追憶
2017年7月20日
「よっしゃ!ついに来たぜ給料日!」
尚樹は帰宅経路上にあるコンビニのATMで生活費を下ろす。
通帳には新たに手取りの14万8千円ほどが入っており、その中から帰省に備え少し多めに引き出したためその足取りは軽く、普段買わない缶コーヒーを買って出る。
やはり財布の中に3万円以上あると安心できるもので、自衛隊の頃から尚樹は最低でも2万5000円入れておくことにしていた。
6月はひかりが来て、追って直枝が来たことによって一時は財布内が6000円を切っていたのだから、給料日がやってきて財布の中に万札が4枚以上あることによってテンションが上がるのは当然だろう。
さらに日曜に休みを入れた土曜の夜という事もあって、もう気分は最高だ。
尚樹が楽しそうにATMから生活費を引き出している頃、ひかりと直枝は夕食の準備をしていた。
給料日という事もあり、今や武内家の財布を握っているひかりの提案ですき焼きとなったのだ。
「夏にすき焼きかよ……」
「はい、最近は夏にもすき焼きを食べるんですよ!」
ひかりは料理本で読んで以降機会があれば作ってみようと考えていたので、尚樹の給料日という事で特別メニューとして夏すき焼きを作ることにした。
冬のものである白菜などに代わり、ナスやかぼちゃと言った夏野菜が投入され、昆布だしの入ったさっぱりとした割り下で食べる“夏すき焼き”で、中の肉は牛肉だ。
「別にいいけどよ、こうして見るとすき焼きっぽくねーな、野菜炒めかよ」
一方、直枝にとってはすき焼きの肉は豚であるし、扶桑では冬の食べ物のイメージが強い。
そんな彼女は夏すき焼きの作り方を見て困惑していた。
鍋に割り下を入れ、具材を投入してから煮立たせるだと思っていたが、ひかりは先に具材をフライパンで炒めていたのだ。
夏野菜はもちろんのこと、豆腐なども焼き色がつくまで炒める。
「野菜炒めじゃありません!こうすると煮崩れにしにくくなるんですよぉ」
「……だから豆腐を焼くのか」
「はい、管野さんはそこのお肉を焼いてください!」
「おう」
牛脂を溶いたフライパンで滋賀県産牛肉400グラムを炒める直枝、ひかりは具の片面に焼き色がついた所で鍋に入れて、肉が入ったところで昆布だしベースの薄い割り下を入れる。
そしてしらたきを肉に触れさせぬように入れてさっと煮るともう完成だ。
「思ったより早ぇな」
「はい、一緒に煮ると火の通り具合に差ができちゃいます!」
ひかりと直枝は創作料理こそできないが、料理本に乗っているメニューはおおむね作れるようになっており、このように火の通り具合を調節すると言った芸当もいつの間にか出来るようになっていた。
「よし、これで尚樹が帰って来るまでゲームできるな」
「管野さん、尚樹さんが帰ってきたら晩ごはんですよ!」
「わーってるって」
すき焼きの入った鍋に蓋をすると、直枝は居間のテレビを使って『BF3』を始める。
コントローラーの操作を覚えて以降、大抵のFPSが出来るようになったのだ。
ひかりも最初こそゲームに夢中になったものだが、1週間もすれば飽きてきて今ではまるで母親のような事を言っていた。
なお、直枝はというと新しい本が読めない代わりに尚樹が買っていたゲームをやり込む。
キャンペーンモードの緊張感あふれるストーリーや、まるで自分がそこに居るかのような臨場感ある一人称視点が彼女の心を掴んだのだ。
テレビの画面には飛行甲板へのラッタルが映し出され、パイロットと
敵勢力の拠点となっているイラン領内の空港の爆撃と、上がって来た要撃機の撃滅が主な任務でありまさに戦闘爆撃機といったものだ。
機関砲、ミサイルなどの兵装システム、フラップやエレベーター、ラダーといった各動翼、
振り下ろされたデッキクルーの腕に合わせ、甲板より放たれた
