ハイラルの英傑の記憶   作:アズマオウ

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ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが神ゲーすぎたので、リンク視点で物語を書きたくなりました。稚拙な文章ですが何卒お付き合いください。


無茶な少年と、ミファー ~6age~

「とうさん、いってきまーす!」

「あんまりおそくなるんじゃないぞ!」

「わかってるよ!」

 僕はそういうと、家の扉を勢いよく開けて外へと駆け出していった。半袖の青い上着に薄茶色の半ズボン、手には何も持たずに、ひたすら石畳で出来た路地を走る。近所にすんでいるおばさんがヒソヒソと話していたり、露店でおじさんが呼び掛けていたりするのを横目に見つつ、僕は走り出す。今日は近所の遊び仲間と一緒に野原で鬼ごっこをする約束をしている。早く遊びたい。そんな逸る気持ちを解放させて僕は足をよりいっそう速く動かした。

 しばらくして石畳の床は柔らかい草と土に変わった。もう少しだ。もう少しで仲間と遊べる。そして、見慣れた仲間達が約束した場所に立っていた。

 だが僕は気づいた。僕を見る表情がいつもと違うのだ。いつもはパッと輝かせてすぐにでも遊ぼうと駆け寄ってくる。だが、今日は僕が来ると顔をうつ向かせていた。まるで僕から目をそらすように。

「お待たせ!」

 違和感を隠しながらも僕はいつものように挨拶をする。だが、返事はない。あるとしても、おうと短く返されるだけ。

「えっと……じゃあ早速遊ぼうよ。鬼は誰がーー」

「ダメなんだよ」

「えっ? 何が?」

 ポツリと声が聞こえたので僕は聞き返した。すると、僕の近くにいた子が顔をあげた。

「リンクともう遊んじゃいけないんだ!」

「えっ……?」

 大声で叫ばれて僕は、リンクはたじろいだ。いや、大声でビックリしたからだけじゃない。

「どういうことだよ? 僕と遊んじゃいけないって?」

「……昨日お母さんに言われたんだ。『ウチみたいな商人が、近衛の家の子と遊んでるのが知れたら目をつけられるの』って……それで母さんが君と遊ぶのを禁止したんだ」

 大声で叫んだ子とは別の子がボソボソと述べる。それに乗じるように皆も顔を伏せる。

 僕は訳がわからなかった。だからなんだよ。というか君の母さんの言いたいことがわからない。

 当然だ。まだ六歳の少年である僕には、階級制度や身分の差なんて分かるはずもない。下の身分の者が上の身分と遊ぶなんて、言語道断もいいところだ。

 でも、僕にはそんな現実なんて知らない。だから僕は彼に掴みかかってしまった。

「なんだよそれ……もしかして僕のことが嫌いになったのか? それで適当な嘘をついて……それでごまかせるとでも思ったのか!?」

「違うんだリンク! でも、君と遊ぶと僕たち暮らしていけなくなるかもしれないんだ……君の身分と僕たちのそれは離れているんだよ」

「知らないよ! 黙ってればバレないだろ!」

「……昨日僕見たんだ。君みたいな身分の高い人の子供が、身分の低い人をパシリにしていたのを。君だっていずれは僕たちをそうするんだ」

 ぼそりと他の誰かがそういうと、僕は大声で怒鳴り返していた。

「僕はそんなことしない! 君達は友達だ、パシリになんてーー」

「いまはそうだろうね。でもいずれはきっと、そうなるに決まってるんだ! だからこれを機に、もうお別れしよう」

「なっ……ちょっと待ってよ!」

 リンクは手を伸ばし彼らを引き留めようとした。だが、その手は振り払われ、走って彼らは消えてしまった。気がつくと、リンクは取り残されてしまっていた。

「……なんだってんだよ!」

 僕は地べたに座り、大声で叫ぶ。回りにいた動物たちが驚いて逃げ出すも、お構いなしだ。

 せっかく楽しみにしていた鬼ごっこも無くなるどころか、仲間を一度にすべて失った。子供にとって遊び仲間は世界そのもの。僕はすべてを失ったのも同然だ。

「くそっ……意味がわからないよ!」

 僕は何か殴らないと気がすまなかった。はっきりいって今から彼らを追いかけて殴り飛ばしたい気持ちで一杯だ。だが、もう彼らは見えない。だから僕は近くにある小さな岩を殴った。

 だが、人間の肌よりも遥かに硬いそれを殴るということを僕は分かっていなかった。突如激痛が襲いかかり、僕は地面へと倒れ込む。

「うっ……! っううう……!」

 僕は殴った拳を見る。指の根本の皮が剥がれ、鮮血がちびちびとだが出てきている。それをみてますます、刺すような痛みが増し、蹲る。岩を殴ったら当然そうなるに決まっているのに、僕は怒りに任せてしまった。ひどく後悔しながらも僕は必死に痛みに耐えていた。

