Silent-Nightmare of Second-   作:reizen

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ep.6 走り去る幻影

 数日後、僕の熱は下がった。

 だけど僕の評判は下がっていた。理由は僕が織斑先生の目を腫らしたという話だけど………。

 

「本当に覚えていないんだよ。たぶん一度声をかけられた時は熱が下がり切っていなくて反射的に殴ったんじゃないかな」

「は、反射的って………」

「いやぁ、僕の交友関係って碌なもんじゃなかったから」

 

 織斑君に問い詰められたけど、正直僕は全く覚えていない。でも、寝惚けて殴るくらいはする。それは断言できる。

 

「いや、碌なものじゃないって………」

「まぁ、他人を思いやれるお姉さんがいるだけで君はかなり幸せものだと思うよ?」

 

 そう言いながら僕らはグラウンドに向かっている。

 これからISの授業をするって話だけど、僕らの方に準備の話が来ていないからどうするんだろうか。

 

「全員揃ったな。ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット。試しに飛んで見せろ」

 

 桜の花びらが休んでいる間に全部枯れているなぁと思いながら待っているけど、IS展開時に起こる衝撃破から僕らを守るために離れた織斑君は未だにISを展開していない。

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで1秒とかからないぞ」

 

 何それ凄い。まぁ、熟練ってことだから今の織斑君にはそんなに関係ないよね。

 

「集中しろ」

 

 これまで2分ぐらい経過している。流石に痺れを切らしそうなのか、織斑先生が少し苛立っている。

 中々イメージ通りにならないのか体勢を変える織斑君。ようやく彼のISが展開された。

 

「よし、飛べ」

 

 織斑君よりも前にISを展開していたオルコットさんが素早く飛翔。織斑君はというと、まぁお察しというかなんというか……。

 

「何をやっている。スペック上の出力では白式の方が上だぞ!」

 

 実は織斑君が使用する「白式」という機体は近接武器しか入っておらず、そのせいか機体性能は射撃と機動力が高いオルコットさんの「ブルー・ティアーズ」よりも高いのだ。…けれど、フラフラ飛んでいるのはおそらく織斑君の練度が低いからかもしれない。

 

『一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ』

『そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いているんだ、これ』

 

 たぶんそれ、試合の時の映像見たら素人の動きじゃなかった気がするから言い訳にならないと思う。

 そう言えば、堂々と私語をしている2人だけど織斑先生は注意しないのだろうか? ………上の会話はともかく、約一名が既に苛立っているんだけど。

 

『わかった。説明してくれなくていい』

『そう、残念ですわ。ふふっ』

 

 幸せそうな顔だなぁ。僕が知るオルコットさんって男が嫌いな人ってイメージがあるんだけど、前の試合で何かあったのかな? ………ただ、

 

「「「…………チッ」」」

 

 僕の周り舌打ちが絶えない。

 でもまだこれはマシな方。酷い時は、

 

『リア充は殲滅じゃぁ!!』

 

 と叫んで白い処刑用覆面衣装に身を包んだ人たちが強襲するから。通称「白の行進」と呼ばれている行列だけど、僕はアイツで耐性ができているから苦笑い程度で済んでいるけど。

 

『一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ。その時は二人きりで―――』

「一夏ッ! いつまでそんなところにいる! 早く降りて来い!!」

 

 山田先生があたふたしている。2人の会話を妨害した篠ノ之さんだけど、織斑先生からの容赦ない攻撃で沈んでしまった。まぁ、流石に自業自得だよね。気に入らなくても教師なんだし………精々1,2歳上にしか見えないけど。

 

「織斑、オルコット。急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10㎝だ」

 

 織斑先生が指示すると、先にオルコットさんが下降する。綺麗な着地でぴったり10㎝と代表候補生としての実力を生徒たちに見せつけた。そして次は織斑君だけど、グラウンドにクレーターを作っていた。まぁ、僕は何も言わないよ。

 

「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」

「………すみません」

 

 言いながら織斑君は姿勢制御して上昇し、クレーターから脱出した。

 

「情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

 ………あれ? 確か篠ノ之さんって剣道部だったよね? だったら織斑君と一緒にいるっておかしいんじゃ………?

