ひかりちゃんインカミング!   作:栄光

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修正:「捜索救難」と順番入れ替え。

時系列は
「キャンプの夜」→「菅野帰還せず(この話)」「抜かれた剣」「燃ゆる大空」です。

その後、「捜索救難」へ


管野帰還せず

 1945年8月1日 “レーシー”雲内部。

 

「それでは、機材を展開してください。ラル少佐、お願いします」

「わかった、護衛班は調査隊の展開支援につけ、脱出班は周辺警戒」

「了解!」

 

 空にそびえる大きな八面体の前に40名のウィッチがたどり着いた。

 502JFWの9名に、ウィッチ戦闘団の20名、調査隊の11名である。

 

 前回の9名だけでは継戦能力に不安があるとして、護衛部隊が増強されたのだ。

 しかし下手をすれば貴重なウィッチを1回に20~35人とおおよそ1個連隊分失うという危険性があった。

 マンネルヘイム元帥を始めとした司令部の幕僚たちはその点を憂慮していたが、アルチューフィン中佐の説得によってなんとか増強の許可が下りた。

 

 次に“どこがやるのか”という問題があった、ある種“決死隊”である増強突入部隊であったが各部隊がこぞって志願した。

 練度が一定以上で16歳以上の者を中心に選抜した結果、13歳などの年少組を擁する部隊が弾かれ、結局アルチューフィン戦闘団内の3つの連隊から選抜することになった。

 

 増強部隊はイザというときに中から爆風弾で食い破って脱出する“脱出要員”、調査隊の脱出を援護する“護衛要員”に分けられていた。

 

 第502統合戦闘航空団はなまじっか腕利きばかり集めていたものだから兼ね役であり、管野やニパ、クルピンスキー、ジョゼが主に護衛要員に充てられていた。

 

「クルピンスキー中尉、スクリーンはもう少し丁寧に扱ってください、破れます」

「おっと、ごめんよー。いやあウルスラちゃんも真面目だねえ。肩の力、抜いてみない?」

「姉様は力を抜き過ぎている気がしますが」

「コイツみたいなのがもう一人いんのかよ……」

「直ちゃん酷いなあ、僕は色々な遊びを教えただけなんだけどなぁ」

「大丈夫ですよ管野中尉、姉様は自分のやりたいようにやっているだけですから」

「その分、トゥルーデが面倒見ているから心配しなくて大丈夫だよ」

「ホントかよ」

 

 怪光線の分光を結像する白い大型スクリーンを広げ、そこに光線を導くための結像用ファインダーをセットする作業に入っていた。

 クルピンスキーや管野はウルスラから指示を受けてテキパキと組み立てていく。

 一方、ニパとジョゼは調査隊のメンバーと共に照準ファインダーをスクリーンのフレームに取り付ける作業を行っていた。

 

 

「あいたっ!なんで石がこんなところに飛んでるのさ」

「カタヤイネン曹長!ファインダ!ファインダが落ちる!」

 

 しかし、不運なことに上昇気流に巻き上げられていた小石がニパの手に当たり、黒い弁当箱状の照準ファインダが落ちそうになった。

 

「うわわわ!」

「ニパさん!もういいです!私が代わります!」

 

 作業を見ていたサーシャは迷いなくニパの下へと飛び、ファインダを確保した。

 

「サーシャさん、ごめんなさい……」

「ニパさん、この器材を落としたらそれだけであなた達のお給金が吹き飛びますよ」

 

 光学機器類はノイエ・カールスラントから取り寄せたレンズやプリズムを満載した“特注”であり、隊員の不手際で壊せば()()()()()()()となる。

 いつもお金がない502ではユニットの修理費用どころか、3か月分の隊員の給料も払えるかどうか怪しくなるのだ。

 経理担当のサーシャはニパに手伝うように言った調査隊員に言った、「こういう“危険”な作業は自分がやる」と。

 

「ジョゼさん、このファインダとスコープを固定してください」

 

 ジョゼはサーシャから受け取った照準ファインダと閃光から目を守る遮光(しゃこう)フィルタを組み立てて蝶ネジで留めてゆく。

 一応、対閃光ゴーグルは渡されているが遮光度が高く、真っ黒で視界がほぼないので作業が出来ないことから組み立てや通常飛行時には皆外している。

 ただ、ゴーグルをつけては接眼部が覗けないので、裸眼で見る接眼スコープには遮光ガラスがはめ込まれているのだ。

 