 だからかもしれない。僕は気づかなかった。優しい少女のような声が聞こえたのを。

「ねえ、あなた大丈夫?」

「っ……うぅ……!」

「怪我してるみたいね。じゃあ……」

 穏やかな声は途切れ、僕はまだ痛みに耐えていた。しかし、ここで変化が起こった。刺すような痛みが弱まっていくのだ。

「えっ……?」

 最初は痛みに慣れたのだと思った。でも、それにしては引くのが早い。だんだんと痛みは和らぎ、とんでもない激痛が、せいぜい軽くどこかにぶつけた程度に変わった。

 僕は傷ついていた拳へと視線を向ける。すると、何かの光がそれを包んでいたのが見えた。そして、拳の上に翳すように在る、赤い腕。

「えっ……?」

 僕は視線で腕を伝っていく。とても細く、柔らかそうな印象を受ける。まるで魚のようにきめ細やかな皮膚で、僕はただただ目を奪われた。

 人間じゃない。僕はそう直感した。でも、それじゃいったいなんなんだ? 僕はその者の体を直視した。

「あっ、気づいてくれたんだ! よかった……」

「……君は?」

 僕はじろじろと見つめた。イルカの尾を連想させるような頭、赤い皮膚、とても華奢な体、そして僕の拳を包む光。やはり、人間じゃない。

「それよりどう? 怪我の方は」

「あっ……」

 僕は腕をあげ、拳をまじまじと見る。さきほど剥けてしまった皮は元通りになっており、出血も止まっている。まるで、元通りになりましたと言わんばかりだ。

「これは、きみがやってくれたの?」

「うん、そうだよ。私の癒しの力を使ったの」

「へぇ……すごいな。ありがとう」

 僕はぺこっと頭を下げた。

「そういえばまだ自己紹介してなかったね。私の名前はミファー。あなたは?」

「僕はリンクっていうんだ。よろしく」

「よろしくね! あ、そうだリンク。出会ったばっかりで変だとは思うんだけど、その、私と遊んでくれないかな?」

 もじもじと少し恥ずかしそうに頼むミファー。だが、僕ははっきり言って願ったりかなったりだ。リンクは思わず手をつかんでいた。

「えっ?」

「いいよ! 僕もミファーと遊びたかったんだ! 実はさっき、遊び友達に振られちゃって……」

「そうなの? ……そういえば私もなんだよ。ゾーラ族の王女っていうだけで、皆怖がって遊ばないの」

 僕は息を呑んだ。僕と同じじゃないか。身分のせいで遊ぶ友達も選べず、苦しい思いをしているということは。 僕は確信した。彼女とならとっても気が合うと。

 その後はお互いのことについて色々話した。ミファーは、僕の住むハイラル城下町の遥か北東にある、水に囲まれたゾーラの町の王女で、唯一なんでも治すことのできる"治癒の力"を使えるということ、今日はミファーの父がハイラル城に用があるからここまできたということを聞いた。僕もまた、自分の家の事とかその他いろんなことを話した。

 その後は僕達で追いかけっこをしたり、水泳をしたりした。追いかけっこは僕が勝ち、水泳は僕が負けた。その他にもいろんな遊びを考えてそれをしていた。

 時間はあっという間に、過ぎていった。日は暮れていき、ミファーは申し訳なさそうに僕に告げた。

「ごめん、そろそろ帰らなくちゃ……お父様がそろそろ迎えに来るんだ」

 残念だ。僕は隠すこともできずに首をたらす。でも、ミファーは少しだけ笑ってくれた。

「また会えるよリンク。今日は本当に楽しかった」

「うん、僕も楽しかったよ。また遊ぼうよ!」

 僕はミファーの手を握り、まるで指切りげんまんをするように縦に動かした。ミファーはそんな僕に穏やかにほほ笑んでくれた。

 そしてミファーと共に城下町へ向かい、僕は城下町にある家へと戻っていった。ミファーは最後まで笑顔で僕を見つめてくれていた。

 ドアを閉じて僕は自分の部屋へと戻る。そしてベッドで寝転がり、新しい友達の事を、想い続けた。

「ミファーか……また遊びたいな」

 早くその日が着ますように。僕はそう祈りながら自然と瞼を閉じていく。今日の疲れが僕を暗闇へと優しく包み込み、そのまま僕は夜になるまで目を覚まさなかった。




次回は、リンクがどうして感情を表に出さなくなったかを、本編では語られなかった部分を補完して書いていこうと思います。
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