 

「貴様、何か失礼な事を考えているだろう」

 

 何か悪いことでも考えていたのか、篠ノ之さんに言われて驚く織斑君。その様子はまるで悪いことをして怒られている子どものようだ。

 

「大体だな一夏、お前という奴は昔から―――」

「大丈夫ですか、一夏さん? お怪我はなくて?」

 

 ………やっぱり織斑君に対する態度が変わってるね。いや、僕に対しても多少は緩和された感じだけど。

 ちなみに僕は女性は信用しないけど多少の線引きはしている。あの時はつい言ってしまったけど、露骨にそういう態度を見せたら余計な反感を買うからだ。

 慌てふためく織斑君。モテるから慣れているものだと思っていたけど、実際は違うのだろうか?

 

「………ISを装備していて怪我などするわけがないだろう………」

「あら、篠ノ之さん。他人を気遣うのは当然のこと。それがISを装備していても、ですわ。常識でしてよ?」

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

「鬼の皮を被っているよりマシでしょう?」

「…………とりあえずどちらも、そろそろ本物の鬼がキレるから大人しくした方が良いと思うよ」

 

 そう小さく言うと、織斑先生が僕にジト目を向ける。間違っていないと思うけど………。

 

「まぁいい。影宮の言う通り邪魔だ。やるなら端でやっていろ」

 

 止めるということはしないんだ。まぁ、恋愛関係の喧嘩はお互い決着が付くまでした方が良いって何かであったなぁ。

 

「織斑、武装を展開しろ。それくらいは自在にできるようになっただろう」

「……はい」

 

 一度僕もISに乗ったことがあるけど、あれって結構難しいんだよね。試しに似たような展開方法をしているゲームをしてみたけど、それで展開できるほど僕の頭は良くなかった。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 

 それが織斑君に対する言葉だった。お姉さんは弟君に随分と厳しい。

 

「次はオルコットだ」

「はい」

 

 言われてオルコットさんは左手を肩の高さに上げてから真横に腕を突き出して展開した。凄いことに既に弾倉は装填済みでいつでも攻撃可能状態に移行している。

 とても素早い……素早いんだけど……もしそれが問題だとすれば……

 

「流石だな。だがそのポーズは止めろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ? 正面に展開できるようにしろ」

「ですが、これはわたくしのイメージを纏めるために必要な―――」

 

 反論するオルコットさんだけど、織斑先生には敵わない様子。強く言われて渋々と言った感じで了承した。

 僕もそのカッコつけの姿勢はイメージを纏めるためって理由でしない方がいい。もしそこに一般人がいて、その一般人が彼にアイツだとしたら、オルコットさんは今頃病院の上で寝ることになっていただろう。もちろん、ISを解除した後に、だけど。

 

「次は近接用の武装を展開しろ」

「えっ……あ、はい!」

 

 何故か驚くオルコットさん。別に今のは何もおかしいところはないはずなのにな。………と、思ったらどうやら苦手なようで織斑君が展開するよりも遅かった。しまいには武器の名前を呼んで展開するほどである。代表候補生としてそれで良いのだろうか? 確か名前を呼ぶ方法って初心者用のはずだ。

 

「何秒かかっている。お前は実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません! ですから、問題ありませんわ!」

「…ほう。織斑との対戦では簡単に懐を許していたように見えたが?」

「あ、あれは、その………」

 

 返答に困まるオルコットさん。それから織斑君の方に睨むと言うか八つ当たりのような視線を向けているけど、「あなたのせいだ」とでも言っているのだろう。

 

「………さて、そろそろ時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」

 

 ということは特訓、か。身近に良さげな特訓メニューがあるけど、僕は先輩を信じているので余計なことはしないことにしている。なんかその方が良いらしい。

 

「瞬、ちょっと手伝って―――ってもういねえ⁈」

「みーやーん! どこー!?」

 

 もう一人も僕の姿を捉えられないのか泣きそうな声だけど、ここは撤退安定だ。別に避けているわけじゃない。むしろ織斑君よりも仲が良い方だ。

 

(………まさかあの子が先輩が送った助っ人だったとは……)

 

 今でも意外に思うけど、考えてみれば先輩は僕や静流よりも年齢が上だから一緒にいる時間の方がむしろ少ないんだ。変なところでコネができていてもおかしくはない。

 

(………おかげで物凄くやりにくい)

 

