要約:スクランブル発進した要撃機とネウロイが戦う話。
修正 ※管野の所属を原隊に
2017年6月23日
日本海側、能登半島の付け根に居を構える“龍”こと303飛行隊にスクランブルが掛かった。
アラート・ハンガーに駐機していた灰色の鷲、F-15Jに弾かれるように飛び乗ったパイロットたちはエンジンを一つずつスタートさせる。
エンジンがアイドル回転まで回れば、主翼の付け根にある大きな空気取り入れ口が離陸位置にガタンと下がり、発進準備が終わる。
それが終わると胴体下ステーションに懸下した4発の白い空対空ミサイルのピンが整備員によって除去された。
これで実弾として機能するようになったのだ、コクピットで“火器管制主スイッチ”を入れれば発射できる状態となった。
「コマツ “マグヌス21” タキシー アンド スクランブル」
『マグヌス21 スクランブル サウス エンジェル25 ……リードバック』
303飛行隊に割り当てられたコールサインは“マグヌス”であり、スクランブルには21から28までが自動警戒管制システムのコンピュータによって割り当てられている。
編隊長であるマグヌス21は管制塔の小松
管制塔からは南へ、高度2万5千フィートで飛ぶようにという指示が返って来た。
一昔前であればレーダーサイトの管制官による音声誘導であったが、今ではデータリンクであり誘導は戦闘機の中の計器によって行われていた。
復唱せよとの指示に編隊長は、内容を復唱する。
「ラジャー、サウス25」
『リードバックトゥコレクト、クリアードフォアテイクオフ、ウィンド225、5ノット』
タワーから離陸許可が下りると4機編隊がハンガーから
編隊長がスロットルを全開にしアフターバーナーを焚くと、弾かれるようにF-15Jは空へと昇っていく。
ジェットの轟音を響かせ空へと急角度で上がっていく戦闘機も、基地の街である石川県小松市では日常だ。
編隊長機に遅れて10秒後、空に上がった2番機はレーダーと目視で編隊長機を捉え、「タイドオン、スコープアンドビジュアル」とコールをする。
ここで僚機を見失い、迷子になると
2番機、853号機を駆るのは“ジーコ”こと
彼の
航空自衛隊に入って7年、夏の日も吹雪の夜も戦闘機に乗り続けた彼は今回の発進に違和感を覚えた。
小松基地は日本海側にあり、おもにロシア軍機や中国軍機、珍しいところでは北朝鮮軍機などに対してスクランブル発進を行っている。
しかしコクピットに取り付けられたヘッドアップディスプレイ、(以下、HUD)に表示された情報を確かめるとどうも、方位的には
米軍機をレーダーが捉えて所属不明機として認識するとは思えないし、日本本土を縦断するようなロシア軍機の“東京急行”ならば北海道の第2航空団などからすでに情報が入っているはずだ。
明らかにいつもの領空侵犯機ではなさそうだ。
地上で前情報が無いのはよくあることだが、今度のスクランブルは“変”だった。
自動警戒管制システムのデータリンクが捉えた目標へと誘導を行う。
4機編隊が2つ、8機体制でかからないといけないような相手とは何だろうか。
入間の
大阪府に近づいたとき、レーダースコープのレンジを80マイルに切り替えた。
スコープには主目標を表す“P”の文字が表示されており、60マイル(96㎞)ほどからどんどん近づいていることがわかる。
相対距離が40マイル(64㎞)ほどになった時、ジーコはロックオンしてみる。
F-15のパルス・ドップラーレーダーは目標機をロックオンすると、目標機の飛行諸元が表示されるのだ。
「やたら低いな……、小型機か?」
民航機の飛ぶ3万3000フィートがおよそ1万メートルであるのに対し目標の高度は約8200フィート(2500m)とかなり低く、モーターパラグライダーで飛べそうな高さだ。
また、速度は約216ノット(時速約400㎞)であり、ジェット戦闘機ではなさそうだ。
ロックオンをしたことで、誘導する必要がなくなったとデータリンクの表示が消えて、代わりにHUDに小さい四角のボックスが現れた。
ターゲットデジグネータ(以下、TD)というもので、その中に目標機が現れるのだがまだ目標は見えない。
一度ロックオンを外して周辺の航跡を調べると、関西国際空港へ向かっていた民航機が映る。
空中待機ではなく、いずれも別の代替空港へと誘導されているようである、
そんな時、レーダーサイトからある驚愕情報を受け取っていた。