「セット出来ました」

「ありがとうございます。ルマール少尉、次はアンカーロケットを撃ちこむので……」

 

 ジョゼは調査隊員と共に使い捨ての50mワイヤーリールを測定器に取り付け、ロケット発射機を構える。

 

「お願いします」

「撃ちます!」

 

 光線測定器からロケットが発射され、八面体の表面に孔を開けて徹甲弾芯(ペネトレータ)が深く潜った。

 すぐに穴が自己修復され、埋まった弾芯から伸びたワイヤーによって測定器が固定された。

 

 ロスマンや孝美、下原は脱出要員と共に周辺の警戒を行っていた。

 雲の外と違い、雲の壁の中には邀撃タイプのネウロイの影が一つもない。

 不気味に黒く輝く八面体だけが静かに浮いている。

 

「静かですね」

「下原さん、下はどうかしら」

「雲海の中にも見えませんね」

「わざわざこちらを出方を待っているのね」

 

 孝美が見上げると超空間通路はまだなく、暗い成層圏が広がっていた。

 

 作業開始から18分が経ったとき、それは突如起こった。

 首や頭に掛けた対閃光ゴーグルをつける暇もなく、八面体がいきなり発光し始めたのだ。

 

「うわっ!発光!」

「来ました!」

 

 視界を漂白するが如き閃光の中ウルスラは叫ぶ。

 

「管野中尉!測定器をっ!」

「おうっ!」

 

 八面体に撃ちこまれたアンカーロケットから伸びる落下防止・固定用ワイヤを手で探り、管野は測定器の左側グリップを握る。

 薄目で右隣を見ると、照準ファインダの接眼部に目を当てて左右調整をしているウルスラの姿があった。

 ウルスラは遮光ガラスの向こうに見える照準器に八面体の発光部の中央が来るように合わせていた。

 左右が決まれば次は上下だ、これが合わなければ斜めに光が入り正確なデータが取れない。

 

「管野中尉、光線の軸に合わせます!もう少し上昇してください」

「わかった!」

「そこで止まって!」

「おう!」

 

 1秒が1分にも感じるような凄まじい光の中を二人は必死に計測を行った。

 ファインダに取り付けられた記録部がカシャッ、ジー、カシャッと音を立て、虹色に光るスクリーンを収める。

 航空時計において5分間の発光の後、八面体は再び沈黙した。

 

 ゴーグルを付けられなかったものは頭痛と共に視界が残像で見えなくなり、すぐにゴーグルをつけた者も黒く残像が目の前を飛び、ふらつく。

 そこに、雲海を割るように大型ネウロイが飛び込んできた。

 強すぎる刺激の直後という事もあり、近接する護衛班の射撃も当たらない。

 平たい大型ネウロイは測定器目掛けて体当たりを仕掛けようとした。

 

「管野中尉!」

「壊させるかよ!」

 

 とっさに二人は上昇し、アンカーを支点に弧を描いて回避した。

 二人を掠めた大型ネウロイは勢いのまま、上空に口を開けている通路に飛び込んでいった。

 

 大型ネウロイが通路に突入したその時、「ドン」というまるで砲弾が炸裂した時のような衝撃波がやって来た。

 そして強烈な吸引感がウィッチたちを襲った。

 必死に逃れようと下降していたが、その時、計測器の記録部を固定していた蝶ネジと金具が振動で外れ、記録部がふわりと浮く。

 ウルスラはとっさに今回の作戦で“命と等しいほど大切な情報”の詰まった記録部を抱きかかえた。

 この記録を取るために多くの犠牲を払ったのだ。ここで失っては戦いに倒れていった地上軍や戦闘機乗りの将兵たちが浮かばれない。

 

「うおおおおお!間に合えっ!」

 

 そのまま飛ばされていくウルスラを捕まえようと、管野が上昇するとあっという間に空高く超空間通路へと吸い込まれていったのだ。

 

「カンノ!」

「管野さん!ハルトマン中尉!」

 

ニパと孝美の声が空へと消えていった。

____

 

 

 吸引が止まり、温度が下がったことで霧が出始めると、怪光線によって“どこからか召喚された”と思しき大小さまざまなネウロイが雲の中より続いて飛び出してくる。

 吸い込まれていった管野とウルスラの無事を確認する暇もなく護衛班も脱出班も交戦に入った。

 

 ラルは偏差射撃で音波探査機を背負った調査隊のウィッチに向かう雑魚を始末した。

 残像が引いて復帰した孝美は超空間通路へ向かう大型ネウロイを狙撃し、逃がしはしない。

 魔眼でコアを捉え、20㎜の弾丸が的確にコアを貫いてゆく。無防備に背面を見せて飛ぶ鈍重な大型ネウロイなぞ的でしかない。

 サーシャとロスマンは大物を狙う孝美の援護に回って、寄って来たネウロイを落としてゆく。

 フリーガーハマーの火力で外板を粉砕し、流れ作業のようにサーシャがとどめを刺した。

 管野が吸われていったことに動揺する暇も与えられず、ニパは遊撃手として中型の相手をしていた。

 クルピンスキーとジョゼは調査隊のウィッチたちの直掩(ちょくえん)に回り、接近してきたものを中心に撃墜していく。

 そのほかの増強部隊のウィッチも選抜されたベテランばかりであり自衛火器での射撃や、突入時に撃ち終った()()()()()()()()()()()()などして次々と撃墜していった。

 

 こうして雲の中から現れたネウロイの群れはウィッチたちの敢闘によってひとまず姿を消した。

 次は音波探査機を八面体に打ち込み、探針音の通り方でコアを捜索する作業が始まった。

 

 外板と構成材質や密度の違う結晶部が内部にあればそこに反応が現れるのだ。

 割れやすいコアと自己修復にも対応する外板部では、どうしても密度や材質が異なる。

 単一の材質で出来ているなら、外板攻撃時に一緒に割れているはずである。

 

「どうやら、第一波はこれで終わったようだな」

「隊長!カンノの様子を確かめに行かせてください!お願いします!」

 

 第一波を退け、計測作業の準備に掛かろうかとしたとき、ニパがラルの前にやって来た。

 飛ばされていった管野の捜索に行きたいと懇願するニパに、サーシャは諭すように言った。

 

「ニパさん、管野さんの様子を確かめる前に、私たちにはやらなければいけないことがあります」

「そんな!サーシャさんだって……」

「ニパさん!」

 

 サーシャも管野の事が心配だが、計測作業の護衛が居なくなっては次の襲撃があった時に対処できない。

 助けに行きたい気持ちを押し込めて、ニパを叱ろうとした。

 その時、黙って聞いていたラルが真剣な表情で言う。

 

「サーシャ、ニパ、私は別に行くなとは言わん。だが、ここで結果を出さねば()()()()()()()ぞ」

 

 “次から外される”つまり、レーシー攻略において突入部隊ではなく外で帰還を待つ援護部隊にさせられるのだ。

 そうなればひかりの捜索も、先ほど吸い込まれていった管野とウルスラの捜索も叶わない。

 

 502が攻略部隊に選ばれたのも、結果を出し続けてきたからだ。

 

 グリゴーリの撃滅、“レーシー”の能力の発見、異空間通路と八面体の屈折体の発見と様々な()()を積んできたからこそ、今、ここに居るのだ。

 ニパの昂った心に、ラルの言葉は深く突き刺さった。

 

「……カタヤイネン曹長、護衛任務に戻ります!」

 

 とぼとぼと言った擬音が似合いそうな調子で護衛に戻っていくニパの姿に、ロスマンはラルの方を見た。

 突入部隊の指揮官という事もあって、作業中は様子を見ているだけなのだ。

 ラルは味方を見捨てない、彼女は機を見て自分が探しに行くだろうと。

 ロスマンの視線に気づいたラルは不敵な笑みを浮かべる。

 いつだって、こうして戦果をもぎ取ってくるのがグンデュラ・ラルという女なのだ。

 

 音波探査機を持った調査隊の3名のウィッチが八面体に取り付き、それぞれ背負っていた送信部・受信部のユニットを斜面に下ろして、大きな演算部と太いコードで接続する。

 筒状の送信部からは一定のリズムで探針音が放たれ、トランクケースのような受信部が反射を捉えるのだ。

 これらの情報が大きな登山用バックパックほどある魔導演算部によって分析され画像化されるのだ。

 その間、護衛班のウィッチたちは空だけではなく探査機を持った調査隊の様子も確認していた。

 

 探査のために取り付いた瞬間、突如表面がうねって飲みこまれることが無いとは言い切れないからだ。

 

 

「管野さん、聞こえますか……管野さん」

『……かよ……くそっ』

 

 雲の外の司令部とはだいぶ前から通話が出来なくなっており、おそらくレーシーを覆う分厚い雲の壁によって電波が遮断されているものだと考えられる。

 孝美は管野を呼び出すが、少し遠い。完全に雲の外にいるわけではなく、ギリギリ電波が届くエリアにいるようだ。

 どうやら戦闘状態に入っているらしく、管野の悔しそうな声が聞こえてきた。

 ウルスラの声も聞こえており、こちらは少し聞き取りやすい。

 

『管野中尉……脱出しまし……う』

 

 通信担当の孝美は交信をラルとサーシャ、そして下原に中継する。

 下原が超空間通路を見た時、穴の縁に金色の髪が見えて次第に近づいてきた。

 

「ウルスラさんが、戻ってきました!」

「下原さん、管野さんは!」

「今、死角に入っています!」

 

 下原の声に、サーシャが思わず尋ねる。

 持てる能力を精一杯使い、管野を探すが穴の向こうに管野の姿が見えない。

 孝美は管野に呼びかけるが、応答は雑音が多く聞き取れない。

 そして、茶色の飛行服に身を包んだ管野が穴から見える範囲に戻って来た。

 

『管野一番、突撃する!』

 

 管野の突撃を告げる無線はいやにはっきりと聞き取れた。

 

「管野さんは……雲の中に飛び込んでいきました」

 

 下原は管野が雲の中に急降下し飛び込んでゆく様子を見た。

 その傍を灰色の2色迷彩のかかった飛行機のようなものが抜けてゆく。

 

「管野さん!応答してください」

 

 サーシャの呼びかけにも応答はない。

 管野が向こう側で高度を下げたことによって電波が届かなくなったのだ。

 反対にウルスラはこちら側の穴の縁まで戻ってきており、明瞭に聞こえるようになった。

 

『管野中尉、通路が閉じるまであまり時間がありません、早く戻ってきてください』

 

 事実、どんどんと穴の径は小さくなっており、あと数分もすれば穴は閉じる。

 ウルスラの呼びかけは聞こえるが、管野の応答は聞こえない。

 サーシャは無線が繋がり、管野と交信しているであろうウルスラを呼んだ。

 

「ハルトマン中尉、状況を報告してください!」

『管野中尉が大型ネウロイと交戦中、帰還限界におそらく間に合いません!』

 

 暗い空が広がっており、もう穴は人ひとり通れる位の大きさになっていた。

 

『管野中尉、聞こえますか!通路がもう閉じます!』

 

 管野は異世界に残ることになったのだ、サーシャは思わず言った。

 

「もう、あの娘はっ!」

 

 その様子を八面体の近くから見ていたニパは管野に何かがあったことを悟ったが、持ち場を離れるわけにもいかず悶々としていた。

 くるくると旋回しながらゆっくりとウルスラが降りてくる、保護フィールドがあるとはいえ急降下は気圧の変化で体に悪影響を及ぼすのだ。

 

「ハルトマン中尉、よく帰って来た」

「はい、記録部もこの通りです」

 

 遥か高空から降りてきたウルスラはラルの前に立つと管野からの伝言を伝える。

 

「皆様に、管野中尉からの伝言を承っております」

「管野が私たちにか」

「内容は『ひかりはここにいた』です。雁淵ひかりさんからの呼びかけもありました」

 

 ウルスラの口から聞いた言葉を聞き、502のメンバーの動きが止まった。

 管野は異世界に取り残されたわけではなく、自ら残ったのだという事に気づいた。

 

「ありがとう、ハルトマン中尉。そうか、あいつはわざわざそのためにな」

「ひかり……管野さん……」

「ひかりさんは、無事みたいね」

 

 ラルは「相変わらず無茶をする」と笑い、孝美はひかりの無事を知ると同時に管野の無事を願っていつの間にか涙ぐんでいた。

 ロスマンも涙ぐんでこそいないが、心に来るものがあった。

 

 一方、音波探査を終えた調査隊はアンカーワイヤーのリールを捨て、すべての機材を携行状態に戻す撤収作業が行われていた。

 器材の撤収にかこつけて少し離れた所で聞いていたニパが、調査隊の女の子を見ているクルピンスキーに声を掛けた。

 

「えっ、ひかりちゃんが?」

「そうだよ中尉、ひかりがあの向こうに居て、カンノが残っちゃったみたいなんだ!」

「直ちゃんはひかりちゃんの事が好きだからねえ、ニパ君も向こうに行ってみたい?」

「ワタシはいいよ!イッルやハッセと会えなくなるかもしれないし、大体、向こうが危なかったらどうするんだよ」

「そうかなぁ、ひかりちゃんが居るってことは()()()()()()()()確保されているんじゃないかな」

 

 ひかりの生存を喜ぶムードの中、下原が新たなネウロイ集団が接近していることに気づいた。

 

「みなさん、下方よりネウロイ集団第二波接近!」

「よし、離脱するぞ」

 

 ラルの号令を受けて護衛班が襲撃してくるネウロイの数を減らし、脱出班が爆風弾で雲の壁に大穴を開けるはずだった。

 

「この時を待っていたぞ、まとめて吹っ飛べ!」

 

 しかし、本来の用途とは異なり、敵集団目掛けてブダノワはもう撃ち馴れた爆風弾を発射した。

 ロケットは時限信管によって敵集団のちょうど中央で炸裂し、赤い炎と膨張したエーテル交じりの反応ガスが大きな火球を作った。

 狙い通りネウロイが消え失せたのはいいが、遥か上空のウィッチにも爆風はやって来てシールドで凌ぐも左右に揉まれる。

 

「ブダノワ中尉のバカー!」

「雲の中で撃てーアホー!」

「取扱説明書を読めー!」

 

 ウィッチ達の中からそんな罵声が聞こえる。

 当のブダノワは「今日の爆風の唸り声はにぎやかだな」とまったく意に介さない様子だ。

 爆風が過ぎ去ると、今度はブダノワ以外の脱出班が爆風弾を雲の中へと撃ちこんだ。

 雲の中で火球が見えて小さな通路が出来上がると、そこから調査隊を先頭に脱出を図った。

 

 雲の外はもう薄暗い夕方であり夜間視の使える下原の先導や、地上から発進してきたナイトウィッチの誘導もあって調査隊及び突入部隊の39名は無事、前線飛行場に降り立つことが出来た。

 

 そして、突入部隊の少女たちは翌朝より報告書の山と戦うことになった。

 

 調査団本部には調査隊が命がけで集めたデータの他に、ウルスラから“異世界についての報告書”が上がり、その情報は連合軍の上層部を驚かせることとなった。

 異世界に突入したウルスラの報告書には、技術力の証である“高層建築と思しき建物”や“道路を高速で走る多数の自動車”があった。

 最も興味を引いたのは“ジェットエンジンと思われる音を立てて飛ぶ戦闘機に、ロケット兵器が搭載されていた”と言うものだ。

 特にジェット戦闘機のイラストはウルスラの物以外に、遠視で通路の向こうを確認した下原の報告書にもあることから信用性が高いと考えられた。

 

 これらの技術を持つ国にどう接触するべきか、あるいはネウロイによってもたらされた通路をどのようにすれば「自分たちが意図して開けるようになるか」と上層部で考える者が出た。

 

 一方、異世界に留まることとなった管野直枝はラルやウルスラの報告により職務離脱者つまり“脱走兵”扱いにはならずに、戦闘中行方不明という扱いになる。

 書面の上では消息を絶っていたが、実際は異世界の調査のために残ったとされており、「雁淵ひかり軍曹を()()して帰れば」()()()()()()()()として昇進することになった。

 




本人のあずかり知らぬところで昇進が決まってしまったぜバカヤロウ!
報告書では雁淵ひかり軍曹からの救援を求める声があり、越境していったネウロイとの交戦に参加して行方不明となっている。

決して機関銃の筒内爆発による行方不明ではない。(銃落としてるけど)

ご意見・ご感想等あればお待ちしております。

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