 内心ため息を吐いた僕は関わり合いにならないようにバレないように先に教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が2人を拒絶した日。僕に一本の電話がかかってきた。

 

「あ、先輩………良かったです。大丈夫だったんですね」

『何言ってんだよ、全く。俺と静流がそう簡単にだ庫に捕まる玉かっての』

「むしろ………あの一部が消滅してもおかしくないですね」

 

 洒落にならない事を言うけど、あながち間違いじゃない。あの二人なら関東地方を危険区域に変えることぐらい造作もないことだ。

 

 

『そんなことより聞いたぜ。お前、また知恵熱出したって』

「相変わらず耳が早いですね。あのタイミングで出るなんて誰も予想できないですよ」

『ま、今回のメニューはそれを見越して組んでいるから修正する必要はないが』

 

 ……突っ込まない。そのコメントに関して僕は何も突っ込まない。

 それにしても、急に電話なんてどうしたんだろう?

 

「先輩……辛いのでそろそろ本題に入ってください」

『………そうだな。ところで瞬、今の同居人とはうまくやってるか?』

「はい。言われた通り、距離を置いています」

 

 そう伝えると、向こうから唸り声が聞こえてきた。

 

『…………そのことなんだけどな、実はお前の同居人が俺の知り合いなんだ』

「…人質でも取られたんですか?」

『その発想に至るのは凄いな!?』

 

 とは言ったものの、この人が人質を取られたぐらいで動揺して僕を売るという事はしないだろう。というか、逆に人質を取った組織が壊滅ルートまっしぐらだ。

 

『言ってなかったが、俺には婚約者がいるんだ。で、今お前の同居人はその婚約者の部下っていうか………まぁ存在としてはまだ信じられる奴なんだ』

「……それで?」

『そいつとだけは仲良くしてやれって………ダメか?』

「別に良いですけど………」

 

 修復、できるかな? もう本人の前で「女なんて信じられるか」と宣言してたし………。

 

『そうか。それは良かった。まぁ、ああいう目に遭ったが女にも色々な奴がいるし、ここはひとつ頑張ってくれ』

「………じゃあ、今は僕よりも静流の方が良いのでは?」

『そっちに関しては問題ない。今現在進行形でロリとイチャっている』

「僕がいない間に何があったんですか?!」

 

 ツッコミはしたし大の女嫌いだった僕の親友がロリコンに走っていることに衝撃は隠せなかったけれど、ともかくはそういうこともあって僕はなんとか布仏さんに事情を話して許してもらった。けれどああ言った手前、そう簡単に仲良くなれるかと言うとできないわけで。

 

(………まぁでも、先輩には色々と助けてもらっているし少しは努力しないと)

 

 そう思いながら僕は誰かがIS学園に入ってきたのを見たので関わり合いにならないように少し走るスピードを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、とある少女はその場で止まり辺りを見回す。そして目をこすって再度辺りを見回すと、そこには誰もいなかった。

 

(………当然よね。幽霊なんて科学の結晶って言われているIS学園にいるわけないし。そもそもここで自殺した人っていないから、幽霊なんてありえない)

 

 そう思って再度辺りを見回す少女―――凰鈴音。彼女は改めて本校舎一回総合事務受付を探し始める。

 彼女はしばらくして迷ったこともあって幽霊らしきものを目撃したことを忘れていた。というのも彼女の意中の男がこの学園に通っていて、途中遭遇しかけたがその男が別の―――しかも自分よりも胸が大きい女と会話をしていて苛立ったからである。ちなみに、彼女の同居人も巨乳だった。いや、爆乳クラスなので当てつけかと思ったほどらしい。

 

 そう。彼女はこの時点で完全に忘れていたのだ。彼女の意中の相手―――織斑一夏ではなくもう一人の男の事を。

 

(…………って言うか、この学園の胸の大きい人が多すぎない?)

 

 自分の持っている者を改めて見た彼女は心から落胆した。




瞬「まさかあの静流がロリコンに走るだなんて思わなかったな。でも、考えてみれば今の世界って子どもが大人の影響を受けて成り立っているから、考え方を変えれば子供の頃から正しく教育すればそんなことにならなかったんだよね。………もしかして、織斑姉弟が異常なのもそのせい?」


次回 SNoS 第7話 頭に栄養は行きません

時間がある時に見てくださいね。by瞬
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