(それにさっきの顔……どう見ても気になる男の子が倒れたって聞いて部屋に女の顔でしたよ、先輩!!)
教師としての理性と女としての本能が彼女の中で戦っていた頃、ようやく真耶の下に白式が届いたという連絡が入った。
現在、職員のほとんどがそんな思考ですが、当人たちは全く普通にしているつもりです。瞬に関しては女嫌いですしね。
……すぐになびきそうですが、本音に中々なびかない主人公も珍しいな。私はすぐに抱きしめてお持ち帰りする自信があります。声的にも、肢体的にも。