射出と同時にメインテーマが流れ、気分を盛り上げてくれる。
ぼんやりと画面を見ていたひかりは現代の空母の甲板と周りを囲むイージス駆逐艦に初陣を思い出した。
____
1944年、雁淵ひかりは遣欧艦隊に乗ってスオムスのカウハバ基地へと向かっていた。
有名人にして艦載ウィッチである姉の孝美も居たし、戦闘機の搭乗員たちや水兵たちからもかわいがられて空母での生活は比較的楽だった。
艦隊がバレンツ海に入り、もう少しでムルマンスクへとたどり着こうかというときにネウロイの編隊が来襲したのである。
通常であれば海上で遭うのは母艦型ネウロイ単機と兵隊ネウロイという組み合わせだが、今度のものは中型だけで9ないし10機いて護衛の兵隊ネウロイも40から50とおり、艦隊に緊張が走った。
その時のことは今もよく覚えていて、しばらくの間夢に見る事もあった。
艦内に鳴り響く警報、「対空戦闘用意」の声、ひかりと孝美は艦戦の搭乗員と共に作戦室から格納庫に降りる。
もう顔馴染みとなった整備兵たちが、いつもとは違う鬼気迫った表情でユニットケージを押してエレベーターに乗せる。
孝美がユニットに足を突っ込み、整備兵がスイッチを入れるとセルモーターが電気で回されてエンジンが始動する。
4人の整備兵が“火器整備場”から重量のあるS-18狙撃銃と弾薬を運び出し、魔法力が流れていることを確認すると予備弾納と共に孝美に渡した。
ネウロイに起因する
甲板に上がるといつもより風が強く、気を抜けば甲板から転がり落ちそうだ。
海面がとても速く流れていき、遠くの駆逐艦が波を蹴立てて走り回っている様子が見えてこの船も戦闘速度にあることを知った。
艦上に係止されていた零式艦戦に乗り込む搭乗員たち、艦隊直掩の艦戦が発進すると続いて航空ウィッチ、戦闘機部隊の本隊が続くのだ。
直掩機はすでに上がって空母の上空で旋回しており、ひかりにとってはまだまだ遠くて敵影はまだ黒いゴマ粒ほどにしか見えない。
合成風力よし発進可能の合図が出されると初弾を込める、姉の発進に思わず駆け寄った。
「お姉ちゃん!私も戦う!」
「ダメよ、あなたはまだ戦えないわ、部屋に戻っていなさい」
ここで初めて見た姉の厳しい顔に驚き、家では見せない軍人の顔をみた。
「また、今度ね」
優しい声色で姉が言うと紫電“チドリ”は飛行甲板を滑るように飛び立っていく。
男が2人がかりで持ってきた大きな狙撃銃と手首くらいありそうな20㎜弾数十発を持っているとは思えないほど安定した発進だ。
続いて艦戦隊が発進するのでひかりは整備士たちと共に甲板脇に退避した。
脚の
不意に先頭を行く機体の搭乗員と目が合った。
「娘に似ている」とよく飴玉をくれた清水大尉で、ひかりに気づくと左手を一瞬だけ上げた。
分隊長の清水大尉についで、仲本上飛曹、嶋中飛曹長、松本一飛曹と、零戦は次々と飛び立って行った。
孝美と艦戦の男たちはどんどん小さくなってゆき、そのうちに護衛の駆逐艦の対空砲火が始まった。
「じ、実戦だ……」
遠くで見える光線と水兵たちの慌ただしい様子にひかりは思わず呟いた。
駆逐艦の長10センチ砲や25㎜連装機銃、重巡の高角砲が火を噴き、艦戦を抜けてやって来た兵隊ネウロイの迎撃に当たる。
上空のネウロイからは散発的な射撃が行われ、赤い光線が掠めるたびに
右へ左へのきついロールが飛行甲板上のひかり達を襲う、船が回避運動を取っているのだ。
ネウロイの光線が船体を掠めて近くの海面に着弾し、光線によって沸騰した水蒸気で水柱が上がった。
当たれば一瞬で溶け落ちるであろう熱量を持った光線が五月雨のように放たれ、生きた心地がしない、むしろ次の瞬間死んでいてもわからない。