民航機がアンノウンに近づいたところ、レーダーから消失した。
同時にテレビ、動画サイトなどで撃墜の様子が流れていたのだ。
『マグヌス21、対象は民航機を撃墜した』
悪い冗談にしか聞こえなかった。
なぜ内陸部に前触れもなくいきなり国籍不明機が現れ、よりにもよって民航機を撃墜するのか。
そうこうしているうちに、相対距離は20マイルを切って目標が見えた。
大きさはロシアのバックファイヤ爆撃機ほどあるだろうか、黒地に赤のヘックス模様が毒々しい。
エイを思わせる長い尾を持った“国籍不明機”は悠々と領空を
少し離れた山肌には旅客機が落ちたような痕跡が見られ、ジーコは子供の時に見た日空機墜落事故のニュース映像をふと思い出した。
「機種および国籍不明、ステルス、エイのような形状をしている……」
「エイですか?民航機がロストしたので何かしらの攻撃手段があります」
テレビを見ていないので事態を飲みこめていない管制官と、編隊長のやり取りを聞きながらジーコはカメラの準備をする。
手順通り、無線を緊急周波数であるUHF帯で「われの誘導に従え」と呼びかけるも応答はなく、フラフラと飛んでおり相手の考えが読めない。
この状況自体どこか現実味に欠けていた。
他国の領空にどこからともなく出現した飛行物体が、戦闘機が出てきて呼びかけられた瞬間に「指示に従って大人しく強制着陸します」というわけがないのだ。
いつも通り、距離を詰めて、ニコンの一眼レフで国籍不明機の写真を撮ろうと考えた。
低速なので目標のそばを一度パスして旋回しようとした、次の瞬間、赤い光が放たれた。
とっさにジーコは機体を右へと傾ける、これが編隊長機との運命を左右したのだ。
ジーコの前を飛んでいた編隊長機は光線に突っ込み主翼から火を噴いて墜ちていく。
頭が真っ白になり、赤い炎と黒煙を曳いて墜ちてゆく光景がスローモーションのように見えた。
そのまま編隊長である“ヨネ”こと米沢三佐の乗る941号機は二つに裂け、青々とした水田に突っ込んだ。墜ちるまでに脱出は確認できなかった。
とっさに頭に浮かんだのは、「ここを離れなきゃ」というもので、ジーコはアフターバーナーを吹かして距離を取った。
輪島市に残した両親と中学生の妹の顔はどうしてか浮かばなかった。
ただ、「そこから離れなくては」という言葉が頭の中をぐるぐると回り続ける。
写真を撮る、無線で呼びかける、侵犯機を前後で挟んでバンクを振る、警告射撃……。
航空自衛隊には領空侵犯機に対する対処方法はあるが、警告射撃のその先と僚機が撃墜された時にどうするかは決まっていない。
戦闘機パイロットたちの間で議論された時、「撃つ」か、「撃たないですぐ帰って報告する」かは半々だった。
あるパイロットは「帰って報告するべき」と言った先任に被せるように言った。
__俺がやられたら、仇は討ってくれな。
航空自衛隊が生まれて以降、ずっとファイターパイロットたちの脳裏に染みついて離れない問題が今、現実のものとなったのだ。
震える声でジーコは防空指揮所に要求する。
「……ヨネが、編隊長が墜とされた。危害射撃を実施する許可を求める」
『地上の安全が確保されるまで、危害射撃は許可できない』
何かしらの武器を用いて、航空機を撃墜した。これは急迫直接的な脅威である。
十分当該機を撃墜してよい案件だ。
しかし、中部航空方面隊司令からの回答はノーだった。
人家も何もない海上であればただちに許可が下りたのだろうが、ここで撃てば高い威力の20㎜機関砲弾が市街地に降り注ぐのである。
建物などの私有財産の損害はともかく、流れ弾や破片が住民に当たりでもすれば航空自衛隊側の判断を問われることになるのだ。
「目標、盛んに光線を放出中!」
幸いにもF-15Jの速度が不明機に狙いを付けさせないようで、光っても3秒以内ならば十分回避が出来た。
地上ではJアラートが響き渡り、退避指示が出ている頃だろう。
小松基地から発進した2個編隊は、必死に避けながら正当防衛射撃の機をうかがっていた。
西部航空方面隊の新田原基地より支援として新たに8機がやってきた。
大阪の空は大空襲を受けた大戦から70年ぶりに乱戦となっていた。
そこに居たのは銀色の腹を晒して爆弾倉のドアを開けた戦略爆撃機ではなく、アニメの敵を思わせる怪光線を乱射する黒い不明機と、必死にマニューバで回避し続ける自衛隊機だった。