艦戦隊の奮戦もネウロイ編隊の侵攻を食い止めるには力及ばず、一機、また一機と火に包まれて墜ちていき、隣を行く護衛の駆逐艦“岸波”が艦首に被弾し艦橋・砲塔の砲員10名が即死した。
その光景を見たひかりは思わず格納庫へと走り、橙色に塗られた零式練戦を付けた。
ハッチで閉じられた閉鎖区画もあったが、ひかりがウィッチであったこともあり水兵たちは通してくれたのだ。
「無茶だよ、ひかりちゃん!」
練戦の近くにいた整備兵がそう言った瞬間、光線が空母を掠めて何かが爆発し、その破片が格納庫を襲ったのだ。
ひかりが気づいたときには練戦に天井の梁の一部が突き刺さり、先ほど話していた整備兵はどこかへと
彼に代わり顔なじみの大柄な一等水兵がひかりを背負って救護所の方へと運ぼうとしていた。
「ユニット……整備のみんなは!」
「……ここにはもうおらん、手当てを受けよう」
おそらく彼らはダメだったのだろうなと、自分を背負う松本
艦中央部の応急救護所は格納庫周りの負傷者でいっぱいとなり、ひかりは一度飛行甲板に上がってから無傷である艦前方の救護所に行くこととなった。
その時、空いっぱいに居たネウロイがあっという間に姿を消したことに彼女は気が付いた。
姉が“完全魔眼”と呼ばれる、“複数体のコアを発見する能力”を生かして流れるように中型ネウロイを撃滅したからである。
ただ、最後の最後で生き残っていた兵隊ネウロイとその母機である中型ネウロイの多方向からの連携攻撃を受けて脇腹を負傷した。
魔眼発動中はシールドも弱くなっており、通常であれば防げた“苦し紛れの一発”を貰ったのだ。
出血によって途切れ途切れの意識の中、孝美はハードランディングをしようと甲板目掛けて突っ込んだ。
「お姉ちゃん!」
ふらつき、高い着陸速度ときつい進入角度にひかりはただ事ではないと気づいた。
受け止めようとシールドを展開し、孝美はひかりのシールドを割ることで勢いを殺して停止した。
ひかりに同行していた水兵や甲板上にいた者が慌てて駆け寄り、孝美とエジェクトされたユニットを回収した。
純白の士官服には血が染みて、ひかりの手に暖かいものが伝う。
水兵の1人が持っていた手拭いを傷口に当てて圧迫止血を行い、医務室へとかつぎ込んだ。
あのときの「姉が死んでしまうのではないか」という恐怖は忘れることはないだろう。
その後、ネウロイの巣と敵の増援が新たに出現してひかりは一人、姉の代わりに戦うことになったのだ。
__そして、チドリと初めて大空を飛んだのもこんな風景だったな。
打ち出してくれるカタパルトもなく、初めて使うユニットであり、なおかつ大きくて重い狙撃銃を持っているのもあって
羽虫のようなネウロイに向かって必死に撃つも、コアを捉えておらずあっさりと修復されて、そのまま反撃される。
小型の攻撃であったため弱いシールドでも耐えられたが、おそらく次はないだろう。
一度ネウロイに激突してコアが見えるも、当てられなければ何の意味もない。
2機のネウロイに挟み撃ちにされ、もはや撃墜は免れないか……。
そこまで思い出した時、ゲームの画面では迎撃に上がって来た敵機を落とし、
「どーしたんだよひかり、やりてーのか?」
「違います、見てたら初めて戦った時を思い出しました、空母から飛び立った後の景色なんかそっくりです!」
「ああ、あん時か。たかが小型二機に振り回されてる奴がいて、よく見りゃ孝美じゃなかったんだよな」
敵機に挟まれて「もうだめだ」と硬直したその瞬間、真上から銃弾の雨が降り注いだのだ。
ひかりを捉えていた小型ネウロイはボロボロと崩れて眼下で弾けた。
もう一機も降下してきた影によってすれ違いざまに光と消える。
敵機に肉薄する急降下射撃__それが今ゲームで対地攻撃をしている彼女、管野直枝と502JFWの面々との出会いだった。
その時は異世界に来ることなんかも考えていなかったし、ましてや好きな人が出来るなんて考えてもみなかった。
「管野さん……」
「おう」
直枝はひかりがいろいろな想いで声を掛けてきたことを感じ取り、何も言わない。
「……えっと、今の空母って凄いんですね、夜でも着艦できるんだー」
「あたりめーだろ、
「そうなんですか?お姉ちゃんも夜着艦したことがあるって言ってました!」
「それは孝美が
結局、言いたいことが思いつかなかったのか、それとも空気を変えようとしたのか画面に映る着艦風景についての話になった。
現代戦では直枝の言うように全天候24時間戦闘が基本であるが、1945年においては大半のウィッチが“昼間戦闘機”であり、夜間戦闘が出来る航空ウィッチは数が少ない。
サーチライトによる目視迎撃、レーダーや魔導針を用いての航法および戦闘と言うものはある。
しかし、夜戦が得意な彼女たちであっても、“目印も何もない海上”を数千キロ飛行し戦闘して帰還するのはとても難しいし、さらに波で動揺する飛行甲板への着艦となるととても高度な技量が要求されるのだ。
孝美が新編された第508統合戦闘航空団、通称:マイティー・ウィッチーズに呼ばれたのもこうした技術を買われてのものであった。
翔鶴型とエンタープライズ型空母を中核とした扶桑・リベリオン合同のこの統合戦闘航空団は所属こそ太平洋統合軍総司令部であるものの、大西洋を主戦場とし欧州各地の火消し部隊として活動していた。
異世界に来た二人は知らないが、現在、“レーシー調査部隊”として派遣されてきている各国のウィッチの海上護衛などを行っているのも508JFWである。
最後に来た手紙では新しい統合戦闘航空団に配属となったという事が記されており、直枝の話によるとわざわざ502に来たという。
ひかりはあの過保護な姉がどうしているか気になった。
「ほんと、お姉ちゃん何してるんでしょうね」
「今か?たぶん、通路を開こうとしてるんじゃねえか?孝美はおめーが絡むととんでもないことをするからな」
「あはは、そうですね」
今度の無理矢理な転属に加え、“フレイヤー作戦”の時は元帥との交渉をした上できつい態度を取ってまでも妹を
直枝は雁淵姉妹はやはり本質的なところでは似ているのだなと思う。
どちらも
それが今度の異世界越境でどう出るのか、直枝は期待していた。
ラルと孝美がいる限り少なくとも、すぐに捜索打ち切りにはならないだろう。
そう考えていると、玄関先から車のエンジン音が聞こえてきた。
尚樹が帰って来たことに気づいた直枝は急いでプレステ3の電源を落とし、食事の体制へと移行した。
ひかりはすき焼きの入った鍋に火を入れて温めると、炊飯器の中のご飯をかき混ぜる。
「ただいま!」
「おかえりなさい!」
「おう、おかえり」
尚樹が洗濯物をカゴに入れる間にひかりは鍋敷きをテーブルに置き、温めた鍋をその上に置いた。
「今晩はすき焼きか」
「はい、夏野菜のすき焼きです!お肉もたくさん入ってますよ!」
ダシ多めの割り下を使った夏野菜のすき焼きは、砂糖と醤油で味を調える関西のすき焼きに比べてあっさりとしており、生卵を付けなくとも十分食べられるようになっている。
直枝はテレビで見たように、冷蔵庫から生卵を三つ取り出して小鉢にのせテーブルへとやって来た。
新鮮な生卵はめったに手に入らない貴重品という世界で育った彼女たちにとって、生卵にくぐらせる方式のすき焼きはぜいたくな食べ方だったのだ。
ところが、こちらではスーパーマーケットでお一人様1パック限りなどで安売りが行われており卵製品も至る所で手に入ることから、早速試してみたくなった。
「卵はいらねえのか?」
「うーん、味が濃かったら卵を使いましょう!」
「いいんじゃないか、つるつる食べれそうで」
尚樹は二人に先立って小鉢に卵を割りこむとかき回し、卵黄にしらたきや豆腐をくぐらせて食べて見せた。
甘すぎず、辛すぎずちょうどいい薄味で、冷たい卵黄が熱を蓄えた豆腐などの具材をちょうどいい温度に冷ましてくれる。
直枝とひかりも続いて卵を割った。
最初はおそるおそるで、指を突き込んでしまう事もあった二人だが今では綺麗に割って、殻の混入もない。
「ひかりちゃんも直ちゃんも上手くなったよなあ……」
「そりゃあこっちに来てからずっと料理やってんだ、上手くもなるだろ」
「そうですよ!コツさえつかんだら片手で出来ます!」
「おめー、それでこの間砕いたじゃねえか!」
「ほう、それで?」
右手だけで卵を割って得意げなひかりに、直枝は悪戯そうな笑みを浮かべてひかりの失敗をバラす。
ひかりはというとこっそり練習していた時の失敗を暴露されてむくれる。
「むー、管野さん言わないでくださいよぉ!」
「あん時、飛び散ったのが俺の顔にひっ掛かったわけだ」
「すみません」
「めちゃくちゃヌルヌルして、ひどい目に遭ったぜ」
ひかりがテレビ番組で見たように卵を掴んで片手で割ろうとしたとき、つい力を入れ過ぎて亀裂から圧壊、思い切りぶちまけて不運にも隣でフライパンを握っていた直枝にかかったのだ。
尚樹は直近で卵をたくさん使う料理が出たっけ?と考える、すると先週の木曜日の晩御飯と翌朝の朝食が思い浮かんだ。
だし巻、スクランブルエッグ、フレンチトーストと卵物が続いたのだ。
「ああっ、あの卵焼きの晩か!」
「そうです!」
「ひかりと俺で1パック使っちまったからな」
「それであんなに卵焼きがでたのか、頑張ったなあ」
あの2日間は卵を片手で割る練習の産物だという事を知った尚樹は笑った。
____
食事が済み、入浴を終えていつものようにくつろぎタイムに入った。
直枝は和室から持ってきた座椅子に持たれるようにして小説を読み、ひかりは高校の勉強をしながら尚樹とテレビ番組を見て雑学知識などを学ぶ。
テレビ番組を見ていた尚樹はあることを思い出して、二人に声を掛けた。
「ひかりちゃん、直ちゃんに渡したいものがあるんだ」
「えっ、なんですかぁ?」
「何だよ急に」
尚樹はふたつの茶封筒をひかりと直枝の前に置き、ふたりがシゲマツ自動車の茶封筒を開くと樋口一葉の5000円札が現れた。
「二人とも家のことがんばってるからさ、お小遣いをあげよう」
「お小遣い……やったぁ!ありがとうございます尚樹さん!」
「おい、良いのかよ。来月帰省だろ?」
「大丈夫、それも見越して多めに引いてるから。欲しいものに使ってよ」
「うーん、何買おうか迷っちゃいますね!」
「文庫本もあと2冊ほど欲しい、でも金は貯めとかないと後々がやべえ」
「必要なものがあったら一緒に買いに行くし、あんまり気にしなくていいからね」
ひかりと直枝は喜んだが、同時にどう使っていいかが悩みの種になってしまった。
尚樹としては一緒に買い物に行ったら自分が出すものだと考えていたので、最初は5000円で代わりに買えないような物を買って欲しいと思った。
さすがに女性ものの下着やら生理用品を代わりに買ってやるのは厳しいものがあるのだ。
「でもよ、俺達ってアシがねえから街の店まで行けねえよな」
「自転車でもあれば尚樹さんの代わりに買い出しに行けます!」
「そういえばそうだな、給料も入ったことだし明日、ショッピングモールに買い物に行こうか」
尚樹の提案によってショッピングモールに行くこととなった。
しかし、翌日にかねてより恐れていた事態が起こるとはだれも予想していなかった。
ついに就職し、初めの1週間が過ぎました。
更新間隔が空くと思いますがどうかよろしくお願いいたします。
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