しかし、ついに2機目が撃墜される。
垂直尾翼からエレベーター、二つの心臓ともいえるF100ターボファンエンジンを両断したのだ。
尻を切られたF-15は推力を失い出火、残った操作系でのパイロットの必死の操作も叶わず河内長野市のゴルフ場を飛び越して市街地へと落下していく。
黒煙を曳きながらみるみるうちに高度が下がっていき、透明の風防が吹き飛ぶように割れて射出座席が打ち出される。
切断面から吹く炎に包まれた961号機は公団住宅の敷地内に墜落し爆発した。
ようやく、正当防衛射撃の許可が下りた。
大きく旋回し、ジーコは編隊長の仇とばかりにマスターアームスイッチを
すると、誘導弾、機関砲共に使用準備完了とHUDに表示され、20㎜機関砲の照準を示すピバーが“
「マグヌス22、フォックス3」
射撃を宣言すると、操縦桿に備え付けられたトリガーを一瞬弾くように引いた。
右側のインテイク付け根にあるバルカン砲がブーンと火を噴き、オレンジ色の炎を曳いた曳光弾と実弾が毎分6000発という勢いで吐き出された。
7割近くが黒々とした体躯に命中し、高初速の機関砲弾が運動エネルギーでもってずたずたにする。
周りを飛ぶ脅威を落とそうと赤いパネルから放たれる光線の位置を予測し、躱すと距離を取る。
ちらりと目をやると、先ほど叩き込んだ20ミリ機関砲弾が穿った大穴が早くも塞がろうとしていた。
機関砲を撃ちこまれても浮遊し、効果が無いように見えたため新田原からやって来た機体が空対空誘導弾による攻撃に移行する。
『アリエス26 フォックス2!』
胴体下に懸下していた誘導弾、AIM-9Mが切り離され赤外線シーカーが目を開いた。
ロケットモーターに点火され、2発の“ガラガラヘビ”は目標目掛けてマッハ2で飛び、突っ込んでいく。
そして、弾頭重量9.4kgの破片弾頭は迎撃せんとする光線をかいくぐり、どてっ腹に直撃して炸裂した。
「やったか?」
「バカ!まだ飛んでるぞ!」
爆炎が晴れると先ほどまでバルカンでボロボロだった敵機はいつの間にか綺麗になっており、サイドワインダーが空けた大穴でさえじわじわと埋まりかけていた。
「自己修復だと?なんじゃありゃ!」
「くそっ!」
余りのでたらめな光景に、サイドワインダーを撃ったアリエス26は舌打ちをする。
「当該機、射撃するも穴が塞がっていく!」
「どういうことだ、増援は必要か?」
「今すぐ出してくれ!」
不明機の動向を観測していたアリエス28が管制官に状況を伝えたが、ただでさえよくわからない常軌を逸した状況なのに、自己修復という非現実的な展開に思わず尋ねた。
一方、ジーコ達小松基地の生き残り組は2機編隊を3つ作り、誘導弾と機関砲による波状攻撃を行う事にした。
目標の光線を攪乱するために一機が先行し、次いで機関砲と誘導弾を交互に発射することで回復より早くに削り取ってしまおうというものだ。
だが、黒い不明機は攻撃の意図を読み取ったのか、光線を連続放射から短連射へと切り替えてきた。
ジーコの囮もむなしく、マグヌス23とマグヌス26が短連射のうちの一発を浴びて、撃墜される。
マグヌス23は最期の瞬間までバルカンを撃ち続け、そのまま山に墜ちていった。
マグヌス26は誘導弾を発射して離脱動作に入ったところを狙い撃たれ右翼を大幅に喪失、「市街地に墜ちてはいけない」とエンジン出力だけで大阪湾方向に退避してパイロットは脱出。
919号機は午前11時52分頃海上にて墜落した。
その光景は信太山駐屯地からもよく見え、傷つきながら最後の力を振り絞って海へと飛ぶ片翼のF-15Jの姿をある隊員がカメラで撮影していた。
小松基地から発進した8機の邀撃機のうち3機が落とされ、新田原基地から発進した邀撃機は8機中3機が落とされていた。
10機のF-15が居てなお撃墜できず、自己修復をして飛び続ける目標に航空自衛隊はいよいよ築城基地より空対艦誘導弾を搭載したF-2戦闘機の出撃を検討し始めていた。
光線の届かないアウトレンジより、大火力の
同時に、レーダーサイトなどに駐屯する情報部隊が“不審なロシア語通信”などをキャッチしており、各地の陸海空の全自衛隊で非常事態における配備が行われることになる。
効果の見られない所属不明機に、狭い空域における空中衝突を避けるために一斉攻撃が出来ず2機編隊による五月雨式攻撃を行っていたが、いよいよ残弾があやしくなってきていた。
周辺国に対する監視もある都合上、全機出撃というわけにもいかずいよいよ手詰まりになろうかというとき、かなり小さい反応がレーダーに映った。
そして、UHF帯の無線に“少女の叫び声”が入る。
『管野一番、突撃する!』
辺りを飛び回るF-15から興味を無くしたかのように、不明機は“上空に”光線を放つ。
あれは何を撃っているのか?とキャノピーから目を凝らして探すが、雲に隠れてわからない。
だが、雲の中から射撃があったようで不明機の外板がボロボロと崩れていく。
さっき見たような、撃った傍から治るという異様に早い回復は見られない、
__何が起こっている?
ジーコはもう一度だけ仕掛けようとして、突入コースに入る。
すると、雲の中から現れた存在と目が合ってしまった。
茶色い革で出来た飛行服のようなものに身を包んだ黒髪の少女が飛んでいる。
手には銃を持っており、足に飛行機のような機械を“履いて”いる。
衝突しそうになったが、彼女はひらりと躱すとあっという間に消えていった。
_____
飛行服のようなものに身を包んだ少女こと、管野直枝は耳障りな甲高い音に横を向くと、見慣れない形の飛行機が高速で突っ込んできていたのである。
管野、戦闘機のパイロット双方とも驚かないわけがない。空の上で戦闘機に轢かれて交通事故死なんてシャレにならない。
「うわっ!なんだテメエ!」
管野はとっさに急降下した、あわや接触という距離を
急回避をし、戦闘機の乱流のために13㎜機関銃が手から吹っ飛び、遥か下の街並みに落ちていった。
「危ねえぞ!前見て飛びやがれ!」
燃えるジェット戦闘機の尻に叫ぶが、聞こえるわけもない。
その時、インカムに声が入った。
『管野中尉、通路が閉じるまであまり時間がありません、早く戻ってきてください』
調査団のウルスラ・ハルトマン中尉だ。
あのエースパイロットの妹だけあって中々肝が据わっている女で、臆することなく敵に突っ込んでいき八面体のネウロイが怪光線を放ったときにも平然と計測を始めたのだ。
そのとき、ウルスラと護衛の管野を狙って大型ネウロイが突進してきたのだ、もちろん二人は回避機動を取った。
ところが、勢いよく大型ネウロイが通路に飛び込んだものだから、平衡を保とうと針の穴からじわじわ漏れ出していたものが一気に決壊したかのように流れ出す。
お湯で満たされた湯船の栓を抜いたかのような勢いでエーテルが別世界に流出し、二人は突進してきた大型ネウロイもろとも超空間通路に吸い込まれて行った。
ウルスラは何とか直前で持ち直し、“境界面”と呼んでいるエリアで踏みとどまっていたのだ。
通路を越境していったネウロイがどうやら優先順位を自分に定めているようだ、光線を放って近づけまいとしている。
管野の眼下には至る所で火の手が上がった街並みが広がっていた。
自分たちが取り逃がしたネウロイによってこの惨状が引き起こされたとあっては、胸糞悪い。
この世界に呼び寄せてしまったことの決着だけはつけて帰ろうと決めた。
先ほど銃を失い、残るは己の拳しかない。
だが、コアの位置を一撃で撃ち抜かねば魔法力の無駄であり、また崩れた体勢によって攻撃のチャンスを失うだろう、下手をすればそのまま異世界に不時着する羽目になる。
見れば、先ほどの戦闘機がネウロイに機銃掃射を浴びせているようだった。
だが魔法力の篭っていない射撃なんて大型ネウロイの前ではすぐに修復されて終わりだ。
「へっ、立つ鳥跡を濁さずってところを見せてやるよ!」
管野が覚悟を決めた頃、インカムから声がした。
それはずっと探していた、彼女の声だ。
『聞こえますか、こちらは、雁淵ひかりです。聞こえていたら応答してください!』
「ひかり!こんなところに居たのかよ!」
管野は目を輝かせてひかりを呼び出すが、向こうには聞こえていないみたいで返事は無い。
そこにウルスラからの必死な呼びかけが入った、どうやら通路が閉じてしまうようだ。
『管野中尉、聞こえますか!通路が……』
「中尉、みんなに伝えてくれ!『ひかりはここに居た』って!頼む!」
閉じ行く通路から覗くウルスラにそれだけ言い残すと、管野はネウロイに向かって行った。
____
「前方を飛行中の貴機に問う、ここは日本国の領空である、所属と飛行目的を告げられたし」
ジーコは国際共通のUHF帯の緊急周波数で呼びかける、先ほど声が聞こえたのだから繋がらないはずがない。
最初は戦闘状況における精神状態が作り出した幻影かと思ったが、今も彼女は飛んでいる。
『こちらは扶桑海軍第343航空隊、管野直枝中尉だ!目的は“ネウロイの撃墜”だ!』
前をひらひらと飛ぶ小型機、いや
聞いたことのない組織名であり、階級も自衛隊のものではないが空を飛ぶ者として不思議と親しみが持てるような気がした。
防空指令所からも説明を求められた彼女は一言叫んだ。
『こっちはあのデカブツ倒すために来てんだよ、ごちゃごちゃいって協力する気がないなら帰れ!』
F-15で速度を落とすも気付けば少女を追い抜き、彼女の遥か前でバンクを振っていた。
国際的な取り決めで言う所の「我に従え」であるが通じないようで、仕方がないのでUHF帯で交信を続けることになった。
「あれを倒せるのか?」
『ああ、ただし、あいつのコアを露出させる必要がある』
「コアって何だ?」
『アイツの体のどっかに赤く輝く結晶がある、それを砕かねえとすぐに回復しちまう』
気の強そうな少女の声が無線から流れてきていることに妙なおかしさを感じながらも、ジーコは倒し方を尋ねる。
旋回しながら、彼女の方を見ると障壁のようなものを張って光線を受け止めているではないか。
僚機もその様子をしっかりと捉えており、幻覚でも何でもないことを証明していた。
「管野……中尉だったかな、君は本当にやれるのか?」
『おう、銃が無いから攻撃は一発こっきりだけどな』
「こちらも燃料が少なくなってきた、次で仕掛けるぞ」
『上等だ!』
無線から流れてくる声に、ジーコは機体を再び射撃位置へと持って行く。
僚機も同じことを考えたらしく、残り僅かの弾薬とギリギリの燃料で最後の攻撃を仕掛けようとしていた。
「あと40秒で仕掛ける」
「マグヌス22、フォックス2」
『マグヌス25、フォックス2』
温存していた最後のサイドワインダー3発が火を噴き、ネウロイに向かって飛んでゆく。
撃ち終わるとブレイクし離脱する。そこに間髪入れずに上方から4機編隊が突入する。
2枚の垂直尾翼に梅花のスコードロンマークが描かれたF-15、新田原の第305飛行隊だ。
死も恐れぬが如き吶喊にネウロイは光線を散らした、しかし極限まで引き付ける。
『アリエス23、フォックス3』
『
HUDいっぱいに黒い胴が映り、サイドワインダーが着弾した破孔付近目掛けてスイッチを弾いた。
4機分の20㎜の弾丸の雨に撃たれたネウロイは金切り声を上げた。
血のように赤い結晶がキラリと破孔より覗き、日光を反射する。
そして、最後は右手を輝かせた管野が破孔から覗くコアへと真上から急降下する。
シールドを圧縮し超硬度にしてそれを拳の前面に展開する、管野だけの必殺技。
「うおおおおお!」
狙うはコアただ一点のみ。
「剣一閃!」
拳でコアが砕ける感覚がする。
シールドで削り、ネウロイを貫いたとき、地表にひかりを見た気がした。
すぐに引き上げ動作に入るが、反応が鈍く体が持ち上がらない。
「上がれぇええ!」
こうして管野直枝は河内長野市の山林に墜落したのだった。
ネウロイの消滅と管野の墜落を見届けた戦闘機は、基地へと帰って行った。
一方、地上は阿鼻叫喚の騒ぎとなっており、被害の大きかった河内長野市、和泉市、富田林市、河南町などの各所から警察や消防に通報が殺到し、近隣の大阪市消防局や、京都市消防から支援部隊が派遣された。
撃墜された旅客機の遺体の捜索や落下してきた航空機部品や機関砲弾による被害、そして街中に戦闘機が墜落したことによる火災と、日常を取り戻すには程遠い状況だ。
ある家では新車が機関砲弾の流れ弾で穴だらけになったが、まだマシなほうで、撃墜されたF-15が直撃した民家は全焼した。
死者は日空657便の乗員乗客258名、警察・自衛官の殉職者は7名、住民16名、重軽傷者は250人にも上った。
その日の晩のニュースは大阪府で起こった、戦後初の「大空戦」一色となった。
感想・ご意見等お持ちしております
空自隊員の体験談等を参考にすると、年代が混ざったりする上に脱線しそうになるからヤバい。
F-104J、F-86、F-4EJの話はよく出るけどF-1、F-15、特にF-2の話はあんまり